福島フロンティアーズ〜福島の木で薪をつくる! 武田剛さん
全国各地の災害被災地の「今」と、その土地に暮らす人たちの取り組みや、地域の魅力をお伝えしていくプログラム、「Hand in Hand」。今回のテーマは、
「福島フロンティアーズ〜福島の木で薪をつくる! 武田剛さん」
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震災を経て、Uターン・Iターンで福島県に拠点を移した「若き移住者」たちの夢の実現へ向けた取り組み、新たなチャレンジにスポットを当てるシリーズ企画、「福島フロンティアーズ」。今回は、福島県三春町の薪の製造販売カンパニー、「薪商はぜるね」代表の武田剛さんにお話を伺いました。
薪を燃やした時に鳴るパチパチとはぜる音、その音から名前を付けた、「薪商はぜるね」。代表の武田剛さんは、まだ30代半ばですが、東北と関東を中心に、たくさんの取引先を抱える経営者として充実した日々を送っています。環境に関心の高い人たちの間で「薪ストーブ」が注目を集め、さらに昨今のアウトドアブームで「焚き火」を楽しむ人も増えていますが、そうした時流に先駆けて、いち早くこのビジネスにチャレンジしてきた方です。
福島県三春町は、福島県のほぼ中央、阿武隈山地の西のすそ野にある、自然豊かな町です。そんな土地で生まれ育った武田さんですが、薪を扱うご商売に本格的に乗り出したのは、いちど東京へ出て、Uターンしてからでした。そのきっかけは、東日本大震災だったといいます。
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―――敷地内やビニールハウスの中に、たくさんの薪が保管されていますね。
いまこちらにある乾燥しているのは、今年使うものではなく来年使うものになります。木は大体2年乾燥が良しとされているので、冬場に切って春まで待って、夏を二度置いてお客さんのところにお届けできるのが理想です。
―――いま、薪は大人気なんですよね?
そうですね。年々需要は増えていると思います。
―――武田さんはUターン組なんですか?
三春町で生まれ育って、高校卒業までこちらで生活をしていて、専門学校に進学するのに東京に出て、美容師の勉強をして、美容室で5年間働いて、その時に東日本大震災があって。ちょうど僕自身も将来どうしようかなと考えていた時期でした。父親は椎茸の栽培や農業をやっていたんですが、原発の影響で先行きが見えなくなって。そんな時に、父も母も心労だと思うんですけれども、立て続けに2人とも具合が悪くなって倒れてしまったりというのがあって、それで一度、何ができるか分からないけど支えてあげたいという気持ちがあって、帰ってきました。
―――それがいまでは「薪屋さん」になっているわけですが、どういういきさつが?
もともとこの辺の阿武隈山地は「しいたけ原木」の産地で、年間何百万本という原木を全国に届けていたんですけれども、原発事故の影響でそれが全然できなくなってしまって。ただしいたけは食べるものなので放射能の不安も大きいんですけれども、薪だったら燃料だし、直接人の口に入るものではないので、やりようがあるんじゃないかと思って。それで「しいたけ原木」から「薪」の製造と販売に転換しました。
―――同じ「木」だし、近いのかなとも思うんですが、やってみると大変だったのでは?
ですね。まず薪ストーブという存在はもちろん知っていたんですけど、実際に自分で使ったこともなかったですし、木が生えていれば切って割って燃やせばいい・・・と思うかもしれないんですが、切る時期や樹種、乾燥の期間、どう管理するかでぜんぜん質が変わってくる。そういうことも分らないまま始めてしまったので、最初の1年はお客様から色々と言われながら、教えて頂きながらやっていった感じです・・・(笑)
東日本大震災をきっかけに、故郷・福島県三春町にUターン。ご両親が営んでいた農林業を受け継ぐ形で「薪商はぜるね」を立ち上げた武田さん。今では福島県内だけでなく、宮城・山形・茨城・栃木・埼玉・千葉と、取引先も大きく広がり、扱う薪はお客さんから高い信頼を得ていると言います。
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国からの指針というか方針で、福島県で切った原木を流通させて良いとされている放射能の数値があるんですけれども、それが「40ベクレル」という数値で、これは食品よりも厳しい数字です。この辺の木をそのまま切って測ってみると、まだまだ高い数値が出ちゃうので、表面を洗浄したり、県外から持ってきた原木と混ぜて合計の数値が40ベクレルを下回るようにコントロールしながら作って、お客様に届けているような状況です。
―――いま私たちが見ている薪は全部が福島の薪というわけではないんですか?
