世界でいちばん面白い街へ、石巻のまちづくり
東日本大震災からまもなくまる9年。被災3県の沿岸部は震災直後の「復興」をめざす段階から、町の活性化を推し進める段階へ変化しています。そこで今回クローズアップするのは、宮城県石巻市の中心市街地。このあたりは住民主体で計画的に復興が進み、若い世代が草の根的に街づくりに関わり次々と新しくて面白いプロジェクトが立ち上がっています。
案内してくださったのは、東日本大震災の直後、地元の若い世代とボランティアの方々が草の根的に始めたまちづくり団体ISHINOMAKI 2.0の代表・松村豪太さん。まちづくりの仕掛け人です。
ここは旧北上川のリバーサイド。川の堤防と合わせて、人々が憩える場所として水辺の空間が整備されていました。
「旧北上川は日本で5番目から6番目に長くて大きな川なんですが、堤防は震災前はなかったんですよ。これだけの規模の川では珍しいことです。もちろん堤防や防潮堤にはいろんな意見があります。今までは海や川との距離感が近いからよかったのに、そこに壁を作って良いのかという意見も当然あります。でも石巻は命を大事にするということで、ここに初めて堤防を作ったんですが、単なる水辺と町場の人の生業を分断するだけではなく、そこを人が気持ちよくお散歩したり、本来は水辺空間では非常に難しいんですが、市場をやったりキッチンカーを並べられるようなことが出来るようにと地元の人が協議会を作って決めました。それでこういう広くてとても気持ち良い場所になりました。」
川に船着き場を設けた「網地島ライン」。その舟で、猫の島として有名な田代島、網地島、牡鹿半島の鮎川まで行けるんです。本来、海沿いに船着き場があったのですが、地元の方のアイデアで「川を船が行き来する風景」を実現させたのだそう。
新しくできた「いしのまき元気市場」。1Fは地元の方のためのスーパーであり、観光客向けの地元産品もたくさんあるのですが、2Fは川を眺めながらのテラス席があるレストラン。「あら〜麺」という魚のアラで出汁とったラーメンに期待大!
もともと夜の飲み屋街が充実している町として有名な石巻。街中に復興のシンボルともいえる一軒のバーがあります。津波ですべてが流され、真っ暗になってしまった街で唯一明かりをともし、復興を目指す若者たちが語り合う場所となった伝説のバー。「石巻復興バー」です。
「ここは僕らの原点の1つですね。2011年の7月にオープンしました。もともと空き家だったバーを仲間たちと泥をかき、片付けて、プロの大工さんに手作りで壁を塗っでもらったりして作りました。ISHINOMAKI 2.0は「何かやってみたい」という人を応援しているんですが、そういう面白いベンチャーのみなさんが1日マスターをしてくれることも増えています。新しい石巻を象徴する場になれると良いなと思っています。」
石巻は大変歴史のある町で、江戸から明治にかけては水運交通、つまり物流の拠点として、さらに金華山沖の豊かな漁場による水産の町として発展。その象徴ともいえるのが「旧観慶丸(きゅう・かんけいまる)」です。
「昭和5年の築90年という歴史を持つ建物です。外から見ると洋風なんですが、実は和風の技術を取り入れている木造3階建ての建築なんですね。ここは石巻最初の百貨店だったというストーリーを持っているんですが、震災後、耐震補強で大きな柱を活かしながら鉄骨を入れて、文化交流スペースとして1Fを、2Fに石巻の毛利コレクションという文化コレクションと、この観慶丸に関する展示をしています。おそらくすごいお金持ちの方がここを作っていらっしゃって、米を江戸に運んでいる千石船という船の経営者が作ったんですが、壁のタイルは、タイルの専門家がわざわざ見に来るほど貴重なタイルがたくさんの種類貼られています。上の方にはキリンの絵を模したタイルが貼ってあったりとか、このタイルを探すだけで非常にワクワクした時間を費やせる場所ですね。」
宮城県石巻市、中心市街地。ここでは東日本大震災の直後、がれきだらけになった町で被災したお店の二階に若い世代が集まり、こんなことを語り合ったといいます。
『町を元に戻すのではなく、新しく生まれ変わらせよう。』こうして立ち上がったのが、ISHINOMAKI 2.0というまちづくり団体です。震災からまる9年。これからの石巻はどんな面白いものを生み出していくのでしょうか。
「僕らは世界でいちばん面白い街をつくろうというキャッチコピーを掲げています。そのスタートの段階から、石巻だけが復興すればいいとか、石巻を元の状態に戻したいという事は決して思っていなかったんですね。石巻は典型的な地方都市で、商店街がシャッター通りになっちゃって、若い人は出たまま戻らない。高齢化が進んで、面白そうな場所もほとんどないという状態でした。でも僕らは地方の楽しい暮らし方とか、地方で稼ぐというモデルを、この震源地にいちばん近い自治体からスタートしたいと思っています。実際、いろんな小さな面白いビジネスを起こす人たちが現れました。そして我々が意識的に発信していることが、石巻は“とりあえずやってみようイズムの街”ということ。しっかりと事業計画を立てて収支を計算してというのも大事ですが、震災後、とりあえずやってみることの大事さというのをいろんな人が気づきました。僕らは東京で「とりあえずやってみよう大学」という市民大学のプログラムも3年目になってやっているんですが、素敵な生業を広げている人たちのコツやストーリーを広げていきたいなと思っています。なので、とりあえずやってみようベンチャービジネスをわれわれは応援していますし、何よりも僕らがそういうとりあえずやってみる人たちが大好きなんです。普段から一緒にこの囲炉裏で飲んだりしています。」
ISHINOMAKI 2.0の拠点「IRORI」。被災したガレージをリノベーションして作ったスペースで、コワーキングスペース、レンタル会議室、ベンチャー・スタートアップの拠点として利用することが出来ます。実際、ここでスタートアップした若い起業家もいっぱいいるそうです。ここから石巻ならではの新しくて面白いものが次々生まれているんですね。
関連サイト
ISHINOMAKI 2.0の公式サイト
https://ishinomaki2.com/
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