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20.04.16
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常磐線、全線再開。沿線の人々の声

全国各地の災害被災地の「今」と、その土地に暮らす人たちの取り組みや、地域の魅力をお伝えしていくプログラム、「Hand in Hand」。

今週のテーマは・・・『常磐線、全線再開。沿線の人々の声』


写真は、桜の名所として知られる福島県富岡町「夜ノ森」の開花基準木です。この木から5輪咲くと開花宣言となります。福島第一原発事故による避難指示によってバリケードの中にあったため、昨年までは仮の基準木が設定されていたのですが、今年からこの木が、春の訪れを告げる基準木としての役割に「復帰」しました。

福島第一原発の事故からまる9年を前にした先月、3月4日。唯一、町全域に避難指示が出ていた福島県双葉町で、町の面積の4%が避難指示解除に。そして隣接する大熊町、富岡町でも避難解除エリアが拡大。それにともない14日、常磐線は、これらのエリアを通る区間が、9年ぶりに開通全線開通となりました。

富岡駅、夜ノ森駅、大野駅、双葉駅、そして浪江駅。9年という本当に長い月日を経て、ようやくそれぞれの町の「駅」が機能し始めたことになります。ただ、これは本当に“スタート”。ここから、町の未来がどうなるか。人々の力が必要になっていきます。


ということで今日のHAND IN HANDは「常磐線、全線再開。沿線の人々の声」。
鉄道が戻ってきたこの5つの駅をめぐりながら、それぞれの町で、再生にかかわる人たちの声を、お伝えしていきます。


まずは昨年、仙台とつながった浪江駅にまず立ち寄りました。人はまばらですが、写真を撮る人や駅前の喫茶店でくつろぐ人もいて日常の風景が戻っていました。実はこの浪江町は「ポケモン」の生みの親ゆかりの町ということで、駅舎の中にはポケモンのフィギュアが展示されていて、ポケモンファンらしき人たちが眺める姿もありました。



一方、隣駅の双葉駅、その次の大野駅は、あくまで駅周辺が避難解除されたばかり。人もほとんどおらず、特に大野駅の場合は、駅前の商店街がいまもバリケードで封鎖され、殺伐とした雰囲気でした。本当に、再生はまだまだこれからという印象でした。






次に番組が向かったのは大野駅から5キロほど離れた場所にある大川原地区。大熊町役場の新しい庁舎や公営住宅のある地区です。去年、避難指示解除されたこの地域が、大熊の新しい中心地となっていくのですが、人口およそ1万人のうち、大熊に帰還して暮らす人の数は150人ほどとなっています。


ただ、この役場周辺には、少しずつですが、生活に必要なものが増えつつあります。その一つが「Yショップ」というプレハブのコンビニエンスストア。去年6月にオープンして営業を続けています。


Yショップ大川原役場前店 赤間崇さんに伺いました。

赤間さん「開業は去年の6月ですね。最初は物珍しさもあったんでしょう、たくさんのお客さんが来てくださった。町民が増えているのは感じますけど、人数としてはやっぱり少ないですね。近辺に住んでくれる人が増えればなと思っていますね。ほとんどは高齢者ですね。住民と比べると私は若いほうかも。家族は他の県で生活していて私だけ帰ってきましたという方が多いかもしれない。お店の営業時間は平日が朝8時から夕方の6時で、土曜日が朝の9時から夕方3時まで。お客さんは町民さんの割合は少ないですよ。復興に携わっている人と役場が多いので。もうちょっと町の人たちが増えてくれればなという期待はありますけどね」。


現在、この地域にはYショップのほかに『ダイニング大河原』という飲食店、日用品店などが開業していますが、「でもやっぱり平日の6時くらいはもう人影ないですね。みんな家の中にいると思う」(赤間さん)


そんな赤間さんはまだ30歳と若い世代。こういう世代の方が多くまでご商売をすることは希望の一つかもしれません。ただ、町に賑わいはまだ戻っているとは言えず、このエリアに建設予定の商業施設も五輪の影響で遅れているそう。完成すれば温泉や宿泊施設、ショッピングなどが楽しめるようになりますが、まだ開業は未定となっています。

大隈さんにいまの率直な気持ちを伺いました。

赤間さん「不安の方が大きかったですよ。町の人がいるのかどうかもわからない状態でここに来たので。でも大熊町で働くことへの恐怖心はなかったですね。僕もそこまで詳しくはないですけど、当時に比べると線量とかも、身体に何か大きな影響与えるとかという問題も今は無いのかなと僕はちょっと思ったり。暮らす方もこちらに来られる方も、気兼ねなくというか、もうちょっと足を運んでもらえれば。そこにコンビニがあったなと立ち寄ってもらえれば嬉しいかなと思っています」

