皇室献上 桃の郷 福島県桑折町
全国各地の災害被災地の「今」と、その土地に暮らす人たちの取り組みや、地域の魅力をお伝えしていくプログラム、「Hand in Hand」。
今日フォーカスするのは・・・『皇室献上 桃の郷 福島県桑折町』
番組ではのっけから食べているシーンでスタート。高橋万里恵が食べていたのは、福島県桑折町(こおりまち)の“桃を使ったピザ”です!
そのお味はのちほど紹介しますが、とにかく桑折町は、26年連続で皇室献上品に選ばれるほど品質が高い桃の郷として知られています。震災後の原発事故による風評被害を受けながらも、美味しくて安心安全な桃をつくりつづけた桃農家さん、そして町の取り組みで、いまは出荷額もほぼ震災前の水準。評価を取り戻しています。
そんな桑折町は、まさにいま、代表的な桃、「あかつき」が旬を迎えたところ。ということで今回の「Hand in Hand」は、「皇室献上の桃の郷 福島県桑折町」を訪ねた様子をレポート。
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福島県桑折町。福島県の北部、福島市や宮城県とも隣り合わせの町です。阿武隈川のめぐみを受け、まさに桃源郷という言葉通りの桃畑が川沿いに広がる風景は、この町の象徴となっています。
(4月下旬ごろの風景)
というわけでまずは、桑折町の桃がなぜこれほど評価されているか。その秘密から調べてみましょう。桑折町の桃畑の真ん中で桑折町・産業振興課の佐藤克彦さんに伺いました。
―――― 一面の桃畑につれてきていただきましたが、いろんな種類があるんですよね?
佐藤「そうですね。桃自体も何十種類もあって、6月から9月まで3カ月間いろんな桃が楽しめます。
――――桑折町が美味しい桃が取れるようになったのはなぜなんですか?
佐藤「生産者の熱い思いと、良いものを作りたいということで農薬をできるだけ減らして安心安全なものを提供することにいち早く取り組んだんですね。あとは安定した品質の桃を提供するために、光センサーなど最先端の機械も他の町村に先駆けて導入したのが大きな流れだと思います。選果するときに光を通して糖度、形が一定水準のものを収穫するので市場に出る桃は安定したものを提供できています。あとは、盆地なので日中の寒暖差があって、やはり夏に晴れる日がある。暑い日が続くことで甘みがぎゅっと増すんですね。
――――去年、26年連続で皇室献上の桃に選ばれているんですよね?
平成6年から連続して去年まで26年連続、皇室に納めています。
――――それを知らない人もいると思うのでぜひ知って、味わってもらいたいですね。
農家の皆さんが丹精込めて、原発事故の後の風評被害もありましたが、みんな一生懸命に乗り越えて頑張っています。ぜひ多くの皆さんに味わっていただければと思います。
2011年の原発事故の後、原発事故の影響による風評被害で、なんら影響がなかったにも関わらず、桃に値段がつかないなど大変苦労したという桑折町の桃農家。事故の年には桃の木の枝をすべて高圧洗浄機で洗浄するといった地道な作業をして、さらに現在もつづく厳しい放射能検査を経て、「安心安全な桃だけを出荷している」と佐藤さんは話します。
そんな桑折町の桃の美味しさ、これで理屈は分かりました。ただ理屈だけわかっても、やっぱり食べてみないと!!ということで、次に訪れたのは「レガーレこおり」。町の産品をPRする施設です。ここでは、本格的な石窯で焼く、名物「桃のピザ」が楽しめちゃうんです!
施設内のレストラン「PizzaSta(ピザスタ)」料理長の宮城久志さんに伺いました。
――――こちらで出している桃を使ったピザ、なかなか想像できないんですがどういうピザなんですか?
宮城「桑折町の旬のフルーツと野菜を使ったピザです。いまの季節は桃ですね。デザートでは無く食事として食べられるように作っています。名前は〈ピザ・ヨーチエン〉です。ここの施設がもともと幼稚園で、それをリノベーションしたので、その名前をいかしてピザ・ヨーチエンという名前にしました。お客様からも、意外と合うねという声を頂いています。」
――――桑折町は桃も種類が豊富ですから、ピザも味が変わったりするんですか?
