- 2016.11.27
ラスコー展 海部陽介さんインタビュー4
東京・上野、国立科学博物館で開催中の「ラスコー展」を監修した研究者・海部陽介さんのインタビューをお届けしてきましたが、今回でラストとなります。
この番組では「鎮守の森」や、人が手をいれることで豊かな森を作る「里山」など、日本人に古くから根付く、森や自然との向き合い方に、色々触れてきました。
おそらくこれって、数千年かけて培われた考え方だと思うのですが、では、クロマニヨン人がラスコーに壁画を描いたという2万年前の人々は、森や自然をどう捉えて、どう向き合っていたのでしょう。
海部さんのお考えを伺いました。

実際人類学をやっていてわかってくるのは、常に人間が森を大切にし、動物を大切にしていたわけじゃないっていうことです。というのは、やっぱり僕らハンターだったわけですから動物を狩っていたわけですよね。実はホモサピエンス、つまりクロマニヨン人や我々が現れて世界中に広がっていく過程で、ちょっとショッキングな事が起こってるんです。例えばマンモスやケサイ、ホラアナライオン、日本にもナウマンゾウっていう象がいましたが、オオツノジカなどことごとく絶滅してしまうんですね。これはちょうど気候変動が起きて、氷期が終わって温かくなってくる時期と大体重なってはいるんですが、ただ一方でホモサピエンスが世界中に広がっていた時代とも重なっているんですね。ですからこの動物たちの大絶滅に人間が関わってないとはちょっと考えられないですね。
アフリカで進化したホモサピエンスが世界中に広がっていく過程で、ユーラシアあるいはアメリカ大陸、オーストラリアにいた動物たちは人間の怖さを知らないんですよ。例えばナウマンゾウやマンモスの目の前にちっぽけな人間が現れた時、これは危険な動物だとはとても思わないですよね。なめてかかりますよね、きっとね。ところがそうじゃないんですよこの動物は。槍という道具を持ち、この巨大な象をハンティングしてしまう、そういう能力を持った存在だったわけですね。気候変動の影響もあるのでしょうが、多くの動物たちが絶滅してしまったという事実はあります。
ですから人間が自然を常に大事と思う本能を持ってるって言うんだったら僕はちょっと違うんだと思うんですね。だけどそういったいろんな経験をしながら人間は学んできて、やり過ぎるとしっぺ返しをくらうということを学び、それで自然を大事にするようになるっていうことが出てきたんじゃないかなってそんな風に思いますね。
~クロマニョン人の自然とか命、自然観、生命観っていうのはどういうものだったんでしょうか?
そういうこと僕も知りたいですね。彼らは貝殻に穴をあけてビーズを作るんですけど、その貝殻っていうのは海から大体持ってくるんです。カタツムリのような陸の貝って殻が薄いから、アクセサリーに向かないんですよね。海で取れる貝の方がいいわけですよ。そういう海の貝をわざわざ何百キロも内陸に運ぶんですよね。そこまでしてアクセサリーつけたかった人達なんですね。一方で自然の厳しさもありながら、やっぱり着飾ったりおしゃれしたりして、絵も描いたりして楽しんでるっていう面もあったんじゃないかなと思いますね。それともう一つおもしろいのは楽器も出てくるんです、この時から。竹笛なんですけど、鳥の骨に穴をあけて作った笛が出てきますね。ですから音楽も存在したという事がわかってます。
ラスコー展は、そんなふうに色々考えたり、想像したりするのが楽しい展覧会だと思います。この絵の素晴らしさもそうです。絵を鑑賞するっていうことも十分いただけますし、その背景にある「何でこんなことするんだろう?」「どうして洞窟の中入るんだろう?」それから「どうしてこんなことできたんだろう?」ってたくさん驚きとか謎もあるので展覧会場で是非そういうのを楽しんでいただきたいですね。
~海部さんがこれまで一番印象に残った森ってありますか?
