今週は、世界と日本の「巡礼の道」と「森」のお話をお届けします。
お話を伺ったのは、作家・福元ひろこさん。この方は、実際に歩いて旅した各地の巡礼の道のことを「歩く旅の本 伊勢から熊野まで」という本に綴っています。

◆サンティアゴ巡礼路、熊野古道 歩く旅
高橋:歩く旅を何度も重ねているということなんですが、なぜ歩こうと思われたんですか?
福元:30歳くらいころ、仕事もそれなりに一段落して、周りからそろそろ結婚しないのかとか、孫の顔が見たいみたいなプレッシャーを感じるようになりました。それで、自分が本当に何を求めているのかを考えたいなと思ったときに、やはり日常の中にいると周りからの声が気になってしまって、本心がわかりにくくなってしまうんですね。それでちょっと日常から離れたところにしばらく行ってみたいなと思ったんです。それで歩こうと思いました。
高橋:元々歩くのはお好きだったんですか?
福元:いや、全然そんなことはないですし、歩く以外でも社会人になってからほとんど運動をしていないですね。
高橋:いちばん最初の歩く旅はどこだったんですか?
福元:フランスから入って、スペインを通るサンティアゴ巡礼路というヨーロッパの道があるんですが、そこを最初に歩きました。日本でいうところのお遍路さんみたいなものですね。みなさんは、お遍路さんって傘をかぶって、白装束でっていうイメージがありますよね。ああいう感じでヨーロッパではサンティアゴ巡礼路のこととか、巡礼路をあるく巡礼者のことがよく知られて、巡礼者のシンボルがホタテ貝なんですけれども、ホタテ貝を持って大きなリュックサックを背負っていたら、この人は巡礼者だなというふうにわかってくれるんですね。なので、ウロウロ困っていたら、道に迷っているか、宿に困っているんだろうなって向こうの人は思ってくれるので、比較的やりやすいというのはありますね。
高橋:サンティアゴ巡礼路を歩くのに、どのくらいかかったんですか?
福元:私は変形ルートだったので、だいたい1000kmくらいを二ヶ月かけて歩きました。
高橋:1000km、2ヶ月!?それはどんな準備していくんですか?
福元:荷物はだいたい2泊分くらいの衣類と寝袋、まあそれだけですかね。というのは、あまり重たくし過ぎると歩けないんですよ。これがまさに歩くたびの面白さでもあるんですが、荷物が重ければ重くなるほど辛くなるわけですよ。そうすると、最近「断捨離」が流行っていますが、そんなレベルではない、かつてないほどの真剣さで本当に必要なものと必要ないものを考えだすわけです。そこに自分が見えてくるというか、例えばシャンプーと洗顔フォームと石鹸は必要なのかみたいな(笑)化粧水と乳液は本当にふたついるのかとか。私が印象的だったのは、フランス人の女性なんですけど、彼女はいつもドライヤーで髪を乾かしてるんですよ。それで、いつも荷物が重い、重いって言っているんですね。だったらドライヤーを置いていけばいいじゃんって言ったら、彼女は「いや、自分にとってはドライヤーで髪の毛を乾かしている瞬間が、自分が女性だって感じる時間なので、これは絶対に自分の人生に必要な時間だから、ドライヤーは絶対に手放せない」って彼女は言ったんですよ。そういう感じで、自分にとって大切なものがわかってくるんですね。本当に人によって残すものが違うんです。
