プロジェクト概要

太古の昔より、森は動物や植物などたくさんの命を育み、田畑や海、川にたくさんのミネラルをもたらし、地域と暮らしを守ってきました。 東日本震災では津波でコンクリート堤防や松林がことごとく破壊される中、その森や、昔からその地方に根差す、深く地面深くに根を張った潜在自然植生の木々たちは、津波の勢いを和らげました。 関東大震災や阪神大震災では、大火により建物が燃える被害を食い止め、防災林として大きな役割を果たしました。 この「鎮守の森」をモデルとした森をできるだけ多くつくることは、災害の多いこの国に生きていく私たちが、後世に伝え残さなくてはならない貴重な知恵であり、自然と共生していく教訓でもあります。 番組「いのちの森~voice of forest~」では、「鎮守の森のプロジェクト」が行う活動をはじめ、日本のみならず世界各地の森を守る活動を行う人や団体にスポットをあて、森の大切さについて考えていきます。

岩手県山田町で、先月末に行われた
「いのちを守る森づくり植樹祭in山田町2022」の模様をお伝えします。

植樹会場となったのは、山田町の、田の浜地区。
この地区は、東日本大震災をきっかけに、居住地を高台に移転。
その移転区域に整備した「津波防災緑地」が植樹地になっています。

 

そして実はこの植樹地、私も参加した2018年・2019年の植樹の後、
台風による被害を受けてしまった場所でもあります。
植樹会場で、山田町・佐藤町長に伺いました。




山田町長:台風19号でとんでもない雨が降りました。
77ミリ、総雨量430ミリ。
最近の雨でも特筆するもの。
花崗岩は流れて排水管を閉塞させてしまい、
水が行き場を失い、堤防が満水になりました。
なかには下の方で被災して再建した家が被災した、
首まで水に使って九死に一生を得た人もいました。
4年前に植樹した森がなくなったので、
もういちど再整備する。
もう一度頑張るという気持ちにつながると思っています。
この植樹にはいろんな意味があると思います。




高橋:3年前の台風による土砂災害…
「山津波」という言い方もされていますが、この経験を経て、
田の浜地区は、次の大雨への備え・対策を新たにしっかり整えて、
もう一度、森作りを頑張ろう!ということで今回の植樹祭になったということです。

今回の植樹では、ボランティア220名が参加。
大阪府や埼玉県からも参加者がいたそうです。

地元の方・近隣の方もたくさん参加していました。
参加者の方の声です。


参加者地元:家族です。
今回、植樹参加のきっかけは、震災で被害を体験しまして、
樹木で固めるというのが私自身が心地よい、
人工物じゃない植物でやるのが良いなと思ったので。
2018年に植えたのが、4年経ってあれくらいなんだな、
今植えたのも大きくなっていくのをずっと見ていきたいと思った。


参加者地元:婦人部です。
震災時は、自宅が上の方だがみんな親戚が下の方で、
見たときは流されて、
あとは、なにもできないで避難させることでいっぱいでした。
台風でも被害にあった方を誘導しながら。
津波の後に同じところに家を立てた人が被害にあっていて、
そのケアで大変でした。


高橋:どんな森になって欲しいですか?

参加者地元:やっぱり、来やすい、遊びやすい、
あ~きれいだなと思う場所になってもらえれば嬉しいです。



参加者地元:AIG盛岡のかしわと申します。
住まいは釜石。せっかく震災で家を建て直した、
その矢先に大きな災害で、このへんが大きなプール状態になり
山津波といって山から雨と共に流れてきて、
新築した人が何年かけて自分の家を持ったのに被災したという形。
2度も。そういう場所に木を植えることについては、
やっぱり自然災害が多いなか、
植樹しながら防災を、地域の人達を守っていく。それが大事。


 


(地元の参加者の皆さん)

高橋:今年はこれまで、宮城県岩沼市、福島県南相馬市の植樹祭の様子も
お伝えしてきましたが、岩手県山田町は、この2箇所よりずっと北にあります。
この違いは、植樹にどう影響するのでしょうか。
鎮守の森のプロジェクト・植樹リーダーで林学博士の西野文貴さんに聞きました。




