福島県相馬市、親子で楽しむ釣りイベントと漁師の思い
今回のテーマは、「福島県相馬市、親子で楽しむ釣りイベントと漁師の思い」
8月に福島県相馬市で行われた復興庁主催のイベント、「福島のおさかなの魅力がたくさん!親子ヒラメ釣り大会&おさかな祭りin相馬!!」のレポートと相馬の若手漁師へのインタビューをお伝えしました。
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2部構成で行われたこのイベント、1部は「親子ヒラメ釣り大会」。12組31名の親子がヒラメの船釣りに挑戦。2部は「みんなで楽しもう!おさかな祭り」。釣り大会の表彰式に始まり、地元の漁師さんや小島よしおさんも参加したトークショー、ヒラメさばき方教室や、水ヨーヨー釣り、おさかなタッチプールなどの縁日イベントなども実施されました。
大人に交って76センチのヒラメを釣り上げたコウタ君、同じく75センチのヒラメに加えクロソイとマゴチをつりあげたワタル君たちをはじめ、釣果は上々で下船後は喜びの声が溢れていました。
トークショーにはゲストの小島よしおさんのほか、相馬双葉漁業協同組合 青壮年部 部長の石橋正裕さん、それに福島県水産海洋研究センター放射能研究部 主任研究員、榎本昌宏さんも参加。楽しくマジメに福島の海のことを語りあいました。
まずはそのトークショー一場面です。
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小島)この美味しいお魚を捕るためにどんなことをやっているんでしょうか。
石橋)色んな人と情報共有しながら、こういう獲り方した方がいいんじゃないかと漁師間で切磋琢磨し勉強しながら獲っています。あとは実際に自分で食べてみる。食べて美味しいから獲りたくなるんですよね。震災後に変わってきたことなんですが、実際に食べる機会が多くなったんです。あんなに美味しい魚がいるのに、もうちょっとPR足りないよねと。
小島)どんどん広げていこうよ! ということを、自信をもって言えるようになったんですね。他にもやられていることがあるみたいですね。
石橋)今、福島県では30センチ未満のヒラメは獲らないということをしていますが、相馬双葉漁協では50センチ以上のヒラメしか獲らないんです。小さいものは放流し資源を確保しながら漁を行っています。
小島)半永久的にずっと釣りを楽しめるようにという思いもありますよね。東日本大震災があって、その後の福島の漁業の状況だったり、魚介類の安全性、こちらについては、今どういう風になっているんでしょうか?
石橋)震災直後に原発事故が起きてしまいまして、放射能検査、何回も何回も繰り返し50ベクレル以下のものを出荷するようにしているんです、国の基準が100ベクレル以下なんです。そこをあえて50ベクレルにし、さらに厳しい基準を設けてそれをクリアした魚介類しか出荷していないんです。
司会)榎本さんはいかがですか?
榎本)震災以降、福島県産の食べ物、農産物、畜産物、水産物、県の方でもモニタリングの検査をやっております。いま現在ですと、福島県内で水産物ですと週に100〜200検体くらいの魚を測っております。それがほとんど「n.d.」と言って放射線のセシウムの数値が出てこない、測定しきれないくらい少ない数値です。それで食品としての安全性を確保し、そこにプラスして漁協さんが独自に検査をしまして、国の食品の基準としては100ベクレル以下ですが、その半分、50ベクレル以下というのを自主基準としまして、50ベクレルは超えていないことを確認して出荷することになっています。
小島)徹底されているんですね。
榎本)福島県産の魚は、安心して食べていただけると思います。
楽しい縁日イベントに加え、こうした福島の漁業を取り巻く現状や、この海域であがる常磐ものの魅力をテーマにしたトークショーが、相馬市民の台所、相馬復興市民市場「浜の駅松川浦」で行われました。
トークショーに参加された相馬双葉漁業協同組合 青壮年部 部長の石橋正裕さんは、現在43歳。代々続く相馬漁師の4代目。震災と原発事故のあとも、漁師町・相馬の伝統を守り続けてきたお一人です。
イベントのあと、そんな石橋さんにお話を伺いました。
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高校卒業してすぐに(船に)乗りました。幼い頃に初めて親父の漁について行ったら、漁師の仕事ってカッコイイと思ったんですよね。これはもう漁師になるしかないよねと。こんなにカッコイイ仕事はないよねと思って、物心ついた頃から漁師になりたいと思っていました。漁師になるのが当然だし、漁師がすべてとしか感じなかったですよね。
