2年連続の震度6強、福島県相馬市の今
今回のテーマは、「2年連続の震度6強、福島県相馬市の今」。
3月16日深夜に発生した今回の地震では、福島県と宮城県で最大震度6強を観測、4人の方が亡くなり、100名以上の方が負傷する被害が出たほか、宮城県の石巻港では30センチ、仙台港や、福島県相馬市で20センチの津波が到達。東北新幹線が脱線し、東京電力管内と東北電力管内で200万戸以上が停電するなど、ライフラインも大きく乱れました。
そしてこのエリアでは約1年前、2021年2月13日深夜にも地震が発生しましたが、今回の地震は、このときと地震の発生した場所や震源の深さ、規模が似ていて、最も激しく揺れた地区もほぼ同じでした。このうち福島県相馬市と国見町、宮城県蔵王町では、2年続けて震度6強を観測しています。
この2年続けて震度6強を観測した地域のうち、今回は福島県相馬市を訪ねました。あれから3週間後の現状、そして課題とは。
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「昨年2月にも、同じような地震があったわけなんですけども、それよりも被害が大きいというのが第一印象です。東日本大震災のような津波による被害は有りませんでしたが、全戸断水、それから停電が発生しまして、市民生活に大きな被害をもたらしました。停電については翌日全戸通電したんですが、水の方が思いのほか重症と言いますか、実際1週間後の3月23日に全戸通水、そして安全宣言がなされたというような状況でございます。いま現在、被害の概要と言いますか、全体的にどういう状況なのかというのを調査中でありまして、やはり被災されている方が色んな支援の手を求めていると思いますが、その前提条件となりますのが「罹災証明」ですので、その調査を迅速に進めることが、いま最大の課題であります。見込みでは、昨年は約4千件の申請がありましたが、今回はその1.2倍〜1.5倍の5〜6千件に上るのでは?と見込んでおりまして、その調査も当然増えてくるということで、マンパワーの確保というのが非常に重要な課題になっております。全国27の自治体の皆さんに、市長が直筆の手紙を書き、人の派遣、調査員をお願いして、いま続々と全国から調査員、職員の方が手を挙げていただいて、4月の上旬くらいからほぼ充足した形で調査が進められるではと思っております。道路等のインフラについては、数百件に上る被害状況というのを把握しておりますが、その部分は仮復旧という形で迅速に復旧を進め、本復旧に繋げていきたいと思っております。それからボランティアセンターを社会福祉協議会の方で立ち上げていただいて、特に片付けですね。やはり一人暮らしの高齢者は、片付けも難しいし、瓦礫の搬出も難しい、そういった部分を中心に、ニーズを確認して集まったボランティアの方々を派遣していく体制をとっています。」
まずは相馬市の佐藤栄喜総務部長に、相馬市の現状を伺いました。
去年の地震よりも被害の規模が大きいと見込む。今は他県から人材の協力を得てその被害状況の把握に努めている段階。ライフラインは復旧済み。道路などのインフラも仮復旧が進んでいる。
ボランティアセンターも開設。ただコロナ禍の影響もあって人手は足りていない、ということでした。
東日本大震災、2019年には台風と豪雨による被害もありました。そしてさらに追い打ちをかける、2年連続の震度6強。この11年の間に何度も過酷な状況が続いている相馬市ですが、景勝地・松川浦で旅館「かんのや」を営む管野拓雄さんのお話です。
