- 2017.10.22
自然写真家・高砂淳二さんインタビュー4
地球全体をフィールドに撮影を続ける自然写真家・高砂淳二さんのインタビューを数回に分けてお聴きいただいてきました。
進化の理屈ではとても説明できないような不思議な生き物の話。コスタリカの森の多様性、ハワイの森にいるという精霊の話。カナダで出会ったカメラ目線のグリズリーのお話・・・など、本当に面白いお話、たくさん聞かせてもらいましたが、最後は、40年ちかく世界の自然を見つめてきた高砂さんが思う「日本の自然」の魅力です。

国内で好きで撮影に行くのは小笠原とか沖縄とか行きますけども、小笠原は秋とかいいんですよ。9~10月はマッコウクジラが見やすくなる季節なんです。マッコウクジラを見られるところというのは、世界的にもすごく限られていて、マッコウクジラは500~1000mの深さまで潜って、ダイオウイカを食べるんですよ。小笠原のあたりは一気に1000mくらい落ちているドロップオフがあるんですね。ですからちょうど、マッコウクジラたちには絶好のポイントなんです。それで、9月~10月くらいになると台風も収まって、マッコウクジラを見やすい時期に入るんです。
マッコウクジラっておもしろくって、クジラやイルカの仲間は超音波を出して、それで透明度の低い海の中でも、超音波の跳ね返ってくるものを聴いて周るの状況を把握するんですが、マッコウクジラは深海に潜るということもあって、その超音波がすごく鋭いんです。クリック音というのですが、「クリッ、クリッ」って音波を出します。それで、全然姿が見えないような向こうから、クリック音を僕に浴びせかけてくるんですよね。で、だんだん近づいてきて、やっと姿が見えるくらいになると、その「クリッ、クリッ」っていう音が体の中に響くような、刺さるような感じになって、「俺のことをスキャンしてる!」みたいな気になります。それはもう、動物の能力ってすごいなって思いますよね。
マッコウクジラは、こちらに興味があっても警戒心が強いので、こちらから向こうに泳いでいくと、すぐに進路を変えたり、潜っていってしまいます。だから、ひたすら水に溶け込むようにして、じっと待っているんです。その間、僕に超音波を浴びせかけて、スキャンしながら見ているんですよね。
マッコウクジラは四角いユニークなおでこの顔なんですが、その頭がズーンと近づいてきて、まるで魚雷みたいです。それで、ある程度まで来て、こちらがどういうものかわかると、すっと潜っていったり、進行方向を変えたりします。好奇心が満たされて警戒心が出てくるんですね。でも向こうが落ち着いているときだと、ふわっと浮かんでいてくれたりしますね。マッコウクジラの体は深く潜れるようになっていて、胸ビレなんかもピタッとくっつけることができて、本当に魚雷型になれるんですよ。
~怖くはないんですか?
怖くはないですね。でも向こうが怒っていたら何するかはわからないですよね。ハクジラという種類はそういうことをする可能性もあるんです。でもこちらが、何もしなければ、危害を加えられることはないと思っていますけどね。でもすごく興奮しているんですよ。心臓もドキドキしているし、もっと近くまで来てくれって。
~なんだかその気持もクリック音で見透かされてしまいそうですね。
本当ですね。イルカなんかも超音波でお腹の中に赤ちゃんがいることがわかって、優しく来たりもすると言われていますね。面白いですよね。
~高砂さんのご出身の石巻のお話も伺いたいのですが、石巻は秋から冬にかけてはどんな景色になりますか?
どちらかというと、石巻の海は”見る”海、写真を撮る海というよりは、”食べる”海なんですよね。やっぱり秋はおいしい魚がいっぱい上がってきて、カツオなんかも戻っていく途中に近くを通りますし、わざわざここを通ってくれてありがとう(笑)という感じですよね。牡蠣もいっぱい獲れます。
でも景観としては、津波の後、大きな堤防ができてかなり変わってしまって、ちょっとがっかりですよね。小さい頃は、遊ぶところはいつも海だったし、食べるものも朝昼晩、いつも海のものばかりでした。しかもその季節のものが食卓にのってくるから、海に生かされているという感じでした。うちの周りも水産加工場がありましたし、家の前が水産高校でしたし、その周りは牡蠣の養殖をやっている人たちばかりでしたし、本当に海で生きているような街でしたね。
~この先に撮ってみたい動物っていますか?
僕がよく思うのは、クジラにしても、イワシにしても、”海洋資源”っていうじゃないですか。僕に言わせれば、同じ命を持った生き物だから、食べるときはひとつの命を食べているという意識を持った方がいいし、海洋生物はそもそも人間のための資源じゃないと思う。それを他の人にも伝えたいですし、そういう気持ちを持てるような、命を感じる写真をもっと撮りたいと思いますね。
高砂淳二さんのお話、いかがだったでしょうか。高砂さんの新しい写真集『LIGHT on LIFE』は小学館から出ています。詳しくは高砂さんのホームページ、facebookなどをごらんください。

