音に丁寧に耳を傾ける
UA(歌手)×若木信吾(写真家)
2022
07.29
若木さんは、10年ほど前から出身地である静岡県浜松で写真集を専門に取り扱うブックストア「BOOKS AND PRINTS」を経営されています。書籍の販売だけではなく、トークイベントや展示も精力的に開催されていますが、あえてリアルな場に店舗を開いた思いとは?
悪い作品も残す
- UA
- 出身の浜松には帰っていますか?
- 若木
- 月1ぐらい。コロナの間もわりと帰っていた。
- UA
- 本屋はコロナ禍の影響はあった?
- 若木
- あんまりないんだよね。元々、お客さんは多くないし。
- UA
- 写真で見たけどすごく素敵なビルだよね。
- 若木
- 浜松で最初に建てられた鉄筋の商業ビルで、それまでは全部木造だったけど、山一証券とか、当時のイケてる会社がいっぱい入っていて、オールドタウンみたいになってきたけど、ビルは壊されなくてずっと残っていたんですよ。そこで、街の若い人と小さなインディーズのお店を開いたり、面白いことをやりたいと思って。
- UA
- 地元の子たちも店舗を構えて、アーティストが増えたんだね。
- 若木
- いたんだけど、なかなか集まる場所がなくて、うちのお店も去年10周年だったし、ここからどうなるのかなという感じ。
- UA
- この前、京都の話をする機会があって、私が学生の時はお金がないからアート系の店でずっと作品集を見ていたことで吸収していたから、買えないからこそ、見る、心に留めるのは大事。
- 若木
- その時代は俺もあったけど大事だよね、そういう本屋をうちは目指しているんだけど。浜松の高校生1人だけでも、そこで本を見たことがきっかけになってほしい。
- UA
- 読み物の本もたくさんあるの?
- 若木
- 若干ある。
- UA
- チョイスしているの?
- 若木
- 自分で読んだのもそうだけど、新刊もたまに直接知っていれば、扱ったりする。最近、DVDをやろうと思って、日本では配信に取って代わられているので、DVDのレンタルが縮小している。配信だと紹介されているものが全てみたいに思える。だけど自分が見たい映画が全然扱われてなかったりする。悪い映画も残さないと。こういうことが、DVDにはまだ残っているから、そういうマイナーなところの視点を本屋は担っていこうかと。
- UA
- DVDプロジェクトが始まるわけですね。
アナログレコードのプレシャスさ
- UA
- 週末はお休みだったりするの?
- 若木
- そうですね。最近は子供に合わせて休んでいる。
- UA
- 最近気に入っている過ごし方はある?
- 若木
- ものすごくマイナーなものを見ているんだけど、アラン・ローマックスというフィールドレコーディングをした人、ブルースやゴスペルを現地に行って録音していた人がいるんですよ。その人がちょうど、今年が没後20年になる。何年か前にアラン・ローマックスチャンネルがYouTubeにできて、そこに全部でなくて、まだ800ぐらいしかないんだけど、それまで撮ってきた音声や映像が見られるの。普段は畑仕事をしている人たちが家に帰ってきて、ちょっと照れながら、庭でブルースとかギターを弾いて歌ったりするんだけど、入り込むとすごくうまかったりするのね。そういうのをすごくいい音でいい映像で撮っていて、結構見てハマった。
- UA
- 私も最近、エチオピアの修道女の方のピアノ作品を聴いていて、素晴らしい。Spotifyとかで検索してみるものだよ。
- 若木
- 世の中にまだまだ聴いたことない音がいっぱいある。
- UA
- アフリカに限っていたけど、ヒュー・トレイシーがフィールドレコーディングをしている全集を持っている。私は新作の『Are U Romantic?』もアナログを切ろうと思っていて、そんなにたくさんではないんだけど、やっぱりアナログが大好きだから。アナログを聴く行為はやっぱりなかなか忙しい平日にはできないけど、配信やサブスクでアルバムを通して聴けなくない? 垂れ流しているという意味ではできるけど、音楽に耳を傾ける状態はなかなか配信だとできない。レコードは、A面はここで終わり、裏に向けてとか、行為そのものがなんてプレシャスな時間だろうと思って。子供にもそういう行為を起こさせてみるのもいいのかなあ。
- 若木
- うちもプレーヤーだったけど、まだ子どもが小さかったから絶対に針を折られると思って事務所に移動したままだから、もうちょっとしたら戻そうかな。
- UA
- うちも虹郎くんにブーメランみたいにレコードが投げられていて、もう大変ですよ。レコードは届かないところにしまっちゃいますよね。でも私も、ドーナツ盤とかすごく持っていて、童謡のB面には必ずカラオケが入っているから、歌っていた記憶があって、それが「うたううあ」にも繋がったりした。