今週は宮城県気仙沼市のNPO法人「森は海の恋人」に焦点を当ててお送りします。
森を育てることが海を豊かに育てることにつながるという考え方に基づき、地元の牡蠣漁師 畠山重篤さんが長年続けている植林活動は、今では日本全国、そして世界中に広まっています。この番組でも何度かご紹介しています。
今回はその「森は海の恋人」の新たな動きについてお伝えします。

「森は海の恋人」は気仙沼 唐桑半島の西舞根地区に拠点をおく団体です。西舞根はリアス式の入り組んだ地形に抱かれた静かな海のほとりにあります。この地区の海は本当に水が澄み切っていて、海の底まで見渡せます。海の底まで見える上に、海藻や海の生き物がたくさんいて、それだけ栄養いっぱいの海だということがわかります。
そんな場所に4月末に新たに建てられたのが「舞根 森里海研究所」です。
「森は海の恋人」副理事で、畠山重篤さんの三男、信さんにうかがいました。


◆舞根森里海研究所
「舞根森里海研究所」は震災後の自然環境の移り変わりを継続してモニタリングしていくという面と、子どもたちの体験学習の拠点として活用していただけるような施設になっています。
森は海の恋人 体験学習というのは海にいながらも山を感じられるようなプログラムです。和船にのって、自分たちの力で漕いでいかだまでいきます。そしていかだでどういうことをしているのかということを見て、牡蠣やホタテをその場で食べてもらうというようなことをします。
味覚は記憶に残りやすいので、自分たちが今まで食べていたものが、いったいどうやってできているのか、というところから、海だけ守ればいいわけではないということを、言葉というよりは感覚で伝えたいですね。たとえば山でいろいろなものを垂れ流すとどうなるのかという危機感はもっていなければいけないことだと思いますし、それを持っていることによって、自分の生活を省みるようにもなると思うんです。それを感じた子どもたちが、今度は自分の親にその話をすると、親も気を使うようになります。結果として、環境が良くなっていくというサイクルが構築される。それが日本だけではなくて、世界に広がれば、あっという間に環境は良くなっていくと私は信じています。



「舞根 森里海研究所」は二階建ての建物で、延べ床面積およそ500?と、大きい施設です。ここには牡蠣養殖の実験室や、研究者のための施設のほか、子どもたちの体験学習をするためのスペースもあります。気仙沼市内には海辺で遊べる場所がないため、そうした機会をつくるという目的もあります。また、近隣の小学校の修学旅行の受け入れも始まっているそうです。
先月末、この施設のオープニングイベントが行われ、「森は海の恋人」理事長の畠山重篤さんと、元NHKアナウンサーの住吉美紀さんによるトークセッションもありました。


◆森は海の恋人 トークセッション
畠山:牡蠣の味は湾ごとにちがいます。ここの湾から外にでたところは貝浜漁場というところがあります。ここの牡蠣はとても美味しいんです。”貝”浜という名前は、昔の人がよく貝が育つ場所だからということで名づけたわけです。そこの牡蠣はとてもおいしいです。それから貝浜のホタテもとてもおいしい。自分の母親には、そこのホタテを揚げてきてといつも言われていました。そこのホタテをむき身にして、ワタがついたまま一度煮ます。その煮汁をごはんに混ぜるんです。ワタをとった、貝柱だけのものだとこの味は出ません。そこはちょうど大川の川筋にあたります。だから、森の養分がそこを通って、エサになるので、非常に影響があります。
小学生が来たときにアイデアが閃いたんですが、それはプランクトンネットでプランクトンをとり、コップにためて、それを一口ずつ飲むということです。プランクトンは、人間が川に流したものを最初に体内に取り入れる生き物です。ですから、プランクトンを飲むということは、人間が流したものを飲むということに通じます。ですから、もし人間が川を汚せば、当然牡蠣も食べられなくなるということなんです。
コップを光にかざしてみると、動物プランクトンもいますから、動いているものもいます。これを飲めと言われても普通は嫌でしょ?でも、沖に出ていますから、これを飲まなければ帰らないからと脅かすと、まず元気のいい男の子が飲みます。彼は「きゅうりの味がする」といいました。じつは飲んでみると、植物プランクトンも多いので青臭いんです。ですので、きゅうりの味がするというんです。そうすると農家の子どもたちは安心するんですね。じゃあ僕も、わたしも、となります。
子どもたちはくどくど言わなくても、それでプランクトンを飲むことは人間を飲むことだとわかりますね。
住吉:全然関係ないんですけど、ずっと牡蠣と共に生きてきたからなのか、畠山さんの顔をみていると、どうしても顔が牡蠣に見えてきます(笑)
畠山:そうですか(笑)
住吉:だから、ずっと好きだと似てくるのかな、と思ったんですが(笑)



