- 2020.08.02
バットフィッシャー・アキコさんインタビュー4
きょうもバットフィッシャーアキコさんのお話です。
ガラパゴスバットフィッシュを追いかけ単身ガラパゴスへわたり、思いがけず、ガラパゴスの生態系の保全・研究を行う機関チャールズダーウィン研究所で働くことになったバットフィッシャーアキコさん。現地では、ガラパゴスの「固有種」「在来種」を守るための様々な取り組みを手伝っていたと言います。
よく、独自の進化を遂げた生き物の代表例として挙げられることも多いガラパゴスの固有種ですが、なぜこの場所だけがそういう生き物が多いのか。
それを“守る”立場でもあるアキコさんに伺いました。

ガラパゴス諸島の特徴として、全てが海底火山の隆起で生まれた海洋島なんですよ。なのでそれまで一度も大陸とつながったことがなく、それぞれの島が独立して生まれた状態なんです。地続きだった島が後に分化した集合体であれば、似通ったものがあってもおかしくないんですけれども、基本的にはそれぞれが独立した島。海を挟んでしまうとなかなか生き物は渡れない。渡れるとしたら飛べる鳥ですけど、爬虫類は基本的には泳いで渡るという事は難しいじゃないですか。ガラパゴス諸島のそれぞれの島の中でも固有の生態系があるのはそういう成り立ちであったり、海に囲まれているからという要因も大きいと思います。
~今は船などで人の移動もあるので、ガラパゴスの自然を守るのは大変じゃないですか。
人の往来があるというのは、それだけ何かしらの外来種を運んでしまうという事は否めないので、ガラパゴスでは検疫をすごく徹底しているんですね。同じ諸島内でも、島から島へ移動するときにはちゃんと一人一人検疫を受けないといけなくて、荷物は全て開けて検査され、有機物を持ち込んでいないか、中に生き物がいないか、植物の種ひとつでも別の島に移動させてはいけないということを徹底しています。ですので、だいぶ食い止められている点はあるんですけれども、それでもやっぱりかいくぐってしまうものというのがどうしても中にはあるので、それの対策に追われている面はありますね。
~どういったものが入ってきてしまうんですか。
植物の種ももちろんありますし、最も問題視されているのがブラックベリー。スカレシアと言う植物を駆逐してしまっているのがブラックベリーで、繁殖力が凄く強いんです。スカレシアの森や林をどんどんブラックベリーが埋め尽くしてしまっているという形が今の大きな課題の1つで、ネズミの問題も大きいです。ネズミは船のコンテナとかに混ざってしまって、それがガラパゴス諸島の島に上陸して、例えばウチワサボテンだったり、そういったものを食べてしまいます。そしてサボテンが枯れてしまうといったような悩ましい外来種の問題と言うのはあります。
~そんな中でもガラパゴスの方々はなんとか守ろうとしているわけですね。
可能な限りの検疫を行い、諸島内でもチャールズダーウィン研究所だったりガラパゴス国立公園局だったりが保全にすごく力を入れていて、外来種の問題はあるんですけれども、それをどうにか駆逐したり食い止められるような努力を重ねています。いま危機に瀕している固有種や在来種を頑張ってもとの数に戻そうということを精力的に行っています。
~私たち人間が外来種を持ち込まないように気をつけることで数は戻ったりするんですか。
私もガラパゴスヴェルデ2050というプロジェクトに行った時に、固有種のウチワサボテンをあつかっていたんですけれども、サウスプラザ島と言う小さな島があって、そこに外来種のネズミがコンテナなどの要因で上陸してしまって、そのネズミにサボテンの根本がかじられて、島にあった7割のサボテンがなくなってしまったという過去があるんです。それを私が所属していたプロジェクトでは、サボテンの種を採取して苗床で大事に育てて、ある程度の大きさになったらもう一度もとの島に返して、それをまた1ヵ月ごとにモニタリング調査を重ねて、本来の数に戻すという活動が行われています。それは着々と実を結んでいますね。数もしっかり増えていって、そうするとサボテンの保全保護を行っているだけではなく、それを取り巻く他の生き物たちにも影響を及ぼしています。その島ではサボテンの大半がなくなってしまったことで、その上に巣を作るガラパゴスノスリが姿を消してしまったんですが、今その島に行くと戻ってきているんですよ。上空を旋回していたり、島の片隅に止まっていたりして、戻ってきたぞというのが目に見えて分かっていくというのがすごくやりがいがありました。
