- 2015.01.25
映画「うみやまあひだ」監督 宮澤正明さんインタビュー2
先週に引き続き、まもなく全国公開がスタートするドキュメンタリー映画『うみやまあひだ』の宮澤正明監督のインタビューをお届けします。
20年に一度、社殿・お社をすべて作りかえる伊勢神宮の式年遷宮。1300年前から続くこの儀式には、たくさんの「御用材」と呼ばれる木材が必要となります。映画『うみやまあひだ』では、2013年に行われた式年遷宮とその御用材のルーツについても取材。
一昨年の遷宮に使われた木材は、どこからどのようにやってきたものなのか、映像とインタビューで伝えています。

◆御用材のルーツ
元々は宇治山田とか、伊勢神宮の裏にある宮域林、御山(みやま)からとっていました。しかし鎌倉時代あたりにその木がだいぶ少なくなったんで、いま植林して森を育てています。ただ、あと100年後とか、200年後を目指しているので、それはそれですごい話なんですけれども、ですからいまは木曽からほとんど御用材をいただいています。ただ、伊勢神宮も森を育てていますから、そのかいあって今回の式年遷宮では20パーセントくらいは御山からの御用材を使っていると聞きました。ただ、2~300年、400年の大きい木になると、あと100年、200年後の話ですから、もう少し時間がかかるということで、その間は木曽から木をいただいているということですね。
この番組でも、一昨年、伊勢神宮の鎮守の森「神宮 宮域林」を管理する営林部の倉田克彦さんを取材しましたが、実に年ぶりに、七百数十年ぶりに宮域林で育てた木材が遷宮に使われたんですよね。
ただ、宮澤監督のお話に合ったように宮域林から取った御用材は全体の2割。それ以外は長野県・木曽の山中で育てられた桧です。
式年遷宮の準備が始まるのは、遷宮の八年前。木曽の山中では、どんなことが行われるのでしょうか。
◆木が「鳴く」
御神木を切る御杣始祭(みそまはじめさい)というのが、山口祭のあと平成17年の春にあるんですよ。それは木曽の山中で内宮と外宮の一番太い柱、棟持柱(むなもちばしら)になるところを切って、伊勢の方に運んでいくという行事で、昔ながらの川曳きとお木曳きをします。御神木をみんなで縄を持って曳く行事、それを伊勢の神領民という、伊勢に住んでいる方々が伊勢神宮の神域まで運ぶという行事なんですね。
木曽は木曽で、木を切って木曽の山から運んでくるというお祭があります。そして次の街に行って、またそこでもお祭りがあるという、とにかく御神木が移動する度にお祭りをやって伊勢に行くんです。
三代続いている、木曽の池田木材店の社長である池田さんが言っていますが、やはり御神木ですから、木を倒すとか、切り倒すという言い方はしないんです。木を寝かすという言い方をします。そして、木は倒すときに「鳴く」らしいんですよ。つまり「鳴いて寝る」。何百年も育った木を切り倒して、またそれを使うわけですから、ひとつの死でもあり、また次はぐぐむ生という意味もあります。
切り倒した木のところに、その木の枝を差す行事があるんですよ。切り株の上にまた木が育つという、再生を意味するお祭りなんですけれども、そういうことをふまえると、自然とか木に対する尊敬の念、感謝の念というのは木曽の方でも伊勢の方でも、みなさん持っていると思いますね。
そしてこの映画には、伊勢神宮と 対比する形で、やはり1000年以上の歴史を誇る、日本の歴史的建造物が登場します。
それが奈良の法隆寺です。
◆1300年守り続けてきた法隆寺と、20年に一度建て替える伊勢神宮
『うみやまあひだ』のなかでインタビューしている小川棟梁は、元々は法隆寺の伝説の棟梁、西岡棟梁の愛弟子さんなんです。なぜ伊勢神宮の宮大工ではなく、法隆寺の宮大工の方にインタビューしたかというと、法隆寺というのは1300年改修を続けながらお寺を守ってきたという、建てたときから1300年変わっていないわけです。しかし伊勢神宮は1300年の間、20年に1回新しくつくりかえて変わってきたという、そういうことがありますよね。その差はなんなんだということを聞きたくなったんですね。1300年継続してきた宮大工さんに話を聞いてみようということで、小川棟梁に話を聞いてみたんです。
1300年守っていくのも、20年に1回建て替えるのも、木に対する愛情は一緒でしたね。「木を育てないと人も育たないし、人がいくら育っても木がなければだめだから」というお話しはすごく心に残りました。
