- 2016.04.24
巨木の魅力 樹木医 後藤瑞穂さん
先週に引き続き、天然記念物に指定されるような古い巨木から、街路樹、公園の木々に至るまで、診断や治療をする専門家・樹木医のお話です。
樹木医の後藤瑞穂さんに、樹木医というお仕事のことや、町の木々の健康をチェックするポイントなどを教えて頂きましたが、今回は、後藤さんがこれまでに出会ってきた、「巨木」のお話です。
まずは、樹木医のお仕事をしてきた中で出会った印象的な巨木をいくつか教えて頂きました!
◆木は生きつづけることができる
私が今まで見てきた巨樹古木でとても印象的だったのは、阿蘇にあります、高森殿の杉です。その杉は一見森のように見えるんですね。大きな木がいくつもある場所なのかなと思って近寄ってみると、それはなんと一本の木が枝が折れて地面について、そこからまた根が張って新しい幹を作って新しい枝葉を出してるというそういう珍しい光景が見れる杉なんです。
枝が地面に接地しますと、そこの細胞が、暗くて湿り気があるという条件によって根に変化してしまうんですね。そうすると枝が本体から分かれて、もう一つ新しいクローンの木ができちゃうんです。不思議なんです。
幹はとても太いんですよ。で、周りにタコの足ように枝葉が伸びてまして、それがいつしか重たくなって折れてしまうんですね。でも、折れてもそこでくじけることなく、また新たな命として再生してってるんです。なんてすごいんだろうと思いました。
その現象は杉だけではありません。砧公園でも桜でそういう状況が見れました。桜の枝が地面に接地して、そこから新しい枝が伸びてました。木はでそういうふうに、永遠に不滅なんですね。私たちみたいにひとつの命で、ひとつの体が死ぬのではなくて、何回でも再生できる、そういう特性を持ってるんです。
ですから、死なないというか、死んでるけれどもまだ生き続けてるというか、そういうちょっと神秘的で哲学的な生き物なんですね。
さらに後藤さんは、ご自身も実際に治療に関わったという、大変な樹齢の「桜」のお話もしてくれました。
◆木は置かれた環境で常に全力で生きる
おととし、山梨県の甲州市にあります、慈雲寺というお寺にある大きなイトザクラの診断をしました。それは樹齢が400~450年の大きな枝垂桜なんですけれども、実はほとんど中が腐っていまして、丈夫なところは外側だけだったんです。街路樹の場合は、そういう状態は危険だから切ってしまえってなるんですね。でも天然記念物は、やっぱり中が多少腐ってても大事にしていきましょうということで、樹勢を回復させるべく、樹木医さんが一生懸命治療をするわけなんです。
天然記念物になる条件として、やはり人との関わりというのがすごく大事なんですね。ただ大きければいいわけではなくて、ちろんそれだけでも素晴らしいんですけれども、その木をみんなが大事にしてきた、長い間神様として崇めてきたっていうところもすごく大事だと思うんです。
樹木は置かれた環境で、そこから動けないんですね。一度そこで生育し始めたら、そこから引っ越せないんです。もうやだな、と思っても変えられないんですね。置かれた環境でベストを尽くすしかないので、常に全力。すごい生き物だなと思います。それを何百年も続けてきてる。
後藤さんは数年前に、山梨県 甲州市の慈雲寺にある、木の腐れ部分の診断をされたそうです。後藤さんや地元の樹木医さんの治療もあり、人間に例えれば、「怪我はしているけど、元気な状態」だということです。
最後に、後藤さんが考える巨木の魅力とはなにか、お話をうかがいました。。
◆木は歴史の生き証人
まずなんと言っても木は歴史の生き証人ですよね。年輪を調べるとその年の気候がわかります。暖かかったらより幅が広いんです。寒かったら、ちょっとしか成長しないから年輪の間隔が狭いんですね。そういうことで、その年がどんなことがあったのかっていうのを読み取ることができるんですね。
それにいろんなことが想像できるんです。400年前の人は、この木の下で何してたんだろうとか、鶴岡八幡宮の大銀杏なんかは暗殺の場面を見たんじゃないかとか。もし木がしゃべったら、あの歴史の真相はこうだったんだよって言ってくれるかもしれないですよね。もしかしたら、将来そういうことが読み取れるようになれるかもしれないですね。木の前では悪いことできなくなるかもしれないです。
樹木医 後藤瑞穂さんのお話いかがだったでしょうか。ポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聞きください!