~最終的にネズミはどうしたのでしょうか。
捕獲だったり、生態系に影響を及ぼさないネズミに効力のあるようなものを試行錯誤して、今はその島からは絶滅しました。
~再び持ち込まないことが絶対に必要ですね。
もともとのガラパゴス諸島の生態系として、かなり独特なんですけれども、大型の肉食哺乳類が存在しないんですね。肉食哺乳類として存在するのは強いて言えばアシカ。アシカが海で食事をするので、陸上に関しては肉食の哺乳類がいません。ですので、食物連鎖の頂点が猛禽類のノスリです。つまり大きい肉食の哺乳類がいないとそれだけのんびり暮らせる生き物が増えるというか、ノスリもイグアナなんかを食べるんですけれども、狙われるので本当に小さいうちなので、ある程度の大きさになっちゃうと天敵がいない状態なんですね。こういう言い方をするとアレですけど、ぬくぬくした環境の中にいるガラパゴスに、猫だとか犬だとかが持ち込まれていて、それ野生化してしまうと海イグアナを襲ったり、固有種の鳥を襲ってしまったり、それで絶滅に追いやられるというのも可能性としてはあるわけなんですよね。ですので、できるだけ野良猫や野良犬は捕獲して避妊去勢手術を行って、里親を探すという活動が実際に行われていたします。独自の生態系は、別の角度から見ればもろい生態系ではあるので、そういった肉食の哺乳類が入ってきてしまった場合には、もう大変な脅威ですね。
バットフィッシャーアキコさんのお話、来週も続きをお届けします。
【番組内でのオンエア曲】
・我が心のピンボール / 大滝詠一
・サンダー / Imagine Dragons
ガラパゴスバットフィッシュを追いかけ単身ガラパゴスへわたり、思いがけず、ガラパゴスの生態系の保全・研究を行う機関チャールズダーウィン研究所で働くことになったバットフィッシャーアキコさん。現地では、ガラパゴスの「固有種」「在来種」を守るための様々な取り組みを手伝っていたと言います。
よく、独自の進化を遂げた生き物の代表例として挙げられることも多いガラパゴスの固有種ですが、なぜこの場所だけがそういう生き物が多いのか。
それを“守る”立場でもあるアキコさんに伺いました。

ガラパゴス諸島の特徴として、全てが海底火山の隆起で生まれた海洋島なんですよ。なのでそれまで一度も大陸とつながったことがなく、それぞれの島が独立して生まれた状態なんです。地続きだった島が後に分化した集合体であれば、似通ったものがあってもおかしくないんですけれども、基本的にはそれぞれが独立した島。海を挟んでしまうとなかなか生き物は渡れない。渡れるとしたら飛べる鳥ですけど、爬虫類は基本的には泳いで渡るという事は難しいじゃないですか。ガラパゴス諸島のそれぞれの島の中でも固有の生態系があるのはそういう成り立ちであったり、海に囲まれているからという要因も大きいと思います。
~今は船などで人の移動もあるので、ガラパゴスの自然を守るのは大変じゃないですか。
人の往来があるというのは、それだけ何かしらの外来種を運んでしまうという事は否めないので、ガラパゴスでは検疫をすごく徹底しているんですね。同じ諸島内でも、島から島へ移動するときにはちゃんと一人一人検疫を受けないといけなくて、荷物は全て開けて検査され、有機物を持ち込んでいないか、中に生き物がいないか、植物の種ひとつでも別の島に移動させてはいけないということを徹底しています。ですので、だいぶ食い止められている点はあるんですけれども、それでもやっぱりかいくぐってしまうものというのがどうしても中にはあるので、それの対策に追われている面はありますね。
