- 2015.09.06
山の不思議なお話~マタギカメラマン田中康弘さん 2
今週も、貴方を不思議な世界へといざないます。
長年、マタギを追いかけ取材しているカメラマンが、東北のマタギたちから聞き取った、ちょっと背筋のゾクっとする体験談。まだまだ、たくさんあるんです。 今回は、その中でも日本の昔話や民話にたくさん登場する「キツネ」と「タヌキ」のお話です。
キツネやタヌキに化かされた・・・という昔話は、日本中どこにいっても、数えきれないほどあるのですが、実は現代を生きるマタギたちの中にも、キツネやタヌキに化かさた!という人がたくさんいるんです。

◆キツネに化かされる
秋田の辺りでは、色んな不思議なことが起きると、まずキツネのせいなんですね。例えばいつも行き慣れた道で絶対迷うことがない庭先みたいなところで迷うことがある。何故そうなったかよくわからないという場合、それは全部キツネに騙されたっていうことが多いんです。今でもまだ買いに来る人いるのかな?昔は、富山の薬売りが集落を回って熊の胆とか、熊の血から作った薬ですとか熊の油とかそういうのを買いに来てたんですよ。それで、富山の薬売りが阿仁の集落にやって来た時に、ある家に買いに来て、次はまた違う家に行く。すると突然その足取りが掴めなくなったことがあって、探したら、沢に入って水浴びをしていたんです。で、みんなで引き上げて聞いてみたら、道に綺麗な女の人がいて、手招きするんだと。それで、ついて行って、その人の家に行ってお酒飲んで、風呂入れっていうから風呂入ってたらそこで引っ張り上げられたっていうことを言ってた。それが20年ちょっと前ですから、そんな昔じゃないんです。
そういう話もあれば、林道にいたキツネを車で追っかけたら、夜にきれいな女の人がやってきて、連れまわされて酷い目に遭ったとか。キツネに酷い目にあわされるっていうパターンが東北の場合は圧倒的に多かったですね。
キツネは、キレイな女性に化けて出てくる・・・というパターンが多いそうなんです。そしてキツネに化かされた人は、命に関わるようなことに巻き込まれるケースもいろいろあると言います。今のお話のように化かされて川に入っていた、程度ならいいですが、真冬の雪山で、人を迷わせたりすることもあるというんです!
そんなキツネに対して。タヌキはちょっと違うみたいです。
◆木を切る?タヌキ
阿仁でくよくタヌキの話を聞いたんですが、山の中でタヌキが音を出すというんです。大抵は木を切る音の真似をするそうなんですよ。山で作業をしていると、山の中から、斧でコーンコンコーンっと木を切る音が山にこだまする、そしてドドッと倒れる音が聞こえる。そのうちそれが止むと、太鼓の音がするって言うんですよ。それで、こんなところで太鼓を叩くやつはいないから、あれはタヌキだって言うんです。
それが現在になるとチェーンソーになるんですよ。これも複数の人から聞いてる。営林場の人たちが山に入って作業をして、一休みをしていると反対側で誰かがチェーンソーを使って木を倒す音がする。でも自分たち以外に山に入っている人はいないということは、営林場の人だから知ってるわけですよ。そうすると「あれはタヌキだ。」っていう。その話は3人くらいに聞いてます。そういうのがよくあるらしいですね。
タヌキは基本的に北の方は音を立てるという話が多いです。東京でも、江戸の頃に本所の七不思議とかあるわけですが、その中にタヌキ囃子ってあるわけですよね。でも、それが四国の方まで行くと、タヌキが後ろからヒタヒタ付いてきたりとか、そういう風に変わるんですよね。東北のタヌキは姿が見えなくて音だけっていうパターンが多かったですね。
東京都墨田区本所。この地では、夜な夜な、どこからともなく聞こえる太鼓の音が、タヌキの仕業ではないかと騒動になったと言われています。また、「しょうじょうじのタヌキばやし」という歌がありますが、あれもやはり、タヌキがおなかをポンポコ叩く音をテーマにしたもの。それが現代ではチェーンソーを使うようになるんですね!