高橋:ただ歩く旅と聞くと、なんか大変そうだなと思いますけど、そういう感情は味わいたいなと思いますね。
福元:そうですね。究極の時にしか出会えない自分を見つけられるというのはすごく魅力のひとつですよね。
高橋:サンティアゴ巡礼路が終わってから、伊勢神宮から熊野古道まで歩こうと思われたんですか?
福元:サンティアゴ巡礼路はすごくいい体験だったので、日本の中にもこういう体験が出来る道があったらいいのになと思ったんです。それにヨーロッパを歩いていると、色んな人に日本のことを聞かれるわけですよ。日本代表みたいな感じで。だけど、全然日本のことを知らない自分がいて、やはり日本のことを知りたいなと思って、それで日本のなかでどこかいい道がないかなと探していたんです。
高橋:伊勢神宮から熊野古道までというと、距離にするとどのくらいあるんですか?
福元:伊勢神宮からですと220kmくらいですね。
高橋:そう聞くと、サンティアゴよりはだいぶ短いなと思いますが、どうでしたか?
福元:距離的には短いんですが、肉体的な大変さは伊勢路のほうが上でした。というのは、サンティアゴの道って、フランス国内は結構アップダウンがあるんですが、スペインに入ってしまうと本当に平らなんですよ。で、熊野古道のなかでも、伊勢路といわれる道はもっとも峠が多い道といわれていて、多い日ですと一日に3つとか4つの峠を超えるんですよ。軽い登山を3つくらいするみたいなものなんです。
高橋:しかも荷物をしょってですよね。
福元:結局10kgぐらいですかね、伊勢路で背負っていたのは。
高橋:福元さんが歩いた熊野古道って、ルートがたくさんあるって聞いたんですが、どのルートになるんですか?
福元:伊勢神宮から熊野本宮大社まで続く伊勢路という道になりますね。熊野古道は現在歩ける道は5本あるんですね。ひとつは和歌山県の紀伊田辺という街から通じている中辺路という道。それから紀伊半島をずっと南下して海岸を沿うようにして歩く大辺路という道。高野山から続いている小辺路という道。また、昔の平安時代の貴族たちが旅した道で、京都から船で大阪に行って、大阪から紀伊田辺までいくのが紀伊路といわれていて、そこからは大辺路にいくか中辺路にいくかにわかれます。あとは伊勢神宮からの伊勢路という5本の道があるんですが、わたしはそのなかの伊勢路を歩いたんです。
高橋:なぜ伊勢路にしようと思われたんですか?
福元:わたしはスタート地点も大事だと考えているので、伊勢神宮からスタートしたかったということがあります。それに、わたしは関東の人間なので、伊勢から熊野まで歩けるということを知らなかったんですね。そこに道があるということも。なので、そんな道があったなら是非歩いてみたいということもありました。また、日本を知りたいという動機があったので、伊勢神宮と熊野って、日本の聖地ですから、そのふたつを繋ぐ道を歩いたら、より深く日本を知れるのではないかと思ってその道にしたんです。



