2021年12月18日
綿矢さんは、1984年、京都府のお生まれ。
高校在学中の2001年に、『インストール』で文藝賞を受賞し、作家デビュー。
2004年に、早稲田大学教育学部在学中に、
『蹴りたい背中』で、芥川賞を受賞されます。
2012年には、『かわいそうだね?』で、大江健三郎賞を、
さらに、2020年には、『生のみ生のままで』で、島清恋愛文学賞を受賞されます。
そのほかの著書に、『ひらいて』、『夢を与える』、『勝手にふるえてろ』、『手のひらの京』、
『私をくいとめて』、『意識のリボン』、『オーラの発表会』など、多数ございます。
そして、今年、9月に、新潮社から、綿矢さん初のエッセイ
『あのころなにしてた?』を発売されていらっしゃいます。
──危なげで一方的な想い
茂木:綿矢さんに一貫して感じるのは、憧れの対象に向かう心のエネルギーの熱さとか凄さ。それに対する感覚が凄いですよね。
綿矢:そうですね。アイドルを追っかけていたりとか、あとはストーカーになっていたりとか、そういう人を題材にして小説を書くことが多いですね。
茂木:一貫してますよね。デビュー作の『インストール』も、チャットという仮想世界でそういうものを追い求めてしまう人間の心理が描かれていますが、そういうものはどこから来るんですかね?
綿矢:始めのうちは、偶像を軽く好きみたいな感じだけど、だんだん自分の理想を乗せて行って、気持ちが重くなって、本人からはかけ離れているような性格を自分の中でイメージして、もっと好きになってしまう…という心理が、危なげだけど、書いていると凄く楽しくなってきますね。
茂木:アイドルだと、世間から凄く軽く見られたりするんですけど、綿矢さんが書くとプラトン的世界と言うか…何を見ているのかな? と。そういうことに興味を持つきっかけはあったんですか?
綿矢:おっしゃって頂いたように、気づいたら、デビュー作の時からそういことが気になるようになっていて、片思いとかも広義で言うとそうと言うか、“相手のことを余り良く知らないけど、凄く好き”。で、“相手が自分のことを好きかどうかも分からないけど、追いかけてしまう”。…というような、片思いとか、一方的な思い入れみたいなものをデビューから書いているんですけど、何で自分がそんなにそれを書くのが好きなのかは良く分からないという感じですね(笑)。
茂木:“自分に与えられたテーマ”という感じなんですかね?
綿矢:書いていたら自然とそうなっていくんです(笑)。たぶん、自分の一人称の文体とかが、思い込みが激しいものが多いから、それに乗せられてどんどんそうなっていくのかもしれないですね。
茂木:でも、“その世界に入った時の綿矢りさ”という作家は、もう比べる人がいないぐらい凄いですよね。
綿矢:没入しちゃいますね。主人公が夢中になって人を追いかけてる時は、自分も書いているとその気持ちになってしまいます。
茂木:一方で『夢を与える』では、アイドルというものの裏のドロドロしたことなどを書かれていますが、憧れる側の事情というものもあるじゃないですか。そちらも書かれますよね。
綿矢:そうですね。その人たちもその人たちなりの苦労があると言うか、ストレスが溜まっていくというのも、書いていて楽しいです。夢を与える職業だけど、自分がだんだん与えられるほど豊富じゃなくなっていく。ちょっとずつすり減っていく。…みたいなのを書くのも好きです。
茂木:綿矢さんの小説を読んでいると、「これ、皆のことだよね」と思えるんですよね。特別な人じゃなくて、そこら辺にいるごく普通の人が、こういう風にになる、という。そこら辺に綿矢さんの秘密があるのかな、と。何となくイメージが“賢い純文学少女”というところからスタートしたんですけど、実は、“全ての人に共通した、人間の心理”を描いているところが普遍性なのかな、と感じました。
綿矢:そう言って頂けると凄く嬉しいですね。カジュアルに人の心理について書いて行けたらいいな、と、いつも思っています。
茂木:恐らく、綿矢さんに憧れていて、「ああいう感じで小説が書けたらいいな」と思ってる方がいらっしゃると思うんですけど、綿矢さん、小説はどう書けばいいんでしょうか?
