8月21日(日)の放送では、作家で怪異妖怪愛好家の朝里樹(あさざと・いつき)さんをゲストに迎え、妖怪についてたっぷりと語っていただきました。
パーソナリティのホラン千秋
まず、朝里さんにお気に入りの妖怪を尋ねてみると、真っ先に挙げたのは「玉藻前(たまものまえ)」です。それは平安時代末期、鳥羽上皇の寵愛を受けたとされる伝説上の美女。しかし、それは化身の姿で“九尾の狐”と正体を見破られ、その後は現在の栃木県那須町で“殺生石(せっしょうせき)”になったと言い伝えられています。
朝里さんによると、玉藻前の伝説は室町時代に伝承され、「江戸時代あたりになると設定がいろいろと盛られるようになり、(玉藻前を)主人公としたさまざまな作品が作られてブームになった妖怪」と説明。また、“絶世の美女に化けて数々の国を滅ぼしていく”という壮大なスケールの話に「今読んでも面白くて、物語も含めて好きです」と語ります。
北海道在住の朝里さんに、北海道ならではの妖怪を聞いてみると、「いろいろな“ヒグマの妖怪”がいる」と言います。なかには、「お尻の部分が頭になっていて、体の両側にも頭が付いていて、ツノも生えている」という何とも奇妙なヒグマの妖怪も。しかもその妖怪は“300年ぐらいに1度姿を現して人を食べる”という怪物じみた伝承もあり、「とても珍しくて印象に残っている。見るからにヤバい奴(笑)」と話します。
さらに、朝里さんの出身地である小樽市に言い伝わる妖怪として挙げたのは、「不燃鳥(ふねんどり)」。どんな妖怪かというと、「ある日、男の人の死体を火葬したら、お腹のなかから鳥が現れたという話です。大体18〜20センチぐらいの大きさで火にさらされても燃えず、足はカエルのような形をしていて、ネズミのようなしっぽがあるような鳥。イラスト付きで(不燃鳥の話が)新聞に載っていました」と朝里さん。
その話だけを聞くと奇妙な姿を想像しがちですが、新聞に掲載されていた不燃鳥のイラストは、「わりとつぶらな瞳をしていて、かわいらしかった(笑)」と意外な感想が。ちなみに朝里さんいわく、なぜ不燃鳥が男性のお腹のなかから出てきたのか、目的は何なのかなどの詳細は分かっていないそうです。
朝里さんは、著書「日本現代怪異事典」(笠間書院)をはじめ、怪異にまつわる本を数多く出版するなど、作家としても活躍しています。
日本全国でさまざまな妖怪の伝説があるなか、ホランが「特に妖怪の伝説が多い地域は?」と聞いてみると、「基本的に妖怪は“人間がいれば生まれるもの”」と朝里さん。そして、人口の多い場所のほうが、語る人も多いぶん妖怪の伝説が生まれる可能性が高いと言います。
江戸時代以前では、きちんと記録として残っているものと残っていないものがあり、「人口が多いと必然的に記録する人も多くなりますし、出版文化も発達していくので過去の記録が残りやすい。また、江戸や平安京など、大きな都市があると創作の題材にもされやすいし(人口が多いところほど妖怪の伝説が)多くなる」と解説しました。
ホランは、「全国のリスナーも、身近にどんな妖怪がいるのか(文献などを)調べると出てくると思いますので、“ここには、こんな妖怪がいるんだ”“この神社には、こんな言い伝えがあるんだ”と散歩がてら調べてみると面白いかも」と関心を寄せていました。