いよいよ緑の中のお散歩が気持ちいい季節ですね。
ということで、今回は樹木医の後藤瑞穂さんにお話を伺いいます。
熊本県出身の後藤さんは、元々、造園設計のお仕事をする中で樹木医になった方。熊本では女性第一号の樹木医さんだそうです。現在は東京を拠点に、樹木医として全国を飛び回っています。
樹木医は、大きな樹木、古くからの森や林の診断・治療をしたり、樹木を保護する知識の普及・指導を行う専門家。
天然記念物に指定されるような巨木はもちろん、街路樹や、公園の樹木のケアもされるお仕事です。
ということで後藤さんは、私たちの身近な木々を「見る目」が違います。
街路樹や公園の木々の健康状態を、どうやってチェックしているのか、伺いました。

◆木はボディランゲージで話している
木は言葉は話せませんが、ボディランゲージで発信しています。たとえば葉っぱの数が少ないっていうのもボディランゲージの一つです。「元気がなくなってます。なんとかしてください。」って言ってるんですね。それから、切られた跡が腐ってたりとかすると「早く処置をしてくれないとどんどん幹の方に腐れが進行してしまって立っていられなくなります。」っていう事も言っています。
街路樹は狭い空間に植栽されてますので、根が盛り上がっているのを見かけたりすると思うんですけども、あれは、根が呼吸困難に陥っていて、酸素が欲しくなって地表をめがけてアスファルトとか舗装材とかをひっくり返してしまうんですね。息苦しいと言っていますよね。
それを改善するためには、所々、舗装に穴をあけるとか、通気透水性を良くするちょっとした工夫をすると改善されるんですけれども、その改善をせずに根が上がってきたからといって切ってもう一回上から舗装を被せるというような事を繰り返してる例がものすごく多いんですね。そうすると、その切った根からさらにまた腐れが入ってきまして、ますます倒れやすくなってしまうんですよ。都市の街路樹にはそこの改善点が必要ですね。
また、根元から細い枝が出てるのを「ひこばえ」と呼んでるんですけども、その状態は、造園の世界では本体を弱らせてしまうから切った方がいいという風にされているんです。しかし、「ひこばえ」は、実はそれ以前に木が弱っているというSOSのサインなんですね。枝葉が足りなくなってしまって、自分を維持するための光合成量が足りないから緊急救命装置でひこばえを出してるんです。ですからその場合はむやみに切るのではなくて、ワンシーズン、ツーシーズンくらいは温存させて、まずは樹勢を回復させる措置を取った後にひこばえの処置をします。
樹木が健康な状態は、枝葉が四方にのびのびと育っているところですね。十分に枝葉が伸びる空間があること。狭い都会の空間では、建物があってそうもいかない時もありますけれども、切り口がそんなに目立たないように、適切にきれいに切って調整されている木は大丈夫ですね。たとえて言うなら、前髪ぱっつんみたいな切り方を樹木でやられるととても痛いんですね。やっぱりシャギーを入れて、ナチュラルカットにして頂きたいんですね。どこを切ったのかわからないような切り方をしてあるのが一番木にとって負担が少なく美しく安全な状態なんです。


樹木の腐食で出来る、木の空洞「うろ」は、都会だと倒木の危険を示すものですが、森の樹木の「うろ」は、危険とはみなさないのだそうです。なぜならそこはタヌキや鳥など生物が暮らす大事な住処だから。
また、木のボディランゲージはほかにもあるそうで、例えば根っこが、片方に太く張り出しているような木。これはその場所では、根の張る反対側から、常に風が吹いていることを教えてくれる…とか。

こうして、街路樹のケアも続ける中、後藤さんは人々と木々の関係について思うことがあると言います。

◆みんな繋がっている
街路樹を私たちが診断していると、沿道の方が「邪魔だ、切ってくれ」とか「落ち葉で道が汚れる」とか言われることがあるんです。でも待ってください。この木が道路の排気ガスとかの粉塵とかそういうのを吸い取ってくれてるんですよね。ドライバーの方の目の癒しにもなってますし、色んな環境の悪い部分を緩和してくれてる働きがあるんです。もし火災になったりとかしたら、木々が防いでくれます。木は70%くらい水分ですから、延焼を抑えてくれる防火効果があるんですね。なのにも関わらずそのことを忘れちゃうんですよ、人は。
一人ひとりの方が何のおかげで生きていられているんだろうということに気付いてもらえたらなと思うんです。木々が出してる酸素、すごく大事ですよね。植物、樹木がなかったら私たち生きていけません。すごく大事なんです。
それは都市にある木だって同じなんですね。森にだけあればいいってことじゃない。落ち葉も、そりゃ大変かもしれないですけども、私たちも日々髪の毛は抜けてるし、ふけも出してますし生きてるからそりゃ新陳代謝するんですね。木にももう少し労りの気持ちを持ってもらいたいなと思ってるんです。
そしてその町の木や公園の木っていうのは、いろんな鳥とか虫とかの移動経路になってるんですね。住家にももちろんなってますし。だから、ポンと森だけあってもそれは生物多様性に繋がらないんですよ。きちんと町の中にも緑があることで、鳥が休み休み森に行ける、里山に行ける、森林に行ける、そして森林からまたそれが帰って来るという、そういうことを繋ぐことになってるんですね。
私たちはそういうことをトータルに見て行かなければいけないんですけど、バラバラに考えている人が多いんです。ですから、森は繋がってる、緑は繋がって、木は人とも繋がってるということに気付いてもらいたい。そこを総合的に取り組むっていう姿勢にまだ到達してないと思います。そこに取り組んでもらいたいなってすごく思ってます。


今回のお話いかがだったでしょうか。来週も引き続き樹木医・後藤瑞穂さんのお話をお届けします。

【今週の番組内でのオンエア曲】
・The Hustle / Van Mccoy
・Stand By Me / 曽我部恵一

パーソナリティ

高橋万里恵
高橋万里恵

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