先週に引き続き、『虚構の森』という本を出されたばかり、
森林ジャーナリスト・田中淳夫さんのインタビューです。
虚構の森。このタイトルのとおり、私たちが森や自然に関して、
当たり前だと思っていることについて、この本は「本当にそうなのか」と
疑問を投げかけています。例えば、森はCO2を固定するという“常識”。
実はこれも、必ずしもそうではないコトもあるらしい・・・今日はそんなお話です。




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高橋:田中さんは本を出されたばかりで、
その本が「虚構の森」。この本では、わたしたちたちが信じて疑わない環境問題の
「常識」について、果たして本当にそうか、という目線を向けている。
例えば。最近は気候変動問題を巡って、「森」の存在が重要視されていますがここにも、
我々が誤解していることがある。例えば森がCO2を固定しているとは限らないのでしょうか?


田中:一般に言えば植物は光合成で
二酸化炭素を吸収して成長すると思われていますね。
1本の木だったらそういってもよろしいんですが
森は樹木だけでは無いですよね。
昆虫や野生動物もいますが意外と気がついていないのが
菌類なんですね。キノコやカビ。
小さくてあまり気がつきませんがものすごい量の菌糸が
森の中に広がっているんですね。
そういった菌類は例えば落ち葉や倒木を腐らせるわけです。
どんどん分解していく。
その過程ではCO2を発生させているんですね。
ですから森全体で見ると実は光合成で吸収している部分と
同時に菌類が呼吸をするとことで放出している面もあるわけですね。
全体としては± 0と言うことになります。
吸収している分と発生している分はほぼ一緒なので
ほぼゼロですが森としては生産と消費を一緒にやっている形ですよね。
ただ最近温暖化していますよね。
土の中にある腐葉土がどんどん分解速度が速くなっているんです。
そうしたらもしかしたら発生する量が多くなっているかもしれなくて
むしろ二酸化炭素を出しているかもしれないですよね。


高橋:でも森がCO2を固定しているとは限らないという事は、固定している段階もありますか?

田中:基本的には森が成長している、
面積が増える、そこに生えている木が太くなって森の持っている
バイオマス量が増えている場合は
当然二酸化炭素をどんどん体に吸収して、
その分が体になっているわけですから吸収していることになります。
だから森の面積が増えて初めて
二酸化炭素を吸収していると言えるので、
面積が全然変わらない状況だと± 0なんですね。。


高橋:あと、森が土砂災害が防いでいるとも限らない>

田中:森といっても放って置くとうっそうとしますよね。
中に光が入らず暗くなる。
地面に草が生えていないケースが結構ありますよね。
そういうところに雨が降ったらどうなるか。
森があれば雨が地面に直撃しないので土砂流出を起こさない
というイメージがありましたが、
ところが樹木の葉っぱに落ちた雨粒は枝葉にたまるわけですね。
零点何ミリの小さな雨粒が枝や葉っぱにたまってボトッと落ちる。
そうすると数ミリの大きな水滴が地面に落ちて
地面をえぐるわけですよね。
逆に土砂を流してしまうこともあり得ます。
だけど、もしそこに草が下草が生えていたら
土砂はあまり影響受けないですよね。
実は草が生えていることが重要なんですよ。
草が生えている森はそういう意味で防災にもなるかもしれないけれども
あまりにもうっそうとしていて草が生えていない状態だと
災害を起こす可能性があるかもしれないですね。


高橋:うっそうとして人の手が入っていないところでびっくりするくらい「昼間でも暗いし、下草なんて生えていないじゃないですか?

田中:むしろそういう森の方が歩きやすいんです。
草が生えていないから。


高橋:自分がアリになるとわかりますけど、上から大きい雨粒が落ちてくるのか、傘のように下草があって分散されて落ちてきますか?

田中:アリとしても0.1ミリの雨粒なら
良いかなと我慢できるけど、1ミリの雨粒が落ちてきたら
潰れるかもしれない。そういう感じですよね。


高橋:田中さんから全国の森を見ると、暗くて下草が生えていない森が多いイメージですか?

田中:多いですね。
杉林が暗いというのもありますが、
スギやヒノキは人工林で人が手を入れることもあるんですよね。
でも実は雑木林、里山の方が全然手を入れていないです。
そこの方が結構暗くて草が全然生えていない山もいっぱいあります。


高橋:家でも見た目はこんもりしている感じ?

