「逃げ恥」ファッション、その誕生秘話
亘つぐみ(スタイリスト)×ariko(ライター、エディター)
2022
09.16
ファッションも役柄を作り上げる大事な要素
- ariko
- 毎週楽しみで見ていたドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』のスタイリング、一体誰がやっているんだろうと思って、最後にクレジットが出るんだけど、“つぐみさんじゃん!” それで、ますます楽しく観ていて、ガッキーが着ていたスタイリングがいつも可愛くて。
- 亘
- 嬉しいです。
- ariko
- だからヒットにも繋がっていて、ファッションもすごく大きかったんじゃないかなと思って。例えば、あの一斉風靡したエプロンもつぐみさんが、実はこれがいいって、わざわざエプロン会社に作ってもらったと後で聞いて、すごいと思った。
- 亘
- たまたまあの文字のエプロンがあるのは知っていたんですけど、あの役に適している内容のワードでやれたらいいなと思ったから、そうしたら作ってくれて。
- ariko
- 何て書いてあったんだっけ。
- 亘
- 初めは、お手伝いさんとして中に入っていく形で相手役の人はあまり受け入れたくなく、そういう形での結婚みたいな感じだったから、“仕事ができるのよ” という意味で「YES GOOD JOB」。だんだん信頼されてくるうちに、「TRUST ME」や「I'M BEST PARTNER」。プロデューサーの方も賛成してくださって、「そういうのはキャッチーでアイコンになるからすごくいい」と言ってくれて、そのプロデューサーは男性ですけど、ファッションにもとても興味のある方で、ドラマをやっていく上で、ファッションは大事だと思ってらっしゃる方だったので、意見があったし、やっていて楽しかったし、自由にやらせてくれた。最後の「逃げ恥」ダンスのタイトルバックを撮影する際には動くから、印象が残る服にしてほしいと衣装のこともそのプロデューサーに言われて、色も含めてだけど、紐でぶら下がってリボンになっていて、それが揺れ動くとそこに意識が残るからそういうのは大事と思ったので、何か集中させて意識させる。だからあの時の衣装も印象に残らせるように心がけていました。
- ariko
- そう、あとフォルムがシンプルだけどすごくかわいいピンクだったり、ピンクだけど、ブリブリしているのではなくてスポーティーだったり、やっぱり塩梅がすごくいい。
- 亘
- そうですね。ブリブリしている女の子ではなかったし、彼女自体がとてもかわいいので、その辺は意識した。
- ariko
- あのエプロンはみんな欲しかったのでは?
- 亘
- 多分エプロンは売れたと思います。皆さん欲しかったと思うし、彼女がぶら下げて歩いていた巾着もかわいかったから、すごく人気が出たと後から聞きました。
- ariko
- 「YES GOOD JOB」のエプロンを持っています。
- 亘
- 私も持っています!
どんな人にも似合う服はある!
昨年、亘さんは、ボディウェア・ブランド「TW」をローンチ。大胆なカッティングを施したタンクトップやボディスーツ、ランジェリーなど、女性を解放し、個性を活かせるシンプルなデザインで人気を集めています、
- ariko
- モデルさんは完璧なスタイルのプロポーションの持ち主の人が多いと思うから、意外とどんなお洋服でも着こなせる。つぐみさんは女優さんや文化人のスタイリングもされたりするので、そうすると、服が合うか合わないか、サイズが合うか合わないかという大前提で、ぱっと見ただけでのジャッジがすごく正確。だから、私なんかスタイル良くないからとコンプレックスを持っている女優さんも結構いらっしゃったりすると思うのだけど、それを感じさせないようにすごく似合うサイズ感と、しかもその人の個性を引き立ててさらに素敵に見せるスタイリングがつぐみさんの信条かなと思って。
- 亘
- 嬉しいです。洋服はやっぱり裸ではいられないから着なきゃいけない、でもどうせ着るんだったら、私なんてスタイルが良くないからと地味にしたり、身体を隠すようなものを着るのではなくて、人に褒められたり、人から見られたり、そういうので意識が上がっていくし、ドキッとするし、アドレナリンというかホルモンが出ていくことだと思っているので、その部分を出したい。だからどうやったらバランス良く着られるかが一番大事だなと思っているから、どんな女性であろうと、色や形で、その人なりに似合うスタイルは絶対にある。全員がモデルのようなスタイルをしているわけではないから、着るものに対して遠慮があったり、興味を示さないようになっている人たちもたくさんいると思うんですよ。だけど「着たい!」と思う気持ちは絶対にみんな多かれ少なかれ持っているはずだから自分に合う見つけ方をしていくことが一番いいんじゃないかな。私がこれを着たらもっとスタイルがよく見えるだろうとか、顔色がよく映るだろうとか、そういうものの見方のファッションの方が、服選びが楽しくなるし着るのも楽しくなると思っているんです。
- ariko
- あと、世の中の風潮はちょっと前までとにかく痩せている方がおしゃれで、もう痩せてないと悪みたいなところがあったんだけど、つぐみさんの作るお洋服は結構体のラインが綺麗にぴったりしているものだったりするものも多いと思うんだけど、広告ビジュアルのモデルさんがガリガリじゃないんだよね。一般的な人を使って、チャーミングに表現しているのがすごい。こういう方が健康的だし、いいんだよという提案も。
- 亘
- だって本当に人はいろいろだし、肉感的な人ほど私はピタッとした服を着たりすることがいいと思うんですね。チャーミングだし健康的にも見えて、私は逆に女性らしくて自然だなと思っているんです。だから女性を解放したくて、そういった服を作ったんです。今日も自分が作ったブラトップを着ているんですが、これは運動する時でもいいですし、インナーとしても着られるし、ブラジャー代わりとしても使えるし、だからボディーウェアと私は呼んでいるんですけど、透け感のある服の下にブラジャーが透けるよりかは、洋服なのか、下着なのかなと思わせるようなものを着るのも、見せ方の一つのコツ。その着方も着る人の自由。去年作ったものですけど、これがまたすごく今売れているんです。ヨガウェアみたいな感じでもいいなと思って作ったんですが、ヨガだけではつまらないから、インナーとしても着られるし、自由に着てもらえたらなと思って。他のスポーツメーカーが作っているブラトップの1枚と変わらないだろうと思われてしまっていたんですね。でも、すごくこだわりを持って作っていて、背中の見え方のカットの深さや、肩紐を細くするとか、そうすることによってちょっと健康的だけど、華奢に見えるんですね。
- ariko
- だからスポーツウェアという要素だけではなくて、やっぱりおしゃれな時に使える。
- 亘
- そこにみんな気がついたので私も嬉しいです。