2026年01月17日
今夜は、「茂木健一郎のお悩み相談室!」と題しまして、番組に寄せられました、リスナーのみなさまからのお悩みやご質問にお答えていきます。

──脳腸相関でバランスを大事に
茂木:では、まず、こちらのメッセージから…。東京都 ラジオネーム<アボカドトースト>さん。
茂木さんに、質問です。
私は朝ごはんをたくさん食べると、眠くなってしまうので、最近は野菜ジュースのみにしています。
固形物を摂らないようにしたら、眠くならないので良いのですが、朝ごはんをたくさん食べた日の方が、幸せな気分になれる気がします。
脳科学的には、どちらの方が良いのでしょうか。
茂木さんの朝食についてのご意見を、お聞かせください。
茂木:なるほど、これは悩ましいところですよね。
朝ご飯をちゃんと摂ると、脳が活動するための様々な栄養素を摂ることができます。例えば、血糖値をある程度上げないと脳が活動しませんから、エネルギー源として炭水化物を摂ることが大事です。それから、『脳腸相関』というものが最近注目されていまして、これは「腸内細菌のバランスが保たれていると、脳も健やかに働く」ということです。
なので、僕の場合だと、ご飯が好きなので、朝ご飯に、納豆、お味噌汁、ご飯、明太子、あとは大根おろしとしらすとかを食べるのが好きかな。それと、ヨーグルトも食べますね。
いろんなものを食べて、脳への栄養を摂るということ。それから腸内細菌のバランスを保つこと。
よく、「ヨーグルトや納豆や食物繊維などは腸内細菌に良い」と言われているんですけど、でもね、最近の研究によると、「とにかくいろいろな種類の食べ物を食べることが、腸内細菌のバランスのためには良い」とされていまして、私はそれを実践しているんです。
もちろんこれは、朝食・昼食・夕食・おやつ、1日を通してバランスが取れるようにすればいいので、必ずしも朝ご飯でそれをやる必要はないんですけど。僕の場合は、昼間はいろいろと出先にいることもあって、お昼ご飯をゆっくり食べるという感じでもないので、比較的自由に決められる朝ご飯でそういうことをしています。
ただ、「食べると眠くなる」。わかりますよ。
元々人間というのは、満足している時には別に活動しなくてもいいんじゃないか、というモードになることもあるわけで、食べたら寝てしまうというのは、1つの自然な反応でもあるんです。だから、あまり重い食事をすると、消化に血流が使われてしまうということもあって、脳の方にあんまり回らなくなってしまう。
これは個人差もあるんですよね。僕は比較的、食べてもすぐに活動してしまう方なんですけど、やっぱり個性によっては、食べた後は眠くなってしまう方もいらっしゃいますので。
今申し上げたように「“脳に栄養を摂る”という意味で、野菜ジュースを飲む」。これ、いいんですよ。それでも血糖値が上がりますから。フルーツジュース、オレンジジュースとかもいいかもしれませんね。
そういうものを摂っていただいて脳に栄養を与えるということも大事ですし、そんな中で、眠くならない程度に食事を工夫する、ということはいいことなのかな、と僕は思います。
あともう1つ。実は、脳の働きというのは、ご飯だけで決まるわけではないんですよね。1つオススメなのは、「外に出て太陽の光を浴びる」ことかな。
僕も、もしもご飯を食べた後に部屋で机の前に座っていたら、眠くなってしまうと思います(笑)。僕は、ご飯を食べた後は大抵ランニングに行ったり、すぐに仕事に出かけたりするので、外の太陽を浴びるんですよね。そうすると、意外と脳が起きていようと思ったりします。
あとはやっぱり、「自分にとって楽しいこと、いろいろ刺激になることをやる」と、朝ご飯を十分食べていてもちゃんと目が覚めていられるかもしれません。
脳が眠くなるかどうか、というのは、食べ物をどうするか、ということだけで決まるわけではないんですよね。いろいろな生活習慣とか環境とかでも決まってくるので、アボカドトーストさんのライフスタイルで、「朝ご飯食べた後は何をしよう?」、「ランチはどうしよう?」、「夕飯はどうしよう?」…。ひょっとしたら“パワーナップ”という考え方もあります。ちょっと眠くなったら5〜10分寝るだけでも脳がスッキリしたりするので、パワーナップをどこで取るか。僕の場合はよく移動中に飛行機とか新幹線の中で寝ているんですけど、そういう形で自分の脳の状況を整える工夫をするのがいいのかなと思います。
いずれにせよ、アボカドトーストさんのように「自分はどういう食事がいいのかな?」といろいろ工夫されることが大切だと思うので、自分の脳と対話しながら、工夫していただけたらなと思います。

──眼窩前頭皮質の活動
茂木:続きまして…熊本県 ラジオネーム<たこちゃん>さん。
茂木さんは、ふと過去の自分の言動を思い出して、恥ずかしくなったりすることはありますか。
わたしは突然、「ひとり反省会」を始めることがあります。