「樹を診る女のつぶやき」熊本日日新聞情報文化センター
【今週の番組内でのオンエア曲】
・Skinny Genes / Eliza Doolittle
・春の歌 / ウカスカジー
樹木医の後藤瑞穂さんに、樹木医というお仕事のことや、町の木々の健康をチェックするポイントなどを教えて頂きましたが、今回は、後藤さんがこれまでに出会ってきた、「巨木」のお話です。
まずは、樹木医のお仕事をしてきた中で出会った印象的な巨木をいくつか教えて頂きました!
◆木は生きつづけることができる
私が今まで見てきた巨樹古木でとても印象的だったのは、阿蘇にあります、高森殿の杉です。その杉は一見森のように見えるんですね。大きな木がいくつもある場所なのかなと思って近寄ってみると、それはなんと一本の木が枝が折れて地面について、そこからまた根が張って新しい幹を作って新しい枝葉を出してるというそういう珍しい光景が見れる杉なんです。
枝が地面に接地しますと、そこの細胞が、暗くて湿り気があるという条件によって根に変化してしまうんですね。そうすると枝が本体から分かれて、もう一つ新しいクローンの木ができちゃうんです。不思議なんです。
幹はとても太いんですよ。で、周りにタコの足ように枝葉が伸びてまして、それがいつしか重たくなって折れてしまうんですね。でも、折れてもそこでくじけることなく、また新たな命として再生してってるんです。なんてすごいんだろうと思いました。
その現象は杉だけではありません。砧公園でも桜でそういう状況が見れました。桜の枝が地面に接地して、そこから新しい枝が伸びてました。木はでそういうふうに、永遠に不滅なんですね。私たちみたいにひとつの命で、ひとつの体が死ぬのではなくて、何回でも再生できる、そういう特性を持ってるんです。
ですから、死なないというか、死んでるけれどもまだ生き続けてるというか、そういうちょっと神秘的で哲学的な生き物なんですね。
さらに後藤さんは、ご自身も実際に治療に関わったという、大変な樹齢の「桜」のお話もしてくれました。
◆木は置かれた環境で常に全力で生きる
おととし、山梨県の甲州市にあります、慈雲寺というお寺にある大きなイトザクラの診断をしました。それは樹齢が400~450年の大きな枝垂桜なんですけれども、実はほとんど中が腐っていまして、丈夫なところは外側だけだったんです。街路樹の場合は、そういう状態は危険だから切ってしまえってなるんですね。でも天然記念物は、やっぱり中が多少腐ってても大事にしていきましょうということで、樹勢を回復させるべく、樹木医さんが一生懸命治療をするわけなんです。
天然記念物になる条件として、やはり人との関わりというのがすごく大事なんですね。ただ大きければいいわけではなくて、ちろんそれだけでも素晴らしいんですけれども、その木をみんなが大事にしてきた、長い間神様として崇めてきたっていうところもすごく大事だと思うんです。
樹木は置かれた環境で、そこから動けないんですね。一度そこで生育し始めたら、そこから引っ越せないんです。もうやだな、と思っても変えられないんですね。置かれた環境でベストを尽くすしかないので、常に全力。すごい生き物だなと思います。それを何百年も続けてきてる。
後藤さんは数年前に、山梨県 甲州市の慈雲寺にある、木の腐れ部分の診断をされたそうです。後藤さんや地元の樹木医さんの治療もあり、人間に例えれば、「怪我はしているけど、元気な状態」だということです。
最後に、後藤さんが考える巨木の魅力とはなにか、お話をうかがいました。。
◆木は歴史の生き証人
まずなんと言っても木は歴史の生き証人ですよね。年輪を調べるとその年の気候がわかります。暖かかったらより幅が広いんです。寒かったら、ちょっとしか成長しないから年輪の間隔が狭いんですね。そういうことで、その年がどんなことがあったのかっていうのを読み取ることができるんですね。
それにいろんなことが想像できるんです。400年前の人は、この木の下で何してたんだろうとか、鶴岡八幡宮の大銀杏なんかは暗殺の場面を見たんじゃないかとか。もし木がしゃべったら、あの歴史の真相はこうだったんだよって言ってくれるかもしれないですよね。もしかしたら、将来そういうことが読み取れるようになれるかもしれないですね。木の前では悪いことできなくなるかもしれないです。
樹木医 後藤瑞穂さんのお話いかがだったでしょうか。ポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聞きください!

「樹を診る女のつぶやき」熊本日日新聞情報文化センター
【今週の番組内でのオンエア曲】
・Skinny Genes / Eliza Doolittle
・春の歌 / ウカスカジー