プランクトンを飲むって、びっくりですよね。でも確かに子どもの頃のそういう経験は、忘れられない思い出になるし、言葉で聞くよりもずっとリアルに森と川と海のつながりを感じられますよね。うちに帰ったら両親にそのことを話して、お父さん、お母さんも環境に気を使うようになるというのは、とてもいいサイクルですよね。

トークセッションの模様はポッドキャストでも詳しくご紹介しています。
こちらもぜひお聞きください!

【今週の番組内でのオンエア曲】
・カナリヤ / NIKIIE
・ハピエスト・フール / マイア・ヒラサワ
     ポッドキャストを聴く  
今週も引き続き、ベストセラー『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』の著者、藻谷浩介さんのお話をお届けします。
地域経済の専門家・藻谷さんが、経済再生、地域の活性化のキーワードとして提唱しているのが、里山資本主義という、里山を有効活用する考え方です。

前回までの2回は、日本国内で実際に里山とともに暮らす人たちの例をいくつか紹介しました。
広島県庄原市で、石油缶を改造したエコストーブを使い、里山の薪を燃料に、原価ゼロの暮らしを実践する男性。岡山県真庭市では、役場や企業、住民が一体となって取り組む木材を使った発電や暖房を活用した、とても豊かな暮らしがありました。
3回目の今日は、この考え方を、都市部に住んでいる人が生活に取り入れるにはどうしたらいいのか。これを教えて頂きます。
藻谷さんは、里山資本主義が広がる可能性のある地域として、ご自身のふるさとを例にあげています。


◆藻谷さんのふるさと
わたしは山口県周南市の、段々畑を潰したところにある家で育ちました。今思うと里山に囲まれていたようなところですが、今は田んぼがつぶれて家になってしまっています。
かつては裏山を探検しまくっていました。当時は縦横に道が通っていたのですが、おとなになってから行ってみたら、もうなくなっていました。僕が子どもの頃は、近所はみんな五右衛門風呂で薪を炊いていたので、薪を取る人の山道があったのですが、今は山の木に価値が無くなり、道も消え、木が生え放題になっています。エコストーブを持ってきてこっそり炊いたら炊き放題ですね。
山口県は人口が減っていますが、山奥にある盆地では人口が増えている地区があります。交通網は年々便利になるので、昔だったら住めない山奥がクルマで15分でいける。そこに家を構えて通勤する人が増えています。
自然の中に広い家を構え、釣りが好きな人は近くの川で釣りをして、いい空気を吸って、農業をしながら、街に降りて工場に通っているというような人が増えているんです。東京ではできない贅沢ですね。
ただ、平地がないので、都市の田んぼは荒れ果てて立ち入れない状況になっているところが結構あります。しかし、他方では一番山奥の棚田地区が有名になり、ブランド化しているところもあります。一番山奥の棚田地区に、住みたいというひとがたくさんいるのに、家がないということが起きていて、逆に街のすぐ横の田んぼが荒れ放題ということが起きている。まるで日本の象徴ですね。
荒れ放題の田んぼを持っている人たちがちょっと気がついてくれて、市民農園に貸してくれれば状況が変わるのに気がつかない。逆に一番山奥の過疎化したところで棚田が見直されて、写真家が集まっていたりして、ブランド化がはじまっている。ブランドとは価値を感じるという意味ですね。そこに価値を感じて高いお金を払う、写真家が写真を撮るためにやってくる、人に何かをさせる力がブランドです。今ここにしか無い、私にしか分からないというものに人は価値を感じます。それが里山にはある。子どもたちに自然教育をやっている退職者グループなんかもあって面白いですよ。


とても面白いお話ですよね。でも、藻谷さんが「東京ではできない贅沢」とおっしゃるように、私のように東京で暮らす人間、大都市で暮らしている人が、すぐに出来るのかというと、ちょっと考えにくいですよね。
都会で暮らしながら、里山資本主義を取り入れる方法ってあるんでしょうか?


