2025年01月11日
新年最初のゲストにお迎えしたのは、華道家で写真家の池坊専宗さんです。
池坊専宗さんは、1992年、華道家元池坊 次期家元、池坊専好さんの長男として、京都で生まれました。
慶應大学理工学部入学後、東京大学法学部入学。
東京大学卒業時には、成績優秀として「卓越」を受賞されています。
華道家として活動するほか、自分のいけばなを撮影し、写真家としても表現をされていらっしゃいます。
講座「いけばなの補助線」や文筆など、様々な形で、花を生ける意味を伝え続けている、今、注目の存在でいらっしゃいます。
──多忙な世の中でも立ち止まる時間を
茂木:時代と共にいけばなを取り囲む環境などが変わってきて、色んなチャレンジや可能性があると思うんですけど、現代における「いけばな」の意義ということについては、改めてどのようにお考えですか?
池坊:今というのは、本当に忙しい時代ですよね。家庭にいても、仕事場にいても、学校にいても、もう一日中予定が詰まっていて、「しっかり結果を出しなさい」という時代だと思います。お花を習われている方の中でも、忙しい中で時間を作って、お花に没頭する、という方が結構多いんですよ。
やっぱり生きているものに触れるのは気持ちがいいことでもありますし、そこで自分がちょっと立ち止まると言うか、命に触れて、植物の姿を見て、そして自分を見つめ返す。そういう時間がものすごい大事かな、と思いますね。
茂木:心を整えると言うか。私も池坊の本部でいけばなの体験をさせて頂いた時に感じたのは、本当に清々しい気持ちと言うんでしょうか。どうしても、今はデジタルばかりなので、花を生けている時のあの経験というのがいいですよね。
池坊:そうですね。
茂木:僕はその時に、「いけばなは脳にいい」という話をしたんですけど、例えば、「鋏で切る」という選択は、もう戻れないじゃないですか。
池坊:戻りません。くっ付きません(笑)。
茂木:そうですよね(笑)。だから「いけばなは一瞬一瞬の選択の連続だな」と感じて。それが本当に脳にいいと言うか、脳が整う感じがしたんですね。
池坊:茂木さんは、切る時にあまり抵抗はなかったですか? それか、迷いましたか?
茂木:迷いましたね。
池坊:迷いますよね。最初は、鋏ひとつ入れるのも怖いんですよね。でもやっぱり、手を入れないと、成長していかないんです。
茂木:だからいけばなは、もちろん出来上がったものを拝見するのもいいんですけど、生けるプロセスがいいですね。
池坊:そうですね。やっぱり生けてみて他の方の花を見ると、もう見え方も全然違いますから。サラッと洗練された姿に、どれだけの色んな苦労があったんだろうな、と、もう涙なしでは見られなくなりますよ。
茂木:そうですね。
今、地球環境がどんどん変わってきていますが、いけばなの世界でも、温暖化の影響とかあるんですか?
池坊:あります。もう去年はとにかく夏が暑かったと。夏が暑いと、例えば彼岸花の出る時期が遅くなったり、どんどんどんどん秋が後ろにずれますよね。やっぱりそうなるとその植物がちょっと夏バテするんですよ。
だから、いつも付いていた実が今年はならないとか、花付きが悪いとか、当然、冬のものはもっと寒くならないと出てこないとか。だからもう、これまで当然に「この時期にはスイセンが出ますよ」というのが出なかったりして、困っていますね。
茂木:ということは、いけばなをやっていると地球のことが分かる、と。
池坊:分かります。もう肌感覚で分かります。
茂木:そして、今池坊の門弟さんが世界中にいらっしゃるわけですけど、花材は、それぞれの地域で工夫されてやるんですか?
