2026年03月28日
今夜ゲストにお迎えしたのは、作家であり、元外交官の佐藤優さんです。
佐藤さんは、1960年、東京都のお生まれです。
同志社大学神学部をご卒業後、同志社大学大学院神学研究科を修了されました。
1985年に外務省へ入省。
国際情報局に勤務され、ロシア外交を中心としたインテリジェンス、情報分析の分野でご活躍されました。
その後は、幅広い教養をテーマに、数多くの著書を発表。
現在も精力的に執筆活動を続けていらっしゃいます。

──今の教育に必要なのは、数学力と外国語の読解力
茂木:佐藤さん、最近は教育について、ずいぶんとご発言をされたり、関心を持たれたりしていますけど、日本の教育はどういう方向に行けばいいんでしょうか?
佐藤:僕は日本の教育は、今の学習指導要領をきちっと守ってくれればいいと思うんですよね。すなわち、文科系・理科系という区別を、高校まではなくした方がいいと思うんです。両方やる、と。それは充分できます。
その代わり、例えばね、数学なんかで思うんですが、今、中学や高校の段階で計算機の使用を認めていないのは、日本とか韓国とかの限られた国だけじゃないですか。
例えば、『数学検定試験』というのがありますよね。『数学検定試験』というのはひっ算の能力が非常に必要とされるんですよ。ところが『ビジネス数学検定試験』になると計算機の使用が可能ですし、それから1級になるとExcelを使いますから、要するに、計算能力は一切必要ないんです。だから、その辺をもう少し合理的にしたらいいな、と思うんですけども。
とにかく、数学の力というものを、生成AIなんかもありますけど、今は社会で数学の必要度というのが桁違いに高くなっていて、そこと学校数学のギャップがちょっとあるので、そういったことを含めて、数学の強化ということが重要じゃないかな、と思うんです。
茂木:そして、外国語はどうですか?
佐藤:外国語は、適宜生成AIを使えばいいと思うんです。ただし生成AIの間違いをチェックして直せるような文法能力、これが必要になるわけですよ。『英検』で言うと準1級ぐらいになるんですが、この力は非常に重要です。
それで私は、“4能力(「聞く・話す・読む・書く」)を同時に伸ばしていく”という外国語の勉強の仕方というのは、余り良くないんじゃないかと思うんですよ。

茂木:あ、そうですか。
佐藤:要するに、“読む力”にもっと力を入れないといけない。
例えば、外務省でも、上級職はなくなってしまいましたけど、専門職の方は今でも外交官試験が残っているんですね。これは明治時代から変わっていないんです。外国文和訳。1つの文は論文調で、もう1つはエッセイ調。それから、日本文の外国語訳。これもそうなんです。特に和文外国語訳で、採点者さえしっかりしていれば、その人の語学能力というのは完全にわかります。
要するに、“読む力”を徹底してつけておく。読んでわからないことは聞いてもわからないですからね。書けないですし、話せないですから。読む力で天井になるんです。
だから“読む力”で正確に読むためには、文法。それから語彙を増やしておく。これが逆に、生成AI時代の外国語には重要なんです。生成AIに訳させて、その間違えたところ…日本語を読んでいると言葉が通じていないところ、あるいはニュアンスが違うなと思うところが間違いですからね。そこを見て、文法的にきちんと説明して、生成AIの誤訳を直すことができる、と。1回誤訳を直してやると、生成AIは同じところでは間違えないですからね。だから、上手に生成AIと付き合いながら外国語を習得していく、ということじゃないかなと思います。
茂木:佐藤さんの人生は本当に色んなことがあったと思うんですけど、ここまでの人生を振り返ってどうですか?
佐藤:無駄なことはなかったように思います。今日はまた、茂木さんとこういった話もできるので。私はキリスト教の人間ですから、こういうような出会いというのは生まれる前から決まっていたと思っていますから。
茂木:お母様は沖縄のことで色々あって、自分の力を超えた運命みたいなものも感じていらっしゃるとか。
佐藤:ありますね。ですから、「自分の限られた力で全てができると思うんじゃない」、と。
あともう1つは、“自分の心の位置”ということですかね。これは仏教の人たちの方がしっかりしていると思うんですけども、1日の中での自分の心の位置というのは、何かものすごい悪いことを考えて地獄みたいなところにいることもあれば、人のことを考えていくところに向いていることもあります。その心の動きというのを、日本人はよく感じると思うんですよ。
そういうことを大切にしながら、今置かれている場所というのは変えられないわけです。今そこを嘆いても、何も生まれないんです。しかし、今が変われば、将来が変わる。そして、将来が変わったところから見れば、過去でつらいこととか嫌なことがあっても、「それは今のここに至るプロセスだ」と思うと、なかなか納得できる、と、こういうふうに思うんですよね。
──佐藤優さんの『夢・挑戦』
茂木:素晴らしい。
佐藤さんは既に多くのことを成し遂げられて、“知の巨人”としてたくさんのことをされているんですけども、今後、佐藤さんが『挑戦』したいことや『夢』というのは、どういうことになりますか?

