デザインの力で気仙沼を発信! 『BLACK TIDE BREWING』
今週も先週に引き続き、宮城県気仙沼の内湾地区、クラフトビールのブリュワリー『BLACK TIDE BREWING(ブラック・タイド・ブリューイング)』からのレポートです。
気仙沼の魅力に取りつかれて集まってきた移住組のメンバーを中心に、2020年、津波の被害があったエリアにオープン。“気仙沼の人が誇れるビールをつくろう”と、バツグンに美味しいクラフトビールを生産し国内外へと発信しています。
また気仙沼をモチーフにしたラベルデザインを担当するのは、地元出身のグラフィックデザイナー 志田淳さん。「気仙沼の魅力をデザインで発信したい!」と気仙沼にUターンしてきました。
BLACK TIDE BREWINGのラインナップの一部、
「ヤマセ」 「サンマ・ソード」 「ホタテ・ベルト」 「シャーク・ケープ」
どれも“気仙沼ならでは”のこだわりのデザインで、おもわず手にとってみたくなります!
―――とにかくラベルがカワイイですね。例えば「ホタテベルト」。気仙沼のご当地キャラのホヤぼーやの武器の1つ。青いラベルにキラキラのホタテのベルトが付いています。
「本来のホヤぼーやのホタテはもう少しカワイイんですけど少し誇張して、プロレスのチャンピオンベルトみたいにブリンブリンのキランキラン☆にしてくれってオーダーがあったのでこうなりました。」
―――こちら、ダークIPAは気仙沼の内湾や山を描いたんですよね?
「これは我々が今いる場所の等高線をサンプリングしてデザインしたもの。もともとぼくもスタッフも音楽好きが多くて、ジョイ・ディヴィジョンというバンドのジャケットにこういうデザインがあるんですけどそれをオマージュしながら気仙沼をデザインしたラベルです。」
―――ブリュワーの丹治さんは新潟から移住してきたと。志田さんのご出身は?
「ぼくは出身気仙沼で大学の時だけ神奈川にいた時があったんですけど、その後すぐ戻ってデザインの仕事をしています。」
―――震災の時はどちらにいらしたんですか?
「震災の時は大学生で、ちょうど気仙沼の高校の同級生とバンドやっててスタジオにいて。地元4人が集まっている時に震災にあって、やっぱり連絡とれなくなるし。自宅は津波をかぶって全壊で、火事がひどい地域だったので津波と火事と、という状況でした。震災がなかったら気仙沼に帰ってなかったと思います。田舎が嫌で東京に飛び出した口だったので。ただ震災があって大変な状況の中で、いろんな人たちが前を向いて頑張っている姿を見て、僕がこのまま東京で何事もなかったかのように就職するのは違うなと思って、僕が力になれることがあればなりたいと思って、卒業してすぐ帰ってきました。」
―――大学の専攻がデザインだったのですか?
「全然関係なくて、環境学を勉強していたんですけど、当時大学いながらアパレルを作ってブランドをやっていて。やっぱり町のことを知ってもらうにはデザインの力って大事になってくると思うので、僕が先頭に立って走るというよりは、BLACK TIDE BREWINGのように頑張っている人たちをデザインというツールを使って応援できるんじゃないかと思ってやっています」
震災時は神奈川の大学に通っていたという志田さん。当時は「自分が帰ることで、気仙沼の力になれるのか」「“自分にしかできないこと”で町の役に立てることをずっと探していた」と話します。そんな中志田さんの目に映るのは、外から入っていた“移住者が活躍する姿”でした。
「戻ってくるときの葛藤はめちゃくちゃあって。やっぱりデザインを専門に勉強してきているわけでもないし、すごいスキルがあるわけでもない状態で帰ってきたので。力になりたいっていうとカッコイイですけど、そもそも食っていけるのか?ってところで葛藤はありましたね。
ただ当時、丹治さん含めいろんなボランティアの人たちが気仙沼に入っていろんなことをしてくれていて、震災前にはなかったいろんなコミュニティが出来ているのを外から見ていて、すごい楽しそうだなって思えたんです。で、これから大きく町が変わっていくんだなって思えた時に、僕もその渦中にいたいなって想いの方が強くて、何もできないかもしれないけど帰ってみようって感じで戻ってきました。」
「YAMASEシャツ」
高校を出て神奈川の大学へ。大学卒業後、8年前にUターンし、独学でグラフィックデザイナーになった志田淳さん。改めて、デザインを通して見えてきた気仙沼の風景に、空の広さ、海の青さ、海が近いことの素晴らしさを感じたといいます。
「なぜこのデザインは等高線をモチーフにしているのか、なぜサンマソードのデザインは背景が漁船になっているのか、デザイン全てにロジックが伴った方が多くの方に伝わると思っていて。そのロジックをつくるにあたって改めて町の歴史を勉強しなきゃいけなくなるんです。調べれば調べるほど高校生の時全然知らなかった町の歴史を今この仕事をしているからこそ知ることができる。このデザインの仕事をしていないと気付けなかった町の良さなんじゃないかなとすごく思っています」
―――そういうのって地元にいると当たり前のことだけど、意外と知らないことが多いですよね
「港に漁船がいる景色は僕らからして当たり前だけど、あの船がなんの魚を獲ってくる船かなんて気にしたことがなかった、気仙沼出るまでは。でも帰ってきて船って種類めちゃくちゃあるんですねって改めて知ったり。町の深みみたいなのを知ることによって、簡単に町の文化を途切れさせちゃいけないなと思うんです。ちゃんと繋がってきた歴史があって今があるからこの先も継承していきたいなという想いが出てくるので、だかも町の深みを知れたことで僕自身の地元ですけど、町の文化のファンになったみたいな感覚があるし、そういう意味ではもう少し町に貢献したいな、頑張らなきゃという思いはあります。」
―――志田さんが今後、アートの力でやってみたいことは何かありますか?
「デザインがもっと町の力になれると思っていて、気仙沼にデザイナーさんはもっといるので、そういう人たちの作品が見れたり、市内の事業者さんたちがデザインを頼みたいときに誰に頼むかわからないけどとりあえず打診できるような、リアルな場所が必要だと最近思い始めています。ギャラリー兼事業者さんとデザイナーさんが交われるような、そういう場所を今後作っていきたいなと思っています。このブリュワリーから10分くらいのところに津波の被害を免れていて、免れているからこそ昭和の残り香がする渋い街並みのエリアが残っていて、アンダーグラウンドの匂いがするのでそこをリノベーションしながら、徐々に町のニーズとデザイナーが掛け合わせられるようなスポットにしていきたいです。」
志田さんデザインのクラフトビール、オンラインでも注文可能ですが、ぜひ現地に足を運んでタップから注がれる生のクラフトビールを味わってみませんか!? 詳しくは公式サイトをご覧ください。
◆BLACK TIDE BREWING公式サイト