- 2014.02.09
北海道・知床 流氷ウォーキング
前回は、北海道・知床の森を歩くツアーをご紹介しましたが、今週は場所を森から海へと移し、もうひとつの知床の自然を体感できるツアーをご紹介します。

それが、流氷の上を歩く『流氷ウォーキング』です。
これは知床ナチュラリスト協会(通称シンラ)が企画しているもの。
北海道の東の端に突き出た細長い半島・知床半島は、オホーツク海からやってくる流氷が着岸する「南の限界点」として知られていますが、実際にその上を歩くツアーというのはどんなものなのか。
ツアーガイドの方に、文字通り「流氷の上」で教えてもらいました。
◆流氷ウォーキングとは?~ツアーガイドさんのお話
設立から十数年たつのですが、元々は全面結氷した氷の上を延々と歩くイメージで始めました。けれどもだんだん、流氷の数も減り、その時期も短くなり、遊び方も少しずつ変わってきています。
例えば、いま泳いでいる人がいますが、薄氷の張った海を泳ぐ。これは初期のツアーの中には入っていませんでした。しかし、時代とともに環境も変化していて、流氷の状態にあわせてツアーの内容をコーディネートしています。僕達も流氷に合わせてやっていくことしかできませんからね。

この時期に水に入ることは本来なら常識はずれですが、そこがやっぱり面白い。やってはいけないことをやるというのが一番面白い遊びですからね。
保温性に優れた素材のウェアを着るので、それほど寒くはありません。これさえ着ていれば、もしかすると流氷を伝って国後島まで行けるかもしれませんね。
流氷の中を泳ぐなんてびっくりですね!
ちなみに、「ドライスーツ」という防水・保温性に優れた全身ウェアを着るので、流氷のあいだの海に入っても寒くないんです。
でも、こんなことは17~18年前はできなかったそうです。
だんたん、流氷のあいだから海水が見えるようになってきているんだそうです。
いまは、「海に入れるように“なってしまった”」というべきかもしれません。
そんな流氷ウォークは様々な自然現象、そして海の生物にも出会えるんです。
◆厳寒の海にもいろいろな生き物が~ツアーガイドさんのお話
今は非常に透明度が高く、僕達が乗っている流氷の下は、近くに川が流れ込んでいることもあり、塩分濃度が薄い状態です。
港に近い方にいくと水深が7m~10mあり、大きなタラバガニが折り重なるようにたくさんいます。さっきも向こうの遠くの海面にアザラシが顔を出していましたが、厳寒の海でもいろんな生き物がひしめいています。さすがオホーツクという感じですね。
今は満潮の時間に差し掛かっていて、氷が潮に押し出されてずり上がっているような現象が起こっています。全体的に岸のほうへ押し寄せられていますね。こんな状態に出会うのはまれなことです。
ポッドキャストでは、この流氷が動く音もお届けしていますので、ぜひ聞いてみてください。
また、厳しい冬の海ですから、生き物も少ないのかとおもいきや、たくさんの生き物がいるんですね。先週ご案内した「知床の冬の森」も、様々な生き物がいるという話でしたが、海も同じなんですね。
その理由について、知床ナチュラリスト協会の元代表で、稚内北星学園大学講師の藤崎達也さんにお話を伺いました。
◇流氷がもたらす豊かな生態系~藤崎達也さん
知床は凍る海の南限といわれています。オホーツク海は、大陸と千島列島に挟まれた大きな湖のようになっていて、そこに豊富な水量を持つアムール川の淡水がどんどん注いでいくので塩分濃度がとても薄いんです。その塩分濃度の薄いアムール川の河口から氷がだんだん成長し、それが北風で南下する時に氷がさらに分厚く成長して、最後は知床に接岸します。
毎年冬になると流氷が接岸して海が閉じ、氷についてくるプランクトンが栄養分をたっぷり補給してくれます。そのサイクルは知床やオホーツク海沿岸の特徴です。
流氷を裏返すとわかるんですが、植物プランクトンがたくさん付いています。そしてそれを食べる動物性プランクトンがいて、それを食べるオキアミ、小魚がくっついてきて、それを食べる大きな魚がアザラシや鷲の糧となります。
また、流氷によって海底や岸の海藻が削られます。そうすると新たに昆布の新芽が生えてきて、それを食べるウニが増える。流氷がくることで毎年、生態系が活性化されているんです。