福元さんのお話いかがだったでしょうか。サンティアゴ巡礼路の1000kmを2ヶ月で踏破したなんて、すごいですね。
それに「断捨離」のお話も印象的でしたね。本当に何が必要かなんて、なかなか考える機会もありませんし、究極の状態でしか出会えない自分とういものがそこにあるんでしょうね。


今回の福元さんのお話はポッドキャストでも詳しくご紹介しています。
こちらもぜひお聞きください!


【今週の番組内でのオンエア曲】
・TREK KING SONG / キリンジ
・RPG / SEKAI NO OWARI
     ポッドキャストを聴く  
今週も引き続きツリーハウスクリエイター、小林崇さんのインタビューです。
小林さんは現在、ジャパンツリーハウスネットワークというNPO法人や、ツリーハウスクリエーションという会社を通じて、ツリーハウスの情報発信や、クリエイターの養成講座なども行っています。
20年前にツリーハウスの魅力に魅せられ、こうした活動を続けてきた小林さん。
最近は、こんなことを考えているそうです。

◆自分らしく生きていく
実はちょっと前まで首を痛めて入院していたんです。20年間休んだことがなかったんですが、3週間入院しました。全身麻酔6時間というハードな手術を受けたんですが、全身麻酔を受けると呼吸も一時的に止まる。それはつまり一度死んじゃうってことじゃないですか。
そして、手術を受けた後、ああこれは、あとはおまけの人生だと考えました。だから、楽しいことにストレートに向かっていって、それ以外の余分なものは会社であれなんであれやめていこう、そんなものはなくても自分の生き方はできると考え、キャンピングカーを買って旅にでようと思いました。そこで生活しながら、日本中に100くらいある、作ったツリーハウスを写真に収めるんです。できるだけ同じ場所にいず、どこにいるか良く分からない状態にしようと思っているんです。
別に会社がやりたいわけじゃないんです。NPO法人が好きなわけでもないんです。自分の表現の形が日本だと限られるから作ったんですが、そんなものなくてもいいなと思ってます。どれだけ自分らしく生きて行けるかが大事です。



小林さんがいまやりたいことは旅なんだそうです。これまで手がけてきたツリーハウスを、壊れたものも含めて写真に収めるそうで、その写真は写真集としてまとめる予定だそうです。ぜひ見てみたいですね。
そして、小林さんはもうひとつやりたいことがあるそうです。

◆ツリーハウスでの過ごし方
いままで100ものツリーハウスを作っていますが、自分のツリーハウスがないんです。ですので、自分のツリーハウスが欲しいですね。サーフィンをやるので、遠くに海が見えるところがいいですね。あまり海のそばではなく、滝があって川があって海が見える高台の木の上。周りに畑があって、川で釣りができて、海に潜ってもなにか捕れる、そんなツリーハウスが理想です。五年以内くらいに実行しようと思っています。日本に限らず、海外でもいいですね。同じ地球の上なんだから、それほど変わりはありませんから。
ツリーハウスに人といると、会議室やカフェでは、普段話さないような話になります。ツリーハウスはそんな場所なのかなと思います。海は人を開放させますが、森のなかは自分の中の世界に入っていくような感覚があります。日本は木がそんなに大きくないので、小さいツリーハウスになるんですが、小さなツリーハウスの中に入ると物思いにふけるようになりますね。養成講座の生徒は今まで100人くらいいるんですが、仕事を辞めてしまう人が多いんです。結構、考えちゃうみたいですね。
ツリーハウスのなかでひとりで過ごすのならば、気に入った本を一冊もっていきますね。森のなかは静かなので、耳を澄ましていくと、川の音だったり、虫の音だったり、葉の音が聞こえるようになります。つまりそれはなにもないから。なにもなければ一つのことに集中できますから、本を読んだり書いたりするのがいいですね。好きな人と一緒にいるのもいいかもしれない。


スナフキンのように自由に生きている小林さん。最後は、ツリーハウスを通じて、いまの子どもたちと、そしてその親に伝えたいことを伺いました。

◆経験から学ぶ
子どもたちがやるデタラメさを大人たちが許すかどうかだと思うんです。登った木から落ちてしまうかもしれないし、指に釘を差してしまうかもしれませんが、それをo.k.という意識が必要です。この木は危ないとか、この木はよくないとかということは、自分は経験値としてありますが、はじめのひとつはどんな場所につくってもいいんじゃないでしょうか。学校の木につくっても、公園の木につくっても、怒られるかもしれないけれども、ツリーハウスは元々はそういう遊びだと思うんです。ツリーハウスって秘密基地じゃないですか。大人にバレたら怒られるよね、というような場所に内緒で作るものだから、周りを気にしなくていい。次の日には壊れてしまうようなものでもよくて、そういうことの積み重ねで覚えられることがたくさんあるだろうと思うんです。


4回にわたってツリーハウスクリエイター小林崇さんのお話をお届けしましたがいかがでしょうか。
ポットキャストの方でも詳しくご紹介していますので、こちらもぜひお聞きください!


