- 2020.05.31
京都大学 ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授インタビュー1
さて、森や自然との共存をテーマにお届けしているこの番組。
共存する相手としての“自然”の中には、実はこういう存在も含まれています。
なにかというと・・・ウィルスです。
ウィルス。ウィルスとの共存。連日、この言葉を聞かない日はありません。
お話を伺うのは京都大学 ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授です。
新型コロナウィルスの感染が広がる中、ウィルスの専門家として、Twitterやいろんなメディアで知るべき情報を発信していますので、ご存じの方も多いと思います。
ウィルスと共存・共生という言葉をよく聞くけど、それってどういうことなのか。
誰もが思っているはずです。そしてそもそもウィルスっていったい何なのか。
結局、私たちはよくわかっていません。ということで今回、番組では、これをテーマに宮沢先生にいろいろと質問をぶつけました。
皆さんはウィルスというと病原体としか思っていないかもしれませんが、ウイルスは様々な役目を帯びています。その中で、私たちが注目しているのはウィルスと、ウィルスが感染する動物あるいは植物です。私は動物が専門ですが、実は動物がウィルスに対抗するためにどんどん進化している、あるいはウィルスを取り込んで動物の形を変えてしまうということが最近わかってきて、そういう研究をしています。
~ウィルスって私たちの敵だと思っていましたが、進化に関わってきている部分があるという事なんですね
そうですね。ウィルスすべてが進化に関わっているかはわからないんですけれども、少なくともレトロウィルスに関しては動物の進化に深く関与しています。レトロウィルスって病原性のあるものがたくさんありますが、有名なのがエイズウィルスですね。ヒトでは血液の白血病のウィルスも知られています。動物でもレトロウィルスはたくさん知られていて、いくつかのウィルスは病気を起こして動物を苦しめていた可能性もあるんですけれども、多くのウィルスはおそらく共存していたと思われます。
ところがこのレトロウィルスと言うのは不思議なウィルスでして、私たちの細胞の中には一つ一つの細胞にDNAとして遺伝情報が入っています。このDNAを書き換えてしまうんです。そうしないとウィルスは増えません。それが他のウィルスと異なるところです。これがごくまれに卵細胞のもとになる細胞や精子の細胞をもとになる細胞に感染することがあります。そういうところに感染すると、精子の元の細胞、卵子の元の細胞の遺伝情報にウィルスの情報が書き込まれます。私たちは卵子と精子がくっついた受精卵から生まれてくるわけで、卵子や精子の段階でウィルスの情報が書き込まれていると、それが受精卵となってすべての細胞の中に、つまり私たちの細胞の中にウィルス由来の情報が入ってしまうことになります。これが面々とこういう現象が起きていて、私たちの体の中にはおびただしい数の古代のウィルスの情報が書き込まれているという事ですね。
~大昔からウィルスと私達は共存してきたんですね
そうですね。苦しめられた時期もあるかもしれないんですけれども、共存をしていてお互いに変化、進化しあってきました。そのうちのひとつの例が哺乳類で典型的な胎盤です。胎盤は哺乳類が主に持っている特殊な機関です。哺乳類以外の動物は卵で子孫を増やしていきますけれども、私たち哺乳類は胎盤を使って体の中で子供を大きく育てるという仕組みをつくりました。この仕組みを作るのに実はレトロウィルスが大きな役割をしたということが最近の研究でわかってきています。
ウィルスにはいくつか種類があって、その中でも、いまもお話のような特徴を持つのが「レトロウィルス」と呼ばれるものなのだそうです。
そしてお話はウィルスの「形」のお話に移ります。
みなさんも最近は、映像でコロナウィルスのCGとか、イメージ画像をみることがあると思いますが、あのウィルスって、なんか真ん丸で、たくさん突起が出ていますが、実はあの突起に重要な意味があるのだそうです。