言葉で印象的なことは、映画でも言っていましたが、いちばんはじめの一年間、とにかくなにも情報を入れるな、ということ。とにかく自分の道具であるノミをずっと1年間削りなさいというんですね。要は本当に自分が大切にする道具を一年間磨き続けることによって、今度は自分が作るもの、触れていくものを決して粗相にしないということを理解する。まず自分が使っていく道具を自分のものにしていかないとだめだから、一切横を向くなと。余計な情報を入れないというのはすごく勉強になりましたね。
法隆寺の宮大工さんの名前は、小川三夫さん。神社仏閣専門の棟梁で、日本一の宮大工と言われる方です。
小川さんは映画の中で、こんな言葉もおっしゃっています。
「千年の木は、千年もたせろと。それが恩返しでしょうな。」
千年かけて育った木で作られた建物は、丁寧に修復を重ねて、もう千年もたせることが、恩返しなのだ、ということ。
そして、映画「うみやまあひだ」では1000年以上前からの技術を受け継ぐ宮大工さんの言葉だけでなく、現代を代表する建築家の方の言葉も紹介しています。
◆ずっとさきの未来を考えていまを生きる
『うみやまあひだ』には建築家の隈研吾さんにもご出演いただいています。
むかしは身近に森があったのに、いまは都市化によってなくなってしまっているから、森という存在自体を忘れてしまっている。そこへ式年遷宮や東日本大震災のような、千年単位のことでいろいろ気付かされることがあった。やはり、もっと何百年単位、千年単位できちんとものを考えないといけない。伊勢神宮はそういう部分では、100年、200年後の森を育てているわけで、ずっと先の未来のことまで考えていまを生きているということの大切さ、というのを隈研吾さんがおっしゃっていたのがすごく印象深かったなと思いますね。
今日のお話いかがだったでしょうか。
ポッドキャストでも詳しくご紹介していますのでこちらもぜひお聞きください。
映画『うみやまあひだ』は1月31日より、三重県明和109シネマズを皮切りに全国劇場公開がスタートします。
詳しくは『うみやまあひだ』の公式ホームページをご覧ください。
【今週の番組内でのオンエア曲】
・朝日 / ケツメイシ
・やさしさに包まれたなら / 荒井由実
20年に一度、社殿・お社をすべて作りかえる伊勢神宮の式年遷宮。1300年前から続くこの儀式には、たくさんの「御用材」と呼ばれる木材が必要となります。映画『うみやまあひだ』では、2013年に行われた式年遷宮とその御用材のルーツについても取材。
一昨年の遷宮に使われた木材は、どこからどのようにやってきたものなのか、映像とインタビューで伝えています。

◆御用材のルーツ
元々は宇治山田とか、伊勢神宮の裏にある宮域林、御山(みやま)からとっていました。しかし鎌倉時代あたりにその木がだいぶ少なくなったんで、いま植林して森を育てています。ただ、あと100年後とか、200年後を目指しているので、それはそれですごい話なんですけれども、ですからいまは木曽からほとんど御用材をいただいています。ただ、伊勢神宮も森を育てていますから、そのかいあって今回の式年遷宮では20パーセントくらいは御山からの御用材を使っていると聞きました。ただ、2~300年、400年の大きい木になると、あと100年、200年後の話ですから、もう少し時間がかかるということで、その間は木曽から木をいただいているということですね。
この番組でも、一昨年、伊勢神宮の鎮守の森「神宮 宮域林」を管理する営林部の倉田克彦さんを取材しましたが、実に年ぶりに、七百数十年ぶりに宮域林で育てた木材が遷宮に使われたんですよね。
ただ、宮澤監督のお話に合ったように宮域林から取った御用材は全体の2割。それ以外は長野県・木曽の山中で育てられた桧です。
式年遷宮の準備が始まるのは、遷宮の八年前。木曽の山中では、どんなことが行われるのでしょうか。
◆木が「鳴く」
御神木を切る御杣始祭(みそまはじめさい)というのが、山口祭のあと平成17年の春にあるんですよ。それは木曽の山中で内宮と外宮の一番太い柱、棟持柱(むなもちばしら)になるところを切って、伊勢の方に運んでいくという行事で、昔ながらの川曳きとお木曳きをします。御神木をみんなで縄を持って曳く行事、それを伊勢の神領民という、伊勢に住んでいる方々が伊勢神宮の神域まで運ぶという行事なんですね。
