5月8日(日)の放送では、前回に引き続き、旅するシンガーソングライター・Caravanさんをゲストに迎え、コロナ禍での活動や心境などについて語っていただきました。
(左から)ホラン千秋、Caravanさん
コロナ禍でツアーができなかった期間には、インスタライブや配信ライブ、日比谷野外音楽堂での無観客ライブを開催してきたCaravanさん。「(有観客での)ライブはできないけど、ライブを止めないことを目標に……もっと言ってしまえば、自分は音楽に支えられてきた部分があるので、こういうときこそ音楽を止めたくないと思った」と当時の胸中を語ります。
そんな思いから「去年の年末から毎月新曲を配信でリリースしよう」と決め、曲作りも積極的におこなってきました。そんななか、「普通に生きること、普通に働くことが難しかったり、普通に過ごすことが日常ではなくなったりした瞬間もあって……もうちょっと自分の生き物としての生命力を上げたいな、とすごく思った」と心境に変化があったそう。
そこで、2020年から仲間と一緒に田んぼを借りて米作りをスタートさせ、「どんな状況になっても、仕事はなくてもお米はあるぞという状態にしました(笑)」と明るく笑い飛ばしつつ「“米さえあれば生きていける”という根っこの太さみたいなものを鍛えたかった」と話します。
また、仲間とコミュニケーションを取って、役割分担をしながら米作りをしていく過程が「バンドのアンサンブルみたいで、音楽に近いものがあるなと感じた。手探りで自分たちなりの落としどころが次第に出てくるのが、またすごく面白い」と実感を語ります。
そんな初めての米作りを通して「コロナ禍で、テレビをつけるとどんどん気持ちが滅入ってしまうというか、ネガティブな方向にグッと引っ張られちゃうときもあったんですけど、田んぼに行くと、そこの世界だけはとても健やかなので、ニュートラルに戻れて“きっと大丈夫”という気持ちになれたし、自分にとってもすごく助かった」と振り返ります。
前回に引き続き、この日も弾き語りを披露してくれたCaravanさん。「サンティアゴの道」をしっとり歌い上げると、ホランは「今(のご時世に)ものすごく響く曲だなと思いました。現在、生きている現実が本当に現実なのか……もしかしたら夢なのかもしれないし、それを証明できるようで誰もできないわけじゃないですか。そうなると、“今しかないんだから自分の道を進むしかないな”って。(コロナ禍の)今、すごく聴きたい曲だなと思いました」と感動しきり。
その言葉にCaravanさんは大きくうなずきつつ「人とは違って当然だし、みんなの正解がある。人それぞれ歩き方や道が違うので、そこで譲り合いじゃないけどお互いに“邪魔をしない”というか、お互いを尊重してそれぞれの目的地へ行けたらな、と思いますね」と語ります。
そして、今回披露していただいた楽曲「サンティアゴの道」ができたきっかけについての話も。それは2011年、Caravanさんがスペインのバスク地方を訪れていたときのこと。町で出会った人から日本で東日本大震災が起きたことを聞き、その人が「日本から来ているのならうちでテレビを観なさい。日本はこんな状況になっている」と招き入れてくれたうえに、「次の礼拝で日本のために祈るから」とやさしく声をかけてくれたそう。
「いちアジア人のただの旅行者にも関わらず、ものすごい思いやりを届けてくれるんだなと。宗教や人種、国境なども超えた人間同士の思いやりをすごく感じて……日本に帰って、そのことを思い出しながら作った曲です」とCaravanさん。
この曲ができて10年以上が過ぎ、「今も世界では情勢が不安定で“みんなそれぞれの正義って何だろう”ということをいまだに考えますね」とあらためて思いを語ると、ホランは「困難なことって、そのときどきで規模が大きかったり、狭かったり、ものによって違うとは思うんですけど、直面している壁と向き合うときに聴くと、すごく響く曲だなって思いました」と感じ入っていました。