さてもう一つ。日本の怪談に必ず登場するものがあります。
「人魂」です。
◆火の玉
やっぱり光に関しては、これも地域によって人魂であるとか、火の玉であるとか、狐火であるとか色んな言い方があるんですよ。
やっぱりその形も千差万別で、巨大に伸びる光もあれば丸い光もあるし、横に伸びていくようなものとか色んな形があるんですね。
私が一番面白いなと思ったのは、阿仁の方で、いまは60代後半の方が中学生の時のお話で、その人の家は、本当に暗いところなんですよ、山の中だから。それで、あるの日真冬に深い雪の中を夜に歩いて帰っていた。途中にキツネが出ると言われている場所があって、そこを通るのが怖かったそうなんです。で、その場所を曲がった瞬間に目の前が一気に明るくなったそうなんです。びっくりして見てみると、夜店が6件ぐらい出てるんです。それがすごく明るくて、おもちゃや靴を売ってたりとかはっきり見えたそうです。「あれ?今日お祭りだったかな?」と思ってしばらく見てた。そしたらいきなりパッと消えたという。
そういう話もあれば、ある人は、家に帰る途中に沢があるんですが、その沢にたくさんの光があったって言うんですよ。最初は誰かが電気を持ち込んで、魚を獲るためにそういうことをしてるのかと思ったそうなんです。でもそんな大掛かりにやるわけもないし、まして夜、魚を獲るのは禁止されてますから、と思って見てたらやっぱりいきなり消えたんですね。
あとはそのよくあるのが火の玉。ふわふわ飛んでくる不思議なものというのも、あちこちで結構聞いて、大体はバレーボール程度っていうのが多いんですが、直径2mくらいあったという話も2か所くらいで聞きました。それも、人によっては赤っぽかったり、青っぽかったり、それからボウボウ音がしたって言う人もいるんですね。
昔から言われてるのが、火の玉の正体はリンが燃えたとかプラズマだとか言います。実際、そういう実験をして「ほら光った!」って見せるのはすごい容易いんだけど、ところが山でそういう物を見てる人たちには明らかに違うものなんですよ。見たという人の話では2mくらいの大きさで、ボウボウ燃えながら100mくらい移動してるわけですよね。リンが燃えたとかいうものとは明らかに違う。プラズマだって、全く違うものです。
でもそれはやっぱりわからないですよね。同時に2人の人が目撃しているケースもあるわけですよ。ですから多分いたんだろうなと思うんです。でもやっぱりそれは正体はわからない。
今回のお話いかがだったでしょうか。田中さんのお話はポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、ぜひ聞いてみてください!

『山怪 山人が語る不思議な話』 田中康弘(山と溪谷社)
【今週の番組内でのオンエア曲】
・Blackbird / Beatles
・いつでも誰かが / 上々颱風
長年、マタギを追いかけ取材しているカメラマンが、東北のマタギたちから聞き取った、ちょっと背筋のゾクっとする体験談。まだまだ、たくさんあるんです。 今回は、その中でも日本の昔話や民話にたくさん登場する「キツネ」と「タヌキ」のお話です。
キツネやタヌキに化かされた・・・という昔話は、日本中どこにいっても、数えきれないほどあるのですが、実は現代を生きるマタギたちの中にも、キツネやタヌキに化かさた!という人がたくさんいるんです。

◆キツネに化かされる
秋田の辺りでは、色んな不思議なことが起きると、まずキツネのせいなんですね。例えばいつも行き慣れた道で絶対迷うことがない庭先みたいなところで迷うことがある。何故そうなったかよくわからないという場合、それは全部キツネに騙されたっていうことが多いんです。今でもまだ買いに来る人いるのかな?昔は、富山の薬売りが集落を回って熊の胆とか、熊の血から作った薬ですとか熊の油とかそういうのを買いに来てたんですよ。それで、富山の薬売りが阿仁の集落にやって来た時に、ある家に買いに来て、次はまた違う家に行く。すると突然その足取りが掴めなくなったことがあって、探したら、沢に入って水浴びをしていたんです。で、みんなで引き上げて聞いてみたら、道に綺麗な女の人がいて、手招きするんだと。それで、ついて行って、その人の家に行ってお酒飲んで、風呂入れっていうから風呂入ってたらそこで引っ張り上げられたっていうことを言ってた。それが20年ちょっと前ですから、そんな昔じゃないんです。
そういう話もあれば、林道にいたキツネを車で追っかけたら、夜にきれいな女の人がやってきて、連れまわされて酷い目に遭ったとか。キツネに酷い目にあわされるっていうパターンが東北の場合は圧倒的に多かったですね。
キツネは、キレイな女性に化けて出てくる・・・というパターンが多いそうなんです。そしてキツネに化かされた人は、命に関わるようなことに巻き込まれるケースもいろいろあると言います。今のお話のように化かされて川に入っていた、程度ならいいですが、真冬の雪山で、人を迷わせたりすることもあるというんです!
