本物を知るふたり

亘つぐみ(スタイリスト)×ariko(ライター、エディター)

2022

09.02

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亘さんは、フェミニンな中にもモードとエッジを感じさせるスタイリングに定評があり、数々の雑誌や広告で活躍。テレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』では、新垣結衣さん演じる“森山みくり”のスタイリングを担当したことでも話題となりました。一方、arikoさんは『CLASSY』や『VERY』 などのファッション雑誌のページ作りに携わると同時にインスタグラムに投稿するセンス溢れる料理の写真と食いしん坊の記録が話題を呼び、レシピ本も出版されています。

一緒に仕事をしたくなる理由



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arikoさん、こんにちは。

ariko
つぐみさん、こんにちは。

今日は、よろしくお願いします。

ariko
こちらこそ。出会いは、私が雑誌の「VERY」で、井川遥さんの担当をさせてもらっている時に連載のスタイリストをつぐみさんにお願いしたのが初めてですよね。

そうです。そこからですね。

ariko
今、私は、料理をする人というイメージがあって、Instagramで見ていただいていることが多いと思うんですけど、本業は雑誌を作っているんです。どういうページにしようかと企画を立てて、どのモデルの方に出ていただいて、どんな写真を撮って、どんな内容の文章をつけてと誌面を作っていくのが私の仕事です。

エディターというよりもディレクターみたいな感じ?

ariko
でも文章も書くから全部ですね。

全部のイメージを作り上げていくんですね。

ariko
つぐみさんとは、雑誌のカバーもご一緒させていただきましたよね。

井川さんを紹介していただいて、ご一緒させていただいたのは、もう何年前でしたっけ? 10年近く経ちますかね。早いですね。

ariko
いろんなところへ行ったりね。井川さんがすごくファッションセンスがいい方なので、つぐみさんにスタイリングをやってもらいたくて、声をかけさせていただいたのが、始まりですよね。

嬉しいです。でも最初、会った時、私すごく緊張して。なぜかというと、まず「VERY」の連載は私の今まで仕事をしてきた中での経歴になかったので、私は、どちらかというと、やんちゃなイメージがあるかなと勝手に思っていたので、人気の売れている女性誌をやれるなんて。そして、それを取り仕切っているディレクターが、arikoさんとなると、私はどきどきで、どうやって接したらいいんだろう、話が合うかなとか、粗相がないかなとか…。でも結果的にはarikoさんも気さくな方で安心させてくれたんですよ。

ariko
私から見たらやっぱり、”亘つぐみさん”という大スタイリストさんが雑誌の仕事を請けてくれるのかがそもそも心配で、つぐみさんのスタイリングは、すごいラグジュアリーだけど、センスが良くて、あと肩の力も抜けていて、本物を知っていらっしゃる。その人に合ったものだけを持ってくるのではなく、そこにまた新しい発見があるような提案をくださるのが素晴らしいと思って。

嬉しいです。駄目と言われても挑戦したくなるんです。

ariko
馬力がすごくて、例えば、今日は3体しか撮りませんとなったとしても、この展開もあるかもしれないと、もうすごくたくさん持ってきてくださったり。あと、貸してくれないようなすごくいいブランドから、つぐみさんが、熱意を持って交渉して借りてきてくださったりとか、「どうせこれ使わないでしょう」なんていうことをつぐみさんからは聞いたことがなくて、すごくキャリアを長く積んでいらっしゃるのに、謙虚というか、いつも初心のままみたいなお仕事ぶりで、だからベテランスタイリストさんなのにすごいなと思う。一度、ご一緒した人はみんなつぐみさんと仕事したくなるんじゃないかなと思うんです。

本当ですか!


ファッション雑誌、その制作の舞台裏



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ariko
スタイリングをするだけではなくて、撮影の時も楽しくて、つぐみさんは、その場の雰囲気を盛り立てて、笑いが絶えないエピソードばかり。ロケの時は、遠いところにも行ったりしましたよね。

私、忘れもしないのは、鍛冶町のガード下で撮影したこと。あとは、千葉県のいすみ市。川や水が流れている別荘で撮った夕焼けのシーンと白シャツが思い出深いですね。

ariko
もう撮れなくなるような時間とか、日が落ちそうな時に意外とドラマチックな写真が撮れたりする。こっちはドキドキして、撮り終えるのかなという心配のもと、奇跡の1枚が撮れたり、思い出に残るのは、そういう写真ですよね。ロケ場所を探すのが私の仕事と思っていて、ありがちな場所で撮るのではなくて、ここでは撮らないよねというところを常に探していて、服とか全てがマッチした時に今日はうまくいったなと。だからそれに結構、力を注いでいるかもしれないですね。

大事ですよね。

ariko
よく定番のみんなが行きがちなところがあると思うんですけど、そこで撮ると印象が似てしまうので、例えば、パーティーのドレスを撮るとなったら、普通は、パーティー会場を撮影場所として、頼むけど、私はもしかしたらパーティーの行ったり、帰ったりする道すがらの方がドラマチックではないかと思ったりするので、パーティーのドレスの格好のまま道を遅れそうと急いで走ってるとか、視点をずらして、服が元々一番似合う場所、でも、不自然でないところを探すのが醍醐味と思ってるんですよね。

そういう方が映画の中のストーリーみたいな切り取りになるし、ロケ地で言うと、arikoさんが選ぶところは遠かったり、車が入っていけないような細い山道を登ったり、葉山のすごい奥地に行った時は、見晴らしがすごく良くて、思わずそこで寝っ転がりたくなってしまったり、こんなところが別荘で住めたらいいなとか、ついつい浸ってしまうお家だったりします。arikoさんは、建築マニアだから、そういうところに行けることがまず嬉しいし、勉強になる。

ariko
これはどこで撮ったのかなと見てわからないようなところを探すのが好き。「これはあそこでしょ」と言われたら負けないみたいな。「これどこなの?」と聞かれたりするのは、嬉しいです。

あと、ご飯。arikoさんが提案する帰りの食事やケータリングが美味しくて、それも楽しいんです。

ariko
別に私が作るわけでもないんだけど、やっぱり人は美味しいものを食べると頑張ろうと思ってくれるから、arikoと一緒だったら、美味しいものが食べられると思ってもらうと、急にみんなのモチベーションも上がったりする。それだけセッティングしとけば、自動的にいい写真が撮れちゃうみたいな。

そうなんです。結局、同じ時間、同じメンバーで時間を共有して、一つの場所に拘束されるわけだから、それが結果的に写真に全部現れたりする。その楽しい瞬間はとても大事だと思っているんですけど、私がついついウキウキして仕事そっちのけで、まずご飯を食べてしまう。アイロン先だろうと思うんだけどアイロンよりまず食べる!


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