佐藤:今後と言うかむしろ現在瞬間的で、それで今後にも繋がるんだけども、僕は、1945年以降ずっと80年以上維持できている平和、これを維持したい。
茂木:大事なことですね。
佐藤:人権にしても、経済繁栄にしても、戦争が起こってしまうと、それは全て駄目になってしまう。だから戦争というのはもの凄い残酷なものだし、もの凄い悲惨なものなんです。
しかもその戦争というのが、ヨーロッパでも、中東でも、そして中南米でも、現実になってしまっているわけですよね。だから、この東アジアでは絶対に戦争を起こさない、と。それがすごい重要だなと思って、それが夢であると同時に、今現実に取り組んでいる課題でもあります。
茂木:そのためには、どうすればいいんでしょうか?
佐藤:重要なのは、感情に揺さぶられないところで、“自分の心の有りよう”を整えておくこと。
カーッとして、インターネットやXで何か書きたいなと思った時に、1呼吸置いて、「これを書いてる人はどういう気持ちで書いているんだろうな」、「あんまり心の状態がよろしくないんじゃないかな」と思うと、「自分がそこと同じところに行ったらまずいぞ」とか思う。だから、“自分の心と向き合う”ということが重要だと思います。
「子供が塾に通っているんだけど、なかなか偏差値30台が超えられない」という悩みを持っているお母さんが多いんです。その時に、「うちの子は何で偏差値30台を超えられないんだろうな」と思うことじゃなくて、塾に通う前と今の時点で、これだけ漢字も知っているし、うちの子はこれだけ成長してるじゃないか、と、そういうようなところで見てあげる。それはお母さんの“心の有りよう”だと思うんですよ。
だから“心の有りよう”という、目には見えないけども確実に存在する心、その心を大切にしていきたい。そしてその心と脳の関係については、茂木さんが脳の第一人者でもありますからね。
茂木:いえいえ。
佐藤:しかも、その心というのは脳と繋がっている、というところで、茂木さんなんかが書かれるような学知に基づく成果を大切にしながら、自分の心も、自分の子供の心も、人の心も大切にしていく、ということじゃないかなと思うんです。
茂木:素晴らしい。是非皆さん、佐藤優さんのご著作には本当に素晴らしい本がたくさんあります。今、読者の方に、あるいはリスナーの方に読んでいただきたい本はありますか。
佐藤:『紳士協定』という本があります。私がイギリスに留学した時の、イギリスの当時の中学生との交流をメインにした本です。これを是非読んでほしいですね。
茂木:これはいい、渋い本ですね。
佐藤:特に、子育てにあたっておられるお母さん、お父さん。子供と真摯に向き合って、子供の幸せを実現することが日本の社会を強くすることになりますし。私みたいに国の仕事をした人間から見て重要なのは、やはり子供さんたちがいい大人に育っていく、ということだと思うんですよ。そうすると、このリスナーの皆さんたちというのも、実は日本の社会と国家を強くするために非常に重要な事業に従事されている、ということになるんです。

●自壊する帝国 (新潮文庫) / 佐藤 優 (著)
(Amazon)
●残された時間の使い方 / 佐藤 優 (著)
(Amazon)
●一寸先は闇 (幻冬舎新書) / 五木寛之 (著), 佐藤優 (著)
(Amazon)
●紳士協定: 私のイギリス物語 (新潮文庫) / 佐藤 優 (著)
(Amazon)
毎週土曜日にお届けしてきた『Dream HEART』ですが、残念ながら、今回で最終回となります。
長い間、この番組を聴いてくださったリスナーのみなさん、本当にありがとうございました。
佐藤さんは、1960年、東京都のお生まれです。
同志社大学神学部をご卒業後、同志社大学大学院神学研究科を修了されました。
1985年に外務省へ入省。
国際情報局に勤務され、ロシア外交を中心としたインテリジェンス、情報分析の分野でご活躍されました。
その後は、幅広い教養をテーマに、数多くの著書を発表。
現在も精力的に執筆活動を続けていらっしゃいます。

