お互いの距離を縮めたのは、「食」
青木崇高(俳優)×白央篤司(フードライター)
2023
02.17
青木さんは、これまでにNHK連続テレビ小説『ちりとてちん』、NHK大河ドラマ『龍馬伝』、『西郷どん』、『鎌倉殿の13人』、また、映画『るろうに剣心』シリーズに出演するなど、映画やドラマを中心に活躍。さらに、イラストや映像制作など活躍の幅を拡げています。一方、白央さんは、郷土の食や栄養、暮らしと食をテーマに執筆され、『自炊力』や『にっぽんのおにぎり』といった本を出版されています。
バイト先の先輩後輩
- 青木
- こんにちは。
- 白央
- こんにちは。
- 青木
- ご無沙汰しています。最後にお会いしたのはいつでしたっけ?
- 白央
- 結婚の時に夫婦箸みたいなお祝いを贈ったんですよ。それ以来、全然会っていないかも、そんなことないか?
- 青木
- そんなことないです!
- 白央
- 渋谷でご飯を食べた。赤羽で飲んだくれた。
- 青木
- 本当にお久しぶりですよね。実は、10代の頃、専門学校時代に中目黒の小さいビデオ屋さんでバイトをしていたんですけど、白央さんはそこの先輩ですね。
- 白央
- 世の中、レンタルビデオ屋さんもほとんどなくなってしまってね。
- 青木
- VHSでした。それ以来なので、28年くらい前(笑)。もうじき30年ですか、こういった形で再会できるのはすごく嬉しくて。
- 白央
- ありがとうございます。将来有名になったら、「青木崇高事務所」で雇ってくださいよなんて言っていたんだよね。
- 青木
- 言ってましたっけ?
- 白央
- 「任しとけ!」と言っていた。
- 青木
- では、収録の後、書類を用意させていただきますので…。ちょっとやめてくださいよ、先輩でしょ!
- 白央
- こんなスタジオに呼ばれて、田舎から呼ばれてきたお母さんみたいな気持ちだよ。何も喋れない。
- 青木
- 当時は、頻繁にご飯にも連れて行ってくださいました。厳しい愛を持って、いろいろと食の礼儀を叩き込まれました。
- 白央
- ハラスメントっぽい話はやめて!現代だとあんまよくないからね。あの頃、私は、優しかった。今だったら多分、黙っているよ。こういう食べ方をするんだな、終わりと。
- 青木
- すごく覚えているのが、もちろん20歳を超えてからですけど、お酒を手で受ける時に、両手で受けるんですけど、指が開いていたんですね。そしたら、「いやいや、別にいいけど、一応言っておくのね。あなたが将来いろんな年上の方からお酌を受ける時に指が開いているとあんまり相手はいいとは思わないよ」と言われて、僕もそれになんかしらないですけど、カチンときちゃったというか、「受ける気持ちはあるから、大丈夫でしょう」みたいなことを言って。
- 白央
- その通りだと思います。
- 青木
- いやいや(笑)。
- 白央
- よくそんなこと言ったね、嫌な先輩だよ。
- 青木
- 違います。「そういうことが世の中で今後あるから、別にここはいいんだけど、頭の中に入れておいてね」と言われたことは今の自分においては大事です。
- 白央
- 俳優さんをやりだした頃に、とあるドラマが決まって、有名なベテラン俳優さんと絡むシーンがあって、その方にすごくお世話になったと崇が言った時に、「面倒くさくても本当に字が汚くてもいいからハガキ1枚でいいので、お礼状なり、お礼の葉書を出しなさい」と言ったのは覚えている?
- 青木
- 覚えています。杉浦直樹さん。
- 白央
- 亡くなられちゃったけどね、いい作品だった。「本当にお礼状を書いた」と言っていたよね。「今時、俳優さんがお礼状なんて珍しい。ありがとうと杉浦さんに言われたのでありがとうございました」と言っていたよ。
- 青木
- 僕は大阪から高校を卒業してぱっと出てきて、社会が全く知らない状況の中で、バイトの先輩が、いろいろと教えてくださったのは本当に感謝です。
- 白央
- 教えてくださったというよりも、知っていることがあれば全部教えろ!みたいな態度だったじゃない君が!
- 青木
- でしたね(笑)。
- 白央
- 「家に酒とつまみはないんですか?今から行きます!」みたいな感じだった。チューハイと乾き物で、ずっと喋っていたりしましたね。
さまざまな食体験を積んでいく
- 白央
- 若い頃からグルメだったよね?
- 青木
- グルメかどうかはわからないけど、食べることは好きだった。
- 白央
- いろんなものを食べたがっていたもんね。いろんなお店に一緒に行ったし、何か新しいものとか知らないものを食べるのを喜ぶから、連れて行くのも楽しかった記憶があります。
- 青木
- ありがとうございます。覚えているのが、自分の母親のことを褒めてくれたこと。
- 白央
- お母さんが作ってくれたお弁当を持って帰ってきた時になんて美味しいんだろうと思ったし、盛り付けも綺麗だし、仕上がりも美しいし、こんなお母さんに育てられたらそりゃ食べることが好きになるだろうなと思った。
- 青木
- そういう角度で自分の母親を分析してくださったのは白央さんが初めてです。
- 白央
- お母さんのお弁当を食べたことある人も他にあんまりいないだろう。
- 青木
- そうですね。実家に帰って戻ってくる時に、手弁当を用意してもらったんです。
- 白央
- 八尾のね。
- 青木
- 白央さんは、お酒も好きじゃないですか?
- 白央
- 大好き。絶対に俺と会う日、「今日は、そんな飲めないですよ」というもんね。そんなアルハラしていました?必ず、釘を刺すんですよ。「飲み行くのはいいんですけど、俺明日は仕事なんで」と言うよね。でもよく言われる。こんなに飲んだのは、初めてとか、あなたと飲んで人生で一番ひどい二日酔いなりましたとか。フードライターをやっていると、それなりに美味しいお店を僕が選ぶでしょ、それでこのお酒が入っている!なかなか飲めないんですよ、なんて言うと、みんな頼むよね。日頃、飲まない日本酒でも今日はトライしてみようとか、せっかくだったら他のもトライしようとか。
- 青木
- 結局、二日酔いになろうがその瞬間はすごく楽しいので全然構わないです。はしごをするのも白央さんに教えてもらった。お金もなかったら1ヶ所で飲んで終わるけど、ちょっとある程度食べて、その後もう1軒行きたいところがあってとか、その節は本当にいろいろとご馳走様でした。パクチーとかタイ料理とか、舌の味覚を開眼させていただいた。”酸っぱ辛い”とか”甘酸っぱい”とかそういう味覚を2つ掛け合わせるようなエリアも広げてくださった!