池坊:そうです。今は配達もかなり進歩していますけれども、やっぱり北海道にいたら北海道の花材、九州にいたら九州の花材、アフリカにいたら、アフリカの花材でやるわけですよ。
私も一昨年にロサンゼルスの花展に伺いましたけれども、ロサンゼルスはアジア人が多いんですが、日本の花材はあんまりない、と。だからピンクペッパーで生けましたね。
茂木:ピンクペッパー(笑)。
池坊:ムニエルとかカルパッチョにあるような。あれが房になって、葉っぱがシャシャッと付いているんですよ。
向こうは乾燥しますから、ペッパーの木が多いんです。そうしたら、もうこの当地の花で生けるのが一番いいじゃないか、となって。それで生けたら、結構いい感じでしたよ。
茂木:へえ〜。そういう意味においては、地球との対話もできるし、世界各地との交流もあるし。
池坊:そうです。そういう異文化交流と言うか、人と人の縁が繋がる、ということもあると思います。やっぱり花が生きていれば、僕らは花を生けられますから。
ちょっとね、バオバブとかでは生けたことがないですけれども(笑)。多分、やろうと思えばできると思います。サボテンとかね(笑)。
茂木:(笑)。そんな中でも、京都六角堂は本当に一番の魂の場所と言えると思いますが。どうですか? 六角堂というのは、これからどういうふうな発展を遂げていかれるんでしょうか?
池坊:そうですね。時代が経っても、やっぱり聖徳太子がそこにいらっしゃって、そして「はな」が始まって、そのルーツは変わらないと思うんですよね。
今、京都にもインバウンドの皆さんが本当にたくさんいらっしゃって、京都の歴史とか六角堂のルーツを知られると、本当に「あ〜なるほどね。」と言って帰って行かれるんですよ。だから、そうやってこの地の空気感とか、この土地の感触、それを感じてもらうのが大事だと思いますね。
──池坊専宗さんの夢・挑戦
茂木:なるほど。本当に華道の歴史は素晴らしいと思いますし、これからますます発展していくと思うんですけれども。ご自身のこれからの『夢や挑戦』というのは、どのようなことになりますか? これは、池坊としての挑戦もあると思うんですけど。
池坊:個人的な夢としては、実は2つあって。
1つは、山か無人島を買う、と。
茂木:え?(笑) ちょっと待ってください。山か無人島を買う?
池坊:(笑)。山か無人島に、水田を作ったりとか、あるいは植物を植えて、そこで花を摘んで、花を生ける、と。最高じゃないですか。
茂木:それはすごいですね…! でもそれは、きっと原点でもあるということですよね。
池坊:そうです。だから、そういう場を1つ作りたい、というのと。
あとはもう1つは、ギャラリーとか美術館を作ってみたいんですよ。そこでは色んな文化的な人がサロンみたいな感じで交流していく。だからもう合体しちゃえ、ということで、山で美術館を作る、とかね、そういうのをやってみたいです。
茂木:でも、本当に池坊の歴史の本質を突き詰めていくと、そういうところに行くということですよね。
池坊:はい。やっぱり僕らは自然が先生ですから、そこに学んでいく、と。
茂木:素晴らしい。池坊の本部に行くと、もちろん近くに立派なお花屋さんもありますし、そういう方々とのお付き合いは本当に大事だと思うんですけど、一方で原点は、仰ったように、「自分から野に入る」。
池坊:そうです。自分が散歩して「あ、これがいいな」と思った花を生けてみる。
茂木:皆さんもいけばなに興味を持たれたと思うんですが、池坊専宗さんが参加されるイベントがございます。『京の冬の旅2025 京都「千年の心得」』という、京都ならではの貴重な体験ができるイベントの特別プラン。2月15日土曜日に、池坊専宗さんによる「いけばな体験」がある、と。これは素晴らしいですね。どういうイベントになるんでしょうか?
池坊:そもそも冬には京都に来る観光客の皆さんが減りますから、どんどん来てくださいね、ということで、これまで閉じられていた経堂とか必要なものを開ける、そういうタイミングがあるんです。そのポスターに私が出させて頂きまして、東や西本願寺さん、仁和寺さん、龍安寺さんなど色々行かせてもらったんですけれども、そのポスターの撮影に付随して、こういう体験イベントを行う、ということで。
私がいけばなを教える機会になりますから、もしこのラジオで興味を持ったら、気軽な気持ちで参加してもらえればな、と思いますね
茂木:参加してみたいという方は、是非チェックしてみてください。
改めて、池坊の門弟さんも聴いてらっしゃると思いますし、お話を伺って華道に興味を持たれた方もいらっしゃると思います。リスナーの皆さんに何かメッセージをお願いできますでしょうか?