綿矢:小説は、“自分が面白いと思ったこと”をテーマにするのが一番詳しく書けるな、と思います。“自分が読むのが好き”なテーマじゃなくて、その時に本当に自分が興味のあることについて書くと、人より詳しいし、想像力も広がるし。もちろん、それは単なるきっかけに過ぎないかもしれないんですけど、やっぱり書いているうちにテンションが上がるようなことを書くのが一番いいんじゃないかな。
茂木:ここですよね。今日お話を伺っていて分かったのは、綿矢さんの創作のイメージとは、書いているうちにテンションが上がっていくことなんだ、と(笑)。
綿矢:(笑)。
茂木:やっぱり、“綿矢りさ”にはすぐにはなれないですね。“才能”とは何だと思われますか?
綿矢:“自分が見つけて信じること”、“盲信”と言うか。私も自分に才能があると今でも全然思えないけど、もう「あるかもしれない」と信じるしかなくて。だから、人から言われて「あ、自分には才能があるんだ」というのではなくて、自分自身があると決めて、評価に惑わされない自信を築き上げると、長続きするんじゃないかな、と思います。
■プレゼントのお知らせ
番組でご紹介しました、新潮社より発売中の綿矢さんの初のエッセイ
『あのころなにしてた?』に、綿矢さんの直筆サインを入れて
3名の方にプレゼントいたします。
ご希望の方は、お名前やご住所、電話番号など、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
茂木さんに聞きたい事や相談したい事など、
一緒にを添えていただけると嬉しいです。
尚、当選者の発表は、商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。
●あのころなにしてた? / 綿矢りさ
(Amazon)
●新潮社 公式サイト
●映画『ひらいて』(@hiraite_movie) Twitter
↑綿矢さん原作の映画『ひらいて』公開中です!
高校在学中の2001年に、『インストール』で文藝賞を受賞し、作家デビュー。
2004年に、早稲田大学教育学部在学中に、
『蹴りたい背中』で、芥川賞を受賞されます。
2012年には、『かわいそうだね?』で、大江健三郎賞を、
さらに、2020年には、『生のみ生のままで』で、島清恋愛文学賞を受賞されます。
そのほかの著書に、『ひらいて』、『夢を与える』、『勝手にふるえてろ』、『手のひらの京』、
『私をくいとめて』、『意識のリボン』、『オーラの発表会』など、多数ございます。
そして、今年、9月に、新潮社から、綿矢さん初のエッセイ
『あのころなにしてた?』を発売されていらっしゃいます。
──危なげで一方的な想い
茂木:綿矢さんに一貫して感じるのは、憧れの対象に向かう心のエネルギーの熱さとか凄さ。それに対する感覚が凄いですよね。
綿矢:そうですね。アイドルを追っかけていたりとか、あとはストーカーになっていたりとか、そういう人を題材にして小説を書くことが多いですね。
茂木:一貫してますよね。デビュー作の『インストール』も、チャットという仮想世界でそういうものを追い求めてしまう人間の心理が描かれていますが、そういうものはどこから来るんですかね?
綿矢:始めのうちは、偶像を軽く好きみたいな感じだけど、だんだん自分の理想を乗せて行って、気持ちが重くなって、本人からはかけ離れているような性格を自分の中でイメージして、もっと好きになってしまう…という心理が、危なげだけど、書いていると凄く楽しくなってきますね。
茂木:アイドルだと、世間から凄く軽く見られたりするんですけど、綿矢さんが書くとプラトン的世界と言うか…何を見ているのかな? と。そういうことに興味を持つきっかけはあったんですか?