宮城「そうですね。桃によって甘みが強かったり、酸味があったりするので、酸味があるものに対しては酸っぱいものは合わせずに違うものを合わせたり。」
――――この時期の桃は?
宮城「まだ出てきたばっかりなので果肉は固めなんですけど、しっかり桃の香りもありながら酸味も持っているので濃厚な、チーズと合わせて調整しながら出しています。」
ということで本格石窯で焼く「ピザ・ヨーチエン」、できたてを頂きました!
ちなみにこの「PizzaSta」というお店は、世界的に有名な山形のレストラン「アル・ケッチァーノ」の奥田シェフが全面プロデュースして、5月にリニューアルしたばかり。「アル・ケッチァーノ」の地産地消へのこだわりを取り入れたナポリ風ピッツァが楽しめるんです。元幼稚園だった園庭を眺めるテラス席もあって素敵でしたよ♪
そんな桃の郷の桑折町では、“至福の桃シリーズ”と名付けた6次化商品の開発にも力を入れています。「至福の桃ソルベ」、「至福の桃グミ」、そして第3弾は今年デビューしたばかりの「至福の桃飲むこんにゃくゼリー」。いずれも一番人気の品種「あかつき」の果汁をたっぷり使った、香り高く美味しい商品。今回はグミを食べながらロケしてましたが、移動の車内が桃の匂いでいっぱいでした。
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ということで、本当に魅力的な桑折町の桃ですが、生産者の方々は、去年、大変な思いをされています。台風19号による水害です。最後は、桑折町で40年以上、桃づくりを続ける果樹農家、後藤哲男さんの桃畑へ伺いました。
実は後藤さんの桃畑の周辺も1m以上浸水。ご自宅にもその浸水の後が・・・。ただ畑を見せて頂くと桃もしっかり実をつけていてホッとしました。ただ影響は今も残っているということで、後藤哲男さんにお話し伺いました。
――――桃の畑に連れて来ていただきましたが、後藤さんは何種類を育てているんですか?
後藤「面積的には150アールで300本ぐらい。その中で品種は12品種です。収穫が重なると労力が大変なので7月の今の時期から10月までリレーにするように12品種を収穫していくんです。
――――7月下旬はどんな品種ですか?
後藤「一番のブランド、あかつきという品種がちょうど最盛期になると思いますね。桑折町もそうですがこの辺の県北地区は桃の産地で、半分の面積をあかつきが占めています。」
――――26年にわたり皇室献上の桃を出している桑折町。美味しく育つのはなぜでしょう?
後藤「今回は水害にあいましたが、昔、阿武隈川が氾濫していた時代があって、逆に言えばそれで肥沃な土地になって農業を支えてきたんですね。その肥沃な土地にさらにいろいろ技術を入れたり品種改良したことで成り立っていると思います。
――――水害の話がありましたけれども、去年の台風の影響は?
後藤「自宅も影響ありましたし、うちの畑はすべて、野菜の畑も含め浸水しました。水害で直接影響があったのは1割くらいですが、桃の厄介な病気、穿孔細菌病が水害の後に多発する傾向があって、今年もその通りに多発しています。おそらく2割3割の収入源になる状態だと思うんですね。
――――そうなると収穫量が減ってしまいますが・・・味自体はどうですか?
はつひめという品種が出始めたんですが糖度も良くて大玉なので、果実自体の出来は良いと思います。
――――話はそれますけど、後藤さんは40年以上も桃作りをされている名人で、しかもギタリストなんですって?
後藤「ギタリストというか、趣味でちょっとバンド活動をやってまして(笑)」
――――そして自宅とは別宅の小屋がありますよね?
後藤「馬を飼っていた小屋を自分で改造して練習場所にしたんです。20、30人入ってライブくらいはできる。今はちょっとコロナの状態で今のところは自粛していますけどね。
収穫量に影響はあるものの、今年も後藤さんの果樹園からは、美味しい桃が出荷されることになりそうです。そしてギタリストとして奥様と一緒に活動しているバンド活動、ライブも復帰できる日が待たれます!
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「Hand in Hand」、今週のプレゼントは、今回、取材させて頂いた桑折町の桃名人・後藤哲男さんが育てた桃「あかつき」(3キロ入り)を3名様にプレゼントします。