クリエイターは、ロマンティスト!
UA(歌手)×若木信吾(写真家)
2022
07.15
自分が主役になれる時間の大切さ
UAさんは先日、新作『Are U Romantic?』をリリース。”ロマンティックな気分”に浸れる1枚になっています。
- 若木
- 制作する時は、いろいろと考えたり、歌い込んだりするよね?
- UA
- どっぷりだよね。ただ家族がいるから24時間出来なかったわけだけど、いざ東京に来ると、1人の時間も多い。いろいろと作っている段階はやっぱり、オン・オフがすごく難しいよね。
- 若木
- どうやっているの?
- UA
- 自分の離れを持っていて、そこに行っちゃう。
- 若木
- 環境を無理やり変えて?
- UA
- そうだね。歩いて2分もかからないけれど、それでもやっぱり1人にならないと私はできないし、何か生活の中から歌が聴こえてきたとかはあんまりないから。
- 若木
- そうだよね。僕も事務所を持っているから同じような感じだと思うんだけど、お子さんがいるとね、全然違う。うちも子供がいるから。
- UA
- 今、お子さん、いくつだっけ?
- 若木
- 8歳。小2。もう完全に父ちゃんじゃないですか。父性モードが20時間ぐらいあって、残りの4時間ぐらいで仕事を終わらせなきゃみたいな感じ。だから、今回、UAのアルバムを聴かせていただいて、車の運転中は完全に自分の時間だから、基本的に音楽との触れ合いは車の中。聴いていると、ちょっと自分が主役になれる時間で。
- UA
- もしくは自分を忘れられるみたいな。
- 若木
- いい歌はそうで、自分に対してメッセージを送ってくれている、それがあるかないかでだいぶ違う。
- UA
- ありがとう。『Are U Romantic?』
- 若木
- very very romantic!
- UA
- 今、アンケートを取っているけど、クリエイターたちはみんな”ド”がつくほどロマンチストだとわかってきましたね。逆にリアリストとして表現している人はいるのかな?
- 若木
- ロマンティックにリアリストをやっていると言うか。
- UA
- なるほど。アウトプットするためには接点が必要だからね。
日常を忘れさせてくれる異国の風景
若木さんは学生時代をニューヨーク州で過ごし、世界各地の風景を撮影されてきました。一方、これまで沖縄やカナダに住んでこられたUAさん。作品作りに、その”場所”や”環境”はどう影響するのでしょうか。
- UA
- 早く自分の地元を出ているじゃない?何年間ぐらい出ていたんだっけ?
- 若木
- 高校を卒業してからだから、10年くらい。
- UA
- すごいね。
- 若木
- でも、大都会に行ったわけではないから、ニューヨーク州だけど、すごく北の方で、ほぼカナダ。UAはカナダだよね?
- UA
- カナダだけどバンクーバーよりさらに西の島に住んでいてね。自分のパートナーの母親がケベックの方だったから、東という気持ちもあったけど、フランス語があまりにもわからないし、より日本から遠いから寒さがひどい。マイナス40度。吐く息が凍る世界で、ちょっと無理かな。比較的、カナダの中では温暖といいますか、その代わり、冬に雨が降るのね。シアトルとかポートランドと似ていて、あれは結構つらい。
- 若木
- 冷たい雨だよね。
- UA
- 冬は日本に行きたくなるね。
- 若木
- 違う国で暮らすのは考えてしまうけど、そういうのはない?
- UA
- 私が主役じゃないんだわ。6歳児がいるからね。無意識化の中でやっぱり舵を取られている。若い者が未来を握っているというか、そこで判断しているから。たまたま、主人の縁で行けて、もう7年目になる。私は大阪で生まれて、転々としていて、特にここがホームというのはないんだよね。でも自分のDNAの記憶なのか、田園風景みたいなものには焦がれているのか、人間の本質なのかわかんない。もしかしたら映画で見た風景が勝手に記憶になっているのか、わからないけど、歌を書く時には何かあるよね。
- UA
- 行きたい場所はある?
- 若木
- スペインやボルトガルには行ってないんですよ。
- UA
- ほんと?
- 若木
- アフリカは行ったけど南米はメキシコまで。
- UA
- 南米は、日本からは遠いよね。私、ポルトガルは行ったことあるよ。本当に亡霊がずっといるような、あの時間は独特だった。終始、映画を見ている気分だけど、やっぱりファドが似合う。聞こえてくるんだよね。街中を歩いていると。あとはイワシが有名な、ナザレという海辺の街に行って、そこは海が突然現れたエリアと旧市街と新市街にわかれていて、旧市街にはエレベーターに乗っていけたりするの。すごい断崖差があるから、面白い。西の果てで、夕日がどんでもなく大きい。本当に今ここで私がいなくなっても誰も気づかないような気持ちになって、逆に生きなきゃみたいな。
- 若木
- 例えば東京から逃げて、絶対に捕まらないところに行こうと思ったら、どこがいい?
- UA
- 私むしろ今日本に来るのが楽しみだから、海外にあまり行きたくない。
- 若木
- なんでそんな話を聞いたかというと、秘境ではないけど中国に取材に行ったことがあって、元満州エリアとか、変わったところに行くたびに、それを思い出す。ここだったら逃げ切れるかなとか、ここで俺は写真家であることをやめて、静かにパン屋で人目につかないようにすることができるのかとか、完全空想だけど。
- UA
- 願望はないよね?
- 若木
- ないです。それぐらい日本からとてつもなく離れている感じがするかどうかで写真の撮りがいが出てくる。