◆都会でもできる里山資本主義
里山資本主義はコーヒーに入れるミルクのようなもので、好きな比率で混ぜあわせればいいんです。ほとんどカフェオレにしたい人もいれば、一滴入れるだけでいいという人もいます。ですから、都会でも十分できます。
産直なんかに買いにいって、特定の地域のひとと仲良くなる、お得意様になる。ふるさと産品を買うことで向こうの名簿に載り、イベントのお誘いが来て知り合いができて、物々交換の輪に入る。それだけで立派な里山資本主義です。
あるいは、そんなめんどくさいことをせずとも、ベランダで園芸をやって、近所の人に取り過ぎた野菜をあげて、お返しに素麺をもらうというのも、里山資本主義ですね。都会に住みながら近所に農園を借り、野菜をある程度自給しているという人もいます。
里山がまだ多く残る横浜は、市として市民農園をずいぶんやっていますが、東京もこれから空き家がどんどん増えて埋まらなくなるし、持ち主も別のところに住んでいたりするケースが多い。そういう家は老朽化したら、取り壊して市民農園にするべきです。それをNPOなどで借りて、近所の人みんなで畑を作る。そうすると、都会のニュータウンも里山資本主義の実践場になります。さらに好きな人は田舎に土地を借りて通う人もいるし、特定の田舎に住むのもいいし、ある時期だけ移り住んでもいい。1から10まで好き勝手なやり方で里山資本主義を取り入れることは可能なんです。都会のマンション暮らしに1%、3%里山気分を取り入れるということでだれでもできる。日本はそれができる豊かな国土なんです。それを生かさない手はないですよね。



都会で「里山資本主義」を実践するのは難しいかと思っていたんですが、いろんな方法があるんですね。ベランダでハーブを育てて物々交換をする、そんなことなら取り入れられそうな気がしますよね。
さて、「里山資本主義」では、日本の国土の3分の2をしめる森から、木を「切り出す仕事」がとても重要になってきます。つまり、林業です。
藻谷さんに、これからの林業について伺いました。


◆林業は有望な産業
林業は儲からず、従事する若い人が減っていたんですが、昨今の円安で一気に木が復活してきています。エネルギーとしても灯油と同額以下になったし、建材としても外国産材との価格差はほとんどゼロまで縮小しています。ですから、林業はある程度、雇用としてこれから期待できます。実際、若い人を募集している林業組合はものすごく多い。製材所の雇用も増えつつありますが、どこにいっても聞く話が「若い人が足りない」「募集しても人が応募してこない」ということです。だれでもできるわけではないんです。大きな機械を操縦して木を倒し、皮をむくという、近代化された巨大ロボの作業ですので、優秀な人材を求めているんですが、意外に知られていない。自然が好きで、巨大ロボを動かしたい人は、山に入って手に職をつけるのは有望な就職先だと思います。



これから、山で働く仕事、林業、注目かもしれません。
そのためには私たちも、日本の森と、そこから生まれる木材にもっと目を向ける必要がありそうです。

著書『里山資本主義』の中には、木材を使った建築物の例として、オーストリアの取り組みが紹介されています。オーストリアは木材の技術開発が進み、なんと「木造の高層ビル」が次々と建てられているそうです。例えば、本の中では木造・7階建てのビルが紹介されています。
こうした世界の流れをお手本に、日本も木材の価値が見直されるようになったら、 私たちの町はどんな風に変わるのでしょうか。
藻谷さんはこんな風にイメージしています。