木曽は木曽で、木を切って木曽の山から運んでくるというお祭があります。そして次の街に行って、またそこでもお祭りがあるという、とにかく御神木が移動する度にお祭りをやって伊勢に行くんです。
三代続いている、木曽の池田木材店の社長である池田さんが言っていますが、やはり御神木ですから、木を倒すとか、切り倒すという言い方はしないんです。木を寝かすという言い方をします。そして、木は倒すときに「鳴く」らしいんですよ。つまり「鳴いて寝る」。何百年も育った木を切り倒して、またそれを使うわけですから、ひとつの死でもあり、また次はぐぐむ生という意味もあります。
切り倒した木のところに、その木の枝を差す行事があるんですよ。切り株の上にまた木が育つという、再生を意味するお祭りなんですけれども、そういうことをふまえると、自然とか木に対する尊敬の念、感謝の念というのは木曽の方でも伊勢の方でも、みなさん持っていると思いますね。
そしてこの映画には、伊勢神宮と 対比する形で、やはり1000年以上の歴史を誇る、日本の歴史的建造物が登場します。
それが奈良の法隆寺です。
◆1300年守り続けてきた法隆寺と、20年に一度建て替える伊勢神宮
『うみやまあひだ』のなかでインタビューしている小川棟梁は、元々は法隆寺の伝説の棟梁、西岡棟梁の愛弟子さんなんです。なぜ伊勢神宮の宮大工ではなく、法隆寺の宮大工の方にインタビューしたかというと、法隆寺というのは1300年改修を続けながらお寺を守ってきたという、建てたときから1300年変わっていないわけです。しかし伊勢神宮は1300年の間、20年に1回新しくつくりかえて変わってきたという、そういうことがありますよね。その差はなんなんだということを聞きたくなったんですね。1300年継続してきた宮大工さんに話を聞いてみようということで、小川棟梁に話を聞いてみたんです。
1300年守っていくのも、20年に1回建て替えるのも、木に対する愛情は一緒でしたね。「木を育てないと人も育たないし、人がいくら育っても木がなければだめだから」というお話しはすごく心に残りました。
言葉で印象的なことは、映画でも言っていましたが、いちばんはじめの一年間、とにかくなにも情報を入れるな、ということ。とにかく自分の道具であるノミをずっと1年間削りなさいというんですね。要は本当に自分が大切にする道具を一年間磨き続けることによって、今度は自分が作るもの、触れていくものを決して粗相にしないということを理解する。まず自分が使っていく道具を自分のものにしていかないとだめだから、一切横を向くなと。余計な情報を入れないというのはすごく勉強になりましたね。
法隆寺の宮大工さんの名前は、小川三夫さん。神社仏閣専門の棟梁で、日本一の宮大工と言われる方です。
小川さんは映画の中で、こんな言葉もおっしゃっています。
「千年の木は、千年もたせろと。それが恩返しでしょうな。」
千年かけて育った木で作られた建物は、丁寧に修復を重ねて、もう千年もたせることが、恩返しなのだ、ということ。
そして、映画「うみやまあひだ」では1000年以上前からの技術を受け継ぐ宮大工さんの言葉だけでなく、現代を代表する建築家の方の言葉も紹介しています。
◆ずっとさきの未来を考えていまを生きる
『うみやまあひだ』には建築家の隈研吾さんにもご出演いただいています。
むかしは身近に森があったのに、いまは都市化によってなくなってしまっているから、森という存在自体を忘れてしまっている。そこへ式年遷宮や東日本大震災のような、千年単位のことでいろいろ気付かされることがあった。やはり、もっと何百年単位、千年単位できちんとものを考えないといけない。伊勢神宮はそういう部分では、100年、200年後の森を育てているわけで、ずっと先の未来のことまで考えていまを生きているということの大切さ、というのを隈研吾さんがおっしゃっていたのがすごく印象深かったなと思いますね。
今日のお話いかがだったでしょうか。
ポッドキャストでも詳しくご紹介していますのでこちらもぜひお聞きください。
映画『うみやまあひだ』は1月31日より、三重県明和109シネマズを皮切りに全国劇場公開がスタートします。
詳しくは『うみやまあひだ』の公式ホームページをご覧ください。
【今週の番組内でのオンエア曲】
・朝日 / ケツメイシ
・やさしさに包まれたなら / 荒井由実