綿矢:おっしゃって頂いたように、気づいたら、デビュー作の時からそういことが気になるようになっていて、片思いとかも広義で言うとそうと言うか、“相手のことを余り良く知らないけど、凄く好き”。で、“相手が自分のことを好きかどうかも分からないけど、追いかけてしまう”。…というような、片思いとか、一方的な思い入れみたいなものをデビューから書いているんですけど、何で自分がそんなにそれを書くのが好きなのかは良く分からないという感じですね(笑)。
茂木:“自分に与えられたテーマ”という感じなんですかね?
綿矢:書いていたら自然とそうなっていくんです(笑)。たぶん、自分の一人称の文体とかが、思い込みが激しいものが多いから、それに乗せられてどんどんそうなっていくのかもしれないですね。
茂木:でも、“その世界に入った時の綿矢りさ”という作家は、もう比べる人がいないぐらい凄いですよね。
綿矢:没入しちゃいますね。主人公が夢中になって人を追いかけてる時は、自分も書いているとその気持ちになってしまいます。
茂木:一方で『夢を与える』では、アイドルというものの裏のドロドロしたことなどを書かれていますが、憧れる側の事情というものもあるじゃないですか。そちらも書かれますよね。
綿矢:そうですね。その人たちもその人たちなりの苦労があると言うか、ストレスが溜まっていくというのも、書いていて楽しいです。夢を与える職業だけど、自分がだんだん与えられるほど豊富じゃなくなっていく。ちょっとずつすり減っていく。…みたいなのを書くのも好きです。
茂木:綿矢さんの小説を読んでいると、「これ、皆のことだよね」と思えるんですよね。特別な人じゃなくて、そこら辺にいるごく普通の人が、こういう風にになる、という。そこら辺に綿矢さんの秘密があるのかな、と。何となくイメージが“賢い純文学少女”というところからスタートしたんですけど、実は、“全ての人に共通した、人間の心理”を描いているところが普遍性なのかな、と感じました。
綿矢:そう言って頂けると凄く嬉しいですね。カジュアルに人の心理について書いて行けたらいいな、と、いつも思っています。
茂木:恐らく、綿矢さんに憧れていて、「ああいう感じで小説が書けたらいいな」と思ってる方がいらっしゃると思うんですけど、綿矢さん、小説はどう書けばいいんでしょうか?
綿矢:小説は、“自分が面白いと思ったこと”をテーマにするのが一番詳しく書けるな、と思います。“自分が読むのが好き”なテーマじゃなくて、その時に本当に自分が興味のあることについて書くと、人より詳しいし、想像力も広がるし。もちろん、それは単なるきっかけに過ぎないかもしれないんですけど、やっぱり書いているうちにテンションが上がるようなことを書くのが一番いいんじゃないかな。
茂木:ここですよね。今日お話を伺っていて分かったのは、綿矢さんの創作のイメージとは、書いているうちにテンションが上がっていくことなんだ、と(笑)。
綿矢:(笑)。
茂木:やっぱり、“綿矢りさ”にはすぐにはなれないですね。“才能”とは何だと思われますか?
綿矢:“自分が見つけて信じること”、“盲信”と言うか。私も自分に才能があると今でも全然思えないけど、もう「あるかもしれない」と信じるしかなくて。だから、人から言われて「あ、自分には才能があるんだ」というのではなくて、自分自身があると決めて、評価に惑わされない自信を築き上げると、長続きするんじゃないかな、と思います。
■プレゼントのお知らせ
番組でご紹介しました、新潮社より発売中の綿矢さんの初のエッセイ
『あのころなにしてた?』に、綿矢さんの直筆サインを入れて
3名の方にプレゼントいたします。
ご希望の方は、お名前やご住所、電話番号など、必要事項を明記の上、
メッセージフォームより、ご応募ください。
茂木さんに聞きたい事や相談したい事など、
一緒にを添えていただけると嬉しいです。
尚、当選者の発表は、商品の発送をもってかえさせていただきます。
たくさんのご応募、お待ちしております。
●あのころなにしてた? / 綿矢りさ
(Amazon)
●新潮社 公式サイト
●映画『ひらいて』(@hiraite_movie) Twitter
↑綿矢さん原作の映画『ひらいて』公開中です!