◆ヨーロッパ型の木造建築
ヨーロッパでどんどん増えている、”クール”で”ヒップ”な木造建築が、日本でも10年くらいで増えると嬉しいですね。いま五輪の選手村を木で作ろうという話があります。木造というと和風の建築を想像しがちですが、そうではなく近代的な欧州のガラス張りのオフィスビルなんです。鉄筋のかわりに木を使っているんですが、そいういものを選手村につくろうという話もありますし、スカイツリーも木で作って欲しかったですね。これは冗談ではなく、技術的に可能ですし、そのほうがかえって安全なんです。木で悪いことはなにもありません。軽くて丈夫で、集成材であれば燃えません。そういう有効な木材の利用を増やしながら、余った分を燃料に使うサイクルを作っていくべきだと思いますね。



確かに木のスカイツリー、見てみたかったですよね。オーストリアではCLTという、木材を組み合わせた建築材料が開発されています。この木材はコンクリートと鉄の建物と同じレベルの丈夫さがあって、火事にも強いそうです。オーストリアでは木造の高層ビルが増えているんだそうです。日本では建築基準法の制約があるため、難しかったのですが、ここ数年で、役所や公共の建物を中心にようやくこういった木造の建物を増やそうという動きが進んでいます。きっと景観も素晴らしいですし、日本の街も木造の建物が増えていったらすごくいいですよね。

この番組はポッドキャストでも配信中です。
こちらもぜひお聞きください!


【今週の番組内でのオンエア曲】
・炎と森のカーニバル / SEKAI NO OWARI
・Escape (The pina colada song) / Jack Johnson
     ポッドキャストを聴く  
今週は先週に引き続き、ベストセラー『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』の著者 藻谷浩介さんのお話をお届けします。
地域経済の専門家の藻谷さんがいま最も注目している「里山」。
藻谷さんがテレビ番組の取材などを通じてみた、里山の可能性を紹介した本が『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』です。
この本には実際に里山資本主義を実践している様々な例があげられていて、そのひとつが広島県最北部の小さな山村の、ひとりの男性の暮らしです。

◆広島県庄原市 和田さんのエコストーブ
広島県庄原市旧総領町木屋という山の中なんですけれども、そこに和田さんという面白い人が住んでいます。70歳近いおじいさんなんですが、とにかくいきいきとした人です。仲間が多い人で、その仲間には若い人や女性が多い。
彼は「里山を食いものにしてやる」といって、実際に原価0円の暮らしをしています。山に入って、木を切り、エコストーブという、自分で石油缶を改造した、煮炊きの設備でいろいろなものを煮炊きしたり、ピザも焼いたりしているんです。
エコストーブとは、だいたいどこのガソリンスタンドでもゴミ箱につかってい石油缶、あれを切って加工したものです。ごく少量の木切れを中に入れると燃やせるように工夫してあって、石油缶の上で煮炊きができるんです。いざなにかあったときにひとつ持っておくと、そこら辺の公園から拾ってきた木切れでもご飯を炊けてしまうんで安心ですね。
彼は近所の人が持っている山の、木だけをもらって、それを焚きながら暮らしていますが、かなり電気代ガス代が浮くそうです。もちろん電気、ガスも使いますが、都合のいい部分だけ木を燃やして暮らしている。まさに里山を食いものにしているわけです。
自分で持っている畑でもおいしいものが採れますし、採れないものは買ってきて、あわせて暮らしている。
そして、いろんな仲間と楽しく集まって、山里料理みたいなものを奥さんが出してみたりしている。イノシシとか鹿がたくさん捕れるんですが、とくにイノシシがおいしいんですね。どんぐり食べ放題で、本当にイベリコ豚みたいな味になっています。そういうものを、猟ができる仲間が捕ってくると、「じゃあみんなで飯でも食うか」といって、集まっている。そこに地域のおもしろい人達が集まって、情報交換が始まる。山の尾根線沿いに全国がつながっているみたいなネットワークができているんですよ。


エコストーブ

写真提供:庄原市観光協会

このエコストーブ、見た目は石油缶の横から煙突が出ている、とてもシンプルな構造です。これでピザも焼けてしまうんだそうです。エコストーブの作り方はインターネットでもたくさん出ています。高さが30~40センチくらいの石油缶は、ガソリンスタンドなどでタダで譲り受けることもできますし、それ以外のパーツはホームセンターで購入することができます。全部あわせても、5000~6000円くらいで作ることが可能だということなんです。炊飯器とか、暖房とか、オーブンなど、全部買い揃えるのに比べると、すごくお得ですよね。
それに、いろいろ使ったとしても、木を拾ってきたりする必要はありますが、電気代がかからないということは大きな魅力ですよね。ちなみに和田さんは、東日本大震災直後、電気もガスも使えない環境の被災地へ、エコストーブの作り方を教えに行ったそうです。
そしてもうひとつ、岡山県には町ごと里山資本主義を実践しているところがあるんです。

