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20.03.05
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福島の今を世界へ発信する〜『Fukushima Ambassadors Program』!

全国各地の災害被災地の「今」と、その土地に暮らす人たちの取り組みや、地域の魅力をお伝えしていくプログラム、「Hand in Hand」。

今週のテーマは、「福島の今を世界へ発信する〜『Fukushima Ambassadors Program』!」

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この「Fukushima Ambassadors Program」、略して「F.A.P(エフ・エー・ピー)」は、福島大学が海外から短期留学生を招いて、自校の学生とともに福島県各地に行き、地域の方との交流などを通じて、震災後の福島の今とその魅力を伝えることを目的とした、フィールドワークプログラムです。

プログラムを中心的に担っているのは、福島大学経済経営学類助教で、国際交流センター副センター長、そして「福島県あったかふくしま観光交流大使」でもある、ウィリアム・マクマイケルさん。30代のカナダ人です。

2007年に来日。2010年からは福島大学に特任専門員として加わり、震災後もカナダに帰国することなく、福島に残りつづけました。諸外国による日本への渡航延期・自粛の勧告が解除された2012年から、「Fukushima Ambassadors Program」を実施しているという人物です。柔和で人懐っこく、噺家みたいにお喋りが楽しい方でもあります。

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今年、英国のガーディアン紙が選ぶ、「2020年に行くべき20の場所」に、日本から唯一、選出された福島県。「復興五輪」として開催される東京オリパラの聖火リレーが福島からスタートするほか、農産物などの食文化、豊かな自然や観光の魅力が評価されての選出でした。そんな福島県で、福島大学の学生と海外からの短期留学生たちが、県内各地に行き、地域の方との交流などを通じて、震災後の福島の今とその魅力を伝えることを目的としたフィールドワークプログラム、「Fukushima Ambassadors Program」、まずあらためてその成り立ちと内容について伺いました。

◆◆

マク)Fukushima Ambassadors Programは、福島大学が2012年の5月から行なっている短期留学プログラムでして、福島大学は世界12の協定大学があるんですが、そういう協定大学の中で勉強してる学生で福島に関心がある学生を福島に呼びまして、2週間ぐらいかけて福島大学の学生とか、あと福島大学に留学している学生と一緒に、震災後の福島の課題とかについて学ぶプログラムです。実際に震災の被害、津波の被害に遭った地域とかも前半の方で訪れたり、後半は今度は原発の災害について学ぶということで、福島第一原子力発電所を視察をしたり、帰還して町を活性化しようとしている人たちの話を聞いたり、実際にボランティアをしてみたり、そういうプログラムですね。

高橋)ただプログラムが始まったのが震災の翌年2012年で、その頃って日本の国内でもやっぱり勉強不足で、福島に対して誤解を持ってる方もいらっしゃったと思います。それこそ海外からも留学生ってのはどういう気持ちで福島を知りたいと思って来ていたのか・・・

マク)そもそもこのプログラムを始めるきっかけは、かなり福島が誤解されていて、危険な場所って思われていたので、それを私は・・・自他共に認める福島県大好きなカナダ人なので・・・なんとかその印象を少しでも変えて、私のように福島のファンになって帰ってもらいたい、さらに福島のことをしっかり学んでそれを海外に発信してもらえたらなっていう思いで始めたんですけども、これは誰も応募してこないじゃないかなって、正直思いました。けども予想に反して、当時は10名だけの募集だったんですけど、そこに100名以上の応募がありまして、なので私も一からいろいろと回って、「こういうプログラムなんですけど協力してください!」っていうことでいろんな人に問い合わせをしたり、ホームステイの家庭を探したり。そんななかで印象的なエピソードがありまして、いろんな家庭から応募があったんですけども、半分くらいが仮設住宅からの応募だったんですね。ぜひ仮設に来てもらいたいと。もうそれがすごく私も意外だったんですけど、正直「ご自身の生活も大変なのにどうしてですか?」って聞いたら、いや家にも子供がいて、子供達が学校でこういうチラシをもらってきて・・・チラシを学校で撒いていてたんですけどね・・・で、「家にも呼べないか?」って言ってきて、「無理だよ。仮設だから」って言ったら「何で仮設じゃだめなの?」って泣かれてしまって、親もハッて気づいて、「そっかなんで仮設だからダメなんだろう。それだけでこの子達の機会をなくすのはいけない」と思って、で、応募したら、話を聞いた他の所もたくさん応募してくれてっていう・・・そういうことがあったらしいんですけど。

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震災と原発事故があったその翌年、2012年に、これほどの参加応募があったこと、そして仮設住宅にホームステイの学生を招こうと手を挙げた人がたくさんいたこと、これは驚きでもあり、そして当時どれほど勇気づけられたことか・・・というマクさんのお話しでした。

そしてその時から変わらない、プログラムを通じて伝えたいマクさんの思いとは?