ウィルスは膜の中に遺伝情報が入っています。膜の中に入っている遺伝情報をどうやって細胞の中に入れるかというと、細胞の膜とウィルスの膜が融合する現象が起こるのですが、この膜融合を超す装置があの突起なんです。先程、胎盤を作るのにウィルスが使われていたというお話をしましたが、その使われていた道具がこの突起の部分なんです。実は胎盤には巨大な融合細胞ができるんです。母親と子供の境目のところに、子供の細胞が融合した超巨大細胞ができる。本当に超巨大な細胞ができるんですが、その融合する物質が実は2500万年位前に私たちの体の中に入ってきたレトロウイルスの突起の部分なんです。だから私たちはウィルスの部品をちゃっかり使ったんですね。
ウィルスは悪者だと思われがちですが、いやいやそういうこともないんじゃないのと思いたくなります。アルプスの少女ハイジのおじいちゃんがみんなに嫌われていたかもしれないが、実は良いおじいちゃんだったみたいな感じで、“良いところを探してみよう”ということで長年やってきました。わかってきたのは、多くのウィルスがガンをやっつけるということ。ウィルスに感染することでガンが消えるということもわかってきました。それから仮説の域なんですが、ウィルスにかかることで免疫が整えられることもあるんじゃないかと私は思っています。たとえば、寄生虫が少なくなったことによって、アレルギーが増えたということを皆さん聞いたことがあると思うんですが、ウィルスもちょっとずつ関わっていることで免疫系が動いて、怖いウィルスにかかりにくくなることもあるんじゃないかという事は考えています。
いろんな動物が病気を起こさないレトロウィルスに感染しています。一生涯感染するんですね。病気を起こさないという事は何もしないのかとずっと思われていたんですが、私たちも含めて、いろんな世界の人たちが研究すると、そこのウィルスからいろいろな物質、短いRNAが出てくることがわかりました。その中にガンをやっつけるマイクロRNAを私たちは見つけました。ですのでもしかしたら病気を起こさないレトロウイルスが、実は感染している動物のガンを抑制している可能性があるのではないかということで今研究をしています。
京都大学 ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授のお話、いかがだったでしょうか。
来週もインタビューの続きをお届けします。
【番組内でのオンエア曲】
・What's Going On / Marvin Gaye
・Inspired / Miley Cyrus
共存する相手としての“自然”の中には、実はこういう存在も含まれています。
なにかというと・・・ウィルスです。
ウィルス。ウィルスとの共存。連日、この言葉を聞かない日はありません。
お話を伺うのは京都大学 ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授です。
新型コロナウィルスの感染が広がる中、ウィルスの専門家として、Twitterやいろんなメディアで知るべき情報を発信していますので、ご存じの方も多いと思います。
ウィルスと共存・共生という言葉をよく聞くけど、それってどういうことなのか。
誰もが思っているはずです。そしてそもそもウィルスっていったい何なのか。
結局、私たちはよくわかっていません。ということで今回、番組では、これをテーマに宮沢先生にいろいろと質問をぶつけました。
皆さんはウィルスというと病原体としか思っていないかもしれませんが、ウイルスは様々な役目を帯びています。その中で、私たちが注目しているのはウィルスと、ウィルスが感染する動物あるいは植物です。私は動物が専門ですが、実は動物がウィルスに対抗するためにどんどん進化している、あるいはウィルスを取り込んで動物の形を変えてしまうということが最近わかってきて、そういう研究をしています。
~ウィルスって私たちの敵だと思っていましたが、進化に関わってきている部分があるという事なんですね
そうですね。ウィルスすべてが進化に関わっているかはわからないんですけれども、少なくともレトロウィルスに関しては動物の進化に深く関与しています。レトロウィルスって病原性のあるものがたくさんありますが、有名なのがエイズウィルスですね。ヒトでは血液の白血病のウィルスも知られています。動物でもレトロウィルスはたくさん知られていて、いくつかのウィルスは病気を起こして動物を苦しめていた可能性もあるんですけれども、多くのウィルスはおそらく共存していたと思われます。