◆岡山県真庭市の木質バイオマスペレット
岡山県真庭市の場合、ここは儲かっている製材所がありまして、木くずが大量に発生します。この木くずを燃やして市民の電気の一割くらいをまかなっていますが、いま増強投資をしていて、今後は二割、三割と増やしていくんです。自然エネルギー比率二割、三割というと、ドイツやオーストリアに匹敵する、非常に立派な成績になるわけなんです。
製材所から発生する木くずを加工して、木質バイオマスペレットという、燃えやすい燃料の粉みたいなものにするんですが、ペレットストーブというものを皆さん買いまして、家の中で燃やして暖を取っているんです。灯油がどんどん値上がりしていますが、それに影響を受けない。だからハウス農家のひともコストアップにならずに、とても助かっているわけなんです。
みなさんは過疎という言葉を悪い意味で使います。過疎は人間が過剰に少ないということですが、逆にいうと自然が過剰に多いわけですから、一人あたりが使えるエネルギー量が多いわけです。だから、過疎も悪いことばかりではないんですね。


木質ペレット

写真提供:銘建工業株式会社

西日本のリゾート地としても知られる蒜山高原を含む真庭市。お話にあった製材所は発電した電気を電力会社に販売するところまで進んでいるんです。著書『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』によれば、2015年には、さらに大きなバイオマス発電所が計画されています。これが動き出すと、なんと真庭市全世帯の半分の電力をカバーできるということで、市役所にはバイオマスの部署まであるそうです。
また、発電だけではなく、木くずで作った木質ペレットを使ったボイラーやストーブも普及しています。地元の小学校、役場、温水プール、さらにトマトのハウス栽培などで、このペレットボイラーやストーブが使われているんだそうです。これは、温めるだけではなく、冷房にもなるんです。さらにこうしたバイオマスの燃料を加工する工場ができたことで雇用も生まれて、地元を離れた若者が戻ってきているそうなんです。里山をエネルギーという視点でみると、日本にはものすごい量のエネルギーが蓄えられているんですね。藻谷さんは海外と比較しても、日本の森にはまだまだ可能性があるといいます。

◆里山資本主義は日本ならでは
オーストリアはヨーロッパの中では数少ない、まだ木が残っている場所です。そこではひとつの村全体が地下に配送管を通して、空気圧でペレットを飛ばして、各戸に配送しています。ガスみたいな感じですね。それを家の中で暖房に使ったり、いろいろなことに使われているという例もあります。
ヨーロッパでは、木を燃やすということはずいぶん前から技術革新が進んでいて、もうドイツなどでは木が足りなくなってしまいました。しかし日本はそのはるか手前、二周遅れくらいで、まだ山に生えている木が燃料として有効活用できて、ヨーロッパよりはるかに遅れているということに誰も気づいていない。間伐材もとるひとがいなくてほったらかし。
ドイツは元々あまり木がありません。産業革命で切ってしまってはえてこないのです。しかしオーストリアは国土の15パーセントが森です。その森にある木を、新しく生えてくる分の7割くらいまで活用して、かなり大きな産業になっているんです。ちなみに日本は国土の70パーセント近くが森です。しかも本当に世界的にも珍しいと思うんですが、年々森が増えているんですね。耕作放棄地がどんどん森に戻っていますし、人口が減っていますから。しかもヨーロッパよりもはるかに南なので、たくさん太陽が注ぎ、雨も多いので、木がたくさん育ちます。日本は、まじめにやると、ドイツの6倍くらいの自然エネルギーがあるらしいですね。それがまだほとんど手付かずの状態です。この里山資本主義は最先端なんですが、あまり世界で普遍的ではありいません。日本くらい自然に恵まれている社会であればよく機能しますが、砂漠の国などでは限界があります。
だから、里山資本主義は最先端であると同時に、日本ならではのやり方でもあるのです。せっかく日本に住んでいるんだから、それをやらないのはなんともったいないことです。木というのは太陽エネルギーを山に蓄えておく装置みたいなものなのです。過去何十年の間の太陽エネルギーが木の中に蓄えられている。砂漠では、いくら太陽が照っても、その日それっきりです。こういうありがたい仕組みを使わない手はないですよね。
本来持っている資源を、まだあまり活用していないということは、逆にいうとまだまだ可能性が大きいということですね。