そうですね。世界中に調査で行ってるんですけど、あえて言うんだったらシベリアの森、それから熱帯のインドネシアの森。ボルネオ島とかですね、そういうのをちょっと思い浮かべます。
日本もそうなんですけど、自然の状態の森って少ないんだなってことをすごくそのことを気付かされましたね。世界のあちこちへ行って。だいたい人の手が入っている。モンゴルやシベリアでは川が好きなように暴れて流れてる、そういうものを見た時に僕が日本で見てきた川って違うんだって感じました。日本の川は人の手でコントロールされちゃってますよね。こっちに流れろっていうね。そうじゃない、自然ってこうなんだってそういうのを行って見て初めて感じたんです。北海道なんかでそういう場所はありますけど、日本で暮らしていると、本当に人の手の入っていない自然って中々体験することができないなっていうのをよく思いますね。
海部陽介さんのお話、いかがだったでしょうか。
特別展「世界遺産 ラスコー展 ~クロマニョン人が残した洞窟壁画~」は東京上野 国立科学博物館で、来年2月19日まで開催しています。
特別展「世界遺産 ラスコー展 ~クロマニョン人が残した洞窟壁画~」
【今週の番組内でのオンエア曲】
・gone feat.曽我部恵一 / あらかじめ決められた恋人たちへ
・Hello / YUKI
この番組では「鎮守の森」や、人が手をいれることで豊かな森を作る「里山」など、日本人に古くから根付く、森や自然との向き合い方に、色々触れてきました。
おそらくこれって、数千年かけて培われた考え方だと思うのですが、では、クロマニヨン人がラスコーに壁画を描いたという2万年前の人々は、森や自然をどう捉えて、どう向き合っていたのでしょう。
海部さんのお考えを伺いました。

実際人類学をやっていてわかってくるのは、常に人間が森を大切にし、動物を大切にしていたわけじゃないっていうことです。というのは、やっぱり僕らハンターだったわけですから動物を狩っていたわけですよね。実はホモサピエンス、つまりクロマニヨン人や我々が現れて世界中に広がっていく過程で、ちょっとショッキングな事が起こってるんです。例えばマンモスやケサイ、ホラアナライオン、日本にもナウマンゾウっていう象がいましたが、オオツノジカなどことごとく絶滅してしまうんですね。これはちょうど気候変動が起きて、氷期が終わって温かくなってくる時期と大体重なってはいるんですが、ただ一方でホモサピエンスが世界中に広がっていた時代とも重なっているんですね。ですからこの動物たちの大絶滅に人間が関わってないとはちょっと考えられないですね。
アフリカで進化したホモサピエンスが世界中に広がっていく過程で、ユーラシアあるいはアメリカ大陸、オーストラリアにいた動物たちは人間の怖さを知らないんですよ。例えばナウマンゾウやマンモスの目の前にちっぽけな人間が現れた時、これは危険な動物だとはとても思わないですよね。なめてかかりますよね、きっとね。ところがそうじゃないんですよこの動物は。槍という道具を持ち、この巨大な象をハンティングしてしまう、そういう能力を持った存在だったわけですね。気候変動の影響もあるのでしょうが、多くの動物たちが絶滅してしまったという事実はあります。
ですから人間が自然を常に大事と思う本能を持ってるって言うんだったら僕はちょっと違うんだと思うんですね。だけどそういったいろんな経験をしながら人間は学んできて、やり過ぎるとしっぺ返しをくらうということを学び、それで自然を大事にするようになるっていうことが出てきたんじゃないかなってそんな風に思いますね。
~クロマニョン人の自然とか命、自然観、生命観っていうのはどういうものだったんでしょうか?
そういうこと僕も知りたいですね。彼らは貝殻に穴をあけてビーズを作るんですけど、その貝殻っていうのは海から大体持ってくるんです。カタツムリのような陸の貝って殻が薄いから、アクセサリーに向かないんですよね。海で取れる貝の方がいいわけですよ。そういう海の貝をわざわざ何百キロも内陸に運ぶんですよね。そこまでしてアクセサリーつけたかった人達なんですね。一方で自然の厳しさもありながら、やっぱり着飾ったりおしゃれしたりして、絵も描いたりして楽しんでるっていう面もあったんじゃないかなと思いますね。それともう一つおもしろいのは楽器も出てくるんです、この時から。竹笛なんですけど、鳥の骨に穴をあけて作った笛が出てきますね。ですから音楽も存在したという事がわかってます。
ラスコー展は、そんなふうに色々考えたり、想像したりするのが楽しい展覧会だと思います。この絵の素晴らしさもそうです。絵を鑑賞するっていうことも十分いただけますし、その背景にある「何でこんなことするんだろう?」「どうして洞窟の中入るんだろう?」それから「どうしてこんなことできたんだろう?」ってたくさん驚きとか謎もあるので展覧会場で是非そういうのを楽しんでいただきたいですね。
~海部さんがこれまで一番印象に残った森ってありますか?
そうですね。世界中に調査で行ってるんですけど、あえて言うんだったらシベリアの森、それから熱帯のインドネシアの森。ボルネオ島とかですね、そういうのをちょっと思い浮かべます。
日本もそうなんですけど、自然の状態の森って少ないんだなってことをすごくそのことを気付かされましたね。世界のあちこちへ行って。だいたい人の手が入っている。モンゴルやシベリアでは川が好きなように暴れて流れてる、そういうものを見た時に僕が日本で見てきた川って違うんだって感じました。日本の川は人の手でコントロールされちゃってますよね。こっちに流れろっていうね。そうじゃない、自然ってこうなんだってそういうのを行って見て初めて感じたんです。北海道なんかでそういう場所はありますけど、日本で暮らしていると、本当に人の手の入っていない自然って中々体験することができないなっていうのをよく思いますね。
海部陽介さんのお話、いかがだったでしょうか。
特別展「世界遺産 ラスコー展 ~クロマニョン人が残した洞窟壁画~」は東京上野 国立科学博物館で、来年2月19日まで開催しています。
特別展「世界遺産 ラスコー展 ~クロマニョン人が残した洞窟壁画~」
【今週の番組内でのオンエア曲】
・gone feat.曽我部恵一 / あらかじめ決められた恋人たちへ
・Hello / YUKI