西野さん:きょうは2000本、29種類、
しかもほとんど落葉樹です。
29種類のうち常緑樹は5種類だけ。
その理由は、東北のタブノキの北限なので、ほとんど周りは落葉樹が多い。
森のレシピがちょっとずつ変わってくる。
馴染み深い落葉樹は表参道にも生えている、
仙台の大通りにも生えているケヤキ。
大きくなると30m。これが地域を支える樹種の一つ。
ほかにもイタヤカエデ、エゴノキ。
そこから植生調査をして森のレシピを書きました。
ここで大事なのが、自然に近い森の木々を植えるということは
この地域に生育する動植物、鹿もそうだが
昆虫、蝶々も喜んでいるはず。
新たな起点になれば良いと思います。


高橋:大槌の10年前の植樹地は立派な森でしたね。


(大槌町2012年に植樹した森)

西野さん:森作りとしては嬉しい。
作ったものか自然なものかわからないというのは。


高橋:これからも全国の森作りはご一緒したいので!

西野さん:世界が注目しているのが面白い。
日本は明治神宮はじめ100年前から自然の森を作ろうとやっていた。
100年前の人は設計図を150年後まで書いている。
それに習って発信していきたい。



今回は、岩手県山田町で、先月末に行われた
「いのちを守る森づくり植樹祭in山田町2022」の模様をお伝えしました。





そして、番組からお知らせがひとつあります。
いのちの森 voice of forest。2012年10月から続いてきたこの番組ですが、
今月をもって終了となります。ちょうどまる10年。
本当に長い期間、支えてくださったリスナーのみなさん、ありがとうございました。
放送はあと2回となりますが、番組を聞いてくださっていた方
番組の感想、これまでの印象的な放送回など、メッセージお寄せください。
できるだけ紹介したいと思います。
番組webサイトのメッセージフォーム
からお願いします。



【今週の番組内でのオンエア曲】
・ Let's Get Together / Newton Faulkner
・ソラニン / ASIAN KUNG-FU GENERATION
     ポッドキャストを聴く  
今週も、長野県茅野市にある「車山神社」からのリポートです。
標高や様々な条件で、そこから先は森が育たなくなるボーダーラインがあります。
それが「森林限界」とよばれるもの。
富士山で言えば標高2500mあたり(五合目)が森林限界とされています。

今回 取材した長野県茅野市・車山にある車山神社は、標高1925m…
かなり高いところにありますが、
そんなところに、土地本来の樹木でできた「鎮守の森」はあるのでしょうか。

林学博士の西野文貴さん、車山神社の宮司・宮澤さんの調査団一行、
その答えを求めて山頂を目指します。



===========


(車山の山頂を目指す一行)

西野さん:さぁ、、、そんなところに森が出てきました。
これがこの地域の、故郷の森にちょっと近い形ですね。
幹が白、茶色になっていて、これはダケカンバ。
一瞬シラカバに見えるんですが、よく見ると白と茶色の肌が見えますよね。
ダケカンバの特徴なんです。
ダケカンバはカバノキ科の仲間で、
種子が風によってどんどん運ばれるんです。
車山高原はスキー場なので夏は草刈りをしていることで
草原を維持しているんですが、
おそらく草原を維持していない場所はこのように
森林になっているんです。他にもナナカマドの仲間ですね。
葉っぱが、羽状複葉と言うんですが、
鳥の羽みたいにふさふさとしたつき方をしている。
これがナナカマドの仲間。
他にもあれはオオカメノキですね。
オレンジっぽい花と芽がちょうどついていますね。
あの苔みたいなのがコケです。



(「ダケカンバ」の林)

高橋:こんな標高が高いところに苔がいる?

西野さん:だから森の形はいろいろ変われど、
やっぱり高い木があって低い木があって、
コケや低木があるという構造はあまり大きく変わらないんですね。


高橋:じゃあ、ここはもしかして鎮守の森になり得るところ?

西野さん:はい。
これがずっと人が手を入れなければ森林の木々が太っていって、
その場所に合っている潜在自然植生、
ダケカンバやナナカマドやオオカメノキが種を落として、
ずっと自己修復を繰り返して持続し続けるんです。


宮澤さん:神職として、正月はマイナス20度の中で
神事をやるんですよ。
その中で植物たちはこんなに脈々と生きていて、
びっくりしました。


西野さん:ただ全部の場所が標高だけで森林限界で
森林になる。ならない。ではなく、
日本は風がつよいので、
風が強すぎて森にならないところもあったりします。
今日は風が強いと思って、風速計を持ってきました。



(風速計を取り出す西野さん!)