今日のお話にでてきた広島県庄原市と岡山県真庭市。とても素敵ですよね。ぜひいちど行ってみたいなと思います。
藻谷さんのことはよくテレビで拝見しますが、冷静に経済をお話される方なのかと思っていたら、山や森についてお話されるときは情熱的で、とても熱いものを感じました。
木は太陽エネルギーを蓄える装置のようなおのというお話もとても印象的でした。
エコストーブもとてもいいですよね。自分で作るのも楽しそうです。
藻谷さんのお話を伺うと、里山資本主義、憧れるなという部分もあると思うんですが、次回は都会でも里山資本主義を取り入れる方法をお伝えします。

今回のお話はポッドキャストでも配信中です。
こちらもぜひお聞きください。


【今週の番組内でのオンエア曲】
・Living in the Moment / Jason Mraz
・Re:やさしい気持ち / HALCALI
   
今週は、昨年から今年にかけて30万部を超すベストセラーとなった『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』の著者、藻谷浩介さんにお話を伺いました。

藻谷さんは日本総合研究所というシンクタンクの主任研究員です。数年前のベストセラー「デフレの正体」の著者としても知られ、ニュース番組のゲストコメンテーターとしてもおなじみです。
地域経済の専門家ということで常に日本全国の市町村を飛び回り、各地の地域経済や街づくりについて調査をされているます。
そんな藻谷さんがいまいちばん注目しているのが「里山」
そして、今後の日本経済を豊かにするキーワードとして「里山資本主義」という言葉を提唱しています。

◆里山資本主義とは
里山資本主義とはマネー資本主義の反対語としてつくった言葉です。マネー資本主義では、生活に必要なものを全てお金で買ってきます。ですので、お金が大事なので、もっともっと持っているお金を増やしましょうというのがマネー資本主義です。
里山資本主義はその反対で、なんでもかんでもお金ばかりではなく、生活に必要なものは採ってくるとか、物々交換とか、育てるとかして調達してはどうだろうということです。
人が住んでいる場所の近くにある山を、うまく暮らしに活かす「里山」という技術は世界的に有名です。日本では、昔からお金だけではなく、地元の資源を循環させて、大事に育てながら、使える分だけ使って、回していこうというシステムが備わっています。一方的に木をとってくるのではなく、きちんと育てて、薪を取り、山菜を取り、肥料をつくります。また、山を保全するので養分が流れていき、海でまたいろいろなものが育ちますし、木をちゃんと残しているので洪水が起きにくくなります。
すべてちゃんと次のことを考えて、里山の恵みを活かしていくシステムというのは、日本独自のものです。それを世界の人々が評価しているんですが、山で木をとってきたり、いろいろなものを育てながら、お金も使うけど、半分はお金を使わずに楽しく暮らしている人たちがいっぱいいます。
そういう暮らしを都会の人もできないのかということで考えたのが「里山資本主義」。ちょっと生活に里山を取り込んでみようという主義です。


いま、日本の里山をうまく活用した暮らしは「SATOYAMA」として世界的にも注目を集めているそうです。
なぜ日本の里山がそんなに評価されているのでしょうか。海外の実情を伺いました。