池坊:はい。いけばなと言っても、最初は一輪挿しでいいと思うんですよ。ですから、これを聴いたら、明日は花をちょっと買いに走って、そして一輪ポっと入れてみると、部屋が明るくなると思います。是非、されてみてください。
●池坊専宗((@senshuikenobo))さん / Instagram 公式アカウント
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●池坊専宗 さん 公式サイト
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池坊専宗さんは、1992年、華道家元池坊 次期家元、池坊専好さんの長男として、京都で生まれました。
慶應大学理工学部入学後、東京大学法学部入学。
東京大学卒業時には、成績優秀として「卓越」を受賞されています。
華道家として活動するほか、自分のいけばなを撮影し、写真家としても表現をされていらっしゃいます。
講座「いけばなの補助線」や文筆など、様々な形で、花を生ける意味を伝え続けている、今、注目の存在でいらっしゃいます。
──多忙な世の中でも立ち止まる時間を
茂木:時代と共にいけばなを取り囲む環境などが変わってきて、色んなチャレンジや可能性があると思うんですけど、現代における「いけばな」の意義ということについては、改めてどのようにお考えですか?
池坊:今というのは、本当に忙しい時代ですよね。家庭にいても、仕事場にいても、学校にいても、もう一日中予定が詰まっていて、「しっかり結果を出しなさい」という時代だと思います。お花を習われている方の中でも、忙しい中で時間を作って、お花に没頭する、という方が結構多いんですよ。
やっぱり生きているものに触れるのは気持ちがいいことでもありますし、そこで自分がちょっと立ち止まると言うか、命に触れて、植物の姿を見て、そして自分を見つめ返す。そういう時間がものすごい大事かな、と思いますね。
茂木:心を整えると言うか。私も池坊の本部でいけばなの体験をさせて頂いた時に感じたのは、本当に清々しい気持ちと言うんでしょうか。どうしても、今はデジタルばかりなので、花を生けている時のあの経験というのがいいですよね。
池坊:そうですね。
茂木:僕はその時に、「いけばなは脳にいい」という話をしたんですけど、例えば、「鋏で切る」という選択は、もう戻れないじゃないですか。
池坊:戻りません。くっ付きません(笑)。
茂木:そうですよね(笑)。だから「いけばなは一瞬一瞬の選択の連続だな」と感じて。それが本当に脳にいいと言うか、脳が整う感じがしたんですね。
池坊:茂木さんは、切る時にあまり抵抗はなかったですか? それか、迷いましたか?
茂木:迷いましたね。
池坊:迷いますよね。最初は、鋏ひとつ入れるのも怖いんですよね。でもやっぱり、手を入れないと、成長していかないんです。
茂木:だからいけばなは、もちろん出来上がったものを拝見するのもいいんですけど、生けるプロセスがいいですね。
池坊:そうですね。やっぱり生けてみて他の方の花を見ると、もう見え方も全然違いますから。サラッと洗練された姿に、どれだけの色んな苦労があったんだろうな、と、もう涙なしでは見られなくなりますよ。
茂木:そうですね。
今、地球環境がどんどん変わってきていますが、いけばなの世界でも、温暖化の影響とかあるんですか?
池坊:あります。もう去年はとにかく夏が暑かったと。夏が暑いと、例えば彼岸花の出る時期が遅くなったり、どんどんどんどん秋が後ろにずれますよね。やっぱりそうなるとその植物がちょっと夏バテするんですよ。
だから、いつも付いていた実が今年はならないとか、花付きが悪いとか、当然、冬のものはもっと寒くならないと出てこないとか。だからもう、これまで当然に「この時期にはスイセンが出ますよ」というのが出なかったりして、困っていますね。
茂木:ということは、いけばなをやっていると地球のことが分かる、と。
池坊:分かります。もう肌感覚で分かります。
茂木:そして、今池坊の門弟さんが世界中にいらっしゃるわけですけど、花材は、それぞれの地域で工夫されてやるんですか?
