陸前高田を花火の町に〜三陸花火大会の仕掛け人・浅間勝洋さん
今回のテーマは、「陸前高田を花火の町に〜三陸花火大会の仕掛け人・浅間勝洋さん」。
この「三陸花火」は、2020年秋の初回に約1万発が打ち上げられ、去年は1万6千発。コロナ禍で全国各地の花火大会が自粛や中止となる中、“国内最大級”の規模で開催され、注目を集めました。実行委員長を務めるのが、浅間勝洋さん、41歳。震災後に陸前高田に移り住んだ“移住者”でもあります。
今年も4月29日に「三陸花火大会」が、そして10月8日に「三陸花火競技大会」が開催となりますが、陸前高田が全国に誇るこの新名物の開催にいたるまでの経緯、そして想いとは。
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東日本大震災による津波で甚大な被害を受けた陸前高田市、中心市街地の大部分をかさ上げするという大規模な復興事業が進み、商店や住居、公園なども増えつつあります。一方で課題となっているのが、震災後に減少した人口をどう戻すか。事業の再開、創生と共に、UIターン、交流人口を増やす取り組みも進んでいます。その取り組みの旗印として注目を集めている、“にぎわい創出”の重要コンテンツの一つが、この「三陸花火大会」です。
(2021年冬に撮影した陸前高田の町並み)
浅間さんのお話の前に、去年1月に放送した、創業から200年を超える歴史を持つ、陸前高田の老舗醸造店、「八木澤商店」の9代目代表、河野通洋さんのお話です。河野さんは、壊滅的な被害を受けた家業の再開だけでなく、震災後に“まちづくり会社”を立ち上げて、陸前高田に人を戻す、新たに呼び込む取り組みを続け、復興に尽力してきたキーマンのお一人です。
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河野)今、若手の陸前高田の起業家というか団体のメンバーがパラスポーツの誘致をしようとしています。パラスポーツとeスポーツを融合させたものの誘致をしようということで、陸前高田市も一緒になってブラインドサッカーや車いすバスケットとか、そういう競技の合宿や大会を市として受け入れます!としていて。
高橋)そこにeスポーツも入ってくるのはスゴイですね。
河野)スゴイですねって言うほど、自分はeスポーツを分かっていなくて(笑)“テレビゲームだろ”って言ったら、“わぁもう、ミチヒロさんダメだね。おっさんで”って言われました。
高橋)そういうのを推進している人たちは若い人が多いんですね。何歳くらいの方が多いんですか?
河野)30代、20代のメンバーですね。Iターン、Uターンのメンバーです。そのメンバーが日本最大の花火大会を開催したり。
高橋)そう、これたぶん、知らなかった方多いと思うんですが、日本最大の花火大会が行われたんですよね!
河野)陸前高田でやったんです!“日本最大”というのは、他がやってないからというのもあるんですけどね。
高橋)でも、すごい数あがったんですよね。
河野)そうですね。1万発以上上がったんで規模的にすごかったです。そのメンバーも震災後、陸前高田のために何とかしよう!と入ってきて、NPOを立ち上げたりしたメンバーなんです。
高橋)被災地って人口流出の問題や高齢化の問題があるじゃないですか。もちろん、陸前高田にもあると思うんですが、そんな中で、若いチカラが動いているってものすごいパワーになるんじゃないですか?
河野)自分も若手の代表でいたつもりなんですが。30代の時は若手の代表でいられたんですけど、ガッツリおっさん扱いされているので、ちょっと寂しいなと思って(笑)。
2011年の震災直後から、“陸前高田を世界に誇れる町にする!”と断言して、“若手の代表”として取り組んできた河野さん。2020年には「八木澤商店」創業の地に、発酵パーク「CAMOCY」をオープンさせ、翌年には本社工場も完成しましたが、なによりもこうして、自分よりも若い世代が次々陸前高田で活躍している様子を、“寂しい”と言いながら、じつに嬉しそうに語っていました。
このとき話に出ていた、花火大会を仕掛けた人物が、浅間勝洋さんです。
先月、JFN各局で放送された、「KIKI-TABI 2 Thousand Milesスペシャル。それぞれの復興11年〜移住者たちが東北に刻む新たな一歩〜」で、パーソナリティの井門宗之さんがインタビューしました。まずは「三陸花火大会」、開催にいたる経緯から。
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浅間)昨年が震災から10年の年になってたんで、その年から、毎年人が集まるきっかけになるような大きなイベントをやりたいと、前から思っていて、ある花火師さんとの出会いがきっかけで、「この場所は、花火大会にも最高の場所だね!」っていうところから、考え始めたっていうとこですかね。
井門)なるほど、花火大会競技大会はどのくらいの数の花火が上がったんですか?
浅間)1万6000発くらいだったかな。
井門)スゴイ規模ですよね。でも陸前高田の方々もその花火を見て思うところあったでしょうね。
浅間)そうですね。でもすごく嬉しいのは、純粋に楽しんでいる方々が凄く多くて、今までは震災後に花火が打ちあがると「追悼」とか「鎮魂」みたいな意味合いで、どこか寂しそうに見ている方がいたんですけれども、僕らはそういう花火ではなくて、純粋に楽しめる花火大会を作りたいと思ってたので、そういう意味では、笑顔が多い花火大会で良かったなって思っていますね。
井門)その様子をご覧になって浅間さんいかがでしたか?