◆気候風土に恵まれた日本
海外では、文明が木を切りすぎてしまって、それがなかなか回復していないんですよ。たとえば中国は、古代の漢のころから木を切りすぎてしまって、禿山になってしまいました。ヨーロッパも産業革命で木を切りすぎてしまって、いまは草原となっています。
日本は偶然にも恵まれた気候風土で、雨が多く、日も照るので木が再生するのです。そのおかげで里山の生活が現代でも成り立っています。
ただ戦後、燃料は輸入したほうが安価だったので、里山の木を切って、燃料として燃やすという取り組みがなくなっていきました。農作物も輸入したほうが安いということになり、里山でやっているような農業は効率が悪いのでやめようということになってしまいました。それで耕作放棄地が大量に発生するということになりました。
しかし、燃料の価格が最近大きく値上がりし、ついに昨年は山の木を切ってきて燃やしたほうが安いという状況に50年ぶりになったんです。これは21世紀の大きな変化なんです。


藻谷さんが『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』という本のなかでいっているのは、「日本人全員が江戸時代のような生活をしよう」ということではありません。お金の経済、マネー資本主義のサブシステム、バックアップとして里山の暮らしも並行してやっていこうという提案なんです。
そして日本には今もそうした暮らしを実践している人たちがたくさんいます。

◆田舎では豊かな暮らしができる
いま、山の中で暮らしている人たち、一部の林業の人や公務員、建設業の方々ですが、ひとつの仕事だけでは給料が十分に足りないので、いくつかの仕事を同時にしているケースが多いようです。公務員でも家には田んぼがあるというケースが圧倒的ですね。
しかし都会で暮らすのに比べてお金はかかりません。まず家賃が安い、そして食費が安い。もちろん自分で作っていればその分安いのですが、田舎では「はんぱもの野菜」というものがすごく多いのです。収穫量の少ない野菜は市場では買ってくれませんから、しかたがないので家にあるという野菜が大量にあります。とくに、その野菜が一番美味しい時期にたくさん採れすぎてしまいますから、結局は人にあげてしまうんですね。
だから田舎で子育てをしていると、自分で農業をやっていなくても、近所の農家が「子どもがいて大変だろう」と届けてくれるんです。ですので都会で子育てをしているのに比べて食費が本当に助かる。
かつては日本ではあたりまえのことでしたが、都会ではそれがないんですね。田舎にはそういう支え合いが、市場に出すほどの量はないけれども、近所の人で分け合う分には十分にあるんですね。それで結果的に現金の支出が都会の半分とか、何分の一しかかからないケースが多い。
そうすると収入が半分くらいになっても、結局は手取りの現金が多いんですね。実際退職した人なんかは、ちょっとした畑を持っているだけで食費が月に数万円ちがってきます。この安心感はとても大きい。死ぬまで現金で買い続けるしかなく、現金がなくなったらどうするんだという不安にさいなまれている人と、田舎で家や土地を持っている人では、歳をとればとるほど目の色が違ってきます。


このように里山資本主義にはお金がかからないというメリットがあります。しかもお金では換算できない様々なものをわけあって、交換しあうことができるというのです。それが「手間返し」です。

◆「手間返し」と「恩送り」
田舎は人が少ない、とくに若い人は貴重な存在です。ですから、誰かの家が壊れたら、修理を手伝って欲しいといわれて、手伝いに行くこともあります。そうすると自分に別の問題が起きた時に、お返しに誰かが来てくれる。これを手間返しといいます。AがBの役に立ち、BがCの役に立って、それがぐるぐる回る。江戸時代ではこれを「恩送り」といいました。恩返しの逆ですね。
人に恩を送っておくと、それがぐるぐると回って自分にもいいことがあるかもしれない。これは原始社会にもある考え方ですが、最近の経済理論でも恩送りは非常に社会の効率を上げるということがいわれています。より長期的に長持ちする社会づくりには、お互いに出来る範囲で恩を送っておく。こういうお金にならない取引きをたくさん持っている社会は強いし、安心だし、安全。良いシステムなんです。


「手間返し」っていい言葉ですよね。お金を使わなくても、生活に必要な物がお互いに手に入るということですね。これって都会に住んでいるひとでもできる里山資本主義の暮らし方かもしれないですよね。
これについては次回以降、藻谷さんに伺っていきます。お楽しみに。

今回の藻谷さんのお話はポッドキャストでも詳しくご紹介しています。
こちらもぜひお聞きください!


【今週の番組内でのオンエア曲】
・夕陽 / PUSHIM
・Some Nights / fun.
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高橋万里恵
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