あの時、ああしていれば、こうしていれば、こうしたのはよくなかった、あの言葉はあの人を傷付けたかな…など、今更考えても全てどうにもならないことなのですが、これはやめた方がよいのでしょうか。
茂木:いや、素敵なことだと思いますよ。僕も年に何回かあるかな。シャワーを浴びている時とかに突然「うわーっ!」と声を出してしまったりしますよね。「恥ずかしいな」と思って。それで僕も反省することがあります。
ただ僕の場合は、そんなに長く続かないのかな(笑)。元々能天気な性格なので、「あー!」と思って、それで「ああ、これから気をつけよう」と思って、僕の場合の「ひとり反省会」は大体1〜2分で終わってしまう感じなんですけど(笑)。
たこちゃんさんのようにずっとくよくよといろいろ悩むというのは、素敵なことだと思います。
実は、性格の類型で『ビッグファイブ(Big Five)』というものがありまして、「5つの主要な性格の要素がある」とされているんですね。
その内の1つに、まさにお書きになっている、『神経症的傾向(Neuroticism)』と言われているものがあるんです。これがまさに、「いろいろくよくよ悩む」ことなんです。
僕は、性格の類型の中の『神経症的傾向』と呼ばれているものが低いんですよ。だから僕はあんまり反省しない方なんですけど(笑)。ただそれが高い方もいらっしゃる。
これの大事なことは、人間が進化してきた中で5つの要素がいろいろ多様にあるということは、それだけ大事なことだということなんですね。
いろいろくよくよ悩む方がいらっしゃるし、悩まない方もいらっしゃる。悩む方には悩む方なりのユニークな個性があって、それを大事にした方がいいんですね。ですから「やめた方が良いのですか?」と書かれていますが、そんなことはないです。そういう個性、たこちゃんさんの素晴らしい個性なんですね。
この「ひとり反省会」の脳科学的な意味なんですけど、『眼窩前頭皮質(orbitofrontal cortex=OFC)』と呼ばれている領域があるんです。これはたこちゃんさんの目の後ろあたりにある前頭葉の部分なんですけど、ここでその反省会の活動が行われていることがわかっているんですね。
この反省会の活動が何をしているかと言うと、「自分が実際にやったことと、やれたかもしれないこと」や、「実際に取った行動と、取れたかもしれない行動」、この2つを比べてシミュレーションしている、ということがわかっているんです。非常に高度な脳の働きで、それは無駄ではないんです。
もう過ぎてしまったことだと仰いますが、確かに過去は変えられないんですが、なぜ脳の中でそういう活動が起こっているのかと言うと、自分の考え方とか価値観をアップデートするためです。確かに過去の出来事についてはもう変えられないんですけど、「これからもし似たようなことがあったら、この次はこういうふうにしよう」とか、「こういう行動を取ろう」という形でアップデートできるということで、意味があるとされています。
ただ、バランスなんですよね。余りにもそのことばかり考えていると、だんだん嫌になってしまったりするじゃないですか。だから僕みたいな能天気な人は、もうちょっと自分の過去を反省していろいろくよくよした方がいいんでしょうし、たこちゃんさんの場合には、ひょっとしたらそれはほどほどにして、「これから未来に向かって何をしようか」という、具体的に自分が夢中になれる行動に少しエネルギーを使った方がいいのかもしれないですね。
反省しないで行動ばかりしている人は、これはまた問題だと思うんですよ。そういう人もいらっしゃいますよね。一方で、反省会ばっかりやっていて実際の行動をとらない、ということももったいない気がするので、やっぱり自分の個性に合わせていろいろ考えていくのがいいのかなと思ったりします。
たこちゃんさんのやっている「ひとり反省会」をもう1回纏めますと、それは性格の五大類型と言われている『神経症的傾向(Neuroticism)』として評価される、と。それが高い人も、ちゃんとそれは個性として意味がある、と。
もう1つは、反省会をやっている時には『眼窩前頭皮質』という脳の活動が行われている。そこでは自分の価値観とか、いろいろと選択をする時の基準みたいなものをアップデートしていて、過去は変えられないけど、これから似たようなことがあった時により良い行動ができるように脳が準備をしている、と。
こういうことでございますので、是非、やりすぎないように、ただ自分らしく、これからも「ひとり反省会」をしていただけたらなと思います。たこちゃんさん、頑張ってください。

──脳の可塑性
茂木:では、続きまして…京都府 ラジオネーム<いっそん>さん。
毎回、ゲストが多彩で、楽しみに欠かさず拝聴しています。
さて、茂木さんに質問です。
私の母は、「三つ子の魂百まで」と言って、「内向きな性格」は、変えられない…とよく言ってましたが、本当でしょうか?