「LIGHT on LIFE」(小学館)
高砂淳二さんウェブサイト→http://junjitakasago.com/
高砂淳二さんfacebookページ→https://www.facebook.com/JunjiTakasago
【今週の番組内でのオンエア曲】
・Little of Your Love / Haim
・Fallin' / Suchmos
進化の理屈ではとても説明できないような不思議な生き物の話。コスタリカの森の多様性、ハワイの森にいるという精霊の話。カナダで出会ったカメラ目線のグリズリーのお話・・・など、本当に面白いお話、たくさん聞かせてもらいましたが、最後は、40年ちかく世界の自然を見つめてきた高砂さんが思う「日本の自然」の魅力です。

国内で好きで撮影に行くのは小笠原とか沖縄とか行きますけども、小笠原は秋とかいいんですよ。9~10月はマッコウクジラが見やすくなる季節なんです。マッコウクジラを見られるところというのは、世界的にもすごく限られていて、マッコウクジラは500~1000mの深さまで潜って、ダイオウイカを食べるんですよ。小笠原のあたりは一気に1000mくらい落ちているドロップオフがあるんですね。ですからちょうど、マッコウクジラたちには絶好のポイントなんです。それで、9月~10月くらいになると台風も収まって、マッコウクジラを見やすい時期に入るんです。
マッコウクジラっておもしろくって、クジラやイルカの仲間は超音波を出して、それで透明度の低い海の中でも、超音波の跳ね返ってくるものを聴いて周るの状況を把握するんですが、マッコウクジラは深海に潜るということもあって、その超音波がすごく鋭いんです。クリック音というのですが、「クリッ、クリッ」って音波を出します。それで、全然姿が見えないような向こうから、クリック音を僕に浴びせかけてくるんですよね。で、だんだん近づいてきて、やっと姿が見えるくらいになると、その「クリッ、クリッ」っていう音が体の中に響くような、刺さるような感じになって、「俺のことをスキャンしてる!」みたいな気になります。それはもう、動物の能力ってすごいなって思いますよね。
マッコウクジラは、こちらに興味があっても警戒心が強いので、こちらから向こうに泳いでいくと、すぐに進路を変えたり、潜っていってしまいます。だから、ひたすら水に溶け込むようにして、じっと待っているんです。その間、僕に超音波を浴びせかけて、スキャンしながら見ているんですよね。
マッコウクジラは四角いユニークなおでこの顔なんですが、その頭がズーンと近づいてきて、まるで魚雷みたいです。それで、ある程度まで来て、こちらがどういうものかわかると、すっと潜っていったり、進行方向を変えたりします。好奇心が満たされて警戒心が出てくるんですね。でも向こうが落ち着いているときだと、ふわっと浮かんでいてくれたりしますね。マッコウクジラの体は深く潜れるようになっていて、胸ビレなんかもピタッとくっつけることができて、本当に魚雷型になれるんですよ。
~怖くはないんですか?
怖くはないですね。でも向こうが怒っていたら何するかはわからないですよね。ハクジラという種類はそういうことをする可能性もあるんです。でもこちらが、何もしなければ、危害を加えられることはないと思っていますけどね。でもすごく興奮しているんですよ。心臓もドキドキしているし、もっと近くまで来てくれって。
~なんだかその気持もクリック音で見透かされてしまいそうですね。
本当ですね。イルカなんかも超音波でお腹の中に赤ちゃんがいることがわかって、優しく来たりもすると言われていますね。面白いですよね。
~高砂さんのご出身の石巻のお話も伺いたいのですが、石巻は秋から冬にかけてはどんな景色になりますか?
どちらかというと、石巻の海は”見る”海、写真を撮る海というよりは、”食べる”海なんですよね。やっぱり秋はおいしい魚がいっぱい上がってきて、カツオなんかも戻っていく途中に近くを通りますし、わざわざここを通ってくれてありがとう(笑)という感じですよね。牡蠣もいっぱい獲れます。
でも景観としては、津波の後、大きな堤防ができてかなり変わってしまって、ちょっとがっかりですよね。小さい頃は、遊ぶところはいつも海だったし、食べるものも朝昼晩、いつも海のものばかりでした。しかもその季節のものが食卓にのってくるから、海に生かされているという感じでした。うちの周りも水産加工場がありましたし、家の前が水産高校でしたし、その周りは牡蠣の養殖をやっている人たちばかりでしたし、本当に海で生きているような街でしたね。
~この先に撮ってみたい動物っていますか?
僕がよく思うのは、クジラにしても、イワシにしても、”海洋資源”っていうじゃないですか。僕に言わせれば、同じ命を持った生き物だから、食べるときはひとつの命を食べているという意識を持った方がいいし、海洋生物はそもそも人間のための資源じゃないと思う。それを他の人にも伝えたいですし、そういう気持ちを持てるような、命を感じる写真をもっと撮りたいと思いますね。
高砂淳二さんのお話、いかがだったでしょうか。高砂さんの新しい写真集『LIGHT on LIFE』は小学館から出ています。詳しくは高砂さんのホームページ、facebookなどをごらんください。

「LIGHT on LIFE」(小学館)
高砂淳二さんウェブサイト→http://junjitakasago.com/
高砂淳二さんfacebookページ→https://www.facebook.com/JunjiTakasago
【今週の番組内でのオンエア曲】
・Little of Your Love / Haim
・Fallin' / Suchmos