- 2019.05.26
『ゴールデンカムイ』から知るアイヌ文化4
漫画『ゴールデンカムイ』のアイヌ語監修者、千葉大学 文学部教授 中川裕さんのインタビューをお届けしてきましたが、今回でラストとなります。
最後は、漫画の中でも描かれている、アイヌの人たちの「道具作り」のお話です!

~森の中で使うアイヌの道具が漫画「ゴールデンカムイ」の中に出てきて面白いなと思ったのですが、アイヌの人たちが森に入る中で最低限必要な道具というのはありますか?
アシリパ(本来”リ”は小字)が普段ぶら下げているからわかると思いますが、マキリという小刀と、タシロという山刀、いわゆるナタですね。この2つだけ。これ以外はいらないって事は無いんだけれども、あとは現場でマキリとタシロで作ればいいんです。例えば槍。槍は熊を捕るときに必要なんだけれども、持っていくのは穂先だけ。3メートル位ある長い槍は持って歩いたら邪魔でしょうがない。だから先っぽだけ持っていくんです。そしてその場で木を切って、柄をつけるわけですね。それで狩りをする。弓だって何だって別に家から持っていかなくたって、その場で弓になる木があれば作ればいいというわけです。そういう意味では、作るための道具としてマキリとタシロの2つが絶対必要だけど、これだけあれば、あとはその場で何でも作れると昔の人は言っています。食べ物は獲ればいいんだし、寝るところは木を切って作れば良いわけだし。
~寝るところはどう作っていたんですか?
いろんなやり方がありますけれども、簡単に切れる木を切って組み合わせて、小屋みたいなものを作って、そこら辺に生えている、例えばふきの葉で上を覆う。そうすると雨風よけになるので、その中に入って寝ればいいわけです。
~山登りというと、我々は重装備で行くじゃないですか。そう考えるとアイヌの方々は、森の中の過ごし方ってシンプルでいいんだよということを教えてくれる感じがします。
山で遭難したというニュースがあると、昔のおばあさんたちは、あんないっぱい荷物を持っていくから疲れて遭難するんだと言っていたんです。昔のアイヌは身軽だから疲れるなんて事はないと。ただしそれはもちろん技術がないとだめですよね。マキリとタシロだけ持って山へ行ったら普通は死んじゃいますよ。しかも狩りをするときには冬山にだって入るわけです。冬山で過ごせるだけの体力と技術と、それから知識が必要ですね。それは子どもの頃からお父さんが山の中に連れて行って仕込むわけですよ。そうやって培われている技術だから、我々が大人になってからさあやろうといっても、なかなかそう簡単にはいかないですね。
~漫画「ゴールデンカムイ」でびっくりしたのは、冬眠をしている熊の穴に自ら入った人間は襲われない、という言い伝えが紹介されていることです。
狸(たぬき)を”熊のおじさん”と呼ぶ地方があります。なぜ熊のおじさんなのかというと、熊の巣穴に一緒に入っていることが結構あるらしいんです。狸は自分で穴を掘るのが面倒臭い時に、熊のいる穴に入ることがあるようなんですね。そっちの方が暖かいから、一緒にいるらしいんです。熊の巣穴に入っても、狭くて体でいっぱいいっぱいだから、熊は襲いようがないんだと思います。ただ人間はそんなところに入っていく勇気は無いですけどね。
~マキリとタシロだけで森の中に入るという、原始的な部分がある一方で、アイヌの刺繍だとか、すごく立派な彫刻など、文化も発達しているんですね。
今、原始的という言い方をされましたが、逆だと思うんです。それだけでサバイバルできるような洗練された技術と考えた方が良いと思うんですね。何を使ってどうやったらどういうものができるかをわかっている。木の皮で鍋を作るにしろ、船を作るにしろ、船なんか下手に作ったら命に関わりますよね。それを沈まないように作る技術というのがあるからこそ、その場で作ることができるわけで、相当な技術の集積みたいなものがないと、マキリとタシロだけ持って山へ入るなんて、おっかなくてできることじゃないと思うんですよね。むしろそれは洗練されたスタイルだと考えた方が良いんです。
~お話を伺っていると、アイヌの文化に触れてみたい、経験をしてみたいという気持ちが出てきますが、中川さんがお勧めのスポットなどはありますか?
二風谷(にぶたに)、旭川、阿寒(あかん)に行けば観光として、博物館、資料館としてのアイヌの文化は見ることができるんだけれども、僕としてはむしろものの考え方のほうが重要だと思うので、どちらかというと本を読む事が必要なんじゃないかと思うんですね。カムイという言葉も、「神様」と説明されていることが多い。それを見て、こんなものも神様として信仰しているのかと考えちゃうところもあるわけです。でも実際には、カムイは日本語の「神様」とはちょっと違う。アイヌ文化の背景にある考え方はこうなんだということは、それについて詳しく書いてあるもの、ちゃんとした人が書いたものを読まないと理解できないかもしれないですね。
漫画『ゴールデンカムイ』のアイヌ語監修者、千葉大学 文学部教授 中川裕さんのお話、いかがだったでしょうか。
インタビューの中で中川さんは、「アイヌ文化の背景にある考え方はこうなんだということについて詳しく書いてあるもの、ちゃんとした人が書いたものを読まないと理解できない」とおっしゃっていましたが、今回、中川さんが新しく出された本「アイヌ文化で読み解く『ゴールデンカムイ』」(集英社新書)はまさにそういう本ですね!この「アイヌ文化で読み解く『ゴールデンカムイ』」を10名の方にプレゼントしますので、このページのメッセージフォームからぜひご応募くださいね!

アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」著者: 中川 裕 野田 サトル(集英社新書)
【番組内でのオンエア曲】
・裸足の果実 / EGO-WRAPPIN'
・It's A Fine Day / Opus III
最後は、漫画の中でも描かれている、アイヌの人たちの「道具作り」のお話です!

~森の中で使うアイヌの道具が漫画「ゴールデンカムイ」の中に出てきて面白いなと思ったのですが、アイヌの人たちが森に入る中で最低限必要な道具というのはありますか?
アシリパ(本来”リ”は小字)が普段ぶら下げているからわかると思いますが、マキリという小刀と、タシロという山刀、いわゆるナタですね。この2つだけ。これ以外はいらないって事は無いんだけれども、あとは現場でマキリとタシロで作ればいいんです。例えば槍。槍は熊を捕るときに必要なんだけれども、持っていくのは穂先だけ。3メートル位ある長い槍は持って歩いたら邪魔でしょうがない。だから先っぽだけ持っていくんです。そしてその場で木を切って、柄をつけるわけですね。それで狩りをする。弓だって何だって別に家から持っていかなくたって、その場で弓になる木があれば作ればいいというわけです。そういう意味では、作るための道具としてマキリとタシロの2つが絶対必要だけど、これだけあれば、あとはその場で何でも作れると昔の人は言っています。食べ物は獲ればいいんだし、寝るところは木を切って作れば良いわけだし。
~寝るところはどう作っていたんですか?
いろんなやり方がありますけれども、簡単に切れる木を切って組み合わせて、小屋みたいなものを作って、そこら辺に生えている、例えばふきの葉で上を覆う。そうすると雨風よけになるので、その中に入って寝ればいいわけです。
~山登りというと、我々は重装備で行くじゃないですか。そう考えるとアイヌの方々は、森の中の過ごし方ってシンプルでいいんだよということを教えてくれる感じがします。
山で遭難したというニュースがあると、昔のおばあさんたちは、あんないっぱい荷物を持っていくから疲れて遭難するんだと言っていたんです。昔のアイヌは身軽だから疲れるなんて事はないと。ただしそれはもちろん技術がないとだめですよね。マキリとタシロだけ持って山へ行ったら普通は死んじゃいますよ。しかも狩りをするときには冬山にだって入るわけです。冬山で過ごせるだけの体力と技術と、それから知識が必要ですね。それは子どもの頃からお父さんが山の中に連れて行って仕込むわけですよ。そうやって培われている技術だから、我々が大人になってからさあやろうといっても、なかなかそう簡単にはいかないですね。
~漫画「ゴールデンカムイ」でびっくりしたのは、冬眠をしている熊の穴に自ら入った人間は襲われない、という言い伝えが紹介されていることです。
狸(たぬき)を”熊のおじさん”と呼ぶ地方があります。なぜ熊のおじさんなのかというと、熊の巣穴に一緒に入っていることが結構あるらしいんです。狸は自分で穴を掘るのが面倒臭い時に、熊のいる穴に入ることがあるようなんですね。そっちの方が暖かいから、一緒にいるらしいんです。熊の巣穴に入っても、狭くて体でいっぱいいっぱいだから、熊は襲いようがないんだと思います。ただ人間はそんなところに入っていく勇気は無いですけどね。
~マキリとタシロだけで森の中に入るという、原始的な部分がある一方で、アイヌの刺繍だとか、すごく立派な彫刻など、文化も発達しているんですね。
今、原始的という言い方をされましたが、逆だと思うんです。それだけでサバイバルできるような洗練された技術と考えた方が良いと思うんですね。何を使ってどうやったらどういうものができるかをわかっている。木の皮で鍋を作るにしろ、船を作るにしろ、船なんか下手に作ったら命に関わりますよね。それを沈まないように作る技術というのがあるからこそ、その場で作ることができるわけで、相当な技術の集積みたいなものがないと、マキリとタシロだけ持って山へ入るなんて、おっかなくてできることじゃないと思うんですよね。むしろそれは洗練されたスタイルだと考えた方が良いんです。
~お話を伺っていると、アイヌの文化に触れてみたい、経験をしてみたいという気持ちが出てきますが、中川さんがお勧めのスポットなどはありますか?
二風谷(にぶたに)、旭川、阿寒(あかん)に行けば観光として、博物館、資料館としてのアイヌの文化は見ることができるんだけれども、僕としてはむしろものの考え方のほうが重要だと思うので、どちらかというと本を読む事が必要なんじゃないかと思うんですね。カムイという言葉も、「神様」と説明されていることが多い。それを見て、こんなものも神様として信仰しているのかと考えちゃうところもあるわけです。でも実際には、カムイは日本語の「神様」とはちょっと違う。アイヌ文化の背景にある考え方はこうなんだということは、それについて詳しく書いてあるもの、ちゃんとした人が書いたものを読まないと理解できないかもしれないですね。
漫画『ゴールデンカムイ』のアイヌ語監修者、千葉大学 文学部教授 中川裕さんのお話、いかがだったでしょうか。
インタビューの中で中川さんは、「アイヌ文化の背景にある考え方はこうなんだということについて詳しく書いてあるもの、ちゃんとした人が書いたものを読まないと理解できない」とおっしゃっていましたが、今回、中川さんが新しく出された本「アイヌ文化で読み解く『ゴールデンカムイ』」(集英社新書)はまさにそういう本ですね!この「アイヌ文化で読み解く『ゴールデンカムイ』」を10名の方にプレゼントしますので、このページのメッセージフォームからぜひご応募くださいね!

アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」著者: 中川 裕 野田 サトル(集英社新書)
【番組内でのオンエア曲】
・裸足の果実 / EGO-WRAPPIN'
・It's A Fine Day / Opus III