上書きして上書きして、性格を変えたいと私自身、思っています。
茂木:『三つ子の魂百まで』というのは日本のことわざで、「小さい頃の性格や癖は、大人になっても続く」という意味ですよね。もちろん、こういうことを昔の人が言っていたということは、「人間にはそういう傾向がある」ということですよね。
これは、先ほどのご質問でもあったんですけど、『性格の五大要素』というものがあって、まさにこの「内向的か、外向的か」というのも五大要素の1つなんです。ですから、先ほどのご質問とも関係するんですが。
人によって違うんですけど、基本的にはお母様が仰っていたように、「変わらない」とされているんです。生まれつきの脳の個性で、内向的な傾向がある人、外交的な傾向がある人がいて、それ自体は変わらないとされているのですが…。
ここからが面白くて、脳には『可塑性』というものがございます。『可塑性』というのは、「神経回路が繋ぎ変わる」ということなんですけど、「上書きされる」と言うよりは、どちらかと言うと、イメージとしては「自分が持って生まれた個性に、上手く向き合えるようになってくる」ということなんです。
ちょっと私個人のお話をさせていただくと、実は私は、高校、大学の途中までちょっとコミュ障じゃないか、というぐらい、内向的で恥ずかしがり屋の人間でした。僕はいわゆる“パリピ”ではないんですね。次から次へといろんな人と話せるような性格ではなくて、どちらかと言うと、恥ずかしがり屋なんですよ。
だから恐らく、元々はいっそんさんと似たような生まれつきの傾向があるんですけど、こういうラジオのお仕事とか、テレビのお仕事とか、人前で話すようなお仕事もさせていただいているじゃないですか。
内向きの自分は変わらなくて、どちらかと言うと、1人で本を読んでいたり、音楽を聴いていたり、いろいろものを考えていたりするのが好きなんですけど、そういう自分の持って生まれた資質に向き合うことで、脳の中で、コンピューターを使われる方とかは“パッチが当たる”という言い方をしますよね。それに合わせた他人との向き合い方を、徐々に学んでいくことができるんですよ。
ですから、僕の場合、こういうラジオで喋っている時とか、人前で講演している時とかは、やっぱり内向的であまり他人のことを考えると恥ずかしくなってしまうので、自分自身が感じていることに集中するようにしているんです。そうすると上手く話すことができます。
あまり、他人と上手くコミュニケーションしようとか思うのではなくて、「自分の感じていることを、誠実にそのままお伝えしよう」というふうに思うと、上手くいくことが多いですね。
ですので、「内向きな人には、内向きな人なりのやり方がある」ということです。
ですから、お母様の言っていた『三つ子の魂百まで』というのは、実は、性格の類型という意味においては正しいんです。正しいんですが、そういう自分の個性をどう生かしていくか、ということについては、いろいろ変えることができます。
その時に大事なことは、「小さな成功体験を積み重ねる」ことですかね。僕も、最初に人前で話した時は、もう足が震えるぐらい緊張していました。今は全く緊張しません(笑)。なぜかと言うと、やっぱり場数を踏んで、人前で話すということに慣れてきて、内向きでシャイな自分ならではのやり方がある、ということを見つけたからなんですよね。
お母様のその『三つ子の魂百まで』という言葉を大事にしつつ、いっそんさんらしい、人との向き合い方、コミュニケーションの仕方を見つけていってくださったら、大人になっても自分を育てることができるので、是非、その脳の凄さを生かしていただけたらなと思います。

●今夜ご紹介したような茂木さんへのご質問メールは、すべてメッセージフォームへお送りください。お待ちしております!
