相次ぐ豪雨災害に、“クルマの備え”と“クルマの支援”を
「記録的な豪雨」という言葉を、連日のように聞いた今年の夏。被災した地域では、いまも復旧作業が続き、これからは台風シーズンということで引き続き備えと警戒が必要です。
水害に対する「備え」という意味では、私達の日常の“足”をどう備えるかがとても重要となります。それが「クルマ」です。車を失った被災者は移動手段が絶たれるだけでなく、被災した瓦礫の撤去ができなかったり、被災後の生活再建にまで大きな影響を及ぼします。
そこで今週は、もし、運転中に豪雨災害に遭遇したらどうしたらいいのか。そして、万が一クルマを失ってしまった場合の支援について、JAF=日本自動車連盟と、日本カーシェアリング協会にそれぞれ伺います。
実は今、この2つの団体はより支援を広げるために、クラウドファンディングによる寄付も募っているということで、その情報もお伝えします。
JAF山梨支部、立川佑菜さんに伺いました。
―――各地で豪雨災害が発生していますが、車の備えを教えてください
「まず普段の備えとして、日ごろからお住まいの地域のハザードマップを確認しておくことや、避難経路、注意喚起看板や標識などを事前に調べておくことが大切です。「水没注意」「冠水注意」の注意喚起看板は普段からチェックしておくといざという時に安心です。
―――走行中大雨に見舞われたら、どう対応すればよいですか?
「1つ目、まずは速度を押さえてください。高速走行では路面とタイヤの間に水の膜ができてブレーキやハンドルが効きにくくなるハイドロプレーニング現象が起きやすいので、さらに注意が必要となります。
2つ目は車間距離を開けることです。路面が濡れている場所は制動距離が伸びることから、車間距離をあけて早めのブレーキを心がけることが安全運転につながります。
3つ目はライトをオンにすること。雨の時は視界が悪くなるので、前方の視界確保のためにも昼間でもヘッドライト点灯させましょう。これらのことが水害の備えで大切なのでお気をつけください。」
―――もし運転していて水が道路に溜まり始めたとき、どういうことに気をつけて運転すれば良いですか?
「自動車はある程度の水の深さに耐えられるように設計されています。車種によって異なるんですが、一般的に走行可能とされている浸水は、乗用車であればドアの下、自動車の床面が浸からない程度になります。また冠水してしまった車両はキースイッチが切れた状態でもバッテリーが接続されていれば、常にバッテリーの電流が流れている状態。そのため電気系統の漏電で火災が発生する可能性などがあるので、冠水した車両についてはエンジンをかけないこと、いきなりエンジンキーを回さない、エンジンボタンを押さないように気をつけることが大切です。」
―――万が一運転中に水かさが増して、車内に水が入って水没してしまった場合に備えて、何を持っていればいいですか?
「水没車から脱出を試みる場合に一番大事なのが、落ち着いて行動することです。まずはエンジンを止めます。シートベルトを外します。水圧でドアが開かない場合は窓を開けて脱出を試みます。スイッチで開閉するパワーウインドウの場合は水による電気系統トラブルで窓も開かない可能性がありますので、窓が開かない場合については脱出用のハンマーを使用して脱出を試みます。これらすべてを試みても脱出が不可能な場合や、ハンマーを持っていなかった場合は、次第に車内に水が入ってきてしまいます。外の水位との差が小さくなった時に、圧力の差が縮まってドアにかかる水圧が小さくなるので、ドアが開けやすくなります。ただこの脱出方法はかなり危険が伴うので、先程言った脱出用ハンマーや、シートベルトカッターを備えておくといざという時に役立ちます。」
大雨のときの対処については、JAFのサイト「台風・大雨のクルマに関する注意点」というページで様々なテスト動画とともに詳細が公開されていますので参考にしてみてください。
「台風・大雨時のクルマに関する注意点」JAF公式サイトはコチラ
―――現在、クラウドファンディングで支援を呼びかけ中ですが、『「被災時に車を無償で借りられる」明日の災害に備える仕組みにご支援を』。これも災害現場で活動する中でアイディアが生まれたんですか?
