- 2015.07.12
コケのふしぎ1
夏を前に梅雨の長雨がうっとうしい季節です。
ただ、この長雨は、植物にとって恵みの雨。森の木々はもちろんですが、アスファルトのすみっことか、壁にくっついているあの植物たちも、濃い緑色に色づき始めています。
というわけで今日は、「コケ」のお話。
地べたなどに張り付いて、ちょっと地味な感じで生きているコケたちの、知られざる世界について、専門家に伺っていきます。
今回お話を伺ったのはコケの魅力に取りつかれた大学の先生。国立科学博物館・陸上植物研究グループ長で、東京大学の教授でもある、理学博士の樋口正信さんです。
スタジオに、コケの標本や、町中のコケを採取したサンプルをたくさんお持ちいただいて、コケたちの知られざる世界のお話色々教えてくださいました!!

-ここ、東京にはどのくらいの種類のコケがいるものなんですか?
日本には約1800種類のがコケが存在するといわれています。例えば皇居でコケの調査を国立科学博物館で行なったんですが、皇居の中には大体130種類ぐらいのコケがあるので、都内だけでも恐らく150とか60種類はあるのではないかと推測できます。
植物の進化とか適応ということを考えるのにコケ植物はとってもいい材料だと思います。陸上の植物、コケだとかシダとか種子植物の祖先は水中にいたわけですよね。それが陸上に上がってきて、今私たちが見ているような多様な植物に分かれたわけなんですけども、陸上に初めて出てきた形をある程度残しているのがコケ植物と考えられています。
コケ植物の体は小さくシンプル、簡単にできています。ですから体の中に取り込んだ水を保っておく働きがなく、周りが乾いたらすぐ乾いてしまう。ですから湿ったら光合成をして栄養を作る。乾いたら、水を失って死んでしまうのではなく休眠するんです。
よくコケを育てたいという相談があるんですね。歩いてたらきれいなコケがあったのでそれで家で育てたいと。でも難しいんです。それはやはり湿り気が一番ネックで、やはり私たちが住んでる場所というのは乾燥しやすいんですね。
-以前この番組でスキマの植物というのを取り上げてたことがあります。外壁やアスファルトの隙間に生えている植物のお話しだったのですが、コケもそういったスキマや暗い岩に張り付いているイメージです。
都市でスキマという環境は人間が作り上げた環境なので生物的にはゼロから始まっています。そこに生物が生える環境が次第にできていくわけです。例えば西ノ島のように海の中で火山ができて、島が段々大きくなっていく。ああいった場所に最初に生える生物は大体コケだとか地衣類だとか、そういう仲間です。
それは溶岩、あるいは都市のコンクリートでも同じだと思うんですけども、土壌とか栄養分っていうのはないんですよね。そこにコケや地衣が生えて成長し、そして段々枯れて腐っていって、それが飛んできた埃だとかによって土壌が形成されるわけですね。そういう土壌ができていくと、そこに種子植物の種子が飛んできて、ちょうど植木鉢に土壌を入れて水をやって芽を出して育てるように、スキマが自然の植木鉢みたいな状態になるわけですね。別にコケは自分でそういう働きをしようと思ってるわけではなくて、自分がただ合ってる場所で繁殖するだけなんですけども、それが他の生物のゆりかごのような環境を作るっていうことになるんだと思うんですね。
コケの中にはそういう無機質な、例えば火山から流れでた溶岩のような環境に生えるグループと、森林の中で、他の生物が利用していない場所を見つけて進出して発達していったグループがあり、それで世界に1万8千種もあるというなんですね。
-へえ~そうなんですね。コケはどうやって硬い岩や溶岩に張り付いているんですか?
私たちが衣食住に利用しているいわゆる種子植物は、体の造りが基本的に根と茎と葉という3つの部分ですね。コケはその中で根がありません。じゃあ水や養分はどうやって体に取り入れてるの?っていう疑問が湧くかと思うんですけども、それはもう体全体から吸収するということになるんですね。
そして根のもう一つの役割は体を固定することですね。大きな木が立ってられるのはしっかりした根を張っているからです。コケには実は仮根というものがあります。これは種子植物の根と違って養分、水分を吸い上げる機能はないんですけども、岩だとか木の幹だとかそういうものに体を付着、固定する役割がある。ですから例えば垂直なコンクリートの壁などにもコケは仮根で生えることができるんですね。土に生えているコケを引っ張って抜いてみるとわかるんですけども、土の中に仮根をびっしりと張り巡らせています。特にスギゴケの仲間はそれがしっかり発達します。
ちょっと話が逸れますけども、京都や奈良に行って古いお寺巡りをすると苔庭というものがあります。これは日本独自の庭を作る様式なんですけども、それに使われるコケの多くはスギゴケの仲間なんですね。それはもちろん芝状になって緑が綺麗だということもあると思いますが、もうひとつはやはり育てやすさですね。スギゴケは土にしっかり仮根で付いてるので取れないんですよね。ですから例えば散水してもその水の勢いでどこかに飛んでいってしまうということもないし、そういう育てやすい、見栄えがよいということでスギゴケが使われているんじゃないかなと思います。
-これから初めてコケを育ててみたいという人にはいいですね。
そうですね。スギゴケは流通栽培されて売られているので、もし興味があったら利用して自分の家で苔庭をチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
樋口正信先生のお話し、いかがだったでしょうか。
来週も引き続きコケのお話しをうかがっていきます。
【今週の番組内でのオンエア曲】
・Tシャツに口紅 / ハナレグミ
・Kiss You / One Direction
ただ、この長雨は、植物にとって恵みの雨。森の木々はもちろんですが、アスファルトのすみっことか、壁にくっついているあの植物たちも、濃い緑色に色づき始めています。
というわけで今日は、「コケ」のお話。
地べたなどに張り付いて、ちょっと地味な感じで生きているコケたちの、知られざる世界について、専門家に伺っていきます。
今回お話を伺ったのはコケの魅力に取りつかれた大学の先生。国立科学博物館・陸上植物研究グループ長で、東京大学の教授でもある、理学博士の樋口正信さんです。
スタジオに、コケの標本や、町中のコケを採取したサンプルをたくさんお持ちいただいて、コケたちの知られざる世界のお話色々教えてくださいました!!