【今週の番組内でのオンエア曲】
・Fallin' For You / Colbie Caillat
・Day Off / Def Tech
     ポッドキャストを聴く  
今週も引き続き、ツリーハウスクリエイター、小林崇さんのインタビューです。
以前、この番組で、宮城県東松島市・野蒜地区で計画が進む、『森の学校』を紹介したことがあります。これは、作家で環境活動家・CWニコルさんと、ニコルさんの団体『アファンの森財団』が中心となった取り組み。東日本大震災で大きな被害を受けた野蒜地区の、高台の森を手入れして、森を生かした、子どもたちの「学校」をつくろうというものです。
2018年の完成を目指して、今も着々と計画が進んでいるのですが、実は、この森の学校の一つの象徴として、ツリーハウスも作られています。そしてこのツリーハウスを作ったのも、実は小林さんなんです。


◆ツリードラゴン
東日本大震災の被災地で東松島というところがあります。津波の被害で、山沿いに移転するのですが、そこに木造の小学校をつくろうという話があります。この小学校ができると通学路になる山があって、通学路の途中にツリーハウスができたらいいよね、という話がニコルさんからありました。また、ツリーハウスで授業がやりたいという話もあって、じゃあやりましょうということでつくったんです。
ただ、ツリーハウスをつくるのにあまりいい木がなく、場所も急斜面だったので、木にのせることは無理でした。そこで、斜めのところにマッチ箱のように下から組み上げていきました。
一階部分は山の斜面を掘ってつくったのですが、その掘ったところが洞窟みたいになって、竪穴式住居のようになりました。そして、岩を削ってストーブをつくったんです。
重機もほとんど入らなかったので、ほぼ手作業でした。また、材木は買いませんでした。そこはすでに移転のための造成が始まっていたので、なぎ倒された木があり、それをチェーンソーを使って手作りで板にしました。ですから、90パーセントはそこにあるものを確保して、そこに戻した状態です。
このツリーハウスは『ツリードラゴン』という名前で、龍が登っていくような、再生や復活のイメージです。何も無くなってしまったけど、もう1回再生するんだという、龍が天に登っていくようなイメージです。




元々、小林さんはニコルさんの「アファンの森財団」とも付き合いがあり、震災後、財団の方からの呼びかけを受けて、このツリーハウスを作ることに、協力したそうです。
そしてこのツリーハウスは、地元の子どもたち、大人たちの想いとともにつくったものでもあるんです。


◆100%の安全はない
ツリーハウスづくりは地元の子どもたちも手伝ってくれました。泥団子を作ってぶつけたりして、子どもたちもすごく喜んでいました。ここはたくさんの子どもが亡くなった場所で、なんともいえない気持ちでした。
このツリーハウスはストーブをつくったので、火が焚けるんです。いざとなれば暖もとれて、お湯も沸かせるのでシェルターになります。ですから、こういうものがたくさんできたらいいのにと思いました。山を造成して建物を建てるのではなく、森を残してこういうものがある街づくりもあったのではないかと思いす。このツリーハウスが街づくりのために自然を壊すのか、森を残すのか、選択するためのよい教材になるのではと考えています。
ツリードラゴンは子どもたちが使うだけではなく、ここで結婚式を挙げた地元の人もいました。近くに住んでいるおじいちゃんに、制作の期間は泊めてもらっていたのですが、最初はうさんくさく思われていたものの、最後はとても喜んでくれて、お酒を飲み過ぎてしまいました。
でもツリーハウスは構造計算は大丈夫なのかとか、子どもが落ちて怪我したらどうするのかとか、火事になったらどうするのかという話もあります。しかしそれは、そういうものだと思うんです。100パーセントの安全はないんです。今回これが許されたのは、行政や町、アファンの森財団といった人たちの強い気持ちあったからできたんです。



「100パーセントの安全んはない」小林さん、そう言っていましたね。この言葉には、小林さんが考えるツリーハウスという存在や、そこで子どもたちに、何を学んでほしいか、という気持ちが込められています。