●茂木健一郎(@kenichiromogi) / X(旧Twitter)公式アカウント

──脳腸相関でバランスを大事に
茂木:では、まず、こちらのメッセージから…。東京都 ラジオネーム<アボカドトースト>さん。
茂木さんに、質問です。
私は朝ごはんをたくさん食べると、眠くなってしまうので、最近は野菜ジュースのみにしています。
固形物を摂らないようにしたら、眠くならないので良いのですが、朝ごはんをたくさん食べた日の方が、幸せな気分になれる気がします。
脳科学的には、どちらの方が良いのでしょうか。
茂木さんの朝食についてのご意見を、お聞かせください。
茂木:なるほど、これは悩ましいところですよね。
朝ご飯をちゃんと摂ると、脳が活動するための様々な栄養素を摂ることができます。例えば、血糖値をある程度上げないと脳が活動しませんから、エネルギー源として炭水化物を摂ることが大事です。それから、『脳腸相関』というものが最近注目されていまして、これは「腸内細菌のバランスが保たれていると、脳も健やかに働く」ということです。
なので、僕の場合だと、ご飯が好きなので、朝ご飯に、納豆、お味噌汁、ご飯、明太子、あとは大根おろしとしらすとかを食べるのが好きかな。それと、ヨーグルトも食べますね。
いろんなものを食べて、脳への栄養を摂るということ。それから腸内細菌のバランスを保つこと。
よく、「ヨーグルトや納豆や食物繊維などは腸内細菌に良い」と言われているんですけど、でもね、最近の研究によると、「とにかくいろいろな種類の食べ物を食べることが、腸内細菌のバランスのためには良い」とされていまして、私はそれを実践しているんです。
もちろんこれは、朝食・昼食・夕食・おやつ、1日を通してバランスが取れるようにすればいいので、必ずしも朝ご飯でそれをやる必要はないんですけど。僕の場合は、昼間はいろいろと出先にいることもあって、お昼ご飯をゆっくり食べるという感じでもないので、比較的自由に決められる朝ご飯でそういうことをしています。
ただ、「食べると眠くなる」。わかりますよ。
元々人間というのは、満足している時には別に活動しなくてもいいんじゃないか、というモードになることもあるわけで、食べたら寝てしまうというのは、1つの自然な反応でもあるんです。だから、あまり重い食事をすると、消化に血流が使われてしまうということもあって、脳の方にあんまり回らなくなってしまう。
これは個人差もあるんですよね。僕は比較的、食べてもすぐに活動してしまう方なんですけど、やっぱり個性によっては、食べた後は眠くなってしまう方もいらっしゃいますので。
今申し上げたように「“脳に栄養を摂る”という意味で、野菜ジュースを飲む」。これ、いいんですよ。それでも血糖値が上がりますから。フルーツジュース、オレンジジュースとかもいいかもしれませんね。
そういうものを摂っていただいて脳に栄養を与えるということも大事ですし、そんな中で、眠くならない程度に食事を工夫する、ということはいいことなのかな、と僕は思います。
あともう1つ。実は、脳の働きというのは、ご飯だけで決まるわけではないんですよね。1つオススメなのは、「外に出て太陽の光を浴びる」ことかな。
僕も、もしもご飯を食べた後に部屋で机の前に座っていたら、眠くなってしまうと思います(笑)。僕は、ご飯を食べた後は大抵ランニングに行ったり、すぐに仕事に出かけたりするので、外の太陽を浴びるんですよね。そうすると、意外と脳が起きていようと思ったりします。
あとはやっぱり、「自分にとって楽しいこと、いろいろ刺激になることをやる」と、朝ご飯を十分食べていてもちゃんと目が覚めていられるかもしれません。
脳が眠くなるかどうか、というのは、食べ物をどうするか、ということだけで決まるわけではないんですよね。いろいろな生活習慣とか環境とかでも決まってくるので、アボカドトーストさんのライフスタイルで、「朝ご飯食べた後は何をしよう?」、「ランチはどうしよう?」、「夕飯はどうしよう?」…。ひょっとしたら“パワーナップ”という考え方もあります。ちょっと眠くなったら5〜10分寝るだけでも脳がスッキリしたりするので、パワーナップをどこで取るか。僕の場合はよく移動中に飛行機とか新幹線の中で寝ているんですけど、そういう形で自分の脳の状況を整える工夫をするのがいいのかなと思います。
いずれにせよ、アボカドトーストさんのように「自分はどういう食事がいいのかな?」といろいろ工夫されることが大切だと思うので、自分の脳と対話しながら、工夫していただけたらなと思います。

──眼窩前頭皮質の活動
茂木:続きまして…熊本県 ラジオネーム<たこちゃん>さん。
茂木さんは、ふと過去の自分の言動を思い出して、恥ずかしくなったりすることはありますか。
わたしは突然、「ひとり反省会」を始めることがあります。
