身近にある放射線を分かりやすく。放射線教材コンテスト!
全国各地の災害被災地の「今」と、その土地に暮らす人たちの取り組みや、地域の魅力をお伝えしていくプログラム、「Hand in Hand」。今回のテーマは、
『身近にある放射線を分かりやすく。放射線教材コンテスト!』
〜ダイジェスト動画はこちらから〜
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今回は昨年末に日本科学技術振興財団主催で開催された「放射線教材コンテスト」の入賞作品・発表会の模様をレポ―ト。
わたしたちの暮らす地球には、自然放射線と人工放射線が存在します。皆さんがこのレポートをご覧になっている今も、じつは放射線を浴びているのです。放射線だから、人工だからと、むやみに怖がるのでなく、その仕組みや役割を正しく知ることが重要です。放射線について正しく知ることが、原子力災害で今なお風評被害が残る福島県の復興にも役立ちます。
正しく放射線について学ぶための教育教材を、若い世代の柔らかい発想で考えてもらおう!というのが、2018年から開催されている「放射線教材コンテスト」です。
放射線について学ぶ大学生や専門学校生などを対象に教材を募集。2020年度は、全国から14校、101作品もの応募がありました。その中から11の優秀な作品が選ばれ、12月には入賞作品の発表会が行われました。
まずはコンテストの目的について、「放射線教材コンテスト」の実行委員長で、帝京大学医療技術学部・診療放射線学科、鈴木崇彦教授のお話です。
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「放射線を勉強している大学生の皆さんに、放射線を子どもたちに伝えるときにどういう工夫が必要かを考えてもらい、それを作品にするのが目的です。最優秀賞をとられた作品は、「情報を正しく伝える」「知識を実験によって身に付けてもらう」という、本来教育で実践すべき内容を非常に丁寧にわかりやすく、しかも市販のものを使って実践しているということで、われわれ教員ではあそこまで丁寧にはつくれない。子どもたちに伝えたいという思いがそこには込められているんだと思います。もう一つの作品は「飛び出す絵本」というタイトルの作品。絵本を開くと立体的なものが浮き上がってくるという点で、子どもたちに興味を持たせるところから入って、放射線の量を立体的に比較して見せて、数字の持っている大きさの意味合いを伝えている。比較するということが科学的な目を養うことにつながるので、非常に適切で高い評価が得られたと思います。“らでぃ”という放射線教育の支援コンテンツがありますが、その中に掲載することで、それを見た学校の先生方が「これならば」と学校教材に利用して頂ければと思います。その中で子どもたちが放射線に少しでも興味を持ってくれたら、このコンテストの意味があるのではないでしょうか。」
そんな放射線教材コンテスト、「最優秀作品」2作品を、学生の皆さんに紹介して頂きました。
▼まずは兵庫医療大学のチーム。
作品タイトルは、「市販試薬の放射線計測による新規放射線教育プログラムについて」。制作にあたったのは、薬剤師を目指す、薬学部5年の3人です。市販の試薬には「自然界に存在する放射性物質」が含まれています。その試薬を教育用の放射線計測器ではかることで、放射線の種類や特性を理解する、体験型の学習プログラムです。
「僕たちは市販試薬を用いた体験学習に基づいた放射線学習プログラムを考案しました。放射線というとどうしても怖いというイメージを持っている方が多いので、普段から自然に存在する放射線を出す物質から、低コストな機器を使って放射線を測定することで、放射線を身近に感じてもらいたいという思いで制作しました。」
▼「放射線教材コンテスト」最優秀賞、続いては、帝京大学のグループです。
作品タイトルは、「放射線の強さ・大きさを視覚的にとらえる絵本型教材」。制作にあたったのは、帝京大学4年生の2人です。立体的な「飛び出す絵本」を使って、子どもたちが興味を持って学べる教材づくりを目指しました。
「わたしたちは今回放射線の大きさを視覚的にとらえる絵本型教材を作成しました。立体的な仕掛けを自ら体験することで、視覚的にも理解が深まると考えています。わたしたちが本作品で対象としている小学校3、4年生は放射線に対して正しい知識や考えがあまりないと考えていたので、身近なものの放射線の量同士を比較することで、より理解しやすくイメージしやすくしました。また作中にあるクイズの答えを考えることで、知識の定着をはかったり、作中に複数ある立体的な仕掛けを自分の手で体験することによって、視覚的な理解にもつながると考えました。巻末には先生や保護者など、大人のための補足説明を加えることで、大人と子どもみんなで学ぶことを意識した作品にしています。福島の復興のためには、放射線はどのようなもので、どこにあるのか、正しい知識を身に付けることが復興につながる第一歩だと考えています。そのうえで日本や世界、宇宙で比べてみたり、わたしたちの日々の生活の仕方でひとりひとり受ける放射線量が違うことなどを知ってもらうことで、それらを比較し、福島を特別視するものではないということを理解してもらう教材になればと考えています。」
絵本を開くと、質問のページがあって、子供たちに答えを考えさせる。その次のページを開くと、答え、たとえば自然放射線同士の比較や、胸部レントゲン写真撮影との比較が、立体的なグラフで表現されている。「子供たちに小さな驚きと興味を与えたかった」ということです。
▼さらに、優秀賞に輝いたチームも紹介しましょう!
帝京大学の別のチームによる教材です。作品タイトルは「光るねんどで体験!放射線は人にうつるの?」。帝京大学2年生、5人の女子学生によるチームです。“蓄光ねんど”と呼ばれる「光るねんど」を使った教育教材、ということですが、どんな内容なのでしょうか?
