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21.12.02
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SUPに託す。地元、気仙沼大島への想い


遠浅で透明度の高い、青く透き通った海に、半円形のカーブを描く、白い砂浜・・・。
穏やかな波の音が心地良いこの場所は、NHKの朝ドラ『おかえりモネ』の舞台として注目を集めた「気仙沼大島」です。


気仙沼大島の亀山展望台から見える風景


リアス式海岸が続く三陸の海岸線に、ポッカリと浮かぶこの島。中でも環境省が選定した「快水浴場百選」に選ばれるほどの美しいビーチが「小田の浜海水浴場」です。


今回はこの島で生まれ育ち、震災を機に地元の海でSUP=Stand Up Paddleboardの普及活動に努めている「Oshima Paddle Club」代表・小野寺隆太さんを訪ねました。

―――雲一つない青空の下にきれいな海!透明度がすごく高くて白い砂浜。めちゃめちゃきれいですね。

「島自慢の浜ですし県内でも自慢の海だと思います。今は静かですが夏は端の方まで人で埋まってしまいます。内湾になっているので静かで子供たちも波打ち際で遊べます。」

―――隆太さんはこの島の生まれですか?

「生まれも育ちも大島です。漁業が盛んな島で父と祖父がマグロ船に乗ってました。子供の頃は1年で一か月ぐらいしか家にいなかったのでほとんど漁に出ていた感じ。友達のお父さんもほとんど漁師さんばっかりで。各家で漁業権を持っているので船も各家庭に一艘、二艘、三艘とその漁に応じて持っています。(車みたいな感覚?)ですね。私もウニやアワビを獲るときの船はありますし普段はそれで釣りもします。今はアイナメとか大きいサワラとか釣れます。釣った魚は自分でさばいて近所に配ったり。(各家庭に漁業権があって船が一艘二艘ってなかなかない文化ですね) それが普通なので、当たり前だと思っていました。」


―――震災ではこの大島も大きな被害がありましたが、そういった人と海との距離は震災後、変わってしまいましたか?

「ここでは海は生活の一部なんです。それが震災後に海に近づく人が少なくなって、海の周りも何もなくなって瓦礫だらけになって、その時多くのボランティアや米軍の方、自衛隊の方が来てくださって一緒に瓦礫を片付けて。そこから町を作り上げていくという時に自分たちの手で町をつくっていきたいなと思ったんです。その時ここ小田の浜にも大きなコンクリートの防潮堤が建設予定だったんですがそれは違うなと思って。海を知ることが防災・減災に繋がるし。私が震災で一番助かったのは、おじいさん、おばあさんから小さい頃から津波に対する言い伝えを学んでいたから、すぐに逃げることができた。だから堤防があるから安心とかじゃない。海を知ることや言い伝えを子供たちにも伝えたいし、次の世代にも繋いでいきたいと思ったので今の活動を始めました。」


海と生きる知恵や暮らしを大切にしてきた大島では、震災後、海に抵抗を感じる人が多くなってしまいました。そこで島の人達がまた海に戻ってくるきっかけをつくりたい、とSUPをはじめた隆太さん。この活動は徐々に浸透していきました。

「震災の翌年から少しずつSUPをはじめて、まずは自分たちが遊ぶ姿を見せて、あれなんだろう?と興味を示してもらって。そんな中で小さいお子さんとか自分の子供とかどんどん参加するようになって、教えてほしいという子が増えてきて。教える人が私一人じゃ間に合わないくらいの人数になってきたので、指導者を確保したくて、友達がみんなうまくなってきたのでインストラクターの資格を取って。今では自分たちで教えられるようになって、そこではじめてSUPが地域の観光資源の1つになるんじゃないかと思って「Oshima Paddle Club」をはじめました。」

―――子供たちはじめてSUPやってどんな反応でした?

「夢中になって遊んでましたね、そこで私も初めて笑顔になれて。ずっと縛られていたものが開放されて、これもっとみんなに体験してほしいなと思って嬉しかったですね。本当に海の良さ、そして地元の良さ、砂浜から見る景色と海から見る景色は違うんですよ。そういうのをもっと地元の人に身近に知ってほしいなと思って。」




―――「Oshima Paddle Club」ではどんな体験ができるのでしょうか。

「小田の浜からスタートして。夏はここ海水浴場で人がいっぱいなので岩場の方へまわっていくと、浅いところだと海の底まで見えるんです。海藻や魚、ウニやアワビも、本当に水族館のようにSUPの上から見ることができて。またお客さんも養殖筏が気になるので「あの球はなんですか?」と聞くので「この下にホタテ、ホヤ、牡蠣とかがいる」と説明しながら行くと、普段買ってしか食べられないものがこうやって育つんだな、とか感じてもらえて楽しんでもらってます。
浜の目の前、1.5kmぐらい先に無人島がありますが、その島まで岸沿いに回っていくと意外と近く感じるんです。楽しく行って楽しく帰ってくる。五感を通して感じられるスポーツなので、楽しいの一言ですね。今日みたいに水がきれいだと、写真撮ると空に浮かんでいるみたいに撮れるので。(ウユニ塩湖みたいな感じ?)そうですね。それくらいきれいなところです。
来シーズンは春から楽しめます。春は水がきれい。秋は紅葉を見ながら。やっぱり夏が一番楽しいですね。わざと飛び込んだりして。」




「海って使う人が多くなればなるほど、実は汚れるんじゃなくて、きれいになるんです。だから海水浴シーズンだけきれいにするんじゃなくて一年を通して海を使えば、使った人たちは使う前よりきれいにしてくれるので。それを教えてくれたのがサーフィンなんです。サーファーは一年を通して海に入っててビーチクリーンも定期的に開催して海をきれいにしてくれているので、そういう環境づくりができてくると、一年を通して砂浜もきれいになるのでもっと利用する人が増えてほしいなと思います。」

―――改めてふるさとの海を見てどうですか?

「本当に素晴らしい海だと思います。美味しい海産物もあるし、きれいだし、静かで最高の場所だと思いますこの場所は。もともとは島で静かなところだったけど、橋が出来て観光客が増えてきて。気軽に来て楽しめるようになったので、もっと知ってもらえるんじゃないかなと思っています。」


小野寺隆太さんが代表をつとめる「Oshima Paddle Club」、4月〜11月でSUPを使ったクルージング、フィットネス、フィッシングなど楽しめます。
「Oshima Paddle Club」の公式サイト

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次週のHand in Handは岩手県大船渡からのレポート。大船渡に東北で唯一となる国際基準のBMXコースを作ったある移住者の取り組みをお伝えします。

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