浅間)やってよかったとは、当然思ったんですけど、でも、それと同時に、“これ、続けなきゃなぁ”っていう、むしろ次へのプレッシャーみたいな(笑)
井門)でも陸前高田、本当に町並みも変わって、新しいものも色々できて、実はこの花火大会、町のどこからでも見えるんじゃないかっていうくらいの規模感なんですけれども、僕らが今、座っている場所は公園でグランドがあるところなんですが、この近くで打ちあがるんですよね?
浅間)そうです。この目の前の海の方から打ちあがるんですね。打ち上げ場所も広大ですし、観覧場所も広大なんです。川とかだと、前後の距離があまり取れなくて、ここの花火大会の会場は一番間近で見ることもできるし、結構、離れたところから全体に見ることもできて、たぶん、一回だけじゃなくて、2度、3度来て色んな席で色んな見方を楽しめる、そういった場所です。
井門)でも浅間さんも、陸前高田、元々地元って訳じゃないんですって?
浅間)そうですね。僕は、2019年の12月に神奈川県から移住してきました。ただ父親の実家が陸前高田なので、震災直後からずっとボランティアとかで通い詰めていて、いつかこちらで何かをしたいなという思いはずっとあって、それで移住してきました。
井門)そうですか。でもここで花火大会を開くということで、最初は反対の声なんかはあったんですか?
浅間)反対というか、心配する声があったというか、“どんなのやるの?”、“大した事ないでしょ?”みたいな声もありました。じつは最初は4000発でやる予定だったんですよ。ただ花火師さんと話をしたら、いま(コロナ禍で)花火業界も大変で、全然、花火が打ち上げられないっていう。それで、できる限り一発でも多く打ち上げられればということで、クラウドファンディングやったりとか、色んな形で資金を集めてやろうとしてたら、いつの間にか1万6000発になっていたという(笑)。花火師さんもずっとボランティアで通っていた方で、ちょっとした花火を打ち上げていたりしていたんですけれども、この地で花火大会をちゃんとやって、多くの方に喜んでもらうということをしたいと思っていたみたいで。出会って数分で「やりましょう!」という話になって。
(打上会場となる「高田松原運動公園」)
お父さんの実家があった縁で、震災後、ボランティアで通っていた陸前高田。浅間さんは2019年の12月に、神奈川県から陸前高田へ移住。レンタカー会社を立ち上げるなど、ベンチャー起業家として陸前高田での生活を始めました。そして同じくボランティアで陸前高田に通っていた花火師さんとの出会いをきっかけに、2020年秋、コロナ禍で開催が危ぶまれるなか、この年では国内最大級となる花火大会を開催。約1万発の花火の中を舞うドローン映像、定点カメラの映像など、自分の好きなアングルに切り替えられる、マルチアングルLIVE配信を行ないました。そして去年秋は、さらにスケールアップした花火エンターテイメントショーに加え、全国23社が腕を競い合う競技部門も追加され、「三陸花火競技大会」として、1万6千発を打ち上げました。
そして今年は春と秋、ふたつの花火大会が開催となります。
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井門)今年は何月にどれくらいの規模で開催予定ですか?
浅間)今年は、4月29日と10月8日に開催します。“1万発以上”という話し方をしているんですけれども、僕らの場合は大きな玉がたくさん上がっているという、そこの自慢というか、他よりもすごいんだよ!というのを見ていただきたいので、まぁ昨年を上回る花火を!というのが基本的な考え方ですね。
井門)これまで2回開催して、地元の今まで陸前高田を盛り上げようとしてきて頂いた方々のお話というか、感想はいかがですか?
浅間)そうですね。第1回目は“一体どんな花火大会なんだろう”というところから始まって、2回やって、“これだったらもっと一緒に、ことができるね”とか、そういう話が出始めているんで、たぶん、花火だけじゃなくて色んな魅力もセットになって、さらにさらに多くの方にこの町の魅力が伝わると思うので、どんどん地域の人たちと、僕は花火大会を頑張ってですね、地域の人たちの色んなものと一緒に組み合わせて、陸前高田の魅力を伝えていけたらいいなと思いますね。
井門)震災から11年ですから、もちろん若い世代、30代とか、20代とかで町を良くしたいと思われている方々もいらっしゃる訳ですもんね。そういった方々にもっと熱を伝えていくというお仕事なんですかね。きっと。
浅間)まずは僕らが熱量高く、やっていかないとダメだと思うので、今後もどんどんどんどん、年々、熱量を増していくくらいのつもりで、やっていこうと思います。
「陸前高田を花火の町に〜三陸花火大会の仕掛け人・浅間勝洋さん」、聞き手は井門宗之さんでした。
「三陸花火大会」は4月29日(金・祝)、「三陸花火競技大会」は10月8日(土)に開催されます。広大な会場に打ちあがる大輪の花火。そしてフードコートでは広田湾の海の幸など、地元の美味しいものが勢ぞろい。ステージイベントなどエンターテイメントも充実した内容となっています。
東北新幹線も無事に運行を再開しましたので、ぜひ多くの方に足を運んで頂きたいと思います。
三陸花火大会オフィシャルサイト
三陸花火競技大会2021より (※音声なし)