- 2019.11.17
「森は海の恋人」畠山重篤さんインタビュー2

今週も、日本を代表する森の賢人、「森は海の恋人」理事長の畠山重篤さんのインタビューをお届けします。
森と川と海の繋がりを守るため、舞根湾につながる山で植樹祭が始まったのは平成元年のこと。いまから30年以上前です。
きょうは改めて、そのきっかけとなった30年前の舞根湾のお話。そして畠山さんが長年探求を続ける、森から流れ出る「鉄分」をめぐるお話です。

木を植えるひとつの大きなきっかけは、川が汚れてきて、海も汚れてきて赤潮が発生し、赤潮にまみれた海を青い海を取り戻したいというのが大きな動機ですよね。赤潮が消えるまでに20年近くかかったんじゃないかな。自然を少しでも動かそうとしたら、いちばん時間がかかるのは人間の意識を変えるということですよね。川の流域に住んでいる方々と、意識を共有しないとなかなか海まで良くならないわけですよ。川の流域に住んでいる方々は農家の方々じゃないですか。そうすると農薬とか除草剤の問題とか畜産公害とかいろんな問題が横たわっているわけですよね。
~人の意識が変わるのにはどのぐらいの年月、時間が必要だと感じていますか?
かっこよく言うとさぁ、山に木を植えるだけではなくて人間の心にも植えなければならないということ。教育の世界から始めなければいけないとパッと気づくわけですよ。それで平成2年からいろいろな村の学校へ行って校長先生と会って。でも黒板でやっていてもだめだから、やっぱり海へ実際に連れてきて体験を通してそういうことを考える機会を作るお手伝いをしたいんですがと相談したら、子供たちがやってきたわけですよ。作業する漁船に子供たちを乗せて海に連れていった。そうしたら目が輝いているわけじゃないですか。それを見ただけでこれはやっぱり成功だろうと思いましたよね。それで牡蠣を食べさせたり、いかだに上げてみたり、要するに遊んで帰ったわけですよね。それで子どもたちに先生が体験談の作文を書かせるわけです。「私たちは行った次の日から朝シャンのシャンプーの量を半分にしました」「お父さんには農薬や除草剤をほんの少しで良いから減らしてくださいとお願いしました」と言うんですね。これがね、”ほんの少しで”と言うところがリアリティーなわけですよね。農家は農家の生活をしているわけじゃないですか。子どもはちゃんと知っているわけですよ。全部やめろと環境活動家はそういうことを言うけど、それはだめですよね。ほんの少しで良いんですよ、スタートは。女の子はお母さんと台所で洗い物をしていて、「お母さんそんなに洗剤を使わないで。それは全部海へ流れて食物連鎖で私たちにまた帰ってくるから量を決めて、しかも自然で分解する洗剤を使ってやりましょう」とか。原型は平成2年のその1度目の体験学習でできたね。もうずっと20年以上私たちは行政から人的、金銭的な援助は一切拒否してずっとやってきましたからね。それがやっぱり子どもたちに伝わるんですよ。実際漁師がそういう時間を割いて自分たちのためにそういうことをやってくれているというのが伝わるんですよ。
そうしたらやっぱりそのことを教育テレビだとかいろんなところが取り上げるようになって、教育者が後追いしてくるわけですよ。筑波大学の附属の先生が来るんですよ。この方は教科書を書く人たち。それがあっという間に社会の教科書に載るようになったわけですよね。それから30年近くなって小学校、中学校、高校の教科書に全部出ていますし。教育を受けた子どもたちもどんどん育ってきて、もう40歳位にまでなってきていますから。


16年前からは京都大学で、今まで縦割りで全部やっていたんだけども、トータルで見られる学問が森里海連環学という学問を立ち上げた。16年前から私は京都大学の、講義なんて言っていますけれども、こんな調子ですよ大体(笑)。少なくとも学生が寝ない話をしなければいけないってんで、今日みたいにいろいろ織り交ぜて、あっち飛んだりこっちで飛んだりめちゃくちゃですよ。それでね今年は教室も満杯ですよ。歌も歌うんですよ。旅姿三人男、ディックミネですよ。富士山は火山だから、溶岩は鉄なんですよ。だから富士山から鉄が海に降ってきて、植物プランクトンが湧いている。それでいろいろ話をしているうちにディックミネの替え歌を披露したわけですよ。「富士の高嶺に降る雪が溶けて流れる真清水で、駿河トラフに雪が降る。誰が名付けた、誰が名付けた、マリンスノー」意味がわかりますか。1700メートルの深い海になっている。これを駿河トラフというんですよ。ここへもぐっていた人が空を見たら、海の上から白いものが降っているんですよ。プランクトンの死骸が降っているんです。これをマリンスノーというんです。「駿河トラフに雪が降る。誰が名付けた誰が名付けたマリンスノー」。こういう風に物事を見なきゃいけないということですよ。海ばかり見ていないで陸をちゃんと見る。そういう鉄との絡みで日本列島を見れば、この国の100年先をどうしたら良いかもうわかるわけですよ。気仙沼湾に注いでいる大川ダムはストップでやめたんです。私たちの活動が功を奏したわけですよ。だからダムのない川なんですよ。この川だからこの環境が保たれているわけ。このちっぽけなこの環境こそ、これを日本の国のグランドデザインを描くときのモデルになるということですよ。森は海の恋人ってそういう意味があるんですよ。
畠山重篤さんのお話、いかがだったでしょうか。ポッドキャストでも詳しくご紹介していますので、そちらもぜひお聞きください!
【番組内でのオンエア曲】
・鳥のように / 大橋トリオ
・ビヨンド・ザ・シー / ロビー・ウィリアム