夏の三鉄を楽しむ〜三鉄沿線駅-1グルメ旅レポート
全国各地の災害被災地の「今」と、その土地に暮らす人たちの取り組みや、地域の魅力をお伝えしていくプログラム、「Hand in Hand」。今回のテーマは、
「夏の三鉄を楽しむ〜三鉄沿線駅-1グルメ旅レポート」
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岩手県の沿岸部を走る日本一長い第三セクター「三陸鉄道リアス線」。沿線には美味しい海鮮の名店が数多くあって、それを特集して三鉄が出しているのが、「さんりく駅-1グルメ」という小冊子です。もうそのシリーズは10冊以上!これを持ってグルメツアーをする人も多かったといいますが、コロナ禍の長期化は、この三陸沿岸部にも及んでいます。
先月6月16日、三陸鉄道リアス線の普代駅から十府ヶ浦海岸駅まで、三鉄の車両が聖火を運びました。三鉄は2019年春、震災以降、不通となっていたJR山田線の沿岸区間を譲り受け、三陸鉄道北リアス線・南リアス線と接続、全長163キロの日本一長い第三セクター、「三陸鉄道リアス線」として運行を開始。1年後の2020年春、聖火リレーへの参加が決まっていましたが、運行開始から半年後に発生した台風19号の影響で、一部の区間が運行停止に。それでも聖火リレーの参加に間に合わせるため、懸命の復旧作業をして、2020年春までに運行を再開。ところが今度は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、オリンピックが1年延期に。
まさに紆余曲折を経て、6月16日を迎えたわけですが、その時の様子や感慨を、三陸鉄道の運行本部長、金野淳一さんに伺いました。
我々、当日は聖火が到着するのを駅で待っていたんですけれども、それを迎えた時には感慨深いものがあって、本当に、“いよいよだなぁ〜。やっと、ここまで来たか”という思いでした。
〜くしくも1年延期されたことで、震災後10年というタイミングでした。
そうなんです。ちょうど東日本大震災から10年の年に当たるということで、なんかこう、因縁めいたというか、我々にとっても10年という節目の年になったなと思います。
〜世の中まだまだコロナ禍といったことで、観光の自粛の長期化というのも、やはり三鉄には影響はあったのでは?
これはやはり大きくて、地元の方というのはそれほど、沢山住んでいるわけではないし、さらに少子化や過疎化で人口減少が進んでますので、我々としては大いに遠方からの観光のお客様にお出で頂いて、列車、我々としての収入だけじゃなく、“地域の活性化”という目的もありますので、そのためにも“観光”というのは非常に大きな要素なんですけども、相変わらず、未だに観光のお客様にはお出で頂けていない状況が続いています。なので、いま一生懸命やっているのは、県内のお客様に動いて頂いて、何とか地域の交流人口を増やそうということ。
〜そこで岩手県に住んでいる方限定ということなんですが、現在実施されている“駅-1グルメ旅”。どんなものか教えて頂けますか?
三陸鉄道の運賃と沿線のお店のお食事代、これをセットにして、非常にお安い価格で提供しているというものです。さらにクーポンがバックされますので、もうほぼ・・・ちなみにお店で提供しているのは大体2千円分の目安のお料理なんですが、それを2千円ちょっとぐらいから3千円くらいで、列車に乗って旅行して食事をすることができるというものです。たとえば「盛〜釜石コース」ですと、列車の往復乗車券で2千円超えます。それから対象店舗での2千円のお食事がついて、2100円。大体運賃分くらいですね。さらに岩手応援クーポン2千円分がバックされますので、皆さまのお財布から出るお金は・・・
〜100円くらい!それで盛〜釜石を往復できて、めちゃめちゃ美味しい海鮮を食べられる!この理解、あってます?
あってます(笑)
〜岩手県の方いいですね〜!これ、、、いつ県外の人も使えるようになるんだろうな〜と思っちゃうんですけど。
もともと沿線のお店屋さんと、お昼を食べて、お風呂に入って、という企画は用意していたんですよ。コロナが始まる前から。そういったのを元にしながらセット商品を作ったのが今回の「駅-1グルメ旅」です。
〜今は県内に住んでいる方限定ということですが、早く皆さんが三鉄を楽しめる日が待ち遠しいと思うんですが、今日は「宮古〜陸中山田」で、「三鉄沿線駅-1グルメ旅」の雰囲気だけでも味わいたいと思うんですが、金野さん、オススメあります?