知床の海に潜って、下から流氷を見上げると、どう見えると思いますか。
真っ白…じゃないんです。黄緑色なんです。
実はこれが、植物プランクトン。
ユーラシア大陸を流れるアムール川が届けた森の栄養が、流氷となり、植物プランクトンを育て、それが様々な海の生き物のご飯になる。
海で育った鮭が川をのぼり、今度はクマをはじめ森の生き物のご飯になる。
食物連鎖の原点が、「流氷」にある、ということなんです。
◇生態系はとても繊細なバランス~藤崎達也さん
生態系は図でみると簡単ですが、本当に繊細で、どれかがかけると何かが崩れてしまいます。特にクマみたいな生態系の頂点にいる動物は、底辺にいる小さなプランクトンなどが豊富に揃っていないとてっぺんには立っていられません。クマや鷲、シャチなどは微妙な生態系の上にぎりぎり成り立っている動物だと思います。
流氷がなくなったらどういう生態系になってしまうのか、全然想像できませんね。
この辺りは北極のから届く寒気や氷の一番はじっこの場所なので、ここで暮らしていると温暖化などは如実に感じますね。
流氷が無くなったらどういう環境になってしまうのかわからないというお話は、私たちもよく覚えておかなければなりませんね。
流氷はもう知床に接岸していて、流氷ウォーキングはすでに始まっているそうです。例年通りであれば、3月下旬ころまで楽しめるそうです。
ぜひ体験してみてください!
→知床の自然体験ツアー|知床ナチュラリスト協会(シンラ)
【番組内でのオンエア曲】
・シロクマ / スピッツ
・Yellow / Coldplay

それが、流氷の上を歩く『流氷ウォーキング』です。
これは知床ナチュラリスト協会(通称シンラ)が企画しているもの。
北海道の東の端に突き出た細長い半島・知床半島は、オホーツク海からやってくる流氷が着岸する「南の限界点」として知られていますが、実際にその上を歩くツアーというのはどんなものなのか。
ツアーガイドの方に、文字通り「流氷の上」で教えてもらいました。
◆流氷ウォーキングとは?~ツアーガイドさんのお話
設立から十数年たつのですが、元々は全面結氷した氷の上を延々と歩くイメージで始めました。けれどもだんだん、流氷の数も減り、その時期も短くなり、遊び方も少しずつ変わってきています。
例えば、いま泳いでいる人がいますが、薄氷の張った海を泳ぐ。これは初期のツアーの中には入っていませんでした。しかし、時代とともに環境も変化していて、流氷の状態にあわせてツアーの内容をコーディネートしています。僕達も流氷に合わせてやっていくことしかできませんからね。