「この教材は身近にある蓄光ねんどや蓄光ビーズを放射線と人に例えて、放射線が人から人にうつらないということを可視化して、小学生に伝えることを目指しました。東日本大震災と福島の原発事故からもうすぐ10年が経ちますが、その間の被爆した方への差別やいじめ、農作物に対する風評被害はいまでも言われていることで、被災者の方が傷ついているという事実もたくさん目にしてきました。そういった誤った誤解から生まれる放射線に対する恐怖を、放射線を学んでいるわたしたちだからこそ正しく伝えたい、そうした気持ちから、この教材を作りました。農作物も、放射線というものは減衰していくので時間がたてば食べられるので、そういった偏見もなくなって、福島の食べ物もおいしいねといった日常が戻ってくればいなと思いました。」
今回受賞者には、原子力災害による風評被害に苦しんだ、福島への想いも聞きました。震災から10年。震災のことを知らない子どもたちも増える中、今、二十歳前後の彼らは、何を思うのでしょうか。
―――僕たちは薬学生。普段実習で服薬指導をする中で、患者さんの不安に寄り添って聞き出すことが多いんですが、そういったかたちで福島の人に抱える不安に服薬指導みたいな感じで寄り添って、正しい知識を教えることができれば、不安を取り除くことができるんじゃないかと思いました。
―――福島第一原発の事故からもうすぐ10年になる。つまり小学生以下の年齢で、原発の事故の当時の様子を知り、事故の恐ろしさや福島の現状を知っている人は多くないと思います。ましてこれらの事故により発生した放射線の存在を知り、どのようなものなのかを理解しているのは大人でも少ないと思います。子どもたちに焦点を当てると、問題となっていたのは福島から他県に引っ越してきた子どもたちに対する差別やいじめ。それで苦しんだ小学生や中学生は少なからずいたと考え、もう二度と子どもたちの間でこのようなことが起こらないようにするには、放射線の存在や特性を印象づける必要があると思っています。
―――福島を復興するには、放射線の誤解を少しでもなくす必要があって、そのためには自然放射線があることや、普段口にしている食べ物にも放射線が含まれていることを認知しもらう必要があります。そもそも放射線がわたしたちの身の回りに存在することを知ってもらうことで、福島の復興に近づくと考えます。
「Hand in Hand」、今回は『放射線教材コンテスト』入賞作品・発表会の模様をレポートしました。2020年度「放射線教材コンテスト」。最優秀賞、優秀賞に続いた11作品については、放射線教育支援サイト“らでぃ”で詳しく見ることができます。
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さてここで復興庁からのお知らせです。なんと昨年度の放射線教材コンテストの「すごろく」を題材にした教材をヒントにして、インターネットブラウザで、誰でも簡単に遊べるすごろくゲームがつくられました。
その名も「ふくしま旅スゴ」です。
ウェブ上で福島県の59市町村をサイコロを振って巡り、各市町村の特色や特産品などに関するクイズと、放射線に関するクイズに答えながら、「映える」写真などを集めてゴールを目指す、「楽しく学べるすごろくゲーム」となっています。
〜高橋万里恵さんも遊んでみたそうなのですが、ゲームとしても楽しく、そのうえ福島県の魅力やインスタ映えしそうなオススメスポット、放射線に関する正しい知識も学ぶことができて、とっても面白かった!ということでした。
そしてなんと、ゲームのなかのステージや、エリアをクリアするたびにNintendo Switchソフト『あつまれ どうぶつの森』で使用できる、オリジナルの「あつ森マイデザイン」が出現するということです。これは胸熱!しかもこのマイデザイン、福島県にちなんだデザインになっていて、たとえば「赤べこ」のコスチュームや、「あんぽ柿」、「喜多方ラーメン」のTシャツまで、20種類以上もあるんです!これがもう、キャラに着せてみると、本当にかわいいんですよね。さらにシークレットのマイデザインもあるそうです。みなさんも探してみてくださいね!
こちらの「ふくしま旅スゴ」は復興庁のウェブサイト、「タブレット先生の『福島の今』」から遊んで頂けるようになっています。スマホやタブレットで簡単に遊べますので、ぜひアクセスしてみてくださいね。
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ここでプレゼントのお知らせです。今回は、『スペースブレッド 宇宙のパン』チョコレート味とミルク味をセットで3名様にプレゼントします。
ご希望の方は、このホームページのメールフォームからご応募ください。応募の際、下記のクイズにお答え頂きます。メールに答えの番号を書き添えたうえ、「宇宙パン希望」と書いて、ご応募ください。
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【問題】
Q:体の外部から放射線を受けることを「外部被ばく」、放射性物質を含んだ食品や空気を体の内部に取り入れ体の内部から放射線を受けることを「内部被ばく」といいます。
では同じ線量(シーベルト)を被ばくした場合、どちらの方が影響が大きいでしょうか。
A:内部被ばくのほうが大きい
B:変わらない
C:外部被ばくのほうが大きい
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クイズのヒントは、このレポートでご紹介した「ふくしま旅スゴ」の中にあります。
「ステージ浜通り4」に同じクイズがあり、何度でもトライできるので、ぜひともプレイしてみてください。
番組の感想やメッセージもお待ちしています。
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次回の「Hand in Hand」は、福島県の東部の町の復興の歩みと「今」を伝える、シリーズ、「あれから10年、復興が進む福島を行く」の、川俣町編。テーマは、「川俣町、新たに芽吹く希望の花・アンスリウム」です。次回もぜひ聴いてください。