2021/07/15

Drive Discovery PRESS Vol.15 編集後記

DDP編集部

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影絵師で音楽家の川村亘平斎さんを特別特派員にお迎えした今回の特集。オンエアでの「大人になると光ばっかり見ちゃって、影を見ない」という編集長の言葉にハッとさせられた編集Nです。人生経験をすればするほど心に刺さるという「影」の存在ですが、影を意識すること、皆さんも忘れていませんか?

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これまでの「影絵」のイメージを一変させてくださった川村亘平斎さんですが、編集部にお持ちいただいた人形も個性豊かなものばかり。カエルや猿、お爺さん、そしてうちわ型の葉など、革で作られたものから紙製のものなど、様々でした。その中でも編集部が注目したのは、うちわ型の大きな葉っぱの形の人形。世界樹(カヨン)と呼ばれるこの葉っぱの人形はライトを当てると花になったり、太陽になったり、表現の仕方で色々な世界感を表すことができるもの。インドネシアでは、世界中の植物のイメージをこめたものとされ、色がついているものは、ライトを当てる側から見ると極彩色になり、海の中のサンゴ礁の色を表し、地上だけでなく、海の中も表現することができるのだとか。ナレーターの役割をしたり、背景となったり、舞台装置としても使えるという万能な人形なんだそうです。

「カヨンを踊らせると世界が立ち上がっていく」・・・現地ではそんな風にいわれているそうで、この葉っぱの人形にライトを近づけたり引いたりすることで表現の幅が無限に広がるというもの。マスタークラスの影絵師の手にかかると、まるで生きているように動くそうですが、そんなカヨンの動き、一度見てみたくなりますよね。

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日本でも様々な場所に赴き、その場所の話にあわせて人形を作るという川村さん。年間400〜500体もの人形を作られているそうで、まるで役者を集めるように、中にはスタメンになる人形が出てくるのだとか。バリの革細工のものは100年以上使われるものがあるそうですが、川村さんは、まずは紙で作り、使われる頻度が高いものは、プラスチックや革製にバージョンアップさせるんだそうです。

日本全国で物語を作り、影絵を上演する川村さん。物語が生まれた土地とそこに住む人たちのために物語を紡ぐという姿勢に「なんだか泣いちゃいました」という感想を言ってくださる観客の方も多いようで、その言葉が一番嬉しいのだとか。川村さんご自身も影の力や影を見ると不思議な神秘的な気持ちになる感覚を大切にされているそうです。

本当に奥が深い「影絵」の世界。来週もさらにディープな世界に皆さんをお連れしますよ!

影を見るということに圧倒される瞬間、単なるエンターテイメントだけでなく、影で表現することで皆の中で薄れている物語が新たな息を吹き込まれているようです。

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