ファッションの醍醐味
浅野忠信(俳優、ミュージシャン)×伊賀大介(スタイリスト)
2023
04.28
たどり着いた先は、着物
- 浅野
- 洋服は作っている?
- 伊賀
- たまにTシャツを作るぐらいで、あとは子供の服にワッペンをつけたり、リメイクします。浅野さんもそうですよね?
- 浅野
- ちょっと何かをしたい。
- 伊賀
- 同じもの着ているやつがいると嫌みたいな。ライダースに缶バッジ1個を付けるだけで自分の物になるじゃないですか。
- 浅野
- そういう意味では制服は面白いなと思った。みんな同じのを着ているはずなのに個性が出る。いい加減さとか真面目さも出るし。
- 伊賀
- 洋服は楽しいですよね。着物を反物から作ることにも興味があって。
- 浅野
- 着物も面白そうだね。
- 伊賀
- メンズは、サイズがとにかく重要。若い時は全然わかっていなかったんですけど、とりあえず着られれば何でもいいみたいな、その組み合わせが面白ければいいなと思ったんですけど、今はサイズがきちんと合っているのかがまず1個あって、そっからどう崩していくのかみたいな。
- 浅野
- 着物は面白いね。
- 伊賀
- 染め方とか織り方とか無限というか、着道楽は本当に破産するでしょうね。浴衣も着ます。反物を選んで、腕の長さと背から下の寸法を測るだけで終わりなんです。スーツみたいなネックとかバストかウエストがないんですよ。作るのが結構楽しくて、着物もそうですけど、1回作ると、次はサイズを測らなくていい。そうしたら、「この生地がいいんですよ、どうですか」と言われると、「それ作ってもらいましょう」と言って、3ヶ月すると「この黒がいいんですよ」、「お願いします」とループに入っていくわけですよ。スーツも割と近いですね。
- 浅野
- そうだよね。今ちょっと頑張って痩せたからいいんだけど、一時期すごい太って、作ったスーツが着られなくなった。だから維持するために着る。
- 伊賀
- 浅野さんはスーツがめちゃくちゃ似合いますね。着ないと似合ってこないですよね。
- 浅野
- やっぱり洋服と一緒でね、自分の着こなしが見えてこないとね。
- 伊賀
- 特にメンズのスーツは年輪というか。
- 浅野
- そうだね。シンプルだから。
- 伊賀
- 22歳で完成しないもの、せめて30歳とか、着た回数ですね。
どこでもオープンマインド
- 浅野
- 前にモンゴルに撮影に行ったことがあるんだけど、その時に共演したモンゴル人たちがジーパン、ブーツにモンゴルの着物みたいのを羽織っていた。防寒のために。あれが欲しくてね。
- 伊賀
- かっこいいですね。
- 浅野
- 自分のために作ったやつだから年季が入っていてカッコよかった。しかも温かそうで。
- 伊賀
- それ1個あれば事足りる。
- 浅野
- そう、それで馬に乗って。
- 伊賀
- モンゴルに行ったのは結構前ですか?
- 浅野
- 30歳ぐらい。最初の年に2ヶ月半ぐらいで次の年も2ヶ月半ぐらい。なかなかエクストリームな体験をさせてもらったね。いわゆるモンゴル共和国でなくて、内モンゴル自治区という中国におさめられているところ。素朴でリアルなモンゴルの方がいて、馬の乗り方も教えてもらって、羊の肉を毎日食べさせてもらって、それがフレッシュでめちゃくちゃうまかった。
- 伊賀
- 泊まりはパオでした?
- 浅野
- 一応ホテルがあって、そこのホテルに泊まるんだけど、暇な休みの日とか街でつったっていると向こうから2人乗りのバイクの兄ちゃんが来るの。ロン毛で髭ボーボーでさ、その辺にいないファッションをしているやつが立っているから、「お前誰だ」みたいな。俺もモンゴル語わかんないけど、映画で来ていてとジェスチャーで説明して、そうすると「バイクに乗らないか?」って。どこに連れていかれるんだろうと思ったら、本当に何にもない草原に行くわけよ。そこにモンゴルのゲルが立っていて、中に入ったら、「アイラグ」と言う馬乳の発酵した物を飲ませてくれた。一応レストランだったの。それをご馳走してくれて、またホテルまでちゃんと送ってくれて、ただのいい人たち。
- 伊賀
- 間の会話とかどうしたんですか?
- 浅野
- 全部ノリ。さっぱりわからない。片言のモンゴル語で(笑)。
- 伊賀
- その体験がすごいですよね。
- 浅野
- 本当に夢みたい。
- 伊賀
- 浅野さんはオープンというか、面白い方に転がって、やってみようみたいな感じありますよね。