◆◆

マク)やはり一番は核心を突く内容にしてるというか、やっぱり海外の人がいちばん誤解してるところというのは、まあ私も海外のニュースとかいつも読んでるので、ここだいぶ誇張されて報道されてるなとか、そういうポイントってのが分かっているところがあって、たとえばわかりやすい例でいうと、汚染水ですよね。いまだに普通にニュースで、原子力発電所から300トンもの汚染水が海に毎日流れてる、とかですね、まるでもう世界中の海が福島のせいで汚染されてるっていう印象を持ってる方が多いですし、さらにそう思ってなくても、そういうニュースばっかり見てきてるので、知らない間にそう思い込んじゃってる学生も多いので、それをしっかりと理解するために実際に浜通りの方に行って、漁業の正確なデータを理解した上で、原子力発電所も見ることで、汚染水がどういう場所どういう風に処理されていて、どういう状況でどういう風に保管されているか、それに対する漁業者の想いとか、あとホームステイを浜通りでしておりまして、いつも相馬市と南相馬市の方で行ってるんですけども、そこに住んでる人、漁業とかを生業にしている人たちと一緒に生活を共にして、そこから学ぶというそういう工夫もしております。最近の傾向でいうと、向こうが勘違いしてる事項ってのも伝えながら、同時に社会学の研究をしてる学生たちが来ると今のまちづくりの現場を見てもらって、どれだけ世界でも進んでいる取り組みをしている地域が福島にあるのかとかですね、どれだけ自分が今まで自分の母校で勉強してきたことが実は福島にも当てはまることなんだとか普遍的なんだってことに気づいてもらって、戻ってから自分の卒論のテーマを福島に関連するものにしてくれたり、大学院に進むけど福島をテーマにやりたい、博士論文を福島にしたいっていう相談を4年前に学生から受けたりとかですね、なんでその一回だけじゃなくて自分のキャリアをずっと福島と関わってきたいっていう学生達も増えてきていたですね、そういう工夫もプログラムの中でしていますね。

高橋)もうすぐ震災から9年ですけれど、その9年前、震災当時はそんな風に福島のことを考えてくれる海外の学生とかこんなに増えるって想像してましたか?

マク)いやまったくそれは。去年までで14回目を開催して、これまで9カ国17大学、205名が参加してるんですけど、福島のファンづくりってのはずっと変わらないですし、誤解を解きたいってところもあるんですけど、今はその誤解を解きたいよりも、もっともっと福島の可能性を感じて福島を自分事として今後もずっと関わってくれる人材を育成したいっていう風に思ってますね。あとすごく嬉しいことがもうひとつありまして、やっぱどんどん風評そのものも少なくなってきてるかなって。とくにインターネットとかで少なくなってきてるかなと思ってます。というのも先日ですね、ちょっと話題になったんですけど外国人コミュニティの間だけかもしれませんけど、FacebookやTwitterやInstagramでとある新聞社が出したアンケートがちょっと話題になったんですね。そのアンケートが何かっていうと、「オリンピックで福島の食材を提供すべきかどうか」っていうことを聞いてたんですけども、“あーまったくこんな悪質なものが出て”って正直思って、たぶんまたマイナスな回答が出んのかなと思ったんですけど、圧倒的に「その質問するものをすることがバカバカしい」という回答ばっかりで、皆さん「当たり前じゃないかと福島安全なんだから何でこんな質問するの?これはただの煽りの質問だ」ってその批判の方が圧倒的に多くて、なんか徐々に徐々にやっぱり伝わってきてるのかなと思って、で、そこに率先してコメントを書いてるのが、やっぱり過去に福島アンバサダープログラムに参加してくれた学生だったりもして、すごく嬉しかったですね。やっぱりそういうふうにいっぱいみんな味方して、今も福島のことをちょっとでも悪く言われると自分のこととして思って戦ってくれたりもしてますしオンラインで。すごく嬉しいですね。ちゃんとした福島ファンが増えてるというか実感がわきましたね。

◆◆

私たち日本人以上に福島を“自分ごと”として大切にしてくれているマクさん。もともとは外務省などが実施している、海外の方に日本にきてもらい各地の学校などで国際交流や英語の授業にかかわってもらうプログラムで来日。ただどこに派遣されるかはわからなくて、たまたま派遣されたのが福島県でした。最初は福島がどこかも分からない。1年くらい働いてカナダに帰ればいいかという程度に思っていたとか。ところが福島の自然、食文化、優しい人も含めて、福島が大好きになって、任期終了しても帰国することなく残りつづけ、2010年に福島大学へ。そして震災が起こり、大好きな町が傷つく光景に、今こそ自分の力で福島に恩返しをすると決意し、現在に至ります。