「私たちJAFが災害時にできる事は、道路復旧のために被災車両を排除することであり、これは被災したマイナスの状態を0にすること。しかし車を失った被災者への支援までできないかという想いから、災害時に車を無償で貸し出す日本カーシェアリング協会とパートナーシップを結んで、この活動を支援するクラウドファンディングプロジェクトを立ち上げました。
現在日本カーシェアリング協会は寄付で集まった241台の車を保有していて、災害時に車を無償で貸し出す支援活動には年間1900万円の費用がかかっているといいます。そこで今回のクラウドファンディングを達成することができれば、災害時に車を無償で貸し出す活動の資金を増やすことができます。そうすることでこの活動が全国に波及して、いつどこで大きな災害が起こっても、誰もが車で困らない体制を作ることができるようになります。どうか他人事ではなく、一度クラウドファンディングのプロジェクトページに目を通してほしいと思います。」
JAFが日本カーシェアリング協会とパートナーシップを組んで寄付を募っているクラウドファンディング。
こちらは9月8日まで募集しています。詳しくはこちら
日本カーシェアリング協会 石渡賢大さんにも伺いました。
―――まず日本カーシェアリング協会の発足の経緯を教えてください
「私たちは、東日本大震災が発足のきっかけです。宮城県石巻市は津波で多くの車が流され、1200万台あった車のうち6万台程度が被災されたとデータが残っています。そんな中で、車を寄付で集めて仮設住宅に1台置いて、被災したみんなでシェアしましょう、カーシェアリングしましょうという提案をはじめた団体です。日本カーシェアリング協会は、自然災害が起きた佐賀県、熊本県、2018年は岡山県、愛媛県、今まさに対応しているのが宮城県、新潟県など、日本全国で災害が起きると動いています。今まで寄付をいただいたお車は、のべ635台になっています。」
―――寄付で車を確保できることが、被災された方にとってものすごい助けになっていますよね
「おっしゃるとおりで、車を被災してしまうと、特に被災地は車が必要な地域が多いので、本当に生活を前に進めるためのはじめの1歩を進められないんですね。車を貸し出すと笑顔になるんです。「これでやっと前に進めます」「やっと前にいける、道が開ける」といつも言っていただけて、生活再建の援助になっている事を、現場で感じます。」
―――この夏の活動についても教えてください。各地で豪雨の被害がありますが、車の被害はどのくらいありますか?
「7月に発生した宮城県の水害では、車の無償貸し出しを宮城県大崎市でやっていて、我々のところにクルマを貸してほしいと支援の要請は8月8日時点で153件来ています。近所の車屋さんによると、1000台は間違いなく水没しているだろうと伺っています。また153件のうち全てが乗用車ではなく、片付け用の軽トラックを貸して欲しい方もいらっしゃるので、随時募集しながら早く皆さんの生活が前に進むように集めていかなければいけないと思っているところです。いま特に必要な車種は、軽自動車です。被災地は道が悪かったり細いところもあるので、大きい車だと動けないところもあったりするのと、軽自動車は寄付されたあとの名義変更や貸し出しの準備が早く進むので、軽乗用車が一番足りていない状況です。」
―――そんな中で今回のクラウドファンディング、改めて石渡さんの想いをお聞かせください。
「車を無償で貸し出しをするので、支援をすればするほどお金がかかるんですね。ですがクラウドファンディングの中でまとまったお金があることで、助成金などを待たずにすぐに支援の決断ができるんです。車を寄付するのはなかなか難しくても、クラウドファンディングを通じて被災者の生活を守っていくと言うところに、協力いただけると本当に我々としても心強いと思っています。」
JAFと日本カーシェアリング協会によるクラウドファンディング
『「被災時に車を無償で借りられる」明日の災害に備える仕組みにご支援を』
目標金額300万円。9月8日(木) 23:00まで受け付けています。
日本カーシェアリング協会の活動。
もう使わないクルマがあって寄付したい方、ぜひ日本カーシェアリング協会にお問い合わせください。また、車やお金の支援ではなく、ボランティアとして被災地までクルマを運転して運ぶ「架け橋ドライバー」という支援の方法もあります。車を運んだら、その地域で美味しいものを食べてお金を落とすなんて支援にもつながります。
日本カーシェアリング協会