そうですね。3分の1は地元で、3分の2は岩手や栃木など県外の原木です。うちのお客様は皆さん理解して頂いているし、それぞれ放射能に対して勉強されている方も多いので、いまとなってはそういった不安の声は少なくなりましたが、それでも“福島の木はちょっと不安だ”という方には県外の木をご案内して使って頂くようにしています。
―――別の県のものを使うほうが、もしかしたらいちばん簡単なのかなと思うんですが、でもやはり地元の木を使って、手をかけてお客様に届けたいというのは、何か想いがあるんですか?
薪の原木になる木はコナラがメインで、その木は椎茸の原木にも使われるし炭にも使われるし、もともとこの阿武隈山地で何十年も切られながらこの景色を作ってきたものなんです。木は20年に1度といった周期で切られて、切った株から新しい芽が出て世代が変わって、常に山を更新しながらこの景色を作って作ってたので、その営みというか流れを断ち切られてしまうと山が荒れてしまう一方だし、育ちすぎちゃった木は芽が出る確率が下がってしまう。やはり適切な時期に切ってあげないと里山が維持できないので、やらなきゃいけないんだろうなと感じています。何十年単位のものなので、いまの僕たちが頑張らないと、未来が変わってしまう。だからできることは頑張りたいなと思っています。商売としてやろうと思った時に、お金を回収するのに2年も待っていられないじゃないですか。だからそこをどうしようかと思って、うちの場合は、薪の製造と販売だけじゃなく、農業や森林整備、間伐といった仕事も請け負いながら1年間通して手があかないようにうまく仕事を回しています。
―――武田さんみたいにUターン、Iターンの方は周りにいらっしゃいますか?
うちの従業員というか、仕事仲間は意外といろんなところに行ってからここに来ていますね。若い子も多いんですけど、いちばん遠くだと広島出身で、うちに来る前は沖縄にいて、それで縁があってうちに来た子もいます。僕自身も、もともと林業を勉強してきたわけではないので、そういう別のところからの視点のほうが面白いことができるんじゃないかと思っていて、自然と集まってくる子たちもそういう子が多いですね。
いまの生活に僕はすごく満足していて、一緒に仕事をしている従業員とか取引先とか、お客様に出会えたことがすごく嬉しいことだし、そのおかげでいままでの自分が想像もしていなかったような未来を描いているし、これからやりたいこともたくさんあるので人生が楽しくなりました。
―――気になります。何をされたいんですか?
いまやりたいのは、滞在型の農業体験ができる宿泊施設とか、果樹園、ヤギとか羊を放牧してチーズやバターを作って加工して販売するとか。土地はあるので今後はそういう方にも力を入れていきたいと思っています。
「福島フロンティアーズ〜福島の木で薪をつくる! 武田剛さん」。福島県三春町「薪商はぜるね」の代表、武田剛さんのお話しでした。薪の製造販売にとどまらず、豊かな阿武隈の森に武田さんの夢が広がっていきます。
「薪商はぜるね」の薪は、オンラインで全国配送も行っています。ぜひオフィシャルページをチェックしてみてください。
薪商はぜるね
【プレゼントのお知らせ】
農林水産大臣賞を15回も受賞している、田村市の「極厚・原木しいたけ」と、三春町・佐藤酒造の日本酒、「三春駒 純米吟醸 ひやおろし」をセットにして、3名様にプレゼントします。
ご希望の方は、まず動画をご覧になってキーワードをチェックしてください。動画の中で武田剛さんに、“三春町の自慢は何ですか?”という質問をしていますが、その答えが、プレゼントのキーワードです。このキーワードを書いて、メールフォームからご応募ください。
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香り高く、美味しさをギュッと閉じ込めた原木しいたけのうま味を、今が飲み頃の純米吟醸ひやおろしとぜひ一緒に味わってみてください!番組の感想や、武田さんへの応援メッセージもお待ちしています。
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来週は、宮城県東松島市、津波で被災した野蒜小学校を再利用した施設、「KIBOTCHA」についてお伝えします。来週もぜひ聴いてください。