えっと、すみません、選べないくらいどこも美味しいんです。だから1回じゃだめなんですよ、2回、3回と来て頂いて。美味しいお店が沢山ありますから。
〜この夏もし来れないとしても1年を通して美味しい旬の物が味わえるのが三陸のいいところですもんね。
はい、そうです!
県内在住者限定でこの夏実施されている「三鉄沿線駅-1グルメ旅」。このキャンペーンのおかげで曜日によっては沿線のお店も大変繁盛しているとか。
コロナ禍が落ち着いたら、県外の方も、小冊子の「さんりく駅-1グルメ」を手に、そんな三鉄沿線の美味しいものを食べに足を運んで欲しいなと思います。
今回私たちは、キャンペーンに参加しているお店のうち、宮古市と山田町のお店を訪ねました。
先ずは宮古市の「魚彩亭すみよし」。店主の宇都宮純一さんにお話を伺いました。
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〜まず、この「三鉄沿線駅-1グルメ旅」の提供メニューの海鮮セット、どんなセットなのか、教えて頂けますか?
そうですね。ウチはあえて「こういう物を出します!」というのを公表してないんですよ。その日その時期に採れる旬のものをお出ししようと。だから1回来て頂いた人が、もう一度来て頂いても同じものを食べれるとは限らないんです。僕はちょっと遊びながらやってるんで。ただ美味しいものを食べてもらおう!というところはブレてないです。
〜三陸そのものがグルメの宝庫だと思うのですが、中でもここの場所、“宮古の海の幸の豊かさ”について教えて頂けますか?
そうですね。季節ごとにうんめぇのが色々あるんですけれども。今の時期だとやっぱり“生ウニ”!本当に今の時期しか食べれないんで、これは是非とも食べて欲しいです。冬は“タラ”。“マダラ”が凄い美味しい時期になるんで。身の方は夏が美味しいんですけれども、“たら菊”といって、白子、あれを生で食べられる。これも季節限定でしか食べれないもの。あとは毛ガニなんかも。宮古の毛ガニはすげぇうんめぇです。
〜でもやっぱりこのコロナ禍。本来だったらもっと声高らかに、「今、三鉄沿線駅-1グルメこんなに熱いよ!」って言いたいところがあったのでは?
そうですね。やっぱり“瓶ドン”を始めてから、コレを食べに宮古に来て欲しいということでやってきたんですけど、やっぱりコロナで言えなかったという部分もありまして。どうにかこうにかこのコロナが収まってくれればなと思っています。
〜今お話に出てきた“瓶ドン”。たぶん、聞いている方は“瓶ドン”ってなんだ?となると思うので、ご説明頂いてもいいですか?
牛乳瓶の中に魚介類を詰め込んだ、ちょっと変わった海鮮丼になっています。牛乳瓶の中身をお客様自身がご飯の上さ乗っけて食べる、なかなか面倒臭い食べものです。
〜(笑)逆です。すごいテンションが上がるんです。牛乳瓶の中にキレイなグラデーションを描いて、ウニやら、カニやら、色々入ってる、インスタ映えそのもの!始まったのはいつからなんですか?
今年で3年目くらいです。
〜現在、参加店舗ってどのくらいあるんですか?
たしか10店舗近くです。
〜それぞれのお店で“瓶ドン”の中身が違う?すみよしさんの瓶ドンはどんな?
各店、中身も見た目も全然違いますね。基本的にウチの“瓶ドン”に関しては、年中食べられる、中身が変わらないものが1種類。それは、めかぶ、マダラ、宮古トラウトサーモン、いか、ホタテ、焼きウニ、いくらが入っています。その他、いくらとマグロと宮古トラウトサーモンの真っ赤な瓶ドン、「赤い彗星」といった“季節限定の瓶ドン”なんかも出しています。ウチの“瓶ドン”は、地元のもの以外は絶対に入れませんというのを頑なに守っています。
〜今日の放送を聴いて、瓶ドン、すごい食べたい!と思った、食いしん坊のリスナーも多いと思います。一言、頂いてもいいですか?
