影響を受けた音楽
亀田誠治(音楽プロデューサー、ベーシスト)×Shingo Suzuki(ミュージシャン)
2023
05.26
それぞれの指が音を奏でる
- 亀田
- どの音楽も最新のチャートも好きですけど、自分は70年代に様々なバンドサウンド、全部が混じったアメリカのチャートが大好きだったので、そこが全て自分の血となり、肉となっています。よく「あの人のあの曲みたくしてよ」と言われたり、CDを持ってくる人がいるんですけど、僕、全部入っているからわかるんですよ。細かな音の並びは違っているかもしれないけど、フィーリングは全部わかるんです。
- Shingo
- 誰かと作る時は、自分の中の引き出しが大切ですよね。
- 亀田
- あともう1個言うと、逆に知らないアーティストが出てきた時に個人的に大事にしているのは知ったかぶりをしないで「ごめん、わかんない」と言って、すぐサブスクで調べて一緒に聞いていますね。
- Shingo
- 知らないことを恥ずかしいではなくて、興味もあるし、知りたいし、素直になるのは、大切ですよね。
- 亀田
- しかも、持ち帰らないでその場というのは、すごく重要ですね。Shingoさん、ベースは、いつ頃お始めになったんですか?
- Shingo
- 僕は大学に入ってからです。
- 亀田
- 来た!天才肌!始めてすぐ上手くなる人が、僕の周りにいっぱいいるんですよ。
- Shingo
- 僕はそんなことないですよ。それまでギター少年だったので。
- 亀田
- ギターは、がっつりやっていたんですね!
- Shingo
- ぼちぼちやっていました。ギターやピアノは習ったことはないんですけど、家にあったので、あと大学で初めてジャズが大人っぽいと思って、ジャズ研究会で、先輩たちが、意気揚々とベースを弾いているのが、かっこよくて、エレクトリックとダブルベースを二つ買って、両刀使いでやり始めたんですよね。
- 亀田
- それは珍しい。
- Shingo
- 偶然ですけど、亀田さんが所有されている白いフェンダーを持っていて。
- 亀田
- Shingoさん、よくライブ、ツアー先でベースの写真あげますよね。これが僕の晩酌のつまみにいいんですよ。
- Shingo
- 亀田さんもいろいろと使われていて、王道なスタイルもされていますよね。
- 亀田
- そうですね。オーソドックスなスタイル、でもプレーは自己流みたいな。
- Shingo
- 僕もすごい共感するところがあって、持っているのは一番オーソドックスみたいな。
- 亀田
- 皆さん僕のベースやアンプの設定を見るとあまりにも普通で、亀田誠治、絶対いろんなことやっているに違いないと思って取材するけど、何もしてなくて、これでは記事になりません、みたいな感じにいつもなってしまう。
- Shingo
- 指から出るってことですよね、フィーリング。さらに、共通しているのが、めちゃくちゃ専門的で申し訳ないですが、録音する機材まで同じだから、亀田さんと同じになるのではないかなと思っているんですけど、ならないんですよ。
- 亀田
- Shingoさんのスタイルは素敵ですよ。
- Shingo
- どうやったら、この音が鳴っているんだろうと、機材が同じなのに不思議。結論はやっぱりその人の指というところにいきついて、そこで自分のスタイルを自分のフィジカル、指で鍛えていくことを亀田さんから学びましたね。
映画のワンシーンのような思い出
- 亀田
- Shingoさんは、海外に行かれているんですか?海外育ち?
- Shingo
- 純国産です。バンドでは、アジアとか行くんですけど、プライベートで、本格的に音楽をやる前に会社員をやっていたのですが、会社を辞めてからパリにちょっと住み始めて。
- 亀田
- パリでも音楽活動はされていたんですか?
- Shingo
- ベース1本とパソコンだけを持って、バンド活動というか、音楽をやり始めて、仲間を見つけてフランス版の「Ovall」を作っていたんですよ。
- 亀田
- ちょっと待てよ!「Ovall」が日本で始まる前?
- Shingo
- 今のメンバーになってもう10何年ですけど、アマチュア時代から別メンバーで自分のバンドプロジェクトであって、海外に行ったからフランス版の「Ovall」をやろうと思って、そこでメンバーを集めて、帰国日の前日にライブハウスを貸し切って、自分のさよならパーティーと「Ovall」のパーティーをバーンとやって、日本に帰ってきました。その後、このコンセプトはかっこいいと思うから、最高なメンバーはいないかなと思って出会ったのが今のメンバーです。フランスでは、音楽をやって、ピクニックに行って遊びほうけていたんですけど。
- 亀田
- どのくらいの期間ですか?
- Shingo
- ちょうど1年ですね。
- 亀田
- いくつぐらいのとき?
- Shingo
- 29歳、30歳ですね。30歳の誕生日をパリで友だちと過ごしました。
- 亀田
- 何か1冊の本になりそう。
- Shingo
- ドラマのようなシーンがすごくたくさんあって、自分の青春時代、ピークを選ぶとしたらそこかもしれない。本当に自由だったし、出会いと別れもあったし。パリに旅立つ時に別れたある人とのすごい思い出の曲があったんですよ。成田空港に向かう時にその曲をイヤホンで聞いていて、シャルル・ド・ゴール空港に朝一番で着いて、誰もいないんですよ。パリに行く始発のバスは、自分1人で、バスの運転手が、フランスのラジオをかけていて、バスが走り始めたらラジオからその曲が流れてきて、
- 亀田
- すごい!何かパラレルワールドというか、超シンクロニティ!
- Shingo
- その曲はアリシア・キーズの「If I Ain't Got You」で、12月8日の明け方の朝、太陽が昇るか昇らないかのフランスの冷たい空気の中、僕と運転手が2人きりで、その曲がAMのラジオから流れてきて、そこで救われた気もしたし、ここから始まるぞという気もしたし、その瞬間、僕はこれから新しい自分が始まるみたいな、それが外国の1ページ目だったので、それまで外国に行ったことなかったので、自分は外国向きかなんて思ったり。
- 亀田
- 映画のシーンみたい。
- Shingo
- そうなんです。初めは一人きりだったんだけど、最終日は、クラブに溢れるくらい友だちがいて、いろんな国の出身の人がいるから、自分のバンドメンバーもクウェート、ブルキナファソ、モロッコ、パリの人も、イギリス・ロンドンから来たおしゃれなやつやラッパーがいて、もう7、8人の大所帯のバンドで、ドンチャン騒ぎをして、それが僕のパリ生活の最終日。スーツケースと楽器を持って、そのままシャルル・ド・ゴールに向かいました。
*亀田さんが実行委員長を務める「日比谷音楽祭」が6月3日、4日に東京・日比谷公園と周辺エリアで開催されます。
世代やジャンルを超えた音楽が無料で楽しめます。
出演者は、桜井和寿さん、石川さゆり、木村カエラ、KREVAなど数多くのアーティスト、そして、Shigo Suzukiさん率いる「Ovall」も登場します。