そんなキツネに対して。タヌキはちょっと違うみたいです。
◆木を切る?タヌキ
阿仁でくよくタヌキの話を聞いたんですが、山の中でタヌキが音を出すというんです。大抵は木を切る音の真似をするそうなんですよ。山で作業をしていると、山の中から、斧でコーンコンコーンっと木を切る音が山にこだまする、そしてドドッと倒れる音が聞こえる。そのうちそれが止むと、太鼓の音がするって言うんですよ。それで、こんなところで太鼓を叩くやつはいないから、あれはタヌキだって言うんです。
それが現在になるとチェーンソーになるんですよ。これも複数の人から聞いてる。営林場の人たちが山に入って作業をして、一休みをしていると反対側で誰かがチェーンソーを使って木を倒す音がする。でも自分たち以外に山に入っている人はいないということは、営林場の人だから知ってるわけですよ。そうすると「あれはタヌキだ。」っていう。その話は3人くらいに聞いてます。そういうのがよくあるらしいですね。
タヌキは基本的に北の方は音を立てるという話が多いです。東京でも、江戸の頃に本所の七不思議とかあるわけですが、その中にタヌキ囃子ってあるわけですよね。でも、それが四国の方まで行くと、タヌキが後ろからヒタヒタ付いてきたりとか、そういう風に変わるんですよね。東北のタヌキは姿が見えなくて音だけっていうパターンが多かったですね。
東京都墨田区本所。この地では、夜な夜な、どこからともなく聞こえる太鼓の音が、タヌキの仕業ではないかと騒動になったと言われています。また、「しょうじょうじのタヌキばやし」という歌がありますが、あれもやはり、タヌキがおなかをポンポコ叩く音をテーマにしたもの。それが現代ではチェーンソーを使うようになるんですね!
さてもう一つ。日本の怪談に必ず登場するものがあります。
「人魂」です。
◆火の玉
やっぱり光に関しては、これも地域によって人魂であるとか、火の玉であるとか、狐火であるとか色んな言い方があるんですよ。
やっぱりその形も千差万別で、巨大に伸びる光もあれば丸い光もあるし、横に伸びていくようなものとか色んな形があるんですね。
私が一番面白いなと思ったのは、阿仁の方で、いまは60代後半の方が中学生の時のお話で、その人の家は、本当に暗いところなんですよ、山の中だから。それで、あるの日真冬に深い雪の中を夜に歩いて帰っていた。途中にキツネが出ると言われている場所があって、そこを通るのが怖かったそうなんです。で、その場所を曲がった瞬間に目の前が一気に明るくなったそうなんです。びっくりして見てみると、夜店が6件ぐらい出てるんです。それがすごく明るくて、おもちゃや靴を売ってたりとかはっきり見えたそうです。「あれ?今日お祭りだったかな?」と思ってしばらく見てた。そしたらいきなりパッと消えたという。
そういう話もあれば、ある人は、家に帰る途中に沢があるんですが、その沢にたくさんの光があったって言うんですよ。最初は誰かが電気を持ち込んで、魚を獲るためにそういうことをしてるのかと思ったそうなんです。でもそんな大掛かりにやるわけもないし、まして夜、魚を獲るのは禁止されてますから、と思って見てたらやっぱりいきなり消えたんですね。
あとはそのよくあるのが火の玉。ふわふわ飛んでくる不思議なものというのも、あちこちで結構聞いて、大体はバレーボール程度っていうのが多いんですが、直径2mくらいあったという話も2か所くらいで聞きました。それも、人によっては赤っぽかったり、青っぽかったり、それからボウボウ音がしたって言う人もいるんですね。
昔から言われてるのが、火の玉の正体はリンが燃えたとかプラズマだとか言います。実際、そういう実験をして「ほら光った!」って見せるのはすごい容易いんだけど、ところが山でそういう物を見てる人たちには明らかに違うものなんですよ。見たという人の話では2mくらいの大きさで、ボウボウ燃えながら100mくらい移動してるわけですよね。リンが燃えたとかいうものとは明らかに違う。プラズマだって、全く違うものです。
でもそれはやっぱりわからないですよね。同時に2人の人が目撃しているケースもあるわけですよ。ですから多分いたんだろうなと思うんです。でもやっぱりそれは正体はわからない。
今回のお話いかがだったでしょうか。田中さんのお話はポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、ぜひ聞いてみてください!

『山怪 山人が語る不思議な話』 田中康弘(山と溪谷社)
【今週の番組内でのオンエア曲】
・Blackbird / Beatles
・いつでも誰かが / 上々颱風