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「昔からウチは宿泊客も大事ですけれども、地元の方々の会合、会食で使っていただく方が多かったんです。ですから震災後も、宿泊を伴わないお客さんには利用していただいて、このまま徐々に持ち直すのかな?と思ったところに、コロナ、台風と、そこに追い打ちをかける、この地震ですから、2年続けての。去年の時は被害的には見積もりで2千万円くらいで済みました。ヒビが入ったのと、ボイラーの配管が壊れたのと。ただ2千万円まで出せなかったので、保険金で重要なところは直して、結局、足りなくなって手出しになった状態ですね。4月には半分、稼働するようになりました。それで1月までは「県民割り」のお客さまが増えてきていたんで、やっと気合を入れて働けるなと思っていたんですが、(コロナの)第6波で、そこからお客さんがさっぱりでしたからね。それで、2年続けての地震ですから、“またか”と。フロントの後ろの休憩室で寝ていたんですけども、最初の地震で飛び起きて。その時に立ち上がったから良かったんですね。その2分後に、次、大きなのが来た時に、タンスが布団の上に倒れてきたんで、間一髪と言えば、間一髪。揺れがあまりにも大きかったので被害もあるだろうなと思ってましたが、直接4階まで上がって、客室を見た時は、もう茫然自失ですよ。言葉も出なくて、立ち尽くすのみでしたね。これじゃあ、もう・・・一瞬頭をよぎりましたよね「廃業」という言葉が。
ずっとコロナで収入もないし、グループ補助金、出るだろうなと思いましたが、それでも、この歳になったら“どうしよう・・・”と。それで直してもお客さんが来てくれるか、息子にこのまま渡していいのか、その葛藤は今でも続いています。コロナさえ落ち着いて“直したらお客さんが来る”というのが予測できるようになれば、気持ちも晴れるんですが。はやく明るい気持ちで働けるような状況になればなと。
もうこの歳になったら他の仕事もできないし、今朝もお客様から、“5年前、同級会で利用した者です”と連絡がきて、“いつ頃直りますか?”と。“いや、ちょっと先が見えないんです”と沈んだ声で言ったら、“あの時のメンバーで8月頃にまたやりたい、応援してますから”。と電話をいただいたんです。やはり待っていてくれる人もいるんだし、別の仕事もできないし、改めて息子と負債をかかえながらも、頑張っていくしかないのかなと。やっぱりお客さんと会話をしながら、コミュニケーションを取りながら、人との繋がりを持てる商売、好きですから。やはり立ち直るしかないんだろうなと、ちょっと前を向く気持ちにはなっています。今朝、電話をいただいた時、涙が出そうでしたもの。」
去年の地震のあと、保険金やグループ補助金を活用しながら、なんとか事業を再開したものの、コロナ禍が事業を難しくしている状況は続いている、という、松川浦の旅館「かんのや」の3代目、管野拓雄さん。
お客さんからの励ましもあって、今は事業再開へ向けて歩き出そうという気持ちになっている、とお話しして下さいましたが、相馬市では今、2年続いた地震による“多重債務問題”が重くのしかかり、廃業を決める事業者も多いのではないかと言われています。
一方、営業再開がままならない事業者も多いなか、地震から4日後に営業を再開したのが、2020年に開業した松川浦の新しいランドマーク、「浜の駅松川浦」です。店長の常世田隆さんにお話しを伺いました。
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「去年は、店内はさほどの被害はなかったんです。若干、内壁が崩れたりとか商品は倒れたりしましたが、3日目に営業を再開した。逆に皆さんおっしゃるのは、3.11よりも、去年の2月13日よりも今回が一番揺れが酷かったと。実際に浜の駅の店内もガッツリ内壁が崩れたところがありまして、それは急いで直したんですが、水がしばらく出なかったんです。停電も半日くらいあって。水が出ないことには開けられないと思って、臨時休業は今回は3日間。ただ周辺の被害というのも知っていましたし、道路がかなり傷んでいて来るのに大丈夫かな?というのもありましたから、営業再開するに当たっては、現状こうですと。船も休みだったので魚も入ってこない可能性もあった、様々な悪い条件というのかな、営業するにあたっては好ましくない条件があったんですが、ここは相馬市の復興のシンボル的なお店なので、立ち止まっているわけにもいかないし、悪い条件はいっぱいあるけども、営業を再開しますと、3日間休んだあと、4日目に再開しました。