この時期に水に入ることは本来なら常識はずれですが、そこがやっぱり面白い。やってはいけないことをやるというのが一番面白い遊びですからね。
保温性に優れた素材のウェアを着るので、それほど寒くはありません。これさえ着ていれば、もしかすると流氷を伝って国後島まで行けるかもしれませんね。
流氷の中を泳ぐなんてびっくりですね!
ちなみに、「ドライスーツ」という防水・保温性に優れた全身ウェアを着るので、流氷のあいだの海に入っても寒くないんです。
でも、こんなことは17~18年前はできなかったそうです。
だんたん、流氷のあいだから海水が見えるようになってきているんだそうです。
いまは、「海に入れるように“なってしまった”」というべきかもしれません。
そんな流氷ウォークは様々な自然現象、そして海の生物にも出会えるんです。
◆厳寒の海にもいろいろな生き物が~ツアーガイドさんのお話
今は非常に透明度が高く、僕達が乗っている流氷の下は、近くに川が流れ込んでいることもあり、塩分濃度が薄い状態です。
港に近い方にいくと水深が7m~10mあり、大きなタラバガニが折り重なるようにたくさんいます。さっきも向こうの遠くの海面にアザラシが顔を出していましたが、厳寒の海でもいろんな生き物がひしめいています。さすがオホーツクという感じですね。
今は満潮の時間に差し掛かっていて、氷が潮に押し出されてずり上がっているような現象が起こっています。全体的に岸のほうへ押し寄せられていますね。こんな状態に出会うのはまれなことです。
ポッドキャストでは、この流氷が動く音もお届けしていますので、ぜひ聞いてみてください。
また、厳しい冬の海ですから、生き物も少ないのかとおもいきや、たくさんの生き物がいるんですね。先週ご案内した「知床の冬の森」も、様々な生き物がいるという話でしたが、海も同じなんですね。
その理由について、知床ナチュラリスト協会の元代表で、稚内北星学園大学講師の藤崎達也さんにお話を伺いました。
◇流氷がもたらす豊かな生態系~藤崎達也さん
知床は凍る海の南限といわれています。オホーツク海は、大陸と千島列島に挟まれた大きな湖のようになっていて、そこに豊富な水量を持つアムール川の淡水がどんどん注いでいくので塩分濃度がとても薄いんです。その塩分濃度の薄いアムール川の河口から氷がだんだん成長し、それが北風で南下する時に氷がさらに分厚く成長して、最後は知床に接岸します。
毎年冬になると流氷が接岸して海が閉じ、氷についてくるプランクトンが栄養分をたっぷり補給してくれます。そのサイクルは知床やオホーツク海沿岸の特徴です。
流氷を裏返すとわかるんですが、植物プランクトンがたくさん付いています。そしてそれを食べる動物性プランクトンがいて、それを食べるオキアミ、小魚がくっついてきて、それを食べる大きな魚がアザラシや鷲の糧となります。
また、流氷によって海底や岸の海藻が削られます。そうすると新たに昆布の新芽が生えてきて、それを食べるウニが増える。流氷がくることで毎年、生態系が活性化されているんです。

知床の海に潜って、下から流氷を見上げると、どう見えると思いますか。
真っ白…じゃないんです。黄緑色なんです。
実はこれが、植物プランクトン。
ユーラシア大陸を流れるアムール川が届けた森の栄養が、流氷となり、植物プランクトンを育て、それが様々な海の生き物のご飯になる。
海で育った鮭が川をのぼり、今度はクマをはじめ森の生き物のご飯になる。
食物連鎖の原点が、「流氷」にある、ということなんです。
◇生態系はとても繊細なバランス~藤崎達也さん
生態系は図でみると簡単ですが、本当に繊細で、どれかがかけると何かが崩れてしまいます。特にクマみたいな生態系の頂点にいる動物は、底辺にいる小さなプランクトンなどが豊富に揃っていないとてっぺんには立っていられません。クマや鷲、シャチなどは微妙な生態系の上にぎりぎり成り立っている動物だと思います。
流氷がなくなったらどういう生態系になってしまうのか、全然想像できませんね。
この辺りは北極のから届く寒気や氷の一番はじっこの場所なので、ここで暮らしていると温暖化などは如実に感じますね。
流氷が無くなったらどういう環境になってしまうのかわからないというお話は、私たちもよく覚えておかなければなりませんね。
流氷はもう知床に接岸していて、流氷ウォーキングはすでに始まっているそうです。例年通りであれば、3月下旬ころまで楽しめるそうです。
ぜひ体験してみてください!
→知床の自然体験ツアー|知床ナチュラリスト協会(シンラ)
【番組内でのオンエア曲】
・シロクマ / スピッツ
・Yellow / Coldplay