あの時、ああしていれば、こうしていれば、こうしたのはよくなかった、あの言葉はあの人を傷付けたかな…など、今更考えても全てどうにもならないことなのですが、これはやめた方がよいのでしょうか。
茂木:いや、素敵なことだと思いますよ。僕も年に何回かあるかな。シャワーを浴びている時とかに突然「うわーっ!」と声を出してしまったりしますよね。「恥ずかしいな」と思って。それで僕も反省することがあります。
ただ僕の場合は、そんなに長く続かないのかな(笑)。元々能天気な性格なので、「あー!」と思って、それで「ああ、これから気をつけよう」と思って、僕の場合の「ひとり反省会」は大体1〜2分で終わってしまう感じなんですけど(笑)。
たこちゃんさんのようにずっとくよくよといろいろ悩むというのは、素敵なことだと思います。
実は、性格の類型で『ビッグファイブ(Big Five)』というものがありまして、「5つの主要な性格の要素がある」とされているんですね。
その内の1つに、まさにお書きになっている、『神経症的傾向(Neuroticism)』と言われているものがあるんです。これがまさに、「いろいろくよくよ悩む」ことなんです。
僕は、性格の類型の中の『神経症的傾向』と呼ばれているものが低いんですよ。だから僕はあんまり反省しない方なんですけど(笑)。ただそれが高い方もいらっしゃる。
これの大事なことは、人間が進化してきた中で5つの要素がいろいろ多様にあるということは、それだけ大事なことだということなんですね。
いろいろくよくよ悩む方がいらっしゃるし、悩まない方もいらっしゃる。悩む方には悩む方なりのユニークな個性があって、それを大事にした方がいいんですね。ですから「やめた方が良いのですか?」と書かれていますが、そんなことはないです。そういう個性、たこちゃんさんの素晴らしい個性なんですね。
この「ひとり反省会」の脳科学的な意味なんですけど、『眼窩前頭皮質(orbitofrontal cortex=OFC)』と呼ばれている領域があるんです。これはたこちゃんさんの目の後ろあたりにある前頭葉の部分なんですけど、ここでその反省会の活動が行われていることがわかっているんですね。
この反省会の活動が何をしているかと言うと、「自分が実際にやったことと、やれたかもしれないこと」や、「実際に取った行動と、取れたかもしれない行動」、この2つを比べてシミュレーションしている、ということがわかっているんです。非常に高度な脳の働きで、それは無駄ではないんです。
もう過ぎてしまったことだと仰いますが、確かに過去は変えられないんですが、なぜ脳の中でそういう活動が起こっているのかと言うと、自分の考え方とか価値観をアップデートするためです。確かに過去の出来事についてはもう変えられないんですけど、「これからもし似たようなことがあったら、この次はこういうふうにしよう」とか、「こういう行動を取ろう」という形でアップデートできるということで、意味があるとされています。
ただ、バランスなんですよね。余りにもそのことばかり考えていると、だんだん嫌になってしまったりするじゃないですか。だから僕みたいな能天気な人は、もうちょっと自分の過去を反省していろいろくよくよした方がいいんでしょうし、たこちゃんさんの場合には、ひょっとしたらそれはほどほどにして、「これから未来に向かって何をしようか」という、具体的に自分が夢中になれる行動に少しエネルギーを使った方がいいのかもしれないですね。
反省しないで行動ばかりしている人は、これはまた問題だと思うんですよ。そういう人もいらっしゃいますよね。一方で、反省会ばっかりやっていて実際の行動をとらない、ということももったいない気がするので、やっぱり自分の個性に合わせていろいろ考えていくのがいいのかなと思ったりします。
たこちゃんさんのやっている「ひとり反省会」をもう1回纏めますと、それは性格の五大類型と言われている『神経症的傾向(Neuroticism)』として評価される、と。それが高い人も、ちゃんとそれは個性として意味がある、と。
もう1つは、反省会をやっている時には『眼窩前頭皮質』という脳の活動が行われている。そこでは自分の価値観とか、いろいろと選択をする時の基準みたいなものをアップデートしていて、過去は変えられないけど、これから似たようなことがあった時により良い行動ができるように脳が準備をしている、と。
こういうことでございますので、是非、やりすぎないように、ただ自分らしく、これからも「ひとり反省会」をしていただけたらなと思います。たこちゃんさん、頑張ってください。

──脳の可塑性
茂木:では、続きまして…京都府 ラジオネーム<いっそん>さん。
毎回、ゲストが多彩で、楽しみに欠かさず拝聴しています。
さて、茂木さんに質問です。
私の母は、「三つ子の魂百まで」と言って、「内向きな性格」は、変えられない…とよく言ってましたが、本当でしょうか?