震災直後、船は無事助かったんですが漁具が壊滅状態で、原発事故も起きてしまい、漁師をこのまま続けられるのかな? とか、福島の漁が終わってしまうのかな? もしくは、どっかの地域に行って船をやるしかないのかな? という絶望感はありましたね。
最初は試験操業対象魚種が3〜4種類と限定でいる中、実際に自分たちがとってきて、PR活動ということで実際にお客さんと直接触れ合う機会があって、「福島の魚、どうですか?」と聞くと、やっぱり半分くらいのお客さんは、「福島の魚は要らない。食べない」とか。小さなお子さんに「試食どうですか?」と言ったら、「小さな子供には食べさせないでください」と言われたことがすごいショックで、自分たちはこの魚を捕り続けていいのだろうか? という迷いのなか、PR活動を積み重ねて、福島の魚は安全、安心なんだ、こんなに美味しい魚なんだということを伝え続けて、それでだんだんお客さんにもそれが伝わってきて買ってくれるようになる。そうなるとやっぱり自分たちも獲ってくるという気持ちにもなるし、自分たちが間違いではなかったんだというのを感じました。
震災後は、震災前に獲れていた魚が全く獲れなくなっていました。海の温度なのか分からないけど、小女子とか獲れないものがでてきた。どうしようという中で、新たにトラフグだったり太刀魚だったり色んな魚種が増えてきて、今まで獲れなかったのをカバーしながら漁をやっている感じはしています。トラフグは震災前、漁に行ったら一日1匹〜2匹だったのが、今は1日数十匹〜100匹、獲れるし、サイズも大きいんです。それを食べたら、こんなに魚があるんだ! と漁師ながらも気づいたんです。福島の「福」にトラフグの「とら」で“福とら”でPRしていこうと思っています。
(写真/相馬市観光協会提供)
常磐もののニューフェイス、“福とら”。相馬市では、これが将来的に“西の下関、東の相馬”として全国的な名産地となるよう、今後積極的にPRしていくという事です。食べてみたいですね。
一方、福島第一原発にたまり続ける、トリチウムを含む処理水について、東京電力は、トリチウム濃度を国の基準の40分の1未満となるよう海水で希釈、新設する海底トンネルを通して、沖合約1キロの地点から放出する計画を示し、7月22日に原子力委員会は、この計画を認めました。
一方で、地元では風評被害を懸念する声も根強くあります。そんな福島の海を生業の場にしてきた漁師の一人でもある石橋さんに、率直に今の思いを聞いてみました。
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どうなるかは未定ですが、もし放出されるなら風評被害は出ると思うんです。自分たちが風評被害に対してやるべきことというのは、自身を持って検査している、安心、安全な上に、これだけ美味しいんですよ! と伝えていかないといけないんですよね。どうこう言われようが自分たちがやることはそれ一つしかない。そういうことしかできないのかなと思います。震災の時、あの津波を実際にこの船で乗り越えたということは、それだけ自分たちの船だったり、漁業を大切にしているんですよね。これからどうなるかもわからないけど、前向きに、獲ることしかできないしか考えられないし、やっぱりそれだけ相馬の海というのが魅力的なんですよね。漁師自身もその魅力に憑りつかれている。自信もあるし。福島の、相馬の魚は美味しいんだよ! ということを言い続けたいです。
お話を伺った石橋さんをはじめ、相馬では若手の漁師たちが活躍し、後継者も途切れることなく育っているという。まさにそれは福島の漁業が持つポテンシャルや魅力の証しでもあります。
“常磐もの”の美味しさはこれまで何度もお伝えしてきましたが、その都度お伝えしているように、福島県では、徹底した検査と管理体制のもと、漁協、漁連、流通業者、県が一丸となって、安心安全な海産物の出荷に取り組んでいます。ぜひそのことを理解して頂いて、美味しくて“安心安全な常磐もの”を、たくさんの方に味わって頂きたいと思います。
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【プレゼントのお知らせ】
今回は、相馬市民の台所、相馬復興市民市場「浜の駅松川浦」でチョイスした、常磐ものの詰合せ・・・「相馬のお魚セット」を3名様にプレゼントします。
ご希望の方は、まず動画をご覧になってキーワードをチェックしてください。動画の中で、相馬漁師の石橋さんに、“福島の海の良いところは?”という質問をしていますが、その答えがキーワードです。そのキーワードを書いて、メールフォームからご応募ください。
※季節ものですのでお届けする内容は変更になるかもしれません。ご了承ください。