Dream Heart(ドリームハート)

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Dream HEART vol.677 作家 佐藤優さん 「人から情報を得るには信頼関係を築くこと」

2026年03月21日

今夜ゲストにお迎えしたのは、作家であり、元外交官の佐藤優さんです。

佐藤さんは、1960年、東京都のお生まれです。
同志社大学神学部をご卒業後、同志社大学大学院神学研究科を修了されました。

1985年に外務省へ入省。
国際情報局に勤務され、ロシア外交を中心としたインテリジェンス、情報分析の分野でご活躍されました。

その後は、幅広い教養をテーマに、数多くの著書を発表。
現在も精力的に執筆活動を続けていらっしゃいます。


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──人から情報を得るには

茂木:佐藤さんが展開されてきた、いわゆる“ヒューミント(人的情報収集)”。このラジオを聴いていらっしゃる方々も、人から色んな情報を知りたいと思っていると思うんですけど、ヒューミントの実践において、一番大事なことはどういうことでしょうか?

佐藤:ヒューミントの実践において一番大事なのは、「約束を守ること」です。これを裏返して言うと、約束できないこと、履行できないことについて、軽々に約束しないことです。これが1つ。約束を守ること。
あともう1つは、業界用語で、“サードパーティールール(第三者原則)”というのがあるんですが…。例えば、今ここに茂木さんと、私と、土井さん、という人がいるとする、と。私が茂木さんから面白い話を聞いて、それを土井さんに教えたいんです。
皆、「実はここだけの話だけど」と土井さんに教えてしまうんですよ。これをやると、ヒューミントはうまくできない。
土井さんに教えたい時には、まず茂木さんに「土井さんにこの話を教えたいと思うんだけど、教えてもいいですか?」と。

茂木:ちゃんと断る。

佐藤:はい。それで断って、「駄目だよ」と言われたら教えない。「(教えても)いいけども、『茂木が言ってた』と名前は出さないでね」、あるいは、「『茂木が言ってた』ということでもいいんだけども、今度の日曜日までは言わないで。月曜日以降だったらいいけど」と言われたら、その約束を守る。

茂木:いわゆる“エンバーゴ”というものですよね。

佐藤:はい。そうすると、「あいつは信頼できる人間だ」、「あの人は大丈夫だ」ということで、自然に人間関係を通じて情報を取れるようになります。

茂木:佐藤さん。逆に、その人が信頼できるかどうかを見極めるには、どうすればいいんですか?

佐藤:例えば、中国の話を聞く時に、「ところで中国の人口ってどれぐらいでしたかね?」と言って、「中国の人口は、そうだな、3億人だな」とか、「中国の人口は90億人だ」と言う人は、中国の政治とか習近平体制がどうこうと言っても、もう話を聞かなくていいんです。
だから、「チェックを入れて、自分が知っている話のところで嘘をつかないかどうか」というところで(判断する)。

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茂木:今、すごく僕に響きました。感動しました。
例えば、今「人工知能」と言うと、ああだこうだ言う人がいますけど、そういう時にさりげなく「トランスフォーマーってこうだよね」と言って、その時にでたらめを言った人は、もう信用しなくていい、と(笑)。

佐藤:そういうふうに思います。例えば、私はよくこのAIの話を聞く時に、「さて、“ラッセルのパラドックス”はどうやって解いたらいいですかね?」と(言う)。
これはどういうことかと言うと、「ある村に理髪師がいて、“自分で髭を剃る人”と“髭を剃ってもらう人”に分けると、理髪師はどっちになるのか?」という話なんですね。あるいは、「『全てのクリエイター人は嘘つき』とそのクリエイター人が言った」。
でも、これをChatGPTに聞くと、ちゃんと答えてくれるんです。「実は論理的には答えられません。私どもは論理でお答えを出せません」と。
「これは、周辺のある一番多そうなところから、皆が納得しそうな、そういう話を持ってきているわけなんです」、と。その理容師に関しては、「そういう理容師はいません。そういう答えになりますね」とか、なかなかお利巧さんなんですよね。

──鯉は滝登りをしても無駄に終わる

茂木:佐藤さん。多くのリスナーが組織の中で働いたりしていると思うんですけど、個人と組織の関係はどう考えればいいですか? 佐藤さんもいろいろご経験があると思うんですけど。

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佐藤:私は個人と組織の関係について、同志社の学生から質問をされるでしょう? そうしたら、金閣寺に連れていくんです。
あそこの庭のところに“鯉の滝登り”というものがあるんです。それを、「この鯉は今、一生懸命滝登りをしてるよね? 鯉が滝登りをしたら、何になるかな?」と聞いたら、賢い学生がいて「龍になります」と答えます。その次に質問するんです。「龍は存在するかな?」、「存在しません」と。
「ということは、『鯉は滝登りをしても無駄に終わる』。組織というのは、水が上から下に流れるようにして存立しているから、上の言うことには基本的に従った方がいい」と。ですから、「適宜、異論を唱えたり、反抗したりするように見せるんだけども、滝登りはできない、ということをわかった上でやる」、と。

茂木:すごい話ですね。

佐藤:「でも、先生。そんなことを言ったら、ブラック企業でも勤めろということですか?」、と(聞く学生がいる)。「違う」と。世の中に出たばっかりで、そこがブラックなのか、教育の厳しい会社なのか、わからないの。
例えば、僕が外務省で、ロシア語の研修はイギリスの軍学校で命令された、と。朝の8時から昼の12時まで文法、午後の1時から4時まで会話。その後、ただ筆記すれば誰でもできる、書き写しみたいな課題が1日7時間分もあるの。だから寮に泊まり込みなの。そこのところで、「9時〜5時で、その後(に課題をやる)というのは仕事ができません」と言ったら、ロシア語は身につかない。
この場合には、“研修が厳しい会社”ということなんです。

茂木:なるほど。

佐藤:ブラック企業なのか、研修に厳しい会社なのか、若い人たちよくわからない。
その場合には、「5年上、10年上、15年上、20年上、25年上で5年ずつ区切って先輩を見て、1人も尊敬できる人がいなければ、その会社はブラック企業か、その会社とあなたの肌合いが本当に合わないので、転職を考えた方がいい」、と。「そこで1人でも尊敬できる人がいた場合には、あなたが今厳しい状況に置かれていてもそれは教育が厳しいからで、将来あなたのためになるという会社かもしれない。だから、最終的には、先輩で判断しよう」と、こういうふうに言っているんです。

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毎週土曜日にお届けしてきた『Dream HEART』ですが、残念ながら、今月で最終回となります。
長い間、この番組を聴いてくださったリスナーのみなさん、本当にありがとうございます。
ぜひ最後までお付き合いください。