ちなみに大熊町はいま、植物工場で作る「いちご」を町の新たな観光資源として力を入れていますが、Yショップではそのいちごも手に入るそう。2日に一度程度、10パックほど仕入れると午前中には完売してしまうほどの人気なのだそうです。

さて、大野駅のある大熊町から、さらに南下しまして、次に向かったのは「夜ノ森駅」。2017年に一部避難指示解除となっていましたが、3月10日に、駅と、この地域の名所「夜ノ森の桜並木」と周辺道路が新たに解除となりました。

お話を伺ったのは、平山勉さん。富岡町出身。Uターンして富岡に戻り、実家の宿泊業を継いだ後に東日本大震災が起き、現在は、本業とともに、双葉郡の8つの町村の復興を担うフロントランナーとして活動もされています。

平山さん「(避難指示解除エリアが広がったことについて)通行証なしで入れるエリアが広がったと言う事は率直に嬉しいですよね。誰でも入ってくれるようになったただ、いわゆる立ち入り制限が緩和される前は、こんなにバリケードはなかったんですよ。人が入って来られるようになったので、脇道にそれたりしないように全面、道路沿いをバリケードを設置した形なので、かえって見た目が痛々しいと感じますよね。ただ、期間困難区域に初めてメスが入ったということなので、今までの居住制限とか避難指示解除準備区域とかが解除されたのとまた一つ違う感触、“進んだ”という感覚がありますね。」

そして、常磐線が全線開通したことについては、「最後の大きなインフラ復旧が常磐線。国道6号線が通って常磐道が通って、県道が通って、最後に常磐線が復活した。本当に始まったばかりなのかなという気がしますね。個人的には遅すぎるくらいだと思います」(平山さん)

富岡町は2017年に町の面積の8割強が避難指示解除され、ホテルやスーパーもできて、町の機能を取り戻しつつあると言います。また富岡にはいま、おしゃれなアパートも次々と建っているということなんですが、その理由はこういうものでした。

平山さん「やっぱり工事関係者の重要です。うちはビジネスホテルをやっていまして、ほとんど中間貯蔵施設、除染、造成工事関係者がほとんどなんですが、アパートに泊まっている方もメインは中間貯蔵施設で働いてらっしゃる方だと思います。だからにぎわっていると言う感覚はあまりないんですし、滞在する期間が決まっている方が多いので、それが直接賑わいにつながるかというとそうではない部分がありますね。」

では、本当の“賑わい”はいつ戻るのでしょうか。平山さんは「現状として、これから飛躍的に(人が)戻ってくる、増えることもないと思うんですよ。避難先で安定した生活を送られている方の方が多いので。おそらくこれからは新しく移住してくる方の方がどんどん増えていく。もともとこの地域は過疎の地域だったのが原発ができてどんどん新しい人が入ってきたわけです。歴史の繰り返し的な部分もあると思うので、これからそういう新しく入ってきた人たちの新しいまちづくりが始まると思っています。少ないですけども新たに若い人が入ってきたり、あるいは大学生の子たちが興味を持って何回も何回も来てくれたり、今後につながるようなそういう動きもあるので、決して悲観しないでも良いのかなと。少しずつだんだん大きくなっていけばいいのかなと思っていますね。」

平山さんは、「ふたばいんふぉ」という富岡町をはじめ双葉郡の8つの町村が協力し合って、情報発信をする施設を立ち上げ、若い人たちがこの地域で活躍できる場づくりにも力を注いでいます。

そして今年。夜ノ森の桜はようやく立ち入り制限を気にせずに楽しめることになりましたが、実は富岡は桜のほかにも魅力があると言います。平山さんに教えて頂きました。

平山さん「夜の森は賞をもらったことがあるんですよね。ツツジが綺麗だということで。特急が止まらない駅なんですがツツジが咲くころになると特急が徐行してくれる、ツツジを見るために。いまは2年前の除染の時に根元だけ残して全部切っちゃったのですが、復活してちょっとずつ伸びてきています。いつぐらいにツツジがまたきれいになるか。桜に関しては歴史もあるし、およそ130年の歴史がありますし公園とか川沿いではなく普段の生活道路、通勤通学路のに桜があると言うことで、生活に密着した桜なんですね。それが富雄や町民にとって誇りでもあるし、新しいまちづくりのきっかけになり得るんじゃないかと言う気がしています。」



「Hand in Hand」、来週は福島県伊達市で、高校生たちが手掛ける桃のスイーツプロジェクトについてお伝えします。


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