2025年01月04日
新年最初のゲストにお迎えしたのは、華道家で写真家の池坊専宗さんです。
池坊専宗さんは、1992年、華道家元池坊 次期家元、池坊専好さんの長男として、京都で生まれました。
慶應大学理工学部入学後、東京大学法学部入学。
東京大学卒業時には、成績優秀として「卓越」を受賞されています。
華道家として活動するほか、自分のいけばなを撮影し、写真家としても表現をされていらっしゃいます。
講座「いけばなの補助線」や文筆など、様々な形で、花を生ける意味を伝え続けている、今、注目の存在でいらっしゃいます。
──命と自分自身が触れ合う時間
茂木:僕が小学校の子供の頃は、「華道」と言うと、何となく「お嫁入り前の修行」のようなイメージがあったりしたんですが。どうですか? 花嫁修行みたいな「世間における生け花のイメージ」というのは、それはそれでまたあると思うんですけど、今どういう生け花のイメージを伝えていきたいと感じていらっしゃいますか?
池坊:そうですね。やっぱり昭和の花嫁修業のイメージが強くて。昔の女性というのは、着付けやお花、お茶、あるいは裁縫とかは絶対に勉強していましたから、そういう時代もあったんですけれども。今は女性はもちろん多いですけれども、男性も結構多いですし、事務仕事の方から、デザイナーさんとか、建築家とか、Web関係とか、色んな人がお花のお稽古をされています。
僕もお花のことを喋ると、未だに「正座で、怖いおばあちゃん先生がいて、和服で、お稽古をされているんですか?」と聞かれるんですよ。でも、どれも当てはまりませんから。椅子に座って、洋服で、正直、あんまり怖くないと。今はもうだいぶ時代が変わっております。
茂木:それはでも、やっぱり元々源流がそうで、お母様の専好さんも次期お家元ですけど、初の女性のお家元ということで。(家元は)代々男性なんですよね?
池坊:もうずっと男性でしたね。
茂木:ですので、やっぱり元々は「生きとし生けるものに対する祈り」と言うか、供物として(華道があった)。
池坊:はい。やっぱり仏様がいらっしゃるところに、お香や、松明と言うか炎があって、そしてお花がある、と。そこから来ていますから、やっぱり神仏に気持ちを届けていくと言いますか、そういう気持ちが源流にあります。
茂木:「生きている花を切ってしまったりすると可哀そう」というようなことを言う人もいるんですけど、僕は池坊の本部で実際にやらせて頂いて…。
池坊:体験して頂いたんですよね。
茂木:はい。むしろ、元々生きているものが持っている美しさを、更に人間の手で際立たせてあげることで、かえって生きていることの喜びを分かち合う、みたいな、そういうことなんだなと思ったんですが。
池坊:そうですね。 やっぱり部屋の中にも、造花ではなくて生花が…生きている花が一輪あるだけでも、全然雰囲気が変わるじゃないですか。だから、命と自分自身が触れ合う、そういう時間なんだと思います。
茂木:今メディアの中で、色々エッセイを書かれたり、生け花のことをお話されたり、そういうふうに活躍の幅が広がってきていらっしゃるんですけども、今のお立場でどういうことをするのがいいと思いますか。
池坊:今は池坊の青年部の若い世代の代表というのも務めているんですけれども、まだ祖父が元気で、そして母ももちろん元気で、私がその次ということになりますから、ある意味、色んなことにトライできるタイミングでもあるんですよ。
ですから、ラジオも他でも持っていますし、あるいは執筆したりとか、あるいはインスタレーションしてみたりとか、色んな形で、お花と向き合う静かな時間を楽しんでいく世界観、これを伝えていければいいなと思っていますね。
茂木:僕はお家元の生け花を何回か拝見しているんですけど、本当に自由ですよね。
池坊:自由だし、もう今年91歳なんですけれども、そういう歳の人がこういう発想をするんだ、という感じだと思います。
茂木:ということは、池坊の伝統はもちろん大事ではあるんですけど、やっぱり色々新しい分野にも挑戦していきたい、ということですよね。
池坊:そうです。やっぱり12歳で家元になって、そこから昭和というのは色んな激変の時代でもありましたよね。だからそういう時代を生きていく中で、また世界にも華道が広がっていく中で、どうすればいいんだろうと祖父が考えた結果でもあると思いますね。
茂木:リスナーの方々はすごく興味を持つと思うんですけど、いわゆる欧米のフラワーアレンジメントと、池坊の生け花の違いというのは、どういうところにあるんでしょうか?
