宮城県の温泉地、秋保と作並で『テロワージュ』を体験!
今回お届けするのは、東北の美味しい食と酒、人、気候風土を味わう「テロワージュ東北」1泊2日の体験ツアー、そして東京で開催されたイベント「テロワージュ東北ナイト」のレポートです。
気候や風土と人の営みを意味する「テロワール」。食とお酒のペアリングを意味する「マリアージュ」。この二つを掛け合わせた造語が「テロワージュ」です。このテロワージュ東北を通じて世界に向けて東北の魅力を発信しています。
まずは1月中旬、東京・有楽町で開催されたキックオフイベント「テロワージュ東北ナイト」の様子から。テロワージュ東北の呼びかけ人、秋保ワイナリー代表の毛利親房さん。石巻の漁師でフィッシャーマンJAPANの代表理事、阿部勝太さん。そしてこのイベントで「テロワージュ東北」のアンバサダーに任命された日本文学研究者のロバート・キャンベルさんと一緒に東北の食の魅力や可能性についてディスカッションが行われました。
阿部勝太「漁師は同じような食べ方ばかりで、ボランティアの方にめかぶを獲ってきてその場でゆでて叩いてご飯にのせてどうぞ〜と出すと、ぼくらにとっては日常だが「こんな美味しい朝めし初めて食べた!」と言われたり。どこで食べる、だれと食べる、どういったストーリーを聞いてたべるかが、意外と食べ物とか飲み物のおいしさをぐっと上げるんだなという体験をしてきた。それが新しい食の可能性、地域の可能性になるんじゃないかなと思います」
イベントに参加した方の声です。
「りんごとカモミールのリゾット。シェフのコメントにもありましたが田園風景が浮かんでくるような味わいだなと思いました。」
「以前福島の農家さんを訪ねる機会があり、話をきいて現地で食べるという経験をしていますが、食べるなかで最上級に豊かな経験でした。今後もその土地の温度やにおいを感じながら食べることができたらうれしいなと改めて感じました。」
阿部勝太さんが獲ってきたワカメ、岩手のうに、東松島の牡蠣、名取のセリなど、東北の美味しいお酒と料理のマリアージュを楽しんでいました!
そして舞台は東北へ。2023年1月下旬、宮城県の人気の温泉地、秋保と作並をめぐる「テロワージュ東北ツアー」が開催されました。大雪予測の中、到着した秋保の空は快晴。最初に向かったのは「大峯千日回峰行」を満行した塩沼亮潤大阿闍梨が開山した慈眼寺です。このまま快晴が続くのか?と話していた矢先、雪がちらつき、次第に本降りに。雪が降りしきる慈眼寺もまた美しく、心洗われました。
福聚山 慈眼寺
「テロワージュ東北ツアー」最初の食体験はマリアージュランチ。菜園料理家藤田承紀シェフが用意してくれた「リガトーニ サルサピノーリ 日本ほうれん草」「ミスティカンツァ(野菜のサラダ)」「トマトと蓮根餅のパッパ」の3皿に秋保ワイナリーのワインやりんごのシードルをあわせて、ペアリングを楽しみます。「日本ほうれん草が甘くてめちゃくちゃおいしい!」「隠し味に仙台味噌が入っているの?」「パスタに“料理人のワイン”が合います!」など、さっそく笑顔が飛び交って。マリアージュランチのあとは、「ガラス工房 尚」の鍋田尚男さんによるガラス食器づくりのワークショップ。鍋田さんは2000年に秋保に工房を開き、作品制作や体験ワークショップを行っています。自分だけのオリジナルガラス食器づくりに、みんな真剣な表情。
ガラス工房 尚
そして一行は秋保ワイナリーに。震災後、毛利親房さんがいちから手掛けたワイナリーには、2ヘクタールにおよそ7000本のブドウの木が植えられています。ワイナリーの背後には、秋保石と呼ばれる凝灰岩が採掘された山が。秋保石を含む土壌がミネラル感のある味わい深いワインを生み出しています。「震災前、宮城県には一社ワイナリーがありましたが、津波にのまれ、当主も犠牲になりました。ワイナリーをつくって、生産者の応援、食の応援をしよう、そう思いました。東北の人や食、風景や文化をストーリーで伝えていきたい。」毛利さんの話を胸に、一行はディナータイムへと進みます。
秋保ワイナリー
宮城県屈伸の温泉地、秋保温泉。旅館「蘭亭」には2022年、東北エリア最大級のグランピング施設がグランドオープンしました。ドーム型の客室は、世界の都市をコンセプトにした内装で贅沢かつ快適な空間。各部屋に24時間利用できる専用の露天風呂がついて、いつでも秋保のお湯が楽しめます。
夜はいよいよお待ちかね、ペアリングディナーのお時間。蘭亭の料理長が東北の食材で自慢の腕を振るってくれました。
<黒毛和牛のステーキ><スパイシー骨付きフランク><海老と帆立のアヒージョ><ゴルゴンゾーラチーズのフォンデュ><地元野菜のグリル>etc.
一方、藤田シェフもワインに合うイタリアンを繰り出します。
<いちごとトマトとブッラータ(チーズ)のサラダ><仙台せりとパンチェッタのボッリート><ムール貝出汁とフェンネルのリゾット><デリシャストマトとホタテのアクアパッツア><熟成和牛のロースト>etc.
にぎやかな食卓に飛び交うのは、とびきりの笑顔と秋保ワイナリーの彩りゆたかなワインたち。食べて飲んで、また食べて。ペアリングの夜はいつまでも続きました。
GLAMPSEASON
「テロワージュ東北ツアー」2日目は作並温泉郷へ。まず向かったのはニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所。日本のウィスキーの父、竹鶴政孝が北海道余市の次に選んだ、もうひとつのウィスキーづくりの聖地です。美しい自然とおいしい水がその理由。蒸溜所見学と試飲でウィスキーの奥深さをインプット。雪景色の蒸溜所もそっと心に焼き付けました。
ニッカウヰスキー宮城峡蒸溜所
さらに作並温泉の「岩松旅館」へ。88段の木造階段を下りてゆくと広がるのは、宿の名物、天然岩風呂。天然かけ流しのお湯で体を温めた後は、ウィスキーとのペアリングランチが待っていました。東北の食材を贅沢に使ったメニューにニッカウヰスキーをいろいろな飲み方で合わせる、セルフペアリング。ウィスキーの美味しさに開眼する一行。
作並温泉 鷹泉閣 岩松旅館
気候や風土。人の営み。そして食とお酒。すべてが組み合わさって、ひとりひとりの「テロワージュ」が完成します。秋保と作並で過ごした時間、交わした会話、美味しい料理とお酒。生産者の想いやもてなし。そのすべてが養分となって、心と体にしみわたる。「また食べに行きたい!」「また会いに行きたい!」。「テロワージュ東北ツアー」はそう思わせてくれる、究極の癒し旅でした。
テロワージュ東北
2020年9月放送「テロワージュ東北マルシェ」の様子はこちら