上書きして上書きして、性格を変えたいと私自身、思っています。
茂木:『三つ子の魂百まで』というのは日本のことわざで、「小さい頃の性格や癖は、大人になっても続く」という意味ですよね。もちろん、こういうことを昔の人が言っていたということは、「人間にはそういう傾向がある」ということですよね。
これは、先ほどのご質問でもあったんですけど、『性格の五大要素』というものがあって、まさにこの「内向的か、外向的か」というのも五大要素の1つなんです。ですから、先ほどのご質問とも関係するんですが。
人によって違うんですけど、基本的にはお母様が仰っていたように、「変わらない」とされているんです。生まれつきの脳の個性で、内向的な傾向がある人、外交的な傾向がある人がいて、それ自体は変わらないとされているのですが…。
ここからが面白くて、脳には『可塑性』というものがございます。『可塑性』というのは、「神経回路が繋ぎ変わる」ということなんですけど、「上書きされる」と言うよりは、どちらかと言うと、イメージとしては「自分が持って生まれた個性に、上手く向き合えるようになってくる」ということなんです。
ちょっと私個人のお話をさせていただくと、実は私は、高校、大学の途中までちょっとコミュ障じゃないか、というぐらい、内向的で恥ずかしがり屋の人間でした。僕はいわゆる“パリピ”ではないんですね。次から次へといろんな人と話せるような性格ではなくて、どちらかと言うと、恥ずかしがり屋なんですよ。
だから恐らく、元々はいっそんさんと似たような生まれつきの傾向があるんですけど、こういうラジオのお仕事とか、テレビのお仕事とか、人前で話すようなお仕事もさせていただいているじゃないですか。
内向きの自分は変わらなくて、どちらかと言うと、1人で本を読んでいたり、音楽を聴いていたり、いろいろものを考えていたりするのが好きなんですけど、そういう自分の持って生まれた資質に向き合うことで、脳の中で、コンピューターを使われる方とかは“パッチが当たる”という言い方をしますよね。それに合わせた他人との向き合い方を、徐々に学んでいくことができるんですよ。
ですから、僕の場合、こういうラジオで喋っている時とか、人前で講演している時とかは、やっぱり内向的であまり他人のことを考えると恥ずかしくなってしまうので、自分自身が感じていることに集中するようにしているんです。そうすると上手く話すことができます。
あまり、他人と上手くコミュニケーションしようとか思うのではなくて、「自分の感じていることを、誠実にそのままお伝えしよう」というふうに思うと、上手くいくことが多いですね。
ですので、「内向きな人には、内向きな人なりのやり方がある」ということです。
ですから、お母様の言っていた『三つ子の魂百まで』というのは、実は、性格の類型という意味においては正しいんです。正しいんですが、そういう自分の個性をどう生かしていくか、ということについては、いろいろ変えることができます。
その時に大事なことは、「小さな成功体験を積み重ねる」ことですかね。僕も、最初に人前で話した時は、もう足が震えるぐらい緊張していました。今は全く緊張しません(笑)。なぜかと言うと、やっぱり場数を踏んで、人前で話すということに慣れてきて、内向きでシャイな自分ならではのやり方がある、ということを見つけたからなんですよね。
お母様のその『三つ子の魂百まで』という言葉を大事にしつつ、いっそんさんらしい、人との向き合い方、コミュニケーションの仕方を見つけていってくださったら、大人になっても自分を育てることができるので、是非、その脳の凄さを生かしていただけたらなと思います。

●今夜ご紹介したような茂木さんへのご質問メールは、すべてメッセージフォームへお送りください。お待ちしております!
●茂木健一郎(@kenichiromogi) / X(旧Twitter)公式アカウント