◆体験からしか学べないこと
こんな手すりのないところに子どもたちが登って、危ないという人もいます。でもそれは意識の問題です。僕もニコルさんもいいんじゃない?って思っているんです。100人のって大丈夫でも、101人目で壊れてしまうかもしれません。でもそういうことを子どもたちは分かっていた方がいいと思うんです。木に登るとき、自分は大丈夫でも、もっと大きい子が登ったら枝が折れるかもしれない。そういうことは体験でしか分かりません。それが少なすぎて、何かあったときに危ないんじゃないかと思うんです。
何かあった時に判断するのは自分です。たとえば地震があった、津波があったというときに、親や大人がいればいいですが、そうではないときに判断するのは第六感です。ですから学校では学べない何かを子どもたちは身に付けるべきだと思います。
ワクワクする、ドキドキするものにはリスクがあります。ツリーハウスは何年もつのかとか、何人のれるのか、大丈夫なのかとか、いろいろ聞かれます。でもそれは難しい問題です。だからやっている人は少ないんです。日本でプロは僕だけです。


小林さんのお話、お届けしましたがいかがでしたでしょうか。
たしかに体験だけでしか分からないことって大切ですよね

次回も小林さんのお話をお届けしますのでお楽しみに。

今回ご紹介しな内容はポッドキャストでも詳しくご紹介しています。
こちらもぜひお聞きください。

【今週の番組内でのオンエア曲】
・Happily / ONE DIRECTION
・Daydream Believer / The Monkeys
     ポッドキャストを聴く  
今回は前回に引き続き、ツリーハウスクリエイター小林崇さんのインタビューをお届けします。
これまで国内外で100を超えるツリーハウスをてがけてきた世界的なツリーハウスクリエイターの小林さん。
図面を引かず、木に登り、その高さから見えるものを感じながら木に寄り添って「創作」するのが小林さんのツリーハウスづくりです。
建築家ではなく、ツリーハウスクリエイターとして大事にしていることを伺いました。


◆ツリーハウスづくりの魅力
ツリーハウスをつくる木を選ぶときは、まずいちばん大きな木を選びます。木は全部が大きくなれるわけではありません。たとえば、たまたま日陰に種が落ちてしまえば、日が当たらないから枯れてしまいます。日当たりが良い場所にたまたま落ちた種が、環境に適応して優占種として育っていくんです。つまり、その場所で大きくなっている木は、それまでの風雪に耐えてきた強い木ということなので、その木を選びます。

あとは、見た目のバランスが変で、この場所にツリーハウスがあったら素敵だなという木を選びます。完成した時にどれくらい馴染むかということが大事で、主張しすぎるのはちょっといやらしいと思います。僕はアジア人なので、西洋の人がつくるツリーハウスとはそのへんがちょっと違います。全体の風景の中でいかに溶けこむかということが大事なんです。
ツリーハウスをつくるときは、その場所の環境も考えます。たとえば、台風がきたとき、平面の壁だと風をまともに受けてしまうので、流線型にして、風を受け流すようにします。デザインとその場所の環境は密接に関係しています。それに木の種類も、しなる木、折れてしまう木、常緑樹、落葉樹…色んなものがあり、つくりながらも悩みます。
いちばん難しいのは、それを一緒につくっている人たちに伝えることです。なぜかというと図面がないから。図面があれば、プロはその通りにつくってくれます。でもそれでは面白いものはできないんですよね。ツリーハウスはだいたい5人で、1ヶ月半くらいかけてつくるのですが、前半から中盤くらいになると、みんな疲れて進まなくなってきます。つくっている間は共同生活をしていますから、揉め事も起きます。それでも時間が迫ってくると、最後の10日間くらいはみんなトランス状態のようになって、能力以上のものが出せるようになります。これはプロがプロのようにやっていてもできないですね。そういう状態になると、自分が指示を出さなくてもみんな動くようになって、ここからの10日間で仕上がっていくんです。そこが僕は好きなんです。

ですから、自分がスキルを持ったプロフェッショナルというよりは、技術を持ったプロフェッショナルたちのモチベーションを高め、自然の木の中でコンサートをするコンダクターみたいな仕事ですね。一発勝負なんです。やるときは本番なんで練習はできないんです。初めての場所で、そこにある材料を使って、決められた期間のなかで一発で勝負という、それが好きなんです。



