さて、今週も引き続き、『歩く旅の本 伊勢から熊野まで』の著者で、作家の福元ひろこさんのお話、お届けします。
2010年、スペイン北部の世界遺産、サンティアゴ巡礼路・1000キロさらに三重県・伊勢神宮への道、世界遺産・熊野古道およそ220キロを全て徒歩で旅したという福元さんの、旅のお話、そして、旅の中で出会った「森」のお話です。

30代なかばの会社員時代、将来に想うところがあり、ヨーロッパ版お遍路さん「サンティアゴ巡礼路」や、伊勢、熊野の巡礼路の旅をスタート。「歩く旅」にハマってしまったという福元さん。
実は最初は、かなり行き当たりばったりだったそうです。
歩く旅の楽しさ、そして大変さについて、色々と語って頂きました。


◆ヨーロッパの巡礼路と日本の巡礼路
高橋:サンティアゴ巡礼路は1000km、熊野古道も200km以上ということで、トレーニングも相当されたんですか?
福元:伊勢路を歩いた時に関しては全くしていないです。なぜならば、行こうと決めてから出発までに時間がなかったから。
高橋:どのくらいだったんですか?
福元:2週間位ですね。サンティアゴを歩く前は低い山に登ったり、実際に自分が背負うのと同じ重さの荷物を背負って、都内を20kmくらい歩いたりしました。また、箱根の旧街道、箱根湯本から芦ノ湖のほうまでいく道も歩きました。ただ、それは途中でギブアップしました。だからトレーニングにはなってない(笑)荷物を背負っていたので辛くて、途中で断念しました。
だから、トレーニングと言っていいのかわかりませんが、それで重要だったのは、この重さは背負えないとわかったことですね。なので、さらに荷物を減らしました。不安になると人ってものを持ちたがるんですよね。不安が大きければ大きいほど荷物が重くなり、不安がないと荷物が軽いんですよね。本当に困ったときは現地調達すればいいんですけどね。
高橋:ヨーロッパの巡礼と日本の巡礼って、大きな違いはなんですか?
福元:いちばん大きな違いは、私が歩いたヨーロッパの道は有名な道で、世界中からの巡礼者がたくさんいましたが、伊勢路は歩いている人はそんなにいなかったということです。あとは自然も全然違いますね。だいたい同じくらいの時期に日本もヨーロッパも歩いたんですが、ヨーロッパのほうは乾いているんですよね。それに比べて日本の道は8月で真夏にもかかわらず、すごくしっとりしているというか、雰囲気が全く違いましたね。ヨーロッパのほうが開放的というか、パーンと開けている感じがするのに対して、熊野の語源は奥まっているとか、こもる場所という由来があるくらいな場所だからかもしれませんが、神秘的な雰囲気が濃かったですね。
高橋:本を読ませていただくと、熊野古道は峠が多かったりして、森の中を歩いているイメージがしたのですが、森という点では日本とヨーロッパの違いはありましたか?
福元:ヨーロッパで私が歩いた道は、森を通過することはほとんどないんですね。恐らくヨーロッパでは、赤ずきんちゃんのお話にもあるように、森って怖い存在、なにか魔的なものがあるので避けるべき、忌み嫌うものだと思うんですよ。だからおそらく巡礼の道もなるべく森を突っ切らなかったんじゃないかという感じがしています。
それに対して日本は、峠をガンガン突っ切っていくわけですが、日本って滝がご神体で神様だったり、自然の中に神様を見出す感覚があると思うんですね。だからなのか、日本の巡礼路は森のなか、山のなかにどんどん入っていきます。ヨーロッパでは避けるものというものに対して、日本では敬い、入れていただき、そこで清めさせていただいたりするものという感じがしましたね。
実際この伊勢路も峠に入った瞬間、空気が変わるんですよね。それはもちろん緑がいっぱいあるので、ひんやりして涼しくなるという感覚もあるんですけれども、それだけではなく、なんともいえない神聖な雰囲気、きっと昔の人もそこに神を感じたりしていたのかなと思いながら歩いていました。
高橋:女性一人で歩いていて怖いなと思うときってありませんでしたか?
福元:日本の峠を歩いている時は、毎日怖かったですね。
高橋:それって、何に対しての恐怖でしたか?
福元:色んな種類の恐怖がありましたね。ひとつは、女の鬼と書く「女鬼峠」という峠があるのですが、それは単に幽霊的なものに対する怖さがありました。地名って由来があるわけじゃないですか。なので、オドロオドロしい恐ろしさを抱えて歩いてました。
でも、峠によって個性が違うので、ある峠に入った時は、神秘的な、畏れ多いってよくいいますが、自然の持つ神々しさを感じる峠もありました。熊野の奥に入って行くと、そちらのほうが多いですね。だから、一人で歩いているということもありますが、峠に入るときは思わず「失礼します」みたいな、神社の鳥居に入っていくような気持ちになってしまいます。実際つぶやいていましたが(笑)
で、「無事歩かせてください」みたいな気持ちで、実際につぶやいたりして歩いたんですが、そうするとちゃんとそういうところにはお地蔵様があったりするんですよね。あとで地元の方に聞きましたが、道路にあるお地蔵様って、道を歩く旅人がちゃんと無事に歩けるようにって守ってくれるためにあるそうです。多分昔の人も、そういう畏怖の念を感じて、歩かせてくださいって思って歩いたんだろうな、というのが感じられる道でしたね。
高橋:そういうのも感覚が研ぎ澄まされて感じるようになってくるんでしょうね。
福元:それはあると思います。わたしも初日よりも2日目、2日目よりも3日目、3日目よりも7日目というふうに、歩く日を重ねるとどんどん敏感になっていく感じがしますよね。車できて、峠だけ歩かれる方とかもいらっしゃったんですが、それはそれで歩き方として、もちろんいいと思うんですが、やはり峠だけを歩くとなると、あまり異空間の体験はしづらいかもしれないですね。



今回ご紹介した内容はポッドキャストでも配信中です。
こちらもぜひお聞きください!

次回も福元ひろこさんのお話をお届けします。
どうぞお楽しみに。


【今週の番組内でのオンエア曲】
・ポピュラー・ソング with MIKA / Ariana Grande
・Shake It Off / Taylor Swift

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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