-ここ、東京にはどのくらいの種類のコケがいるものなんですか?
日本には約1800種類のがコケが存在するといわれています。例えば皇居でコケの調査を国立科学博物館で行なったんですが、皇居の中には大体130種類ぐらいのコケがあるので、都内だけでも恐らく150とか60種類はあるのではないかと推測できます。
植物の進化とか適応ということを考えるのにコケ植物はとってもいい材料だと思います。陸上の植物、コケだとかシダとか種子植物の祖先は水中にいたわけですよね。それが陸上に上がってきて、今私たちが見ているような多様な植物に分かれたわけなんですけども、陸上に初めて出てきた形をある程度残しているのがコケ植物と考えられています。
コケ植物の体は小さくシンプル、簡単にできています。ですから体の中に取り込んだ水を保っておく働きがなく、周りが乾いたらすぐ乾いてしまう。ですから湿ったら光合成をして栄養を作る。乾いたら、水を失って死んでしまうのではなく休眠するんです。
よくコケを育てたいという相談があるんですね。歩いてたらきれいなコケがあったのでそれで家で育てたいと。でも難しいんです。それはやはり湿り気が一番ネックで、やはり私たちが住んでる場所というのは乾燥しやすいんですね。
-以前この番組でスキマの植物というのを取り上げてたことがあります。外壁やアスファルトの隙間に生えている植物のお話しだったのですが、コケもそういったスキマや暗い岩に張り付いているイメージです。
都市でスキマという環境は人間が作り上げた環境なので生物的にはゼロから始まっています。そこに生物が生える環境が次第にできていくわけです。例えば西ノ島のように海の中で火山ができて、島が段々大きくなっていく。ああいった場所に最初に生える生物は大体コケだとか地衣類だとか、そういう仲間です。
それは溶岩、あるいは都市のコンクリートでも同じだと思うんですけども、土壌とか栄養分っていうのはないんですよね。そこにコケや地衣が生えて成長し、そして段々枯れて腐っていって、それが飛んできた埃だとかによって土壌が形成されるわけですね。そういう土壌ができていくと、そこに種子植物の種子が飛んできて、ちょうど植木鉢に土壌を入れて水をやって芽を出して育てるように、スキマが自然の植木鉢みたいな状態になるわけですね。別にコケは自分でそういう働きをしようと思ってるわけではなくて、自分がただ合ってる場所で繁殖するだけなんですけども、それが他の生物のゆりかごのような環境を作るっていうことになるんだと思うんですね。
コケの中にはそういう無機質な、例えば火山から流れでた溶岩のような環境に生えるグループと、森林の中で、他の生物が利用していない場所を見つけて進出して発達していったグループがあり、それで世界に1万8千種もあるというなんですね。
-へえ~そうなんですね。コケはどうやって硬い岩や溶岩に張り付いているんですか?
私たちが衣食住に利用しているいわゆる種子植物は、体の造りが基本的に根と茎と葉という3つの部分ですね。コケはその中で根がありません。じゃあ水や養分はどうやって体に取り入れてるの?っていう疑問が湧くかと思うんですけども、それはもう体全体から吸収するということになるんですね。
そして根のもう一つの役割は体を固定することですね。大きな木が立ってられるのはしっかりした根を張っているからです。コケには実は仮根というものがあります。これは種子植物の根と違って養分、水分を吸い上げる機能はないんですけども、岩だとか木の幹だとかそういうものに体を付着、固定する役割がある。ですから例えば垂直なコンクリートの壁などにもコケは仮根で生えることができるんですね。土に生えているコケを引っ張って抜いてみるとわかるんですけども、土の中に仮根をびっしりと張り巡らせています。特にスギゴケの仲間はそれがしっかり発達します。
ちょっと話が逸れますけども、京都や奈良に行って古いお寺巡りをすると苔庭というものがあります。これは日本独自の庭を作る様式なんですけども、それに使われるコケの多くはスギゴケの仲間なんですね。それはもちろん芝状になって緑が綺麗だということもあると思いますが、もうひとつはやはり育てやすさですね。スギゴケは土にしっかり仮根で付いてるので取れないんですよね。ですから例えば散水してもその水の勢いでどこかに飛んでいってしまうということもないし、そういう育てやすい、見栄えがよいということでスギゴケが使われているんじゃないかなと思います。
-これから初めてコケを育ててみたいという人にはいいですね。
そうですね。スギゴケは流通栽培されて売られているので、もし興味があったら利用して自分の家で苔庭をチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
樋口正信先生のお話し、いかがだったでしょうか。
来週も引き続きコケのお話しをうかがっていきます。
【今週の番組内でのオンエア曲】
・Tシャツに口紅 / ハナレグミ
・Kiss You / One Direction