ところがこのレトロウィルスと言うのは不思議なウィルスでして、私たちの細胞の中には一つ一つの細胞にDNAとして遺伝情報が入っています。このDNAを書き換えてしまうんです。そうしないとウィルスは増えません。それが他のウィルスと異なるところです。これがごくまれに卵細胞のもとになる細胞や精子の細胞をもとになる細胞に感染することがあります。そういうところに感染すると、精子の元の細胞、卵子の元の細胞の遺伝情報にウィルスの情報が書き込まれます。私たちは卵子と精子がくっついた受精卵から生まれてくるわけで、卵子や精子の段階でウィルスの情報が書き込まれていると、それが受精卵となってすべての細胞の中に、つまり私たちの細胞の中にウィルス由来の情報が入ってしまうことになります。これが面々とこういう現象が起きていて、私たちの体の中にはおびただしい数の古代のウィルスの情報が書き込まれているという事ですね。
~大昔からウィルスと私達は共存してきたんですね
そうですね。苦しめられた時期もあるかもしれないんですけれども、共存をしていてお互いに変化、進化しあってきました。そのうちのひとつの例が哺乳類で典型的な胎盤です。胎盤は哺乳類が主に持っている特殊な機関です。哺乳類以外の動物は卵で子孫を増やしていきますけれども、私たち哺乳類は胎盤を使って体の中で子供を大きく育てるという仕組みをつくりました。この仕組みを作るのに実はレトロウィルスが大きな役割をしたということが最近の研究でわかってきています。
ウィルスにはいくつか種類があって、その中でも、いまもお話のような特徴を持つのが「レトロウィルス」と呼ばれるものなのだそうです。
そしてお話はウィルスの「形」のお話に移ります。
みなさんも最近は、映像でコロナウィルスのCGとか、イメージ画像をみることがあると思いますが、あのウィルスって、なんか真ん丸で、たくさん突起が出ていますが、実はあの突起に重要な意味があるのだそうです。
ウィルスは膜の中に遺伝情報が入っています。膜の中に入っている遺伝情報をどうやって細胞の中に入れるかというと、細胞の膜とウィルスの膜が融合する現象が起こるのですが、この膜融合を超す装置があの突起なんです。先程、胎盤を作るのにウィルスが使われていたというお話をしましたが、その使われていた道具がこの突起の部分なんです。実は胎盤には巨大な融合細胞ができるんです。母親と子供の境目のところに、子供の細胞が融合した超巨大細胞ができる。本当に超巨大な細胞ができるんですが、その融合する物質が実は2500万年位前に私たちの体の中に入ってきたレトロウイルスの突起の部分なんです。だから私たちはウィルスの部品をちゃっかり使ったんですね。
ウィルスは悪者だと思われがちですが、いやいやそういうこともないんじゃないのと思いたくなります。アルプスの少女ハイジのおじいちゃんがみんなに嫌われていたかもしれないが、実は良いおじいちゃんだったみたいな感じで、“良いところを探してみよう”ということで長年やってきました。わかってきたのは、多くのウィルスがガンをやっつけるということ。ウィルスに感染することでガンが消えるということもわかってきました。それから仮説の域なんですが、ウィルスにかかることで免疫が整えられることもあるんじゃないかと私は思っています。たとえば、寄生虫が少なくなったことによって、アレルギーが増えたということを皆さん聞いたことがあると思うんですが、ウィルスもちょっとずつ関わっていることで免疫系が動いて、怖いウィルスにかかりにくくなることもあるんじゃないかという事は考えています。
いろんな動物が病気を起こさないレトロウィルスに感染しています。一生涯感染するんですね。病気を起こさないという事は何もしないのかとずっと思われていたんですが、私たちも含めて、いろんな世界の人たちが研究すると、そこのウィルスからいろいろな物質、短いRNAが出てくることがわかりました。その中にガンをやっつけるマイクロRNAを私たちは見つけました。ですのでもしかしたら病気を起こさないレトロウイルスが、実は感染している動物のガンを抑制している可能性があるのではないかということで今研究をしています。
京都大学 ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授のお話、いかがだったでしょうか。
来週もインタビューの続きをお届けします。
【番組内でのオンエア曲】
・What's Going On / Marvin Gaye
・Inspired / Miley Cyrus