そんなマクさんの「Fukushima Ambassadors Program」、参加した学生にもお話を聞いてみました。

◆◆

仙台出身の経済経営学類3年の佐藤雄一と申します。参加する前は非常に知識自体が不足していた部分もあるんですけども、やはり参加することによって、現在、放射線の被害が思った以上に少ないということと、食品なんかも全部検査してるので逆に世界一安全な食べ物なんじゃないかなっていう風な考えに変わることもできたし、海外からも思った以上に皆さん熱いパッションを持った方が来てるので、今後もまた関わる機会があれば何かしたいなという気持ちを持ってます。

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新潟県出身の経済経営学類4年、渡辺と申します。当時、浪江であるとか浜通りの方が実際どうなってるのか、そういう最新の情報って正直自分でもわかっていなかったりした事があったので、それをちゃんと正確に知る、そして発信してくって事が当時の自分には足りなかったのでそれを埋める存在としてアンバサダーズプログラムすごい私の役に立ってくれたなと思っています。

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フルジナ)ハンガリー出身のメーサーロシュ・フルジナです。いま国費留学生です。東日本大震災の時まだ高校生だった。で、原発事故があって、それを見て放射線がどういうことなのかあまりわからなかったし、大学に入って、留学、福島の大学に行くことに決まって、両親が「行かないで」と言われてて、何でそう思ってるかなと思って、で、福島に来てF.A.Pに参加して、いろいろ学んで、自分でハンガリーに帰って、自分の高校に戻って学生たちに、原発事故だけじゃなくて、津波とか地震とか何が起こったのかについて話ができて、良かったと思ってます。

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カナダ人の父と、日本人の母を持つマクマイケルさん、じつは5歳から8歳の3年間は、日本の徳島県で過ごしました。そしてその頃に読んだ伝記マンガで、「武士道」を英語で執筆して、海外に日本人の考え方を紹介した人物である「新渡戸稲造」に憧れ、稲造の、「願わくは、われ太平洋の橋とならん」という言葉に自分を重ね、いま、福島と世界を結ぶ懸け橋として、全力を傾けているのだといいます。そんなマクさんが手掛ける「Fukushima Ambassadors Program」ですから、参加した学生によると、“ハンパなく内容が濃い”ということなんだそうです。

◆◆

マク)ちょっと私の情熱が強すぎて、福島に対する内容ちょっと詰め込みすぎてるのかもしれません。朝から晩まで。

渡辺)でも本当に参加して絶対後悔のないプログラムだったと今でも思うので、機会があるなら後輩を押しのけてでも参加したいです。

高橋)学生じゃなきゃ参加できないですか?

マク)朝から夜までみっちりですけど、それでもよければ・・・。始発は基本ですよね。

高橋)えーっ、始発ですか・・・

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熱い思いを持って、福島の現状を正しく発信する、そして発信する人材を育てる・・・。福島大学、ウィリアム・マクマイケルさんが手掛ける、Fukushima Ambassadors Program。例年は夏の開催ですが、今年は東京オリンピックとの兼ね合いで、初めて秋の開催を目指しているのだそうです。最初のお話で、“福島は危険な場所だと誤解されていた”という話がありましたが、原発事故による放射線の値は、福島市内で事故直後の値5%未満にまで減っており、今は日本や世界の主要都市とあまり変わらないくらいになりました。福島県を訪れ宿泊した外国人の数も震災前以上になっています。ぜひ多くの学生さんにプログラムに参加して頂きたいと思います。

「Hand in Hand」、「福島を正しく世界へ発信する〜『Fukushima Ambassadors Program』」。

プログラムについては、福島大学ホームページにある、「Fukushima Ambassadors Program」のページをチェックしてみてください。

また復興庁のホームページ内にある「タブレット先生の『福島の今』」でも、今回の放送に関するレポートが掲載されます。ぜひこちらもご覧ください。

なお、復興庁では、福島の現状を広く世界に知ってもらうため、海外向けのTV番組を3月末に放送します。こちらについても詳しくは、「タブレット先生の『福島の今』」をご覧ください。

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「Hand in Hand」、今回も番組からの“お土産プレゼント”があります。今回は、福島県喜多方市の豆菓子専門店「おくや」のお豆、「健太豆10種ミックスうまいお豆」を、3名様にプレゼントします。

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ご希望の方は、番組ホームページのメッセージフォームから「健太豆希望」と書いてご応募ください。番組への感想など、メッセージもお待ちしています。


さて来週のテーマは、「トーチに掲げる思い〜東北を走る二人の聖火ランナー」。亡き家族を思い、福島県南相馬市と、宮城県石巻市を走る、二人の聖火ランナーのインタビューをお届けします。ぜひ来週も聴いてください。

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