──今の教育に必要なのは、数学力と外国語の読解力
茂木:佐藤さん、最近は教育について、ずいぶんとご発言をされたり、関心を持たれたりしていますけど、日本の教育はどういう方向に行けばいいんでしょうか?
佐藤:僕は日本の教育は、今の学習指導要領をきちっと守ってくれればいいと思うんですよね。すなわち、文科系・理科系という区別を、高校まではなくした方がいいと思うんです。両方やる、と。それは充分できます。
その代わり、例えばね、数学なんかで思うんですが、今、中学や高校の段階で計算機の使用を認めていないのは、日本とか韓国とかの限られた国だけじゃないですか。
例えば、『数学検定試験』というのがありますよね。『数学検定試験』というのはひっ算の能力が非常に必要とされるんですよ。ところが『ビジネス数学検定試験』になると計算機の使用が可能ですし、それから1級になるとExcelを使いますから、要するに、計算能力は一切必要ないんです。だから、その辺をもう少し合理的にしたらいいな、と思うんですけども。
とにかく、数学の力というものを、生成AIなんかもありますけど、今は社会で数学の必要度というのが桁違いに高くなっていて、そこと学校数学のギャップがちょっとあるので、そういったことを含めて、数学の強化ということが重要じゃないかな、と思うんです。
茂木:そして、外国語はどうですか?
佐藤:外国語は、適宜生成AIを使えばいいと思うんです。ただし生成AIの間違いをチェックして直せるような文法能力、これが必要になるわけですよ。『英検』で言うと準1級ぐらいになるんですが、この力は非常に重要です。
それで私は、“4能力(「聞く・話す・読む・書く」)を同時に伸ばしていく”という外国語の勉強の仕方というのは、余り良くないんじゃないかと思うんですよ。

茂木:あ、そうですか。
佐藤:要するに、“読む力”にもっと力を入れないといけない。
例えば、外務省でも、上級職はなくなってしまいましたけど、専門職の方は今でも外交官試験が残っているんですね。これは明治時代から変わっていないんです。外国文和訳。1つの文は論文調で、もう1つはエッセイ調。それから、日本文の外国語訳。これもそうなんです。特に和文外国語訳で、採点者さえしっかりしていれば、その人の語学能力というのは完全にわかります。
要するに、“読む力”を徹底してつけておく。読んでわからないことは聞いてもわからないですからね。書けないですし、話せないですから。読む力で天井になるんです。
だから“読む力”で正確に読むためには、文法。それから語彙を増やしておく。これが逆に、生成AI時代の外国語には重要なんです。生成AIに訳させて、その間違えたところ…日本語を読んでいると言葉が通じていないところ、あるいはニュアンスが違うなと思うところが間違いですからね。そこを見て、文法的にきちんと説明して、生成AIの誤訳を直すことができる、と。1回誤訳を直してやると、生成AIは同じところでは間違えないですからね。だから、上手に生成AIと付き合いながら外国語を習得していく、ということじゃないかなと思います。
茂木:佐藤さんの人生は本当に色んなことがあったと思うんですけど、ここまでの人生を振り返ってどうですか?
佐藤:無駄なことはなかったように思います。今日はまた、茂木さんとこういった話もできるので。私はキリスト教の人間ですから、こういうような出会いというのは生まれる前から決まっていたと思っていますから。
茂木:お母様は沖縄のことで色々あって、自分の力を超えた運命みたいなものも感じていらっしゃるとか。
佐藤:ありますね。ですから、「自分の限られた力で全てができると思うんじゃない」、と。
あともう1つは、“自分の心の位置”ということですかね。これは仏教の人たちの方がしっかりしていると思うんですけども、1日の中での自分の心の位置というのは、何かものすごい悪いことを考えて地獄みたいなところにいることもあれば、人のことを考えていくところに向いていることもあります。その心の動きというのを、日本人はよく感じると思うんですよ。
そういうことを大切にしながら、今置かれている場所というのは変えられないわけです。今そこを嘆いても、何も生まれないんです。しかし、今が変われば、将来が変わる。そして、将来が変わったところから見れば、過去でつらいこととか嫌なことがあっても、「それは今のここに至るプロセスだ」と思うと、なかなか納得できる、と、こういうふうに思うんですよね。
──佐藤優さんの『夢・挑戦』
茂木:素晴らしい。
佐藤さんは既に多くのことを成し遂げられて、“知の巨人”としてたくさんのことをされているんですけども、今後、佐藤さんが『挑戦』したいことや『夢』というのは、どういうことになりますか?