田中:外から見るとこんもりして良いんですけどね、
中に入ったら寒々とした感じでむしろ暗くて不気味な森ですよね。
だから手を入れるかどうかは別として森さえあれば
防災になると言うものでもないという事ですね。


高橋:世界的に見て森はどんどん減っているとも限らない?

田中:世界中で森がなくなっているように見えるんですけど、
ネイチャーが35年間の間に森の面積がどう変わったかを
衛星画像で調べたんですね。
人工衛星が地球を撮って写っているどこが森なのか調べていくと、
7%増えていたんですね。
面積にしたら2,400,000平方キロメートルなので
日本列島が6個から7個入るくらい増えていたんですよ


高橋:全くその印象がなくて同じくらい減っているかと?

田中:減っているのは熱帯地方。
アマゾンだとか東南アジア、ボルネオ、アフリカ。
実は温帯では増えているんですね。日本も含めて。
実は一番増えているのは中国なんですね。
中国は国策としてものすごい大造林をやっているんですね。
毎年日本列島の何分の1ずつ増えている感じで木を植えているので
スケールが全然違うんです。1,000,000ヘクタールくらい
毎年増えているので地球全体としては植林したところが多く
全体としては増えていることになりますね。


田中:あくまで林業ですから広葉樹であっても
育ったら木材として使う。
じゅんじゅんに使うようにしていこうと言う事ですね。


高橋:本当に日本の森って高速道路を走ってると杉林が多いじゃないですか。それがもしその考えが浸透すると、こんもりした、いろんな樹木が生えた森になる可能性もありますね

田中:中国はなぜ増えているのか、
国策でこれまであまりにも砂漠が広まってしまって、
農地もなくなって黄砂も起こる。
そこで森を増やせという運動になっているんですね。
戦後すぐに森林率が7%くらいだったのが
20%超えていますからものすごい勢いで増やしているのは
間違いないですね。
他にもインドもどんどん増えていますし中南米でも
シリアアルゼンチンは植えているところが多いですし、
結構植林が進んでいるんですね。
そう考えていくと単純に面積で見れば地球上の森は
増えているんですね。


高橋:それはすごい良いニュース!

田中:悪いことではないです。
ただしいま言ったように人が植えた森ですよね。
しかも1種類が2種類だけを植えるんです。
日本だったら杉やヒノキ、中国はポプラやユーカリ、アカシア。
少ない種類ばかりを植えてもあまり森林生態系としては
褒められたものじゃないぞと言うことになりますよね。
結局、適地適木なのでその土地に合った木を植えないと
枯れたりちゃんと育たなかったりしますよね。
砂漠に木を植えるのはおかしいと思いませんか。
だって砂漠って水がないから砂漠なんでしょう。
そこに木を植えて植物は一体どうやって水を手に入れるのか
という感じですよね。植えたときに一生懸命地下水を組み上げて
水をあげているんですが、それでようやく育っている感じなので
砂漠に木を植えても育たないです。
本当のこというと砂漠に木を植えるのは無駄なので、
かつて木が生えていた地域で、
切ってしまってなくなったところに植えるのが正しいんですね。


田中:世界的な潮流として木を植える流れにはなっているんです。
そうですね。変な言い方ですが国が安定すると植えるんです。
貧しい国は残念ながら植えられないんですね。
それは後回しになって、
むしろ森を開発して農地に変えたほうが儲かるとか
そっちに行きますので。
本当はもうちょっと豊かになったら
木を植えだすんじゃないかと思いますけどね。


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高橋: 森林ジャーナリスト 田中淳夫のインタビューお聴きいただきました。
来週も引き続き田中敦夫さんのインタビューお届けしました。
田中さんは本を出したばかりです。


『虚構の森』。新泉社から出ているこの本は、
環境問題をめぐる常識、誰もがそうだと思っている情報が
実は必ずしも正しいとは限らない・・・そんな事例が数多く書かれています。
そして今回、この本を番組お聴きの方の中から3名様にプレゼントします。
欲しい方は、番組HPのメッセージフォームから「田中さんの本・希望」と
書いてメッセージをお寄せください。




【今週の番組内でのオンエア曲】
・Coffee Excess feat. Orono (Superorganism) & Lennon/mabanua
・Want You Back/Haim

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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