- 2015.04.05
南相馬市鎮魂復興市民植樹祭

今週は、番組で継続してお伝えしている「瓦礫を活かす森の長城プロジェクト」のレポートです。
このプロジェクトは、東日本大震災をきっかけに始まった森づくり運動です。
震災で発生した瓦礫を土と混ぜ、東北沿岸部に高さ5mほどのマウンドを築き、そこに常緑広葉樹の苗を植樹。これを育てることで、津波から命を守る、「森の防潮堤」を作ろうという活動です。
なぜ森なのかというと、その土地に元々根付く、土地本来の樹木を瓦礫の上に植えると、根が瓦礫を「つかむ」ように地面の下に広がります。その結果、津波の力でも壊れない 強い森になるんですね。
また、瓦礫を森の土台とすることで、震災のモニュメントにする、という意味もあるそうです。
すでに宮城県仙台市、岩沼市、そして福島県南相馬市では自治体も参加した森の防潮堤作りが進んでいます。
南相馬市では3月29日に2度目の植樹祭が行われました。福島県・南相馬市原町区萱浜で行われた「鎮魂復興市民植樹祭」。全国から、2900人のボランティアが集まり、植樹が行われました。植えられた樹木は、タブの木やシラカシなど16種類、2万本。これが、東北にもともと根付いていた樹木なんですね。

南相馬市では2013年に、萱浜から北へ10キロ離れた右田浜(みぎたはま)でも、2万本の植樹・森の防潮堤作りが行われており、これで2度目となります。
そして、今回の植樹会場には、このプロジェクトに賛同する著名人の方の姿もありました。
森の長城プロジェクト 理事で 東京大学教授 ロバート・キャンベルさんのお話です。
◆植樹祭に参加したロバート・キャンベルさん
目の前に海が拡がっていますが、今日はとても静かな海ですね。ここは津波の被害がとても大きかった地域ですけれども、復興のインフラの工事がすすんでいます。
ここから100mくらいのところに海がありますが、国土交通省がつくった土盛りがあって、ここが防潮堤になるところ。その内側にまた土盛りがあり、そこは林野庁の所轄で松を植えるそうです。そしてもう一つなかに県が管理をしている土地があって、そこにほっこりとしてマウンドをつくって、いろんな木の苗を皆さんと植えます。2~3年前に拾ったドングリを育てた、大切な苗を今日集まってくれたボランティアのみなさんと植えるんです。
ここにある苗は、秋に東北で拾ったドングリをポッド苗にして育てたものです。地元の木なので、この場所に適していて、長くこの地に育ち、次にまた津波が来た時にも耐える強さを持ちます。
拾ったドングリは仕分けをしましたが、これがすごく難しくて、カシだけでもシラカシ、アカガシ、アラカシなど、5種類くらいの、東北に適した木があります。ほかにもタブノキやダモ、スダジイなど色々な木を混ぜて植えます。材木を作るわけではないので、色んな木が競争しながら育っていけるように、ミックスして植えるんですね。
この森づくりは、植樹する前の段階からたくさんのボランティアの力を借りているんです。
まずドングリ拾い。これは東北のお寺や神社の森でボランティアの方が手分けして行っています。
そして、拾ったドングリは苗木に育てなければいけないわけですが、大量にあるので、全国各地のボランティアの方々がいったん預かります。例えるなら里子に出すようなことですね。
そして各地域で育った苗が、南相馬の土に植えられるんです。自分たちが拾ったどんぐりがほかの地域で育ち、また戻ってきて森になる…。キャンベルさんも感慨深そうでした。
続いて、南相馬市 桜井勝延市長のお話です。
◆桜井勝延市長
松だけでは守れないんじゃないかという思いがありました。実際、津波で松は流されてしまったんです。だから、松だけではなく広葉樹も一緒にやりましょうということです。昨年植えたものはしっかり根付いて育っています。
平成30年にはここで、天皇陛下をお迎えして全国植樹祭を計画していますので、その準備も含めて、こういう作業を積み重ねているということを全国の皆さんにもわかってもらえるとありがたいですね。
やはり亡くなられた方がたくさんいたので、亡くなられた方々の気持ちを忘れずに、私たちも生活をしていくことができればと思っています。
そして、植樹祭に参加した2900人のボランティアの方の中には、地元、南相馬市の参加者もいらっしゃいました。
津波の被害を受けた地元の土地に、津波から命を守るための「森をつくる」。それぞれの想いをうかがいました。
◆参加者の方の声
・元々すぐそばに家がありましたが、自宅は全壊し、お義母さんが犠牲になってしまいました。いまは津波の被害がなかった畑を宅地にして家を建てて住んでいます。次の世代に残したいということで、子どもたちと一緒に参加したんですが、全国からたくさんの方が来てくださって、南相馬のことを考えてくれている人がたくさんいるんだなあってうれしかったです。
・私たちが住んでいたところは65~66軒あったんですが、全部無くなりました。津波のときは着の身着のままで、跡を見たらなにもなくなっていました。一年くらいみんなと会ったり、話をすることがいやでした。やっぱりその時のことを思い出してしまいますから。でもやっとこうやってね…。
・堤防にしても、防風林にしても元々あったものだから、当然必要ですし、また地元ということで参加しました。もし同じような津波が来ても、これで防ぐのは難しいかもしれませんが、遅らせることはできると思います。いままでまっすぐ海が見えていたのが、少しずつ防風林であったり、堤防であったり、再建が進んでいます。まっすぐ海が見えるというのは、それはそれで気に入っていたんです。無くて不安だという人もいますが、ずっと毎日この海を見ているので、それが普通になってたなあと思いました。

今回は「瓦礫を活かす森の長城プロジェクト」の植樹祭の模様をお伝えしましたが、いかがでしたでしょうか。
「瓦礫を活かす森の長城プロジェクト」の活動については、ホームページ、Facebookでご覧になれます。興味のある方は、ぜひチェックしてみてください。
瓦礫を活かす森の長城プロジェクト→http://greatforestwall.com/
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【今週の番組内でのオンエア曲】
・ハイウェイ / くるり
・夕陽 / PUSHIM