佐藤:今後と言うかむしろ現在瞬間的で、それで今後にも繋がるんだけども、僕は、1945年以降ずっと80年以上維持できている平和、これを維持したい。
茂木:大事なことですね。
佐藤:人権にしても、経済繁栄にしても、戦争が起こってしまうと、それは全て駄目になってしまう。だから戦争というのはもの凄い残酷なものだし、もの凄い悲惨なものなんです。
しかもその戦争というのが、ヨーロッパでも、中東でも、そして中南米でも、現実になってしまっているわけですよね。だから、この東アジアでは絶対に戦争を起こさない、と。それがすごい重要だなと思って、それが夢であると同時に、今現実に取り組んでいる課題でもあります。
茂木:そのためには、どうすればいいんでしょうか?
佐藤:重要なのは、感情に揺さぶられないところで、“自分の心の有りよう”を整えておくこと。
カーッとして、インターネットやXで何か書きたいなと思った時に、1呼吸置いて、「これを書いてる人はどういう気持ちで書いているんだろうな」、「あんまり心の状態がよろしくないんじゃないかな」と思うと、「自分がそこと同じところに行ったらまずいぞ」とか思う。だから、“自分の心と向き合う”ということが重要だと思います。
「子供が塾に通っているんだけど、なかなか偏差値30台が超えられない」という悩みを持っているお母さんが多いんです。その時に、「うちの子は何で偏差値30台を超えられないんだろうな」と思うことじゃなくて、塾に通う前と今の時点で、これだけ漢字も知っているし、うちの子はこれだけ成長してるじゃないか、と、そういうようなところで見てあげる。それはお母さんの“心の有りよう”だと思うんですよ。
だから“心の有りよう”という、目には見えないけども確実に存在する心、その心を大切にしていきたい。そしてその心と脳の関係については、茂木さんが脳の第一人者でもありますからね。
茂木:いえいえ。
佐藤:しかも、その心というのは脳と繋がっている、というところで、茂木さんなんかが書かれるような学知に基づく成果を大切にしながら、自分の心も、自分の子供の心も、人の心も大切にしていく、ということじゃないかなと思うんです。
茂木:素晴らしい。是非皆さん、佐藤優さんのご著作には本当に素晴らしい本がたくさんあります。今、読者の方に、あるいはリスナーの方に読んでいただきたい本はありますか。
佐藤:『紳士協定』という本があります。私がイギリスに留学した時の、イギリスの当時の中学生との交流をメインにした本です。これを是非読んでほしいですね。
茂木:これはいい、渋い本ですね。
佐藤:特に、子育てにあたっておられるお母さん、お父さん。子供と真摯に向き合って、子供の幸せを実現することが日本の社会を強くすることになりますし。私みたいに国の仕事をした人間から見て重要なのは、やはり子供さんたちがいい大人に育っていく、ということだと思うんですよ。そうすると、このリスナーの皆さんたちというのも、実は日本の社会と国家を強くするために非常に重要な事業に従事されている、ということになるんです。

●自壊する帝国 (新潮文庫) / 佐藤 優 (著)
(Amazon)●残された時間の使い方 / 佐藤 優 (著)
(Amazon)●一寸先は闇 (幻冬舎新書) / 五木寛之 (著), 佐藤優 (著)
(Amazon)●紳士協定: 私のイギリス物語 (新潮文庫) / 佐藤 優 (著)
(Amazon)毎週土曜日にお届けしてきた『Dream HEART』ですが、残念ながら、今回で最終回となります。
長い間、この番組を聴いてくださったリスナーのみなさん、本当にありがとうございました。