はい。これはね、うんめぇやつなんで、コロナが明けたらば、宮古さ来て欲しいです。最高うんめぇてば。
ミニ瓶ドン付きの「海鮮セット」
通年で提供している瓶ドン。この日は肝でたたいたどんこが初めから丼に乗っていました。何が乗ってくるかはその日のお楽しみ。
季節限定瓶ドンの「赤い彗星」。シャアもびっくり。
インスタ映え間違いなしの見た目のインパクトと美味しさ。宮古で瓶ドンめぐりもオススメです。ちなみにこの瓶ドン、岩手県沿岸部では採れたウニを塩水と一緒に牛乳瓶に入れて売っているのが一般的で、その習慣から震災後に誕生した新名物でもあります。ぜひ味わって頂きたいです。
一行はこのあと、宮古駅から三陸鉄道リアス線に乗って、陸中山田駅へ。車窓からの海の眺めを期待したのですが、この区間はあまり海は見えず・・・ただその先の海沿いを走る区間はきっと広がる太平洋が見えるはずです。乗車していた皆さんは皆さん海側の席に座っていたので。
※山田町の海の素晴らしさについても取材していますので、後日、お伝えいたします。
そして到着した山田町。山田湾の牡蠣やホタテ、そして今が旬のウニなどで知られる、海鮮グルメの町です。ここでは「和海味処いっぷく」を訪ね、腕を振るう板前さんの、貫洞信隆さんにお話を伺いました。
〜山田町で料理人をされている貫洞さんにとって、山田の海の魅力ってどんなところに感じますか?
作り手とすれば、もう目の前が生簀みたいなもの。季節、季節で楽しみがあります。
〜夏、この時期美味しいものはなんでしょう?
“生ウニ”ですね。味もしっかりしているので。5月くらいから採れるんですけど、今の方が味はしっかりしています。濃厚だと思います。味が凝縮している。美味しいです。
〜「三鉄沿線駅-1グルメ旅」で提供してるメニュー、“山田の地魚三陸御膳”。これはどんな御膳なんですか?
これは生ウニもそうですし、ホタテ、カキ、マグロなど、その日に採れた山田湾のお魚を使った御膳になります。焼き物、揚げ物、あとは小っちゃい海鮮丼が付きます。山田の地魚を堪能できるかなと思います。
「和海味処いっぷく」の「山田の地魚三陸御膳」
ウニがちょうど旬ということでしたが、このぷっくり肉厚なウニをご覧ください。醤油なんかいりません。口に運べば磯の香と濃厚な甘みが口に広がり、ふわりとろんと溶けていきます。まさに絶品。“口を開けると香りが逃げていく”とか言って、万里恵さん、レポートを放棄していました(笑)
今回は、「夏の三鉄を楽しむ〜三鉄沿線駅-1グルメ旅レポート」。日本一長い第三セクター、三陸鉄道リアス線の沿線のうち、宮古市と山田町の“駅-1グルメ”をレポートしました。
三鉄はこの夏の「三鉄沿線駅-1グルメ旅」のほか、全長163キロを走る夜行列車「さんりくあさかぜ号」など、様々な企画を用意しています。2年ぶりに運行される夜行列車では、漁火がともる夜の海を車窓から眺めることが出来ます。運が良ければ海に月の光が輝く光の道もご覧頂けます。10月の開催では県外の方も募集するということ。詳しくは三陸鉄道のホームページをご覧ください。
夏のウニが終わればサンマもある、冬にはタラ、牡蠣、さらにホタテに毛ガニにホヤ!三鉄沿線には季節ごとに美味しいものがいっぱいです。状況が落ち着いたらぜひ足を運んで下さい。
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「Hand in Hand」、来週は、美しくて、美味しくて、楽しい!
三陸“岩手県・山田町”の海のレポートです。来週もぜひ、聴いてください。