福島県南相馬市 萱浜の“なの花めいろ”
月末金曜日AM 8:10〜に移動して第一回目のHand in Hand、今回は、福島県南相馬市、萱浜の“なの花めいろ”についてお伝えしました。
南相馬市の海沿い、萱浜。この地区は東日本大震災以降、毎年ゴールデンウィークの時期になると、一面が菜の花に覆われ、子どもたちの笑い声に溢れます。それが恒例イベント「なの花めいろ」。東京ドーム2個分以上の広さの菜の花畑を、いわゆる“巨大迷路”にして、無料で開放しています。これを手掛けているのが、南相馬市在住・上野敬幸さん。
2011年、震災による津波で、母の順子さん、長女・永吏可ちゃんを亡くし、父の喜久蔵さんと長男・倖太郎くんは今なお行方不明のまま。現在は妻の貴保さんと、震災後に生まれた次女・倖吏生ちゃんと3人で暮らしながら、震災で失われたたくさんの命、残された家族に、“笑顔になってもらう”ための活動を続けています。その活動の一つが、今年で11回目を迎える“なの花めいろ”。
上野さんのお話です。
◆“なの花めいろ”はじまりのきっかけは?
菜の花は震災のときから植え始めました。がれきや色んなものがたくさんあったので、同じ萱浜地区の津波が来ていない場所に、(震災があった年の)11月ごろ、さびしくて花を植えようと思って、たまたま時期的に(植えられるのが)菜の花だったというだけ。それで翌年5月に咲いたんですが、咲いている菜の花を見て、翌年12年は津波が来たここに植えることにしました。もともと家や畑があった場所で、がれきを拾いながら菜の花を植えて、そして13年に花が咲いて。その時に急に思い立って迷路を作り出しました。
◆最初は子どもたちを集めようという意図はなかったということ?
なかったです。うちは専業農家。専業農家はどの季節も畑に作物が植わってあり、緑があり、ときには花が咲く場所だから、さびしくて植えたのがスタートでした。
2013年は新しい家を建てた年なんですが、その年から“笑顔”にこだわるようになったんですね。僕は震災の時は永吏可と倖太郎が全てだった。永吏可は見つかりましたけど倖太郎は見つからない。倖太郎を見つけたら抱きしめて命を絶とうとも考えていたんです。そのうち、家が建って、新たに生まれた倖吏生と嫁さんと3人で戻ってきた時に、“俺は倖太郎に生かされている”と思ったんです。“俺を生かすために倖太郎は出てこないんだな”と。それまでは事あるごとに泣いていたんですが、“亡くなった家族に心配させたくない”という思いが強くなったのがちょうどその頃でした。永吏可と倖太郎、両親に心配させたくない・・・それで何ができるのかと思ったら、“笑顔になること”だったんですね。
この沿岸部には笑顔が戻るべきだと思っていたし、うち以外にも亡くなった方がたくさんいて、もし天国があるなら、空の上から見てくれている。菜の花めいろで子どもたちが走り回る姿を天国から見ていたら、安心してくれると思う。自分ができることはそれしかない気がして、今もこうしてやっているという感じです。
(子供)「楽しかったです、お花いっぱいさいてたです♪」
(パパ)「迷路、難しいです。去年よりパワーアップしていて(笑)。なかなか人が来づらい場所ですが、楽しいイベントがあって、こうして人が来ることは良いと思います。」
(ママ)「震災後に子どもが遊べる場所もなかったので、子どもがひろびろと走り回れる場所が出来て嬉しいです。子どももテンションあがりまくってます!」
ゴールした家族からはこんな声も聞かれました。
取材後にスタッフもチャレンジしてみましたが、年々クオリティが上がっていて大の大人が右往左往。ゴールするまで若干泣きそうなくらい苦労しましたw
震災後、上野さんは個人的に行方不明になったご家族の捜索活動を続けてきた方。その中でたくさんのボランティア、地元の人々との繋がりが生まれ、「福興浜団」が結成されました。そうした方々と一緒に、GWの「なの花めいろ」や、8月11日に開催される「追悼福興花火」などのイベントを開催しています。
震災後に生まれた次女・倖吏生ちゃんは、小学6年生になりました。その名前は、長女・永吏可ちゃん、長男・倖太郎くんから文字をとって名付けられています。取材した日も元気に会場を走り回っていました。
東日本大震災による行方不明者の数、今年3月1日時点で2523人。東日本大震災の経験が“風化”していくことについて、上野さんは、“忘れてもらってかまわない。ただ災害が起きたら、いのちを守る行動をするということだけは忘れないで欲しい”と言います。
そんな思いを胸に、今年も開催されている“なの花めいろ”。家族連れはもちろん、インスタ映えする景色を求めて若い世代も遊びに来ます。去年は1万1千人以上が来場したとか。今年は菜の花の生育が早く、22日23日にプレオープン。そしてこの週末29日、30日、そして5月3日から5日まで開催されます。ゴールした子どもにはプレゼントもあります。また開催日以外も開放はしているので“自由にどうぞ”とのこと。入場は無料。募金箱があるので活動を応援したい方は是非ご協力をお願いします。
また福興浜団のオンラインショップではオリジナルTシャツの物販も行っています。