高橋:なぜ風速計を持ってきたんですか?

西野さん:日本はすごく風が強く、
果たして今日はどれぐらいあるのか見てみようかなと。
いま秒速3メートルかな。
山の上に行ったらすごく風が強いと思うんです。
そうすると、風が強くて雪が降ったりすると
多分ダケカンバ等は見られないんじゃないかと。
それを見たくて今日は持ってきてしまいました、風速計。


高橋:ではその仮説を立証しに行ってみましょう!

==頂上到着!!==


(「車山神社」到着!)

宮澤さん:こちらが1925メートルですね。
車山神社の鳥居でございます。正面に見えますのは富士山ですね。


 
(「車山神社」の鳥居)


(富士山が見えます!!)

高橋:鳥居の中から富士山が見えるんですね。すごくありがたい感じがしますね。


(参拝する一行)

宮澤さん:縄文から祈りの場だったと言われる場所です。
いろんな出土品も出ていて、もともとこの茅野という
土地は縄文が日本でも一番長く続いた土地と言われていて、
向こうに行けば見えると思うんですが中に入りましょうか。


宮澤さん:どうですか、360度日本中の山々が見えて。
富士山が見えますが、南アルプス、北アルプス、八ヶ岳、
本当に山山が無数に360度。
雲が下に見えて、雲海のように見えますね。
ここはさっき言ったように縄文からの祈りの場で、
やっぱりこういう景色を縄文の人は見て
いろんなところに神が宿るのかなと感じたのかと僕は思いますね。


高橋:車山神社にお参りしてきましたが、鎮守の森ですよね。




(4本建てられた御柱)

西野さん:今回、テーマは日本全国いろんな鎮守の森を見てきた中で、
標高2000メートルくらい上がった時に果たして森があるのか
というところから始まったと思うんですが、
さっき風速計で調べたらなんと風速13メートル毎秒。
これが20メートルだと人が立っていられない。
なのでものすごく風が強いところにいるんですが、
木々が全然ないです。でも周りを見てみると、
やっぱり草があるんですね。ススキがあったり、
秋のキリンソウという仲間もいたりとか、
ハイマツ(這松)と呼ばれる這うように生える木々はあるんですよ。
さらにびっくりしたのが、神社の周りに木が4つ立ててあるんですけど、
あれは何なんですか?


宮澤さん:あれは、ここは諏訪の地なので
諏訪大社さんが7年に一度やる御柱を、
周りの神社でもみんなやっていまして、
弊社も同じく御柱祭を7年に一度やります。
今年がその7年に1度の年で、
6月くらいに周りの山々の神聖な場所から木を切って、
いまは寝かしている段階で、10月に300人ぐらいで下からあげる。
諏訪大社さんは下ろすんですが、
うちは山頂にある神社なので上げるしかないんです。



西野さん:それで僕は、やっぱり鎮守の森というのは
要するに自然と人のちょうど間にあるようなものだと思っていて、
今日そう感じたんですね。これは僕なりの意見なんですけど、
御柱を下から切って上げてくる。
やっぱり自然を敬う気持ちだとか、考える心というのを持ちながら、
なぜあれが石じゃなくて木なのか、
なぜわざわざ自然の命をいただきながら立てているのか。
おそらく人によって考え方、向き合い方、楽しみ方は別々だと思っていて、
今も目の前にたくさんの岩が積み上がっていますが、
そこに自然の雄大さとか大事さを感じる人もいれば、
御柱を見て感じる方もいらっしゃったり、
登る人や訪れる人によって鎮守の森の形って、
いろんな考え方があるのかなと考えさせられる一日でしたね。
罪、汚れが払われたような。もう僕じゃないんじゃないか。





「標高1925mの車山神社に、“鎮守の森”はあるのか」
長野県茅野市 車山からのリポートでした。


【今週の番組内でのオンエア曲】
・How Deep Is Your Love / Bee Gees
・A Sky Full Of Stars / Coldplay
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パーソナリティ

高橋万里恵
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