ツリーハウスづくりを通して、人間も成長できるなんて素敵ですよね。
ところで、ツリーハウスをつくるのに何か資格がいるのかというと、とくに無いんだそうです。ただし、プロとしてツリーハウスをつくるには樹木の知識をはじめ、様々なノウハウが必要。
そこで小林さんは、NPO法人などを立ち上げて、ツリーハウスづくりの養成講座も実施しています。ここで学んだ人たちの中には、ツリーハウスづくりのプロとして全国で活躍している人もいて、そんな人たちが、小林さんのツリーハウスづくりを手伝うチームになっているんだそうです。
小林さんが手がけたツリーハウス、小林さんの教え子たちが作るツリーハウスは、今も全国各地でちょっとずつ、数を増やしているんですね

◆お気に入りのツリーハウスは?
--今まで作ってきた中で一番のお気に入りは?
もうなくなっちゃったんですが、ひとつは沖縄、もうひとつは北海道にあったツリーハウスです。沖縄のツリーハウスは風速38mの風でとんでしまったんです。その台風は北海道にもいき、その先でまたツリーハウスが落ちたんです。
そのふたつは海外でも評価されていました。沖縄のほうは19mの木の上にあり、ドーム型でステンドグラスが入っています。周囲は銅とアルミとステンレスの波板でできていて、カラーのタイルが張られていて、もしUFOが下りてくるなら、ここにおりたくなるような感じです。



北海道のツリーハウスは流木でつくったミノムシの形をしています。もし自分が虫だったらこんなものを作るかな、というものです。


しかしもうどちらもありません。日本列島を台風が直撃するようなときは、心配で夜も眠れませんね。日本全国に、つくったツリーハウスがあるわけですからね。大雪のときもそうです。
いつも思うのは、自然の力は人知を超えるということ。つくるときには精一杯やりますし、経験も生かして、なるべく災害から逃れられるように考えますが、いつも自然はそれより強いので仕方がないというところもあります。無理してもダメなものはだめ。壊れたらまたつくろうという意識でやっています。
コンクリートなどの建物に比べて、ツリーハウスの寿命はながくありません。でも短いからこそ素敵なものもあるじゃないですか。この時間がすごく大事なんです。
ですので、壊れてしまっても、なるべく自然に帰りやすいような素材を使っています。塗料も生分解するものしか使いません。材料となる木も、長野なら長野の建材を、静岡なら静岡のものを使って、ちょっとでも森に還元しようと考えています。



今回お届けした内容はポッドキャストでも詳しくご紹介しています。
ぜひこちらもお聞きください!


【今週の番組内でのオンエア曲】
・Don't Talk / Larry Lee
・Poetry Man / Phoebe Snow
     ポッドキャストを聴く  
今週は、夏休み、お子さんならきっと、ワクワクしちゃうようなレポートをお届けします。
それはツリーハウスです。
今朝は、東京港区白金台の 『ビオトープ』というショップの中にある、
ツリーハウスのレポート、お届けします。

白金台は、高級感があってちょっと大人の雰囲気のある街。オシャレなレストランとか、ブランドショップが並んでいるます。
このショップは、『アダム・エ・ロペ』というブランドのお店なんですが、中庭にあるクスノキの上、ちょうど4Fくらいの高さに立派なツリーハウスがあります。
街の雰囲気とツリーハウス、ちょっとギャップもありそうなんですが、オシャレな建物と緑がよくマッチしていました。
広さは3畳半くらいで、星の形をした部屋なんです。中にはクスノキが通っていて、ステンドグラスの窓もあります。天窓もついていてとても可愛らしい雰囲気なんです。
このツリーハウスを作ったのが、日本を代表するツリーハウスクリエイター、 小林崇さん。番組で以前、CWニコルさんが取り組む宮城県東松島市の「森の学校」のツリーハウスを紹介しましたが、小林さんは、あのツリーハウスを作った方です。


◆ツリーハウスをつくるようになったきっかけ
--はじめてツリーハウスに入ったんですが、なにかとても落ち着きますね。
ここは都会ですが、中はちょっと非日常感というか、時間が止まる感じがしますよね。