池坊:そうです。今は配達もかなり進歩していますけれども、やっぱり北海道にいたら北海道の花材、九州にいたら九州の花材、アフリカにいたら、アフリカの花材でやるわけですよ。
私も一昨年にロサンゼルスの花展に伺いましたけれども、ロサンゼルスはアジア人が多いんですが、日本の花材はあんまりない、と。だからピンクペッパーで生けましたね。
茂木:ピンクペッパー(笑)。
池坊:ムニエルとかカルパッチョにあるような。あれが房になって、葉っぱがシャシャッと付いているんですよ。
向こうは乾燥しますから、ペッパーの木が多いんです。そうしたら、もうこの当地の花で生けるのが一番いいじゃないか、となって。それで生けたら、結構いい感じでしたよ。
茂木:へえ〜。そういう意味においては、地球との対話もできるし、世界各地との交流もあるし。
池坊:そうです。そういう異文化交流と言うか、人と人の縁が繋がる、ということもあると思います。やっぱり花が生きていれば、僕らは花を生けられますから。
ちょっとね、バオバブとかでは生けたことがないですけれども(笑)。多分、やろうと思えばできると思います。サボテンとかね(笑)。
茂木:(笑)。そんな中でも、京都六角堂は本当に一番の魂の場所と言えると思いますが。どうですか? 六角堂というのは、これからどういうふうな発展を遂げていかれるんでしょうか?
池坊:そうですね。時代が経っても、やっぱり聖徳太子がそこにいらっしゃって、そして「はな」が始まって、そのルーツは変わらないと思うんですよね。
今、京都にもインバウンドの皆さんが本当にたくさんいらっしゃって、京都の歴史とか六角堂のルーツを知られると、本当に「あ〜なるほどね。」と言って帰って行かれるんですよ。だから、そうやってこの地の空気感とか、この土地の感触、それを感じてもらうのが大事だと思いますね。
──池坊専宗さんの夢・挑戦
茂木:なるほど。本当に華道の歴史は素晴らしいと思いますし、これからますます発展していくと思うんですけれども。ご自身のこれからの『夢や挑戦』というのは、どのようなことになりますか? これは、池坊としての挑戦もあると思うんですけど。
池坊:個人的な夢としては、実は2つあって。
1つは、山か無人島を買う、と。
茂木:え?(笑) ちょっと待ってください。山か無人島を買う?
池坊:(笑)。山か無人島に、水田を作ったりとか、あるいは植物を植えて、そこで花を摘んで、花を生ける、と。最高じゃないですか。
茂木:それはすごいですね…! でもそれは、きっと原点でもあるということですよね。
池坊:そうです。だから、そういう場を1つ作りたい、というのと。
あとはもう1つは、ギャラリーとか美術館を作ってみたいんですよ。そこでは色んな文化的な人がサロンみたいな感じで交流していく。だからもう合体しちゃえ、ということで、山で美術館を作る、とかね、そういうのをやってみたいです。
茂木:でも、本当に池坊の歴史の本質を突き詰めていくと、そういうところに行くということですよね。
池坊:はい。やっぱり僕らは自然が先生ですから、そこに学んでいく、と。
茂木:素晴らしい。池坊の本部に行くと、もちろん近くに立派なお花屋さんもありますし、そういう方々とのお付き合いは本当に大事だと思うんですけど、一方で原点は、仰ったように、「自分から野に入る」。
池坊:そうです。自分が散歩して「あ、これがいいな」と思った花を生けてみる。
茂木:皆さんもいけばなに興味を持たれたと思うんですが、池坊専宗さんが参加されるイベントがございます。『京の冬の旅2025 京都「千年の心得」』という、京都ならではの貴重な体験ができるイベントの特別プラン。2月15日土曜日に、池坊専宗さんによる「いけばな体験」がある、と。これは素晴らしいですね。どういうイベントになるんでしょうか?
池坊:そもそも冬には京都に来る観光客の皆さんが減りますから、どんどん来てくださいね、ということで、これまで閉じられていた経堂とか必要なものを開ける、そういうタイミングがあるんです。そのポスターに私が出させて頂きまして、東や西本願寺さん、仁和寺さん、龍安寺さんなど色々行かせてもらったんですけれども、そのポスターの撮影に付随して、こういう体験イベントを行う、ということで。
私がいけばなを教える機会になりますから、もしこのラジオで興味を持ったら、気軽な気持ちで参加してもらえればな、と思いますね
茂木:参加してみたいという方は、是非チェックしてみてください。
改めて、池坊の門弟さんも聴いてらっしゃると思いますし、お話を伺って華道に興味を持たれた方もいらっしゃると思います。リスナーの皆さんに何かメッセージをお願いできますでしょうか?
池坊:はい。いけばなと言っても、最初は一輪挿しでいいと思うんですよ。ですから、これを聴いたら、明日は花をちょっと買いに走って、そして一輪ポっと入れてみると、部屋が明るくなると思います。是非、されてみてください。
●池坊専宗((@senshuikenobo))さん / Instagram 公式アカウント
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