池坊:よく言われるのは、やっぱり「日本の生花というのは引き算だ」、と。
アレンジメントだと、例えば満開の花の状態をたくさん集めるとか、あるいは色んな空間を満たすように、たくさんたくさん盛っていくというイメージですけれども。
生け花というのは、因果…プロセスを大事にしますから、蕾、葉っぱ、幹、歪み、そういうものも大事にしていったりとか、あるいは、時には枝を裁いていって、「空間に虫の音が聞こえるね」とか、「風が流れているね」とか、そういうことを想像させるんですね。
茂木:あ、そういうことも感じさせるような。
池坊:そうです。だからちょっと方向性が若干違うような感じがします。
茂木:今、かなり外国の方も、池坊の生花に興味を持たれているとか。
池坊:物凄く多いんですよ。だから生け花、華道自体は、京都から生まれましたけれども、世界中に池坊の支部があって、ヨーロッパ、北米、南米、そしてアジア圏ですね。
アジア圏の皆さんは本当に勉強熱心だし、東アジアだと四季があり、季節が移ろっていくというのは共通なんですね。だからそれもあると思いますけれども、日本の無常観と言うか、わびさびの感覚。これをよく分かってくれるんです。だからもう、下手な日本人よりも遥かに上手いアジア圏の人がたくさんいらっしゃるんですよ。本当にびっくりしますよ。
茂木:へえ〜(笑)。
皆さん聴いていて、先ほどもちょっと触れましたけど、嫁入りの準備みたいなイメージから、生け花もちょっとイメージが変わってきたな、という方もいらっしゃると思うんですけど、池坊の生け花教室に入ろうと思ったらどうすればいいんですか?
池坊:色んな方法があるんですけれども、近所の池坊のお花の先生を探してみるか、あるいは東京だったら御茶ノ水にうちの事務所がありますから、そこでビギナーズレッスンと言うか、初心者向けの教室もございます。
茂木:なるほど。
池坊:まずは、そういう初心者向けの体験とか雰囲気を知ってみる。それが大事だと思いますね。
●池坊専宗((@senshuikenobo))さん / Instagram 公式アカウント
↑池坊専宗さんが生けたお花は、こちらからご覧いただけます。
●池坊専宗 さん 公式サイト
●池坊青年部 | いけばなの根源 華道家元池坊 公式サイト
●いけばな池坊【公式】(@ikenobo550) / X(旧Twitter)公式アカウント
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池坊専宗さんは、1992年、華道家元池坊 次期家元、池坊専好さんの長男として、京都で生まれました。
慶應大学理工学部入学後、東京大学法学部入学。
東京大学卒業時には、成績優秀として「卓越」を受賞されています。
華道家として活動するほか、自分のいけばなを撮影し、写真家としても表現をされていらっしゃいます。
講座「いけばなの補助線」や文筆など、様々な形で、花を生ける意味を伝え続けている、今、注目の存在でいらっしゃいます。
──命と自分自身が触れ合う時間
茂木:僕が小学校の子供の頃は、「華道」と言うと、何となく「お嫁入り前の修行」のようなイメージがあったりしたんですが。どうですか? 花嫁修行みたいな「世間における生け花のイメージ」というのは、それはそれでまたあると思うんですけど、今どういう生け花のイメージを伝えていきたいと感じていらっしゃいますか?
池坊:そうですね。やっぱり昭和の花嫁修業のイメージが強くて。昔の女性というのは、着付けやお花、お茶、あるいは裁縫とかは絶対に勉強していましたから、そういう時代もあったんですけれども。今は女性はもちろん多いですけれども、男性も結構多いですし、事務仕事の方から、デザイナーさんとか、建築家とか、Web関係とか、色んな人がお花のお稽古をされています。
僕もお花のことを喋ると、未だに「正座で、怖いおばあちゃん先生がいて、和服で、お稽古をされているんですか?」と聞かれるんですよ。でも、どれも当てはまりませんから。椅子に座って、洋服で、正直、あんまり怖くないと。今はもうだいぶ時代が変わっております。
茂木:それはでも、やっぱり元々源流がそうで、お母様の専好さんも次期お家元ですけど、初の女性のお家元ということで。(家元は)代々男性なんですよね?