--小林さんがツリーハウスをつくるようになったきっかけはなんだったんですか?
地上のものに興味をが持てるものがないというか、面白いと思えるものがなかったんです。当時代々木のフリーマーケットの仕事をしていて、帰りによく行っていた原宿のアパートの2階の欧州雑貨屋があるんですが、その店をやっている女性と仲良くなり、となりで古着屋をやることになったんです。
それで古着屋も飽きてきた頃、ふと外を見たら木が一本はえていて、これを囲んで空間をつくりたいと思ったのが最初です。実際に生きた木が自分のスペースにはえていると面白かったですね。それがちょうど22年前。そのお店はいまもあって、木もずいぶん大きくなりました。それがきっかけでツリーハウスをつくるようになって、いまはプロになったわけです。作った時は予備知識も経験もなく、見よう見まねでつくりました。

--見よう見まねでできるものですか?
当時は全く素人で、なにもわからない状況でしたが、大工さんの手伝いをしていた知り合いが見かねて助けてくれました。それで古着屋をやめて木を囲むようなバーにしました。それは当時「HIDEAWAY」という名前で、いまは「ESCAPE」。日常がいやで逃げたかったんですね。その象徴としてツリーハウスはもってこいだったんです。



小林さんは、ツリーハウスの分野では、世界的にも知られる方です。ツリーハウスの情報発信や、ツリーハウス制作を手掛ける会社も立ち上げ、沖縄から北海道まで、各地の風土・樹木にあったツリーハウスの制作にあたっています。
これまで作って来たツリーハウスは、世界中で100を超えるそうです。
そんな小林さん、一番最初に手掛けたツリーハウスは、ほぼ「独学」だったと言います。
しかも相手は、木。普通の建築とは違い、自分の思い通りに作つくれるわけではありません。その難しさを、小林さんはどう捉えているのでしょうか。

◆つくりながら考えていく
ツリーハウスをつくるには、枝を勝手に切るわけにはいかないし、木によってある程度かたちが決まってしまいます。ですから自分から木に寄り添っていかなければいけません。でもその感じが楽だったし、面白いと思いました。木のはえている場所や種類でひとつひとつ違うわけです。それは図面じゃできません。その高さに上ってはじめてみえるものを見て、作りながら考えていくんです。だから夕日が見える窓もつくれるんです。

--じゃあ自分のしたい形に合わせていくのではなく、木に寄り添って形を考えていくんですね
ある程度モチーフはあるんですよ、たとえばここのように星の形にしようとか。でもそうしたいと思っても、木がそれに向いていなければできません。ツリーハウスをつくるときはその場所になんどか行って、夕日が見える時間や朝日が見える時間の風景をみながら、漠然としたものを具体的な形に近づけていく。ですから建築より、かまきりの巣の形や虫の形などからインスパイアされることが多いですね。
やりながらだんだんそれが仕事になり、生き甲斐になるとその場所にいることが増えます。そうすると街より森にいることが多くなるわけですから、いまは樹木医と同じくらいの知識はありますね。遊びで始めたことのおかげで色んなことを学べましたね。



今回うかがった白金のツリーハウスは、なかに小さな暖炉なんかもあって、まさに昔読んだ絵本や童話の世界のような感じがしました。
小林さんは、木に寄り添ってツリーハウスをつくるとおっしゃっていましたが、たしかにこのツリーハウスも木の風景に溶けこんでいました。ツリーハウスをつくるとき、小林さんは普段はあまり直線を使わないそうなのですが、この直線を使った星の形は、白金という都会にあわせていったらこういう形になったんだそうです。

次回も小林崇さんのツリーハウスのお話をお届けします。お楽しみに。

今回のお話はポッドキャストでもご紹介しています。
こちらもぜひお聞きください!


【今週のオンエア曲】
・HI'ILAWE / SUDDEN RUSH featuring GABBY PAHNUI
・Rainbow / G.LOVE AND JACK JOHNSON
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