やっぱり、美味いもの食べている時って幸せじゃないですか。どんなに辛い環境にあっても、美味いもの食べて幸せな気持ちになれればいいんじゃないのかなと。コロナも2年以上になりますよね。だから・・・リバウンドも気になりますけれども・・・そろそろ美味しいものを食べに相馬に来ていただけたらなと思います。手前味噌ではなく、「浜の台所くぁせっと」の地元の魚を使った海のもののうまさと言ったら、たぶん、他ではこの値段でこのボリュームのモノを出してくれるというのは、無いんじゃないかなと。とにかく漁港がここから200メートルなんですよね。極端に言えば、水揚げされて仲買人さんが競りをして買った魚をそのまますぐに持ってくるということもできるんですよ。どこよりも新鮮な魚が並ぶということと、物流コストやマージンがほとんどかからないで店に並ぶわけですから、安くていい魚が並ぶわけですよね。それを買わずに、どうするの?っていう。季節によってですが、たとえばアンコウの「唐揚げ」と「とも和え」と「どぶ汁」がセットになった定食があるんですが、これはもう絶品ですね。こんなうまい物あるの?っていうくらい。とくに「どぶ汁」の美味さ。本当に美味くてですね、内緒にしといてもいいのかもしれないけど(笑)、それくらい、美味いものがあるんですね。あと相馬の地元の魚が全国に流通しているわけではないので、初めてみる魚も並んでいると思うんです。いま浜の駅では「お魚カード」を作っているんですが、棚に並べた魚にQRコードが付いていて、携帯でピッとやると、魚の紹介、さばき方、レシピがズラっと出てくるページに飛ぶんですね。それで遊んでいただくというか、買い物を楽しんでほしいと思いますね。」
(「地魚丼」。海鮮丼、漬けダレで漬け丼、出汁で出汁茶漬けと、3つの味が楽しめる)
「浜の駅松川浦」
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「今回の震災、沿岸部ですね、特に旅館や民宿が多いところが被害が大きかったので、再開にこぎつけているお店が少ないと思うのですが、そういった中で、一部再開した報告も受けていますので、そういったところに足を運んでいただくというのが、やはり一番のチカラにもなりますし、ご支援にもなると理解しておりますので、ぜひ、いらしていただいて、お声がけをいただく、そして、何かしらをご購入いただく、そういった事に繋がれば皆さん元気になると思いますので、ぜひ、よろしくお願いしたいと思います。それに加えて、地震被災者を対象とした支援金の口座を今回開催しまして、皆さんの温かいご支援をいただいて参りたいと思っております。
東日本大震災以来、2つの地震、水害そしてコロナ禍、色んな災害に見舞われて市民の気持ちも折れかけております。しかしながら我々、これまでも色々な災害を乗り越えてきたところであるんですけれども、今回も野馬追に代表される、もののふの精神とか、あるいは報徳仕法、そういったもので培われた謹厳実直な市民性というもので、一丸となってそういったものを乗り越えていきたいと思っております。」
相馬市の佐藤栄喜総務部長からのメッセージでした。
いま相馬市では、“県内外かかわらず”ボランティアを募集しています。詳しくは相馬市の社会福祉協議会にお問い合わせをお願いします。
相馬市社会福祉協議会
また被災された方を対象とした支援金(寄付)の受け付けも始まっています。この支援金は「ふるさと納税(ふるさと寄付)」として対応、「ふるさと納税の受領証」が発行されます。
相馬市 令和4年3月16日地震被災者支援金(寄付)の受け付け
そして何より、「浜の駅松川浦」の常世田店長もお話しされていた通り、“相馬の美味しいものを食べに行く”ということも、もちろん支援につながります。
相馬の美味しい海産物が勢ぞろいする「浜の駅松川浦」をはじめ、あさりバターラーメンが絶品の「おいかわ食堂」や、朝採れの完熟いちごが信じられない値段で買えて、いちご狩りも楽しめる「和田観光いちご組合」など、営業を再開しているお店もたくさんあります。
GWはもちろん、これから春夏の行楽の行先の一つに、相馬市を加えて頂けたらと思います。
(おいかわ食堂の「あさりバターラーメン」)
(和田観光いちご組合)
(風光明媚な松川浦)