池坊:もうずっと男性でしたね。
茂木:ですので、やっぱり元々は「生きとし生けるものに対する祈り」と言うか、供物として(華道があった)。
池坊:はい。やっぱり仏様がいらっしゃるところに、お香や、松明と言うか炎があって、そしてお花がある、と。そこから来ていますから、やっぱり神仏に気持ちを届けていくと言いますか、そういう気持ちが源流にあります。
茂木:「生きている花を切ってしまったりすると可哀そう」というようなことを言う人もいるんですけど、僕は池坊の本部で実際にやらせて頂いて…。
池坊:体験して頂いたんですよね。
茂木:はい。むしろ、元々生きているものが持っている美しさを、更に人間の手で際立たせてあげることで、かえって生きていることの喜びを分かち合う、みたいな、そういうことなんだなと思ったんですが。
池坊:そうですね。 やっぱり部屋の中にも、造花ではなくて生花が…生きている花が一輪あるだけでも、全然雰囲気が変わるじゃないですか。だから、命と自分自身が触れ合う、そういう時間なんだと思います。
茂木:今メディアの中で、色々エッセイを書かれたり、生け花のことをお話されたり、そういうふうに活躍の幅が広がってきていらっしゃるんですけども、今のお立場でどういうことをするのがいいと思いますか。
池坊:今は池坊の青年部の若い世代の代表というのも務めているんですけれども、まだ祖父が元気で、そして母ももちろん元気で、私がその次ということになりますから、ある意味、色んなことにトライできるタイミングでもあるんですよ。
ですから、ラジオも他でも持っていますし、あるいは執筆したりとか、あるいはインスタレーションしてみたりとか、色んな形で、お花と向き合う静かな時間を楽しんでいく世界観、これを伝えていければいいなと思っていますね。
茂木:僕はお家元の生け花を何回か拝見しているんですけど、本当に自由ですよね。
池坊:自由だし、もう今年91歳なんですけれども、そういう歳の人がこういう発想をするんだ、という感じだと思います。
茂木:ということは、池坊の伝統はもちろん大事ではあるんですけど、やっぱり色々新しい分野にも挑戦していきたい、ということですよね。
池坊:そうです。やっぱり12歳で家元になって、そこから昭和というのは色んな激変の時代でもありましたよね。だからそういう時代を生きていく中で、また世界にも華道が広がっていく中で、どうすればいいんだろうと祖父が考えた結果でもあると思いますね。
茂木:リスナーの方々はすごく興味を持つと思うんですけど、いわゆる欧米のフラワーアレンジメントと、池坊の生け花の違いというのは、どういうところにあるんでしょうか?
池坊:よく言われるのは、やっぱり「日本の生花というのは引き算だ」、と。
アレンジメントだと、例えば満開の花の状態をたくさん集めるとか、あるいは色んな空間を満たすように、たくさんたくさん盛っていくというイメージですけれども。
生け花というのは、因果…プロセスを大事にしますから、蕾、葉っぱ、幹、歪み、そういうものも大事にしていったりとか、あるいは、時には枝を裁いていって、「空間に虫の音が聞こえるね」とか、「風が流れているね」とか、そういうことを想像させるんですね。
茂木:あ、そういうことも感じさせるような。
池坊:そうです。だからちょっと方向性が若干違うような感じがします。
茂木:今、かなり外国の方も、池坊の生花に興味を持たれているとか。
池坊:物凄く多いんですよ。だから生け花、華道自体は、京都から生まれましたけれども、世界中に池坊の支部があって、ヨーロッパ、北米、南米、そしてアジア圏ですね。
アジア圏の皆さんは本当に勉強熱心だし、東アジアだと四季があり、季節が移ろっていくというのは共通なんですね。だからそれもあると思いますけれども、日本の無常観と言うか、わびさびの感覚。これをよく分かってくれるんです。だからもう、下手な日本人よりも遥かに上手いアジア圏の人がたくさんいらっしゃるんですよ。本当にびっくりしますよ。
茂木:へえ〜(笑)。
皆さん聴いていて、先ほどもちょっと触れましたけど、嫁入りの準備みたいなイメージから、生け花もちょっとイメージが変わってきたな、という方もいらっしゃると思うんですけど、池坊の生け花教室に入ろうと思ったらどうすればいいんですか?
池坊:色んな方法があるんですけれども、近所の池坊のお花の先生を探してみるか、あるいは東京だったら御茶ノ水にうちの事務所がありますから、そこでビギナーズレッスンと言うか、初心者向けの教室もございます。
茂木:なるほど。
池坊:まずは、そういう初心者向けの体験とか雰囲気を知ってみる。それが大事だと思いますね。
●池坊専宗((@senshuikenobo))さん / Instagram 公式アカウント
↑池坊専宗さんが生けたお花は、こちらからご覧いただけます。
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