ナルシストキャラは素?!

水野良樹(いきものがかり)×狩野英孝(お笑い芸人)

2022

08.19

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ナルシストは天職!



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水野
イケメンネタにするのも自分を客観視する視点がないとキャラクター付けにいかないと思うんですけど、どうやっているのですか?

狩野
僕の中では、イケメンのキャラクターしかり、50TAみたいなイキッた感じのミュージシャンにも自分の中でモデルがあって、「ちびまる子ちゃん」に出てくる花輪くんです。さくらももこさんの大ファンで、「ちびまる子ちゃん」が大好きで、読んでいく中で、花輪くんは、初期の方から出ていて、クラスメイトの中でも目立つ存在で、ナルシストだけど、かわいがられている。

水野
ネガティブな印象はないですよね。

狩野
まる子ちゃんたちにいじられても、キザで返す。ここまでイキれば、嫌われないかもと思って、花輪くんの、「ベイビー」とか「子猫ちゃんたち」をセリフの中に入れていくところから始まった。

水野
伺ってみたかったんですけど、狩野さんは世間に認知されたキャラクターで苦しくなかったりしません?

狩野
特にピン芸人はキャラクター付けてやっていくんですが、僕、超ラッキーだったのは、いざ作ってみたら、しっくりきたんですよ。根っからナルシスだったことに気づいたんですよ。学生の頃からナルシストで、意味もなくサングラスをかけて学校に行ったりしていたので、キャラが崩壊することがなかったんですよね。ナルシストにキザにやっているやつをぶっ壊してやろうみたいな感じで、ドッキリとか、ジタバタしているのを世間が面白いとおっしゃってくださって、いろんな番組に呼んでいただけるようになったから、キャラをキープするのは意識したことないですよね。

水野
元々がそうだからちゃんと芯を食っていたんですね。

狩野
だいぶもう落ち着きましたけど、若い頃は、本当にスパンコールの服とか胸元ざっくり開いたシャツとか普通に着ていましたからね。私服も徹底しているんだと言われたりするんですけど、好きで着ているだけです。

水野
天職を見つけたんですよ。

狩野
だから一切、キャラクターで疲れたことはなかったですね。

水野
僕は「いきものがかり」で知ってもらったので、吉岡のイメージが強かったり、開けているグループというに風に知ってもらったんで、ちょっと自分と違うなと思っていました。

狩野
吉岡さんにもっとこうして欲しいとか、アドバイスやお願いとしたりするんですか?

水野
これがないんですよ。

狩野
もう自由に歌ってという感じすか。

水野
そう。だからむしろ、曲の解説もしないことが多いですね。例えばバラードは、こういう気持ちで書いて、こういうとこがミソで、ここを大事に歌って欲しいみたいなことを一切言わずに渡す。

狩野
でも聞かれません? タモリさんとかに、「この曲はどういう時に作ったの?」とか。

水野
そこで答えて、初めて吉岡が知るんです。吉岡の解釈で歌ってくれた方が曲が広くなるんですよ。僕だけの解釈を植え付けて、それを教科書として歌ってもらうより自分で解釈して、自分のこととして思った方がやっぱ曲が強くなるというか。

狩野
確かに、聴いている方はこの曲を聴いて、歌詞を見て、自分の感情に共感して元気もらえたとか、楽しい気持ちになれたとかうまく解釈する。


芸人は、何にでも笑いに変える



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水野さんは、この度、“清志まれ”名義で小説家デビューを果たし、『幸せのままで、死んでくれ』という作品を発表しました。こちらは、国民的キャスターとして成功を収めた主人公と売れないミュージシャン崩れの親友との人生が交錯するストーリー。世間からの「イメージ」に囚われる主人公の葛藤が描かれるとともに、一人の人間が持つ複数の顔や多面性にも焦点があてられます。

水野
お笑いの方がお芝居をやられたり、歌を歌われたり、脚本を書かれたり、別の分野にどんどん踏み出していかれるじゃないですか。笑いのキャラクターを引きずるだけでもなく、ちゃんとシビアなものも書かれたりする。

狩野
芸人さんと呼ばれている方々が一番フットワーク軽いと思いますよ。芸人がいいなと思うところですけど、やってみて、駄目で失敗したら、それがお笑いでネタになるというか、ヒットしたらすごいし、トークのネタに使えたり幅が広いんだと思います。僕、Vシネのオファーがあって、ずっと断っていたんですけど、でも、現場に行ったら、東北出身ですけど、セリフが全部、関西弁で、エセ関西弁で現場の空気を悪くして、監督に怒られたことがありましたというのをどこかで喋れたり。そういうネタ作りやお笑いの下心があるかもしれないですね。

水野
たくましいんだな。芸人さんが一番凄みがありますもんね。何でも笑いに変えてやるとか、強度があるというか。

狩野
そうですね。メンタルは強いと思いますけど、強がっているだけで、番組終わりに、昔は、よく飲み行ったりとか、反省会みたいなことやっていたら、途中で泣き出す人もいるし、なんであそこはできなかったみたいな感じで言ったり、僕も強靱なハートを持っていると言われるけど、当時、全然寝付けなくて、安眠効果のあるラベンダーのアロマをめちゃくちゃ買って、枕元にふりかけて、リラックスしていましたもん。


*水野さんが清志まれ名義で執筆された初の小説「幸せのままで、死んでくれ」は、文藝春秋より発売中です。

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