~どういったものが入ってきてしまうんですか。
植物の種ももちろんありますし、最も問題視されているのがブラックベリー。スカレシアと言う植物を駆逐してしまっているのがブラックベリーで、繁殖力が凄く強いんです。スカレシアの森や林をどんどんブラックベリーが埋め尽くしてしまっているという形が今の大きな課題の1つで、ネズミの問題も大きいです。ネズミは船のコンテナとかに混ざってしまって、それがガラパゴス諸島の島に上陸して、例えばウチワサボテンだったり、そういったものを食べてしまいます。そしてサボテンが枯れてしまうといったような悩ましい外来種の問題と言うのはあります。
~そんな中でもガラパゴスの方々はなんとか守ろうとしているわけですね。
可能な限りの検疫を行い、諸島内でもチャールズダーウィン研究所だったりガラパゴス国立公園局だったりが保全にすごく力を入れていて、外来種の問題はあるんですけれども、それをどうにか駆逐したり食い止められるような努力を重ねています。いま危機に瀕している固有種や在来種を頑張ってもとの数に戻そうということを精力的に行っています。
~私たち人間が外来種を持ち込まないように気をつけることで数は戻ったりするんですか。
私もガラパゴスヴェルデ2050というプロジェクトに行った時に、固有種のウチワサボテンをあつかっていたんですけれども、サウスプラザ島と言う小さな島があって、そこに外来種のネズミがコンテナなどの要因で上陸してしまって、そのネズミにサボテンの根本がかじられて、島にあった7割のサボテンがなくなってしまったという過去があるんです。それを私が所属していたプロジェクトでは、サボテンの種を採取して苗床で大事に育てて、ある程度の大きさになったらもう一度もとの島に返して、それをまた1ヵ月ごとにモニタリング調査を重ねて、本来の数に戻すという活動が行われています。それは着々と実を結んでいますね。数もしっかり増えていって、そうするとサボテンの保全保護を行っているだけではなく、それを取り巻く他の生き物たちにも影響を及ぼしています。その島ではサボテンの大半がなくなってしまったことで、その上に巣を作るガラパゴスノスリが姿を消してしまったんですが、今その島に行くと戻ってきているんですよ。上空を旋回していたり、島の片隅に止まっていたりして、戻ってきたぞというのが目に見えて分かっていくというのがすごくやりがいがありました。
~最終的にネズミはどうしたのでしょうか。
捕獲だったり、生態系に影響を及ぼさないネズミに効力のあるようなものを試行錯誤して、今はその島からは絶滅しました。
~再び持ち込まないことが絶対に必要ですね。
もともとのガラパゴス諸島の生態系として、かなり独特なんですけれども、大型の肉食哺乳類が存在しないんですね。肉食哺乳類として存在するのは強いて言えばアシカ。アシカが海で食事をするので、陸上に関しては肉食の哺乳類がいません。ですので、食物連鎖の頂点が猛禽類のノスリです。つまり大きい肉食の哺乳類がいないとそれだけのんびり暮らせる生き物が増えるというか、ノスリもイグアナなんかを食べるんですけれども、狙われるので本当に小さいうちなので、ある程度の大きさになっちゃうと天敵がいない状態なんですね。こういう言い方をするとアレですけど、ぬくぬくした環境の中にいるガラパゴスに、猫だとか犬だとかが持ち込まれていて、それ野生化してしまうと海イグアナを襲ったり、固有種の鳥を襲ってしまったり、それで絶滅に追いやられるというのも可能性としてはあるわけなんですよね。ですので、できるだけ野良猫や野良犬は捕獲して避妊去勢手術を行って、里親を探すという活動が実際に行われていたします。独自の生態系は、別の角度から見ればもろい生態系ではあるので、そういった肉食の哺乳類が入ってきてしまった場合には、もう大変な脅威ですね。
バットフィッシャーアキコさんのお話、来週も続きをお届けします。
【番組内でのオンエア曲】
・我